2022/09/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 仕事が終わった夕方すぎから、大通り沿いにある雑貨屋へ買い物に向かった。必要なものを揃えるついでに、近所にあるお店よりも豊富な品揃えに目移りしつつ、店内をふらふらと歩き回る。
そのせいで思った以上に時間が経っていて、会計を済ませて帰ろうかというころには、もう空も暗くなっていた。
出かける前から雨模様だった天気は今もまだ変わらない。しとしとと降り続けているのを確認してから、きょとんと、傘立てに伸ばした手を止める。
自分の傘が見当たらない。もう一つの傘立てを確認してみても、そちらにもない。
来る時にも雨が降っていたから、持ってきていないという事はまずないわけで。
「……んん…」
地味な色の、どこにでもあるような傘だった。目印として持ち手の部分にリボンを巻きつけていたけれど、それに気がつかれず、誰かが間違えて持って行ったのだろうか。
幸い今いるのは雑貨屋だから、傘くらい売っているだろうけれど。すこし、困り顔になって考え込む
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にタピオカさんが現れました。
■タピオカ > 小雨の夕暮れで、空は薄紫。
宵闇迫る藍色が少しずつ雨雲に包まれて、王都は雨音混じりに夜に向かう。
傘を手に行き交う人々。大通りの中央、広い石畳の上を一台の馬車が通っていく。御者席は二人乗りの、小ぶりな荷車。ランタンが下げられている。かぽかぽ、栗毛の馬の一頭立て。かぽかぽ、音を立てて。
「納品終了っと……!
ギルドからお給与ももらえたし、後は馬屋さんに馬車ごと返すだけだねー。
……?あの子何してるのかな」
手綱持つ褐色肌の冒険者は、屋根付き馬車の軒先の下で一仕事を終えた満足感に浸っていた。馬車を使って運ぶ任務も無事に終え、報酬の使い道も懐のあたたかさの中で膨らむ思い。
そんな折に、雑貨屋の入り口で困り顔になる少女の姿を見かけ。
そのそばにある傘立てと彼女の顔色を交互に見やり。
思い至ると、静かに馬の脚を停め。
「こんばんは、隣人さん。
……もしかして、傘を誰かに持っていかれちゃった?
良かったら、この馬車で送るよ。
足も濡れないし、屋根付きだから髪も濡れないよ?」
手綱から片手を離し、にこやかに笑み顔見せつつ挨拶をする。
小雨でももう初秋。傘無しの冷たさから彼女を守れたら幸いとばかりに声をかけ。
■ミンティ > 日中はまだ暑さを感じる日があったりはするけれど、夜ともなれば秋めいて、特に昼からずっと雨が降り続けている今日なんて肌寒いほど。
空気の湿っぽさにあわせて、手の先からしんしんと冷たくなっていくような感覚に、思わず震え上がる。
とりあえず何度も確認して、自分の傘がそこにないのは明らかだったから、こんなところでぼーっとしているよりも、店内に戻ろうかと考える。
そのつもりで踵を返そうとした動きが、ぴたりと止まる。響いてきた蹄の音に、なんとなく反射的にそちらへと視線を向けていた。
音の正体は小ぶりな荷馬車。あのくらいのサイズなら個人で所有している商人も珍しくない、けれど、自分にはまだまだ手の届かない代物。
なんとなく羨むように見ていたら、通りすがるとばかり思っていた馬車が、目の前で止まって。
「……っ、……え…と、……わた…し、ですか……?」
急に声をかけられたから、反応が遅れてしまう。
びく、と震えてから周囲を見回して、自分以外に立ち尽くしている人もいないのを確認。
やっぱり自分に声をかけられたのだろうと判断すると、急な発声のせいで、かすれの強い声での返答。
どうやら馬車に乗せてもらえるらしい。ありがたい申し出に、しばし悩んで。
「……えぇ…と、お邪魔…じゃないよう、でしたら……、お願いしても…よろしいですか…」
悩みに悩んだけれど、相手は自分とそう年齢も変わらないような少女だから、あまり警戒しなくてもいいだろう。
なにより、せっかくの親切を断るのも申し訳なく、小さく、こくんと頷いて。
■タピオカ > 小さく頷く仕草につられて、桜色の長い髪が揺れる。
その愛らしさに同性ながら目元を緩めながら、片手を伸ばす。
「もちろん!
さあ、乗って!僕の隣へいらっしゃい!」
車軸と馬を操る関係上、馬車の御者席はご多分に漏れずやや高い場所にある。木製のステップから彼女のほうへ身を乗り出し、手を伸ばして引っ張り上げよう。
席も馬車と同じように小ぢんまりしているが、織物のカーペットが重ね置かれクッションも備えてあった。
長距離移動用で、乗り心地はそれなりに気を配ってある。
「僕はタピオカ。冒険者してるんだー。
今、ゾス村まで馬車で荷物を運ぶ依頼が終わったところで
雨に濡れそうな女の子を見つけたって感じだね。
隣人さん、お名前を聞いてもいい?
