2022/07/20 のログ
ご案内:「高級娼館「ファタール」王都支店」にルヴィエラさんが現れました。
ルヴィエラ > 『やぁ、場所を移転する事になったよ』

(――そんな、支配人たる己からの言葉を聞いた娼婦達は
流石に、嘘でしょ、等と思ったに違いない
基本的に、普段から突拍子も無い事を突然言い出す類と認識はされているが
店の場所を変える、なんて大掛かりな事を、殆ど事前告知も無く言い出したのだから

だが、其れでも後に続いた事情との説明を行えば、凡その娘達は納得してくれる
基本的に、そう言った突発的な出来事が、娘達に害を為さぬ為だと、理解されて居るからだろう

――そんなこんなで、移転予定先。 平民地区と、富裕地区の境界に位置する建物
元々は、何かしらの貴族の豪邸であったらしき建物を其の儘買い取り
必要な家具や荷物、移動出来る設備を運びこんで、絶賛移転準備中、と言った所だ。
建物の構造はそのまま利用できそうであり、必要なら改築すれば良い
元の建物は、移転告知を張り出した状態で、もう暫くは並行して開店する事になるだろう

昨日の今日、行動は早い方が良い。)

「―――ふむ、後は、門だけは変えて仕舞わないとねぇ。」

(ファタールを象徴する、正面の門
ハイブラゼールの本店より続く同じデザインの其れは、何処に移転しても変えられぬ物
最終的に、元の店舗から引っ張って来る事にはなるだろうが
其の前に、敷地外周の工事は必要になるなと、一番上、邸宅の主の部屋で在ろう場所で
のんびりと、階下の状況を眺めて居た)。

ご案内:「高級娼館「ファタール」王都支店」にマレルダさんが現れました。
マレルダ > のんびりと階下を眺めている刹那、背後少し離れた所に魔力の集中を感じるだろうか。
ルヴィエラの影のあたりに集中する魔力。
そこから一人の少女が飛び出した。

「きゃっ……こんな風に飛ぶのね。あ、ごきげんよう」

昨日契約をした少女は、手に入れた能力をどう使うのか試してみた様子だった。

「思ったより早いのね。移転にはもう少し時間がかかるかと思ったけれど」

昨日と違うのは、学生然とした服装ではなくて、貴族然としたそれである事。
そして、香水が仄かに香ることから、どうやらどこかに行ってきたのだろうという事か。

ルヴィエラの近くへと寄ってくれば、窓の外、何が見えるのかと隣から見やろうとしている。

ルヴィエラ > 「―――――……おや? ごきげんよう、もう使いこなせて居るようだね。」

(不意に、魔力の気配がした。
己の影から湧き上がる様にして姿を現した娘に、少しばかり感心しては
僅かに首を傾け、今度は気安い会釈を向けて見せるのだろう
香る香水、そして、昨日とは違う礼装。 貴族であれば、不思議な事は何もあるまい。
此方へと歩み寄って来るならば、窓枠より少し身体を引き、階下が見える様に。)

「何、都合の良い建物が見つかったのでね。
移転する事が決まって居る以上、先に引き伸ばした所で良い事も無い。
……あの店はあの場所、と言う印象も薄い今なら、余計にだ。」

(無論、完全移転にはまだ、もう少し時間は掛かるだろう
王都である以上、己が行動にも制限が掛かる。 基本的には、人力で行わねば為らない移転だ。
階下では、他の娘や大工の男達が、最初の計画を立てている段階
改築も、まだ実作業に入るのはこれから、と言った所だろうが
――その指揮を取って居るのは己では無く、王都の店舗である責任者の娘だ)。

