2022/02/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアニスさんが現れました。
アニス > 平民地区の住宅街――石造りの住宅が比較的整然と立ち並んでいる。
とはいえ、流入してくる人口を受け入れ続け、やや過密状態といえる。
そんな一画の細い路地を大荷物を担いだ少女が、足元をふらつかせながら歩いていた。

「ふぅ……あと1件で、終わりだから……!」

小さな背中に背負ったリュックには、何やら大量の工具が詰め込まれているのが見え。
両手に提げた袋には、どこかで貰ったらしい野菜や果物。
そんなちぐはぐな荷物を、よっこいしょー!と少女らしからぬ掛け声で担ぎなおし。

「次こそ、お礼は…、できたら、お金に……してもらおう……」

何せ食べ物だから、地面に引き摺っていくわけにもいかない。
魔導具の訪問修理でお礼が貰えるのはありがたいのだけれど、荷物になって仕方がなくて。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイリヤさんが現れました。
イリヤ > 平民地区の住宅街を、買い物袋片手に歩いていると、
前方でとんでもない量の荷物を運ぶ少女の姿が見える。

工具等が詰め込まれたリュックサックと、野菜などの食べ物が顔を出した袋。
それを抱えた少女は随分と華奢に見え、体格と荷物が見合っていないなと、そんな感想を抱く。
見なかったふりをして、お店に戻ろうかとも思ったが、
今にでも倒れそうなくらいフラフラだしと、白髪の魔女は赤髪の少女に歩み寄って。

「君、凄い荷物だね。もし良かったらお手伝いしようか?」

怪しまれないように、ニッコリと可愛らしい笑顔を浮かべ、
右手を上げながら少女に話し掛ける。

後ろからでは見えなかった少女の顔を見れば、
はて、何処かで見たことある様な……等と思い。

アニス > 「腕が千切れる……ぜったい、明日は…腕、上がんない、から……」

もうちょっと、あとちょっと、と呪文のように呟きながら、騙し騙し足を進めていたけれど。
そろそろ脚も腕も限界に来ている。
どこかで休憩を挟もうと周囲を見渡すものの、住宅街の路地に、そんな場所があるはずもなく。

「……え? えと、それは、すっごくありがたいんだけど……」

不意に掛けられた声に、きょとんとした表情を浮かべ。
瞳を瞬かせて、相手を見つめる。
とんがり帽子を被った、いかにも魔女ですといういでたち。
自分よりは背は高いけれども、どう見ても重たい荷物を運ぶのが得意には見えない。
それに手に買い物袋を提げているのが目に入ると、申し訳なさそうにして。

「あの、大丈夫だから。お気持ちだけいただいておきますね。」

ふんぬーっと力を振り絞って、背筋を伸ばす。
まだまだいける、大丈夫だとアピールするように。

イリヤ > 「あっ、今私のこと……力なさそうだなぁって思ったでしょ」

申し訳なさそうに断る少女をジトッと見つめ、
少しだけ頬を膨らませれば、彼女の背負う荷物に指を翳し、呪文を唱える。
すると、荷物一人でに浮き上がったかのように、軽くなったのを感じるはずだ。

「女の子がこんなたくさんの荷物、一人で運ぶのは大変でしょ。
君の荷物に掛けた魔法は、私から離れると解けちゃうの。
それをどこかに運ぶ予定なら、私も付いていくからさ」

ウインクをし、口角を上げたまま魔女はそう提案する。
どうせ予定もないし、人助けも魔女の仕事だなんて思っていて。

アニス > 「えーっと………それは、まぁ、なんというか……」

こちらの表情を読んだかのような指摘に、思わず口籠る。
これが力自慢の冒険者や傭兵だったりしたならば、まだしも。
どう見ても力仕事とは無縁そうな女性に、大荷物を背負わせるなんてできるはずもない。
それをどういう風に伝えようかと迷っていると、急に肩に食い込んでいたリュックが軽くなる。

