2022/04/26 のログ
■ホウセン > 安全を確かめていかなければ、真っ当な生を送ることは難しい。
成程と思う反面、気にしても仕方ない理不尽も多かろうにと思わないでもない。
さもなければ、斯様に自立が難しいレベルで泥酔することも無いだろうからと。
と、物思いに耽るのを、全力で阻害してくる言葉。
よしよし、盛大にぶっかけるという台詞に応えるなら、きちんと水を飲み下した後だ。
「どういたしまして、と言うべきかのぅ。
これで、水がぬるいだ竹の匂いが付いて青臭いだの言うたら一直線で”しぇいく”じゃし…
粗相をしたら粗相をしたで、洗濯代を申し受けるという筋で尻の毛まで毟るだけじゃ。」
しれっと空恐ろしい事を口にする。
断じて、純朴なお子様が口にしないようなことを。
北方帝国の何処かに由来のある装束は、そもそもが物珍しいし、落ち着いた色使いではあるものの上等そうな布でできているのだし。
チクリと言葉の針を刺してやる位の心地なのに、相手の経済状況によっては存外えげつない。
「して、酒飲み学生は、少しは動けるようになったじゃろうか。
行き倒れの可能性は小さくなったし、そこで朝まで寝ておっても構わぬのじゃが。
この季節なら凍死はせんじゃろう。」
正気の回復度を問うように、目の前で小さな手を左右にヒラヒラ。
生命活動的には支障が無いとしても、治安やら人目やらを考慮したら社会的に死ぬ可能性がてんこ盛りなのに。
回復していれば良し、開き直ってここで大の字で寝るのなら…それも見ものだから良し。
そんな妖仙側の事情は別にして、女学生が何を囀るのか耳を傾け。
■サリス > 水分補給してかなり落ち着いた。
まだ十全とは言えないけれど、先ほどよりはクリアになった感覚に息をついて。
「普通においしいお水でした。竹の匂いなんでしょうか。風味がついて清涼感がありますね、ここに入れておけば……。
……振り回したらぶっかかりますけど、と確認した上でやったのなら確信犯というか自業自得というか。まあ……そんなど阿呆ではないでしょう?」
寧ろ竹の香りがさっぱりとさせてくれた。それで気分が良くなって表情も和らぎかけたが。
何故か攻撃的な口調に疲労感を滲ませ。
そして彼の口にするのはただの難癖に過ぎず、さすがに嫌だなぁ、と眉根を寄せて。
「お陰様で……、お家には帰れそうです。
そうだ、お水のお代を……と言っても、手持ちは心元ないのですが……」
泥酔状態でも帰巣本能は失われないので足さえ動けば帰りつけるだろう。
そして、ただで物をもらう理由もなく、鞄から財布を取り出して、吹っ掛けられなければいいな、と多少危惧しながらも。
恩はあるのだと折り目正しく頭を下げて失礼ながら、と対価はいかほどか伺った。
■ホウセン > 女学生の眉間に皴が寄った。
それだけで、多少の溜飲が下がったというか、悪戯心が満足したというか。
そういう点では、実に大人気ないお子様の姿をした”何か”であろう。
くくっ…っと、二次性徴前の喉の奥の方で忍び笑いをする程度には、悪趣味でもある。
「善哉、善哉。
懲りたら次に活かして立ち回るがよい。
対価は…嗚呼、微塵も考えておらなんだな。」
相手から言われて、きょとんとしたツラ。
値を付けるのは容易いし、暴利を吹っ掛けるのも更に容易い。
が、そもそもが売り物でもなかったし採算度外視ではあったから。
ふむ、と人差し指を唇に当てて思案顔。
結論は数秒の後に。
「お主の財布の中、最も傷んだ硬貨一枚としておこうかのぅ。
当然金額は問わぬし、一々儂自身が財布の中を検めるということもせんから安心するがよい。
自宅までの見守り料金も加えるなら二枚になるがのぅ。」
訳が分からない存在の、訳の分からない対価の提示。
その価値はこの小さな人外のみぞ知るといった所だが、果たして女学生にとっての負担の大きさは運任せでもあって。
肉体労働とは縁遠そうな、しなやかな白い手を差し出して、ここに置けと。
嘴の黄色いひよっこ相手に、過酷にしても仕方あるまいという判断らしい。
最後の軽口は、断られるのが前提のもの。
誰も、得体の知れないお子様に自身の塒を知られたくないだろうしと。
一方で、帰路に就く踏ん切りをつける効果ぐらいはありそうで。
■サリス > ど阿呆でこそないが、根性悪。
そんな風に見える幼子。
この街の夜に出歩くのはそういう一筋縄ではいかない手合いなのだろうとつくづく認知した。
「精々善処します。
………。それでは……些少で恐縮ですが、こちらで……」
対価の請求すらも妙な具合で。
不可解そうに小首を倒したものの、言われたとおりに財布の中を開けて傷んだゴルド硬貨を探す。
使い込んだ1ゴルドが薄闇に浮かんできて。さすがに安すぎると判じたもので、見守りしてほしいというよりも、水筒を洗って返したいと考え。
10ゴルドをもう一枚。
併せて11ゴルド。二枚の硬貨を小さな掌に置いて。
「徒歩10分弱です、ついてきて下さい。これをちゃんとお返しします。両親も一言礼をというでしょうから一言くらいは聴いて行ってください」
まだ親の保護下にある未成年である。
手を貸して貰ったのならば顔を出すだろう。
ただ、それが小さな子供に見えれば、寧ろ家まで送ろうかと父親辺りは言いだすかも知れない。
財布を仕舞った鞄を提げて立ち上がり。
こっちです、と先立って歩き出すだろう。
■ホウセン > 財布の中を探る手、少しの思案。
何事かを考えているらしいというのは汲んで、急かすことは無く。
渡された硬貨は、自身の財布を取り出して仕舞うという動作をせず、すぽんと袂の中に手を引っ込めるだけ。
「妙に律義なものじゃな。
対価を貰うた以上、異存はありゃせんが。」
こうして妖仙の予測は外れ、千鳥足と、小さな歩みの奇妙な取り合わせが夜の街に消え――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からサリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からホウセンさんが去りました。