マレルダ > 「だって、あの『契約』のおかげなのか理屈は理解できたもの。理解できたものは使ってみるしかないでしょう?」

事も無げに告げる少女も昨日よりは気安くなっているだろう。
契約により結びつくことで、感覚的に知れた所もあるからかもしれないが。

外を見えるようにしてもらえたならば、覗いて富裕地区、平民地区と視線を向けてから視線は階下に落ちるか。

「うん、想像以上にベストポジション。あえてこの位置にすることで、富裕地区の娼館も平民地区の娼館も『不便な位置に建つならいいだろう』と見立てが甘くなる。これで、多少は嫌がらせが少なくなるはず。これだけだと本当に多少でしょうけれど」

昨日書き付けだけで指示した内容を誰に語るでもなく紡ぐ言葉。
窓から入る風が心地よいのか、少し目を細めて口元に笑みを浮かべるか。
その後でルヴィエラに視線を向けてから

「あぁ……あと、昨日お願いした『オジサマ』二人には、それとなく粉をかけておいたわ。『協会』よりも高い額を提示することで、あの二人はメンツが立つ。……まぁ、メンツを優先する連中だから、低く持ってったら毎月払えとか言ってくるでしょうけど」

自分が何をしてきたのかを口にした。
やると言ったなら後回しにするのは性に合わないのだ、と小さく笑いこぼして付け加えるけれど、これはこれで楽しんでいる様子が見て取れるだろう。

ルヴィエラ > 「理屈が理解できても、実際に操れるかは別だからねぇ。
君の場合は、魔術の基礎と、此方側への適性が在ったのだろう。
嗚呼、でも注意してくれ給えよ、慣れぬ内は思わぬ所に飛び出す事も在るのだからね。」

(――正直、センスが無ければ、可也の頻度で迷子になるだろう。
そう考えれば、己が影を目指して正確に移動できたのは、随分と早い段階だ
無論、契約者である以上、己が影は最も目指しやすい場所では在ろう
だが、其れでも魔術と言う物に一切の縁が無い者であれば、先ず、影に沈む事すら難しい

昨日の見立ては間違って居なかったようだ、と、そう微笑みながら告げて。)

「必要なのは、不便な場所で在ろうが"通いたくなる"店である事だ
立地での不利は、然程感じては居ないよ。 僅かでも利が在るなら、其れで良い。
……嗚呼、"お出かけ"は順調だったのだね。」

(高級娼館と言う肩書が在る以上、集客の内、主に収益を占めるのは、貴族や商人などの太客だ
僻地に在ろうと、そう言った客は馬車を乗り付け、距離など気にせず通うであろう
其の上で、平民地区に近くなったことで、一般層の市民にも手が届く店となる
利を見るか不利を見るか、其れは此方の面持ち次第

娘の続いた言葉に、その服装と香水の理由を何となく察した
お疲れさまだね、と労いの言葉を掛け。)

「資金面で解決できる事に、惜しむ事は何もない。
上手く付き合えば役に立つのだろう? なら、彼らにもそれなりの得を分け与えねばね。」

(協力者である以上は、彼らにも利を分け与えて置けばいい。
無論、もし、其れ以上の利を要求してくるような事が有れば、其の時は其の時だ。
何処か楽しそうに語る娘に、ふ、と笑み返せば。 ――そういえばと、思い出した様に。)

「……マレルダと言う娼婦は、登録して置いた。
状況は説明してある、基本的に予約が入る事は無いだろう、が。 ……勿論、絶対とは言わぬよ。」

マレルダ > 「そういうものなの?……でも、そうかも。貴方の魔力を辿ってみようと思ったら割とくっきりしていたから。そういう意味では本当によく知っている場所以外は危険性があると思った方がいいわね」

向けられた注意にきょとんとした様子を見せたものの、何か思う所があったのか、素直に注意を受け入れた。
魔術に関しては優等生だったのも幸いしたのだろう。

「そう、本質はそっちなの!……でも、この町の『協会』に所属している連中は、便利な場所が既得権だと思い込んでいる。だから、不便な場所でも人気を呼んで客の流れを変えてしまえばいい。もしかしたら、この辺りが繁華街に変わるかもしれないわ」