「えぇ? うそっ、すごい、急に軽くなった……」

軽くなったというか、浮き上がったような感じ。
首を限界まで回して後ろの様子を覗き見る。
何がどうなったのかは、よく分からないけれど、軽くなったのは現実で。

「そんな魔法あるんだ……ありがとうございます。
 むぅ……やっぱり魔法って便利……」

残念ながら魔導具ではそこまでのことができない。
師事している教授ならば、もしかしたらできるのかもしれないけれど。
少なくとも自分にはまだ無理だと、ちょっぴり悔しそう。

けれども、魔女さんの申し出はまた別の話で。
手伝ってもらわないことには、とてもじゃないけれど目的地には辿り着けそうにもない。
そんなわけだから、「よろしくお願いします」と頭を下げることに。

イリヤ > 「ふふっ、掛けたのはただの浮遊魔法だよ。
ほら、魔女とかがよく箒に乗って空を飛んだりするでしょ?
原理はあれと同じ。重力を感じない程度に物を浮き上がらせれば、どんな重い物だって持てちゃうの」

得意げに魔法の原理を説明すれば、自分が持っていた手提げから手を離す。
すると、手提げは宙に浮いたまま、下に落ちることはなかった。

魔法使いでなくとも、簡易的な浮遊魔法であれば覚えておくとこういう私生活に役立つよなんて、
教師らしい口調で告げて。

「それで、どこまで行くのかな?
平民地区内……だよね? それとも、富裕地区?」

少女の目的地がどこであろうと、手伝うことには変わりない。

「ここから少し離れた場所なら、私の箒で向かっても良いし。
近場なら、箒なんて使わなくても良いだろうけど」

内心悔しそうにしている少女の表情には気づかないまま、魔女は提案する。
彼女も少し疲れている様だし、用事が終わればお店で休ませてあげても良いなどと考えていて。

アニス > 「空飛ぶ箒! その魔法、教えて!」

この魔法はどうやらどうやら浮遊魔法というらしい。
教師っぽく解説してくれる魔女さんに、食い気味に押し迫る。
浮遊魔法を魔導具に組み込めば、誰でも空を飛べる魔導具が作れるかもしれない。
まともに魔法の勉強をしたことなんてないから、習得できるかどうかなんてわかりもしないけれど。

「あぁ、えっと……そこの角を曲がって、3軒目のおうち…です。
 魔導具の修理依頼で。コンロにガタがきたとかで。」

軽くなって余裕のできた手を使ってポケットからメモを取り出す。
そこに描かれた地図と住所を見て、そう答え。

「空飛ぶ箒はすっごく興味があるから、あとで乗せて貰ってもいいですか?
 その箒ってやっぱりなんか特別なものだったりするんですか!?」

聞いてみたいことは山ほどある。
けれども、初対面の相手にあまり不躾なことはできない。
もう既に十分に不躾かもしれないけれど、抑えきれない好奇心をそれでも少しはセーブしながら問いかけて。

イリヤ > 「ん、教えるのは良いけど……
もしかして君、ラジエル学院の生徒さんだったりする?」

浮遊魔法の名を口にした途端、食い気味で迫る少女にイリヤはポカンと口を開け。
そんな少女の姿を見ると、学院で彼女によく似た生徒がいたような気がすると、こちらも好奇心で訪ねてみることに。

もし、彼女がラジエル学院に通っている生徒だとするならば。
教師として浮遊魔法の原理や、扱い方を教えてあげても良いと思っていて。

「あー、じゃあすぐ近くだね。
君は魔導具の修理屋さんなんだねー」

ということは、リュックサックに入っているのは修理用の工具というところだろうか。
イリヤも魔導具のお店をやっているので、是非商品のメンテンナンスを頼みたいところだななんて思いつつ。

「わはっ、空飛ぶ箒に興味があるんだ。
うんっ、君の用事が終わったら乗せてあげるよっ。

んー、そうだね。
魔素樹の大木を削って作ったものだから、普通の箒とは違うかな」

魔素樹とは長い年月を掛け、大気中を彷徨う魔力を基に成長する樹木である。
その樹木から作られた箒は、使用者の魔力を使わずとも空を飛ぶことができるという一級品。
もちろん相当な高値で取引されているため、平民は愚か貴族でさえも入手困難な代物だ。