あとー、送っていくお家のある場所ってどのあたり?」
慣れた調子で手綱を振るって馬を歩かせていく。
御者席へ張り出した屋根で席は濡れず、軒先からしとしとと雨粒が落ちていく。車軸が石畳の上を回る音がする中で尋ね。
■ミンティ > 今回は傘をなくしたという困り事があったから、だけれど、普段から今の天気のように、どんより暗い雰囲気を引きずりがちな自分。
比べてみたら、こんな天気でも朗らかに笑う少女の明るさは羨ましいものがあった。高い位置から差し伸べられる手を、しばらし、ぼけっと見つめてしまってから我に返り。
あたふたしつつも、荷物を片腕で抱えながら、もう一方の手を伸ばす。
「す、すみません…、ありがとうございます……」
濡れた地面に、運動神経もよろしくない自分の事を考えると、小さなミスでうっかり転がり落ちてしまいかねないと思える。
だから差し伸べられた手は、ぎゅう、と強めに握ってしまって。引き上げられる時には案の定バランスを崩しそうになったものの、どうにかそんな事故には繋がらずに済んだ。
カーペットとクッションで座り心地のいい席。腰を落ち着けてから、ほっと息を吐いて。
「……すみません。ご親切に…ありがとう、ございます。
っ……ぁ、申し遅れました。わたし……、ミンティ…と、いいます。
え…と、タピオカ…さん。……凄いですね、わたしと同じくらいなのに…」
隣人さんという呼び方に不思議そうにしたり、先に名乗られると慌てたりしつつ、自分と同じくらいの年なのに冒険者だと聞き、感心した様子を見せる。
もちろん若い冒険者を見るのが、彼女がはじめてというわけでもないけれど。身体を動かすのも苦手で臆病な自分にとっては、まず絶対につけない職業であると思えるから、ほのかに尊敬の眼差し。
「……え…と、この大通りの裏手…なんですけど。
すこし先の細い路地に入って、しばらく…奥に進んだところにある、小さい商店街…
あ、でも……あの、途中まででも、ぜんぜん、だいじょうぶ…です」
馬車が進み始めると、荷車を引く馬をじっと見つめて。
送ってもらう場所さえまだ伝えていなかったと思い出すと、身振り手振りをまじえながらの説明。
細い道を通ったりと面倒も多いだろうから、すこし恐縮して、身を縮こまらせて。
■タピオカ > 「ふふ、大丈夫!
ほら、掴んだよ!
――ミンティ!よろしくね。
僕のことは呼び捨てでいいよー!
仲良くしたいから!
あは……!田舎者だからねー!
ずっと北の高地の遊牧民出身なんだ。
だから、外で過ごすのも魔物を倒すのも慣れてて。楽しく冒険者してるよー!
ミンティは、王都生まれ?
見た感じ……コクマーラジエル学院の学生さん……?」
彼女の繊手が自分の指にきゅっと重ねられる。
その小さな柔らかさにふにふに、表情を綻ばせつつ。
しっかりと握り返しながら彼女の細い肢体を席に収めて。
普段は冒険者ギルドで年の離れた人との会話が多く、同性の同世代の相手との会話も舌滑らかに弾み。
尊敬の眼差しにくすぐったそうにはにかみつつも。
「あー……、そこなら、多分僕が宿をとってるとこの近くだね。
あとー、この馬車を返す馬屋さんともそんなに離れてなくて路地裏の屋根づたいに歩いていけるよ。
ふふ、途中までなんて寂しいよー。最後まで送らせてー!
もう少し僕と一緒に居ようよー」
彼女の見る視線の先で、毛並みのよいたてがみが雨に濡れながらもつややかに歩きながら波打つ。
道順を伝えられると、それなりに長く王都で暮らして働く土地勘。
途中までと遠慮する奥ゆかしさにからから笑って。
大げさな身振りでせっかくの縁をもう少しだけ手放したくないと笑気漏らし。
恐縮する彼女の背筋を勇気づけるように、ぽん。
優しく触れてみせ。
■ミンティ > 屈託なく笑い、初対面の自分相手にも物怖じせずに話しかけてくる。
冒険者の全員がそうという事もないだろうけれど、コミュニケーション能力はあって困るものではないだろう。
それは商人である自分にも当てはまるものだから、やはり羨ましさを感じてしまい。
会話のペースに置いていかれがちになり、無視しているわけではないのだと、せめて相槌だけはきちんと挟むようにしながら、こくこくと頷いて。
「……す、すみません。あの、…人を呼び捨てにするのって、…あまり、慣れてなくて。
そう…なんですか。北の方から。じゃあ…動物の扱い、とかも…慣れているんでしょうね」
訓練されている馬なら、変に暴れたりする事もないのだろうけれど。大人しく荷車を引く馬の様子にも感心したりしつつ。
ほとんど王都から出た事のない自分にとって、遠い国の話は本で読んだり、話に聞いて知るしかない。
遊牧民と聞いて思い浮かぶ、動物たちとの共同生活を思い浮かべ。硬く変化に乏しい表情が、その間だけ小さく和らいで。
「わたしは…はい、王都の生まれ…です。
今は、えと、古物商…のお店を、任されて……いて。その、商店街で。
あ、もし、鑑定が必要だったり、なにかあったら…いつでも、お声かけください。
乗せてもらった……お礼、になれば……いいのですが……」
口下手なのは自覚しているから、話をしながらどうしても手振りを加えてしまう。
喋るペースに反して手だけ忙しなく動くから、もしかしたら落ち着きがなく見えてしまうかもしれない。
そんな風に会話をしつつ、彼女の目的地も近いようならと、そこまで送ってもらう事には同意して。
ありがとうございます、とお礼を口にしたつもりの声は、きちんとした発声にならなかったから、代わりにぺこりと頭を下げた。
そうして、雨の街中をしばらく二人、馬車に揺られてどこかへと…
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からタピオカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクチナシさんが現れました。