流石にそれは飛躍しすぎなのは自分で分かっているのか悪戯っぽい笑い。
とはいえ、全くあり得ないという話でもないのだが。

「ええ、順調どころか拍子抜けするくらい。……まぁ、本当は既に通すことは決まっているけれど、まだ二人の耳に入っていなかった陳情を『私が通してあげるから、仲良くしてあげて?』位は言ったけど」

その情景をなぞるように芝居がかった言葉を表情で。
自分の『魅せ方』を知っているからこそ効果的なその様子を再現して見せた。

「……ええ。あの二人が役に立つのは、人の流れが変わってしまった後。まだまだ先だけれど、今のうちから投資しておけば、その時はこっちの味方、よ」

1年後、2年後の先を見据えたその話。
でも2人が見ている先は同じ位置だろう。

そうしていれば、思い出したように告げる言葉を耳にして、くすっと笑いをこぼせば。

「興味本位ならば、予約は入らない。けれど、『力』がある相手なら無理を通してくるでしょうから、その時はお相手しますわ?そうねぇ……その時は、『わたしに瓜二つの別の子』を抱いてもらおうかしら」

体は重ねるが、認識は催眠でゆがめる気満々の様子。

「でもまぁ……ツァハとつながっているのではないか、と疑わせるために入っているのだから、あまりやりすぎても、ね。その匙加減は難しそう。
……なんて言って、めったに見れない世界を知れるって楽しみの方が強いかもなんだけどね。そういう意味では感謝してる。ありがとう、パパ?」

一通り言葉にしてから、目を丸くした表情。
何故にルヴィエラを『パパ』と呼んだのか。自分でも無意識だったのか、それとも契約が何か悪さをしたのか。
何をしでかしたのかを理解すれば、ついっと視線外して少し赤くなりはにかんだ表情を見せた。

ルヴィエラ > 「土地勘が無ければ迷うのと近いだろうね
其れに、長距離を移動すれば当然、魔力消費も、痕跡も残り易くなる。
練度が上がれば、気配も残さず使える様になるだろうが、ね?」

(少なくとも現状では、出現や、侵入の瞬間に魔力の気配が漂う
敏い者であれば気付くやも知れぬと、其れもまた忠告めいて、人差し指を立てて見せよう
其れでも――この娘であれば、きっと、直ぐに慣れるだろうとも、予感して居る
頭が良い、勉学が出来ると言う意味だけではなく、本質を見抜く眼と思考を持って居る
でなければ、貴族相手に交渉を仕掛けるなぞ、中々出来る事でもあるまい
立地を考え、人の流れを読み、数年先の状況までをも想定するなぞ
きっと商才の面でも、優れて居るのだろう。

……ツァハ家は存外、己が初めに想定して居た以上に
この先、名声を、影響を王都の中で強めて行くやも知れぬ。)

「―――この先、この場所が栄え、人の流れが変わるなら
其の中心となったこの店への圧力は、少しずつ減るだろう
支持者の数と言うのは、最も判り易い力だからね。 今は、其の為の土台作りの時だ。」

(――其れが、最も理想的で、現実的な流れでは在ろう。
口元に弧を描き、娘の方へと視線を向ければ――僅かに首を傾けた
娼婦として、本名での登録を自ら願い出た相手の意図こそ直ぐに理解はした
だが、その発想が、直ぐに出て来る事自体が、年相応とは思えぬ所。)

「しかし、君もまた、随分と度胸が在る。
……ツァハの名前をちらつかせる為に、自分の名前を登録するのだからね。
無論、興味が在れば、娼館の案内はしようじゃないか
運営や娼婦の仕事、君の知らぬ知識の宝物庫では在るだろう。」