彼女の勢いには驚いているものの、好奇心に溢れたその目には魔女としても通じるものがあったのか。
微笑ましい表情で少女の頭を撫で下ろした。

アニス > 「あ、うん。一応、学生で半分助手って感じかな。
 そういう魔女さんも、もしかして学院関係者だったり?
 魔導工学専攻だよ。修理屋さんは副業ね。ほんとは開発専門でやっていきたいんだけど。」

とはいえ、作ったからにはメンテは必要だし。
開発をしようと思えば研究費が掛かる。
そんなわけで、こうした出張修理をしているのだけれど。

「やった! お願いしますっ
 へぇ…、やっぱり素材から違うんだ。
 むぅー……、でも魔素樹の大木とか、どうやって手に入れるのってレベルじゃない…」

そんな話をしていれば、目的地に辿り着く。
魔女さんに断りを入れて工具だけを担いで依頼主の元へ。
幸いにも核となる魔石が切れていただけで、交換すれば元通りに動くようになった。
その間、わずか3分も掛かっていない。
出されたお茶とお菓子を泣く泣く断って、家から出てきて。

「お待たせ! 終わったよ、箒! 箒乗ろう!」

ガチャガチャと工具をリュックに押し込みながら、息せき切って。

イリヤ > 「やっぱり。何処かで見たことあると思ったんだ。
魔導工学ってことは……あぁ、あの教授先生のところで勉強しているんだね。
私は魔法課の教師だよ。私も教師は副業だけどねー」

魔法工学専攻。
イリヤも詳しいことは知らないが、そこの教授が大分変わり者だと。
教師になりたての頃、同僚の教師たちから話はよく聞いていた。

「あっ、でも他の子達には内緒だよ?
君だけ特別。ここで会ったのも何かの円だしねー。

魔素樹は枝だけでも相当な価格だからね。
君くらいの歳の子で持ってるのは相当なお金持ちの家の子供くらいなんじゃないかな」

目的地に辿り着けば、いそいそと依頼主の家へと入っていく少女。
そんな少女の後ろ姿をニコニコと見送りながら、若いって良いなぁなんて思ったり。
そして数分も掛からずに戻ってきた少女のはしゃぎようを見れば思わず笑ってしまい。

「あはっ、君は素直で可愛いね。
私のクラスの子達も君達くらい素直だったらなぁ……。

さて、それじゃ約束通り」

フッと、息を吐き、右手を空へ掲げる。
するとどこからともなく、イリヤの右手に現れた立派な箒。
色は褪せつつも、重さはしっかりと、丈夫で洗練されたデザイン。

イリヤは箒の持ち手に跨り、自分の後ろに空いたスペースをポンポンと叩く。
相手が自分の後ろに腰掛ければ、箒はふわりと宙に浮くだろう。

「ちゃんと私の腰に捕まっててね。
慣れてないと落ちちゃう人も居るからさ」

アニス > 他の子たちには内緒と言われて、ぶんぶんと首を縦に振る。
特別という響きも気に入って。

「えへへ、空を飛ぶのはちょっとした夢だったから。
 正確には自分で作った魔導具で空を飛ぶ、だけど。」

素直はともかく、可愛いは余計だろう。
ちょっとばかり、恥ずかし気にはにかんで見せる。
自分も授業の手伝いをしたりするから、扱いに困る生徒については同感で。

「わぁっ、すごい! それって、召喚魔法? それとも空間収納魔法?
 カッコイイ……いいなぁ、箒……」

突如として現れた箒に歓声を上げる。
けれど気になるのは、その原理の方で。
呪文もなければ、陣もなかった。どうやって発動させたのかも分からなかっただけに興味津々で。