(――窓際から、ゆるやかに掌を娘へと伸ばした。
少しばかり可笑しそうに笑みを見せつつも、紅くなった其の頬に掌を添え
叶うなら、此方を真っ直ぐに向かせて、視線を重ねよう
――パパ、と己を呼んだ"娘"を。 愛でる様な、穏やかな瞳を。)

「―――流石は、私の見込んだ娘だ。」

(囁く様に、そう褒める言葉を。 目元を指で撫ぜ、柔くあやして。
――魔力が伝う筈だ。 娘が契約によって利用し、力を遣う度に其の身へ取り入れる、親たる魔の魔力が

まるで、甘い、蜜の様に。)

マレルダ > 「そっか。なら……練習は必要だけれど、気を付けて練習するわ」

頷いて、理があることは素直に応じる。
自分にとってはそれは当然なことなのだが、皆が皆そうではない事も知ってはいた。

「そうね……人の支持は取り付けられる。ただ、どうしようもなくなった時に暴発する連中もいる。そこを見ながら組み上げていきましょう」

街づくりは人づくりともいう。
人が作れれば、その町は強い。
外圧にも負けないようになるだろう。
そして、目指すべき場所もそこのはず。

伸びてくる掌、頬にのびる手は受け入れて。
そして視線が今一度重なれば、少し恥ずかし気にしていたけれど。
向けられている瞳が穏やかなもの。
まさに親が子に向ける慈愛のそれと理解して、続く言葉を耳にすれば
今の自分がどういう存在であるのか、感覚的に理解した。

「……ありがとう、パパ。この出会いには本当に感謝してる」

目元あやされれば少し穏やかな笑み……昨日からここまで、どこか『作られた仕草や存在』のように見えた娘の雰囲気が解けた。
多分、これが本質なのだろうという穏やかな、それでいて強い意志と興味旺盛な年相応の姿。
伝わる魔力、心地よさげに目を細めてから。

「……つまり、私はパパの末娘。お姉さま達にご挨拶してこなくちゃ」

行ってくるね、と口にして、部屋の外へと飛び出していく。
窓の外から見やっていれば、結構うまいこと輪の中に入っていくのが見えるかもしれない。

もしかすると、マレルダがもっともマレルダであれる場所を見つけたのかもしれなかった。
無論、一歩外に出れば、いつもの『暗躍する令嬢』に戻るのだろうけれど。

ルヴィエラ > 「そうすると良い。 場所や時間帯も、最初の内は選ぶ事だ。
嗚呼、其れと…学院の中は、気配を消せる様になってからを勧めるよ。」

(市井と違い、あの場所には魔術を扱える者ばかりが集う
特に講師、教師陣の中には、人間としても可也の実力を持つ者が居る
娘が扱う力の根源は己、つまり、人のモノではない
痕跡を辿られれば、要らぬ疑いを掛けられる事も在るだろう

己が力を過信してはならないと、そう、継げる声音は確かに
きっと娘が己を父と呼んだ頃から、少しばかり変化を見せた。)

「――父が子を愛でるのは当然だ。 案じるのも、そして幸せと成長を願うのも。
自分を信じると良い。 繋がった縁の先に私は居るのだからね。」

(利用し、利用される関係と言うのは決して変わるまい
だが、契約を結んだ今、単なる協力者と言う形では、留まらぬのだ
娘、と己が呼ぶ存在が、純粋な血筋だけを指す訳では無いと
きっと、今、己が娘となった相手には、理解出来る筈だ

掌が離れ、挨拶が大事だと、階下に向かって駆けて行く娘を見送り
程無くして階下で、他の娘と、そして責任者たる娘に挨拶を交わす、其の姿を眺めれば
其れまでで、最も機嫌のよい微笑を浮かべて、暫し、其の光景を見守る事だろう

必要とあらば、館の中を見学するも、誰かと交流するも好きにさせ
他の娘達と同様に相対し、愛でるであろう。
この後は食事も待って居る。 望むなら他の娘達と共に、同じテーブルを囲むも良い
己は、この部屋にいる。 戻って来れば、変わらぬ笑みで迎え入れる筈だ

楽しかったか、と)。

ご案内:「高級娼館「ファタール」王都支店」からマレルダさんが去りました。
ご案内:「高級娼館「ファタール」王都支店」からルヴィエラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にユイリンさんが現れました。
ユイリン > 人通りのそれなりな大通り。
人が行き交う中を大き目の袋を抱えて帰路につく。
本当はもっと早くに帰る心算であったがつい買い物が遅くなり今に至り。
前が見えにくいほどに荷物を抱えては人にぶつからないように気を付けては歩いて。

「ちょっと買い過ぎたけど…後少しだし…わとと…」

無計画に買い込んでしまった荷物を時々に落としそうになっては踏ん張って耐え。
時折に右に左にと揺れては道を歩いて行く。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からユイリンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクイネさんが現れました。
クイネ > 「う~ん……。これは、困りましたね」

平民地区、大通りから少し外れた場所で。
一人の少女がそう呟いていた。
言葉通り、表情には困った様子がありありと浮かんでいる。

「まさか、商品の入荷が滞っているだけでなく。
 値上げまでだなんて」

少女が立っているのは、平民地区のとある魔道具店。
少女は、仕事である占いに使う道具などを買いに来たのだが……。
欲しい商品はことごとく品切れ。
仕方なく、消耗品を購入しようとしたら、値段がものすごい上がっていたのであった。

「ふぅ……こうなると。
 占いの料金も値上げするしかないんでしょうか」

そんなことになったら、ますます景気が悪くなりそう。
そう呟きつつ。少女は、困った困ったと言いながら。
別の魔道具店へ向けて歩いていく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にフセスラフさんが現れました。
フセスラフ > 少女が入った別の魔道具店では、奇妙な光景が広がっていた。
首輪をしているミレー族、それは見るからにそれだけならば奴隷とわかるのだが。
その奴隷が身綺麗な騎士服を着ており、その魔道具店の店主が悪態をつきながらも、商品の値段表を変えている。

「店主……さん。ここで、定められてる……値段、明らかに違法ですよ……。
本来の値段はこう……。勝手に吊り上げるのは、自治体が黙ってません……」

と、ミレー族の青年が言う。本来ならばこの国でミレー族がこうも
人に対して要求を利かせるのは簡単ではないが、根拠を見せられて店主も従わざるを得ないらしい。

「おっと……。すみません、買い物の……邪魔をしてしまって」

新しく入店してきた少女に気が付いて、申し訳なさそうに頭を下げる。
店主も客が来たとわかると、すぐに応対してくれることだろう。

クイネ > 「ここもダメだったら。
 ちょっと困りますねぇ」

そう言いながら入った二件目の魔道具店。
そこで少女は、店主とやや剣呑な雰囲気を漂わせる男性を目にする。

「……あら?」

その雰囲気がただならぬものだと感じ取り。
少女は、黙って二人のやり取りを聞いていたが。
どうやら、商品の値段に関する取り締まりか何かのようで。

「いえいえ。こちらこそ。
 大事な時にお邪魔してしまい、申し訳ありません」

ミレー族の男性が頭を下げたのを見て。
少女もまた、頭を下げてそう言う。
そのまま、店主のほうに近づき、商品を見せてもらうのだが。

「……じゃあ、そちらの薬草と、ポーションを2つずついただけますか?」

少女は、少し表情を曇らせた後、必要最低限の物だけを購入することに決める。
そのまま、近くにいた男性に向き直ると。

「あの、ちょっとお話よろしいですか?」

と。いきなりそう言い、にこり、と笑顔を見せる。
身振りで、店の外を指差しつつ。
相手の反応をうかがう少女。

フセスラフ > 自身が謝ったのを素直に受け取り、さらにそれに対して謝ってくれたこと。
そういう対応をしてくれること自体に、安堵を持っていた。
少なくとも、この女性はミレー族への偏見はそう濃くはないんだな。と。
そう受け取りながら、しかし目つきの悪い自身の人相ではそんな内心だと見せることはなく。