箒の後ろを示されれば、そっと……壊れモノを扱うように恐る恐る手を触れる。
魔女さんの後ろで、箒に体重を預け。

「ほんとに浮いてる……箒で浮いてるよ!」

さすがに地面から足が離れた場所では、控えめにはなるけれど。
それでも初めての浮遊体験に、魔女さんの手を掴んで、燥いでしまう。
言われるままに、腰に手を回し。

イリヤ > 「空を飛んでみたいかぁ……。
懐かしいな。私もまだまだ子供だった頃、
君みたいに箒や魔法道具で空を思い切り飛んでみたいって……私の子供の頃の話はいっか」

何かを思い出したかのように語るイリヤ。
しかし途中で言葉を噤み、切り替えるように咳ばらいを一つ。
自分を困らせる生徒も、目の前の少女のように素直な生徒も、
イリヤからしてみれば等しく可愛い存在であることに変わりはない。

恥ずかしそうにはにかむ少女の頭を優しく撫で下ろし、
箒がどこから現れたのかと問われれば、少女に顔を寄せ「ヒミツ」と微笑んで。

「よし、それじゃあ……出発するからね。
そんなにスピードは出さないから大丈夫だと思うけど、ちゃんと掴まってるんだよ」

後ろに視線を送り、腰に手を回されたのを確認すれば、箒は前方に向かって飛び出した。
速度で言えば馬車よりも早い。が、そこまで速度が出ているわけでもなく。
彼女の体に負担が掛からないように、なるべく地上に近い低空を飛ぶように。
路地裏の背高い建物の間を抜け、大通りに出る。
下を見れば、たくさんの人々が行き来する光景が見えることだろう。

「どうかな。初めての箒体験。なかなか気持ちいいでしょ?」

後ろではしゃぐ少女を見つめながら、魔女は訪ねる。
こんな風に誰かを箒に乗せたのは久しぶりだけど、なかなか悪い物ではないなと思って。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアニスさんが去りました。
イリヤ > 【継続予定です】
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイリヤさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にフェリーチェさんが現れました。
フェリーチェ > 王都マグメール内の平民地区にある大通り。
その中でも商店街より職人街に近いとある一角に少女は居た。
ここでは職人や御用商人同士で卸値での売買も行われ、特注品の依頼のための窓口となる店舗も多数軒を連ねている。
最近は学院関係の発注で賑わっているとかなんとか。

「魔石の研磨に金属細工、ベルトなら革細工に服飾も、あと魔道具は調整と……」

一抱えあるカバンを斜め掛けした少女は、いろんな店舗の見本品を一つ一つ覗き込んで歩き回る。
ウィンドウショッピングと変わりない様子だが今日は少しだけ違う。
その懐には、慎ましやかな膨らみに反して、値切りもなしに注文できるだけの温もりがあるのだから。

念願叶って肝心の素材も揃い、特注魔道具に手が届くところにきたことで選ぶ余裕を楽しんでいた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にタマモさんが現れました。
タマモ > いつもの目的もない、気紛れの散歩。
屋根から屋根を伝い、何か面白そうなものでも見えないか。
そんな、周囲を探る視線の中に、それが見えた。

正しくは、何か妙な感覚を発する、少女の存在感。
正直、それが何なのかなんて、分からない、そもそも魔法やら何やらには疎い。
だから、己からすれば、そんな感覚でしか分からないのだが…
何か気になる、己が関わろうとする相手ならば、理由なんてそれで十分だ。

ふわり、屋根の上から身を躍らせる。
着地地点は、そんな少女の真横。

「よ、っと…何か、面白そうなものでもあるのかのぅ?」

音もない着地と共に、周囲の視線が、僅かに向けられる。
それはそうだろう、いきなり上から降って来たのは、異国風の着物姿、狐を模した耳と複数の尻尾を持った少女なのだから。
…だが、それは何事か、と向けられただけに止まるだろう。
この辺りでは、目立つ上に、それなりに色々とやらかしている、それなりに知られた存在だからだ。
知っている者達からすれば、余り関わりたくない、と言うのもあるかもしれない。