「……じゃあ、店主さん。僕は、これで……。
おなじこと、繰り返すようなら……。次は、取り締まるので……」

そう釘を刺す。
1回目は見逃すが、2度目はない。これでも温情なのだから。
すぐに取り締まらないのは、それ以外にもいろいろな要因はあるのだが。
まぁ、問題はないだろうと信じたかった。

そう考えて背を向けようとしたところで、先ほどの女性に声をかけられて振り向く。
綺麗な女性だな、と内心で思いながら。

「はい……。どうし、ましたか……?」

不思議そうな顔を浮かべながら、女性の相手をしようとして……。
店の外を指さすのを見て、話しながら、店を出たのだった。

クイネ > 明らかに鍛え上げられた。
まさに、『強い』というのが見てわかる肉体を持つ男性。
しかし、そんな男性は少女が頭を下げれば。
す、と一歩。実に自然に退いてみせ。
少女は、そんな相手に対し、この国では珍しいタイプの人だな、という感想を抱いた。

「すいません、お忙しそうなのに。
 お時間をいただいてしまって」

そんな男性に声をかければ、これまた丁寧に受け答えをしてもらえ。
少女は、内心微かに安堵しつつ、男性と一緒に店の外に出る。
買った薬草とポーションを、服の中にしまいつつ。
少女は男性の方をまっすぐに見て。

「……実は、先ほど別の魔道具店にも行ったのですが。
 そこも、商品が値上げをしておりまして。
 私、商品の入荷が滞ってることと。
 景気の問題で値上げしたのかな、と思っていたのですが……」

そこで、少女はつらつらと、話を始める。
その表情は、またもや困り顔に戻ってしまっている。
なにせ、買った薬草とポーションも。
平時に比べれば、やや高値だったくらいなのだ。

「もしかして、なのですが。
 景気やらなにやらの問題ではなく。
 店側の勝手な値上げが蔓延しているのでしょうか?」

だとすると、非常に困るのです、と。
少女はそう言いつつ、相手に向かって首を傾げてみせる。
魔道具はそもそもが生活必需品などに比べて高価である。
勝手な値上げが横行すれば、少女にとっては大きな痛手なのは間違いない。

フセスラフ > 少女の隣を歩きながら、どうしたのだろうと思案する。
自分になにか頼み事だろうか、それとも雇って欲しいという話だろうか、など。
そう考える思考の中に、一切色に関するものは浮かばなかった。
育ち方や、自分への意識の問題だからだろうが……。
不思議とそうなっているのは、隣にいる少女も雰囲気でわかったかもしれない。

「いえ……見回りと、こういう軽い仕事しか……出来ないので。
それに……基本、暇ですから……。俺はこんなですし……」

自然と、手が自身の首輪へと伸びていた。
鎖が少しだけあり、しかし自分では解くことが不可能なほど強固な鋼鉄製。
無駄に精巧に出来るているのが始末の悪い、この国の一種の文化。

「値上げ……別のところも、ですか……」

その話を聞いて、眉をひそめる。
勝手な値上げが横行しているのはそうだとしか言いようがない。
だがそれは、景気の問題もなくはないのだろうが。
それ以上に【仕入先】の問題もあるのだろうと察しが付く。
学は今はないが、ようやく知識が付き始めてわかってきた問題だ。
自分達の武器や防具も、タダではないのだから。

「そういう問題も……なくはないです。
ですが……勝手な値上げが……最近は多いのは事実……です」

ごほっ、と咳をする。
流暢に喋れるようにはなってきたが、まだ発音が怪しい言葉が多いかもしれない。

「誰かが買い占めるような事例は確認されてませんから……。
仕入先に問題がある可能性もありますが、だからといって品薄状態にはなってないはずです……。
だから、そういう事態が起こっているのはよろしくはないです……。

あまりにも高くて、万引きに走る人も最近は多いですから……」

最後の言葉は、あまり聞こえないように小さくいって。
少女の考えは間違いではないと肯定する。
故にどうにかしたいのはやまやまだが……。

「もし俺に、そういうことをやめさせるようにという話なら……。
自分一人では、すべての店を摘発することは……難しいです。
やってはみますが……自分はこの通り、奴隷の身でもあるので……」

と、非常に申し訳なさそうな顔をして。
強行することは可能だが、それですぐに解決とはいかないのが現状でもあることを伝える。

クイネ > 並んでみれば、体格差は歴然。
その屈強さに、思わずチラチラと男性を見上げてしまう少女。

「こんな? ……あぁ、なるほど。
 ……でも。見回りとか。大事なお仕事です。
 それをしっかりできる人を。私は尊敬しますよ」

相手の手が触れた、首輪を目にし。
少女は、少しだけ、視線を下に向けるが。
すぐに、相手の顔をまっすぐに見て。
少女はそうハッキリと宣言した。

「はい。もちろん、たまたま二軒だけ、という。
 そういう可能性もあるかもしれないのですが」

それにしても、タイミングが合いすぎている。
そう思ったからこそ、少女は目の前の男性に詳細を尋ねているわけで。

「やはり、そうなんですね。
 ……あの、喉、大丈夫ですか?」

相手の言葉に、う~ん、と唸る少女であったが。
咳をする様子に、相手の体を心配してみせる。

「……そうなると。余計に、皆こぞっての値上げ、というのは。
 いっそ不自然さを感じますね。
 ……あぁ、そうなりますよね」

貧すれば鈍する。でもないが。
貧しくなれば心も貧しくなるものである。
もしもその悪い流れが広まれば。
治安までも、一気に悪化するのは目に見えている。

「あぁ、いえ。そういう訳ではないんです。
 ただ、このままだと……。
 薬草とかは、自分で外に採取に行ったほうが早いかな、と思ったので」

申し訳なさそうにする相手に、少女は頭を下げ、謝罪の意思を伝えるのだが。
次の瞬間。相手の頬を、両手で優しく包み。

「奴隷という立場でも。アナタは、私の質問にちゃんと答えてくれました。
 この国では、人を騙したりする人だって珍しくないのに。
 ……改めて、ありがとうございます」

ふっ、と。優しい笑みを浮かべながら。
相手に感謝をする少女。
そこで、少女は、あっ、と言い。相手の頬から手を離し。

「申し訳ありません。
 私、占い師のクイネ、と申します。
 もしよろしければ、お名前を教えていただけませんか?」

と。自己紹介がまだであった、と気づき。
そう名乗る。

フセスラフ > 少女の、自分より頭1つ分は低いだろうか。
それぐらいの差もあれば、歩幅も大きく変わるのだが
少女の方からして、少なくともペースは早くなっていない。
……見れば、ミレーの男性のほうが歩幅を小さくして、ペースを彼女と合わせていた。

「……そうですか……。ありがとう、ございます」

尊敬する、などと、こうも言われたことなどないからひどくこそばゆい。
こうも、他人から褒められたのは初めてだった。
自身の主人も褒めてはくれるが、それとはまた違う感覚であった。

「……この辺一帯を確認する必要性はありそうですね。
ちょっと、同じところの仲間に声をかけてみます。
暇な奴ら割といますから……」

そう言うと、また「こほっ」と咳をする。
喉を抑えながら何度か鳴らして。

「ん、いえ……。昔から、喋ることにあんまり慣れてなくて……。
以前、喉を壊されたこともあって、今は治ってるので大丈夫です……。
まだ、完治はしてないんですがね……」

と、ぎこちなく安心させるために笑って見せる。

「不自然……確かに、こうも一気に、となると。
何か作為的なものを感じますね……。
……まぁ、今のご時世、自分で採取するのも手段には入るでしょう。
危険性に目をつむれば、ですが」

言外に「おすすめはしない」と言っているようだ。
現に彼のミレーの耳と尻尾も、心配そうに若干揺れている。

そこまで話したところで、彼女の両手が自身の顔に伸びてきたのに気づかず……

「な、なにを……?」

一瞬、怯えるような目で少女を見るが
すぐにその優し気な眼差しに、怯えの感情が霧散して安心を得る。

「……いえ……俺は、俺のやることを、してるだけ、ですから……。
でも……そう言ってくれると、嬉しい、です」

恥ずかし気に、頬がほんのり赤くしてそう答えて

「あ……俺は、フセスラフ…。
奴隷騎士の、フセスラフ…です」

と、気恥ずかしさから目を背けながら、そう名乗るのだった。

クイネ > 並び歩く中。相手が歩幅を狭めてくれていることに気づく少女。
しかし、それをあえて、言葉にして、感謝したりはしない。
それをすると、相手の気遣いを台無しにしてしまうかもしれないからだ。

「いえいえ。こちらこそ、です」

相手の感謝の言葉に、少女が笑顔で頭を下げる。
相手の反応は、どこかウブという感じで。
少女にとっては、それがほほえましかった。

「それは……本当にありがとうございます。
 そうしていただけると、この地区の方々も助かると思います」

相手の宣言に、少女はまたも頭を下げるが。
咳を繰り返す相手に、少女は心配そうな瞳を向け。

「そうなのですね。
 ……もしよろしければ。こちらをどうぞ。
 少しは、喉が楽になると思いますので」

相手の説明を聞き、少女は懐から、小さなポーションを一つ取り出す。
喉の痛みを取るポーションです、と相手に説明しつつ。
甘くて飲みやすいですよ、と。笑みを向け。

「そうですね……。
 えぇ、大丈夫です。
 私、実はこう見えても強いんですよ」

相手の心配そうな様子に、少女は笑いながらそう言い。
ぐっ、と拳を握ってみせる。
傍から見れば、そうは思えないだろうが。
少女も、魔術の心得はある。

「あら、可愛らしい反応♪
 フセスラフさん、ですね。
 お名前、覚えました」

赤面する相手を見て、少女はくすくすと笑うものの。
相手の名前を記憶すれば。ぺこり、と頭を下げ。

「本日は、貴重なお話、ありがとうございました。
 もしまたお会いすることがありましたら。
 本日のお礼、させてくださいね」

と言い。その場からととと、と立ち去るが。
少女は時折振り返り。相手に向かって、ぶんぶん、と手を振り。
それは、姿が見えなくなるまで続いた……。

フセスラフ > 「……あ、ありがとうございます。
すみません、俺なんかにポーションなんて……」

申し訳なさそうに顔を下げる。
しかし、受け取ったものはしっかりと自身の懐へと仕舞う。

「強い……ですか。
それなら、心配はない……と言いたいですが。
いちおう、自分は奴隷騎士なので……もし護衛が欲しければ、行きますよ」

そういいながら少女とともに歩いている足が
少女の両手が近づいたときに止まる。
そして、彼女の下がった頭を見つめて……。

「クイネ……様ですね……。
いえ、こちらも、いろいろ知ることが出来ましたから、気にしないでください。
礼なんて……仕事の一環ですから、ね」

そういいながら、自然な笑みを浮かべて少女を見送る。
時に手を振る彼女に、自身も手を振り返して、その背後をずっと見て。

「……仕事……だな……。
とりあえず、この地区全体のお店から、見直すか……」

そう、先ほどまでとは違う顔つきとなって、仲間たちの元へと戻るのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からクイネさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からフセスラフさんが去りました。