2021/12/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイレーネさんが現れました。
イレーネ > 「あぁーー……お店の名前かぁ。確かにナイと困るよね……」

雑多な店が並ぶ中、二階が宿屋、一階が酒場と言ったお店の中。酒場部分の隅の方、思ったより賑わっている中で上手いことゆったりした居場所を確保して。
テーブルにくたっと突っ伏すように腕を伸ばしながら、何やら独り言を漏らす少女の姿。

依頼の品をギルドに届けた帰り道、ひと仕事終えた後にちょっぴり疲れたのか、ふらり立ち寄った店で、やり取りを終えた数枚の書類を指先でつまんでひらひら揺れさせながら、言われてみれば、店の名前、無いの気にしていなかったっけ、などと考えていた。
単に魔道具屋、で名乗っていたから、ギルドで店の名前はなんだい、と改めて聞かれるまで深く考えてこなかったのだった。

イレーネ > 甘いものが飲みたい、けど甘すぎるのもちょっと、などと悩んだ挙げ句、ちょっぴり砂糖多めの紅茶を頼んで飲んでみている。それそのものは場所に似合わず意外と綺麗な器だったけど、やはり雑多な酒場の中だし、それを時折口へ運ぶ少女も妙にだらけているし、優雅には程遠い。

書類をまじまじと上から下へと読み返し、店舗名が空欄な所に再び目を留めて。
お店のことはある程度、と言うかかなり自由に任されているのだけれど、お店の名前、といざ言われると自分で勝手に決めるわけにもいかない。
と、思ったのだけれど。

「オーナー、こっちで好きに決めていいですよって、それはそれで困っちゃうよねぇ」

放任主義と言うか、そもそもあの人が妙にぼんやりしていると言うか。店の名前って結構大事なんじゃないかと思うけど、二人で良いのを決めてと言われたからには考えるしかない。
二人で、そう、妹とも相談してみなきゃね、と自分によく似た顔を思い浮かべつつ、むしろ完全に妹に命名権をぶん投げてしまいたい、と言う投げやりな気持ちも湧いていた。

イレーネ > 名前ってなにか思いつくだろうか。何かに名前をつけるなんて殆どした記憶がない。
ああ、気だるくて頭が回らない、おやつも欲しい気がしてきた、紅茶だしクッキーとかないかな、と聞いてみれば、あるよ、と出された数枚のクッキー。

「うあぁ、あるんだ……後でこのぶん、運動し直さなきゃだよね、あたし」

しゃくしゃくと口の中で崩れる質感を、美味しいんだけど後が大変、などと言う発想になるのは女の子らしい部分であったかもしれないが、だらけた姿はどちらかと言うと酒を片手に肴をつまんでいるような様相に近かった。

「名前、名前……いっそミストローズでいいんじゃ――いやでも安直すぎる? あたしより、エネリの方が名前付けるのとか得意よね、きっと。やっぱり丸投げしたいなぁ……でも、あの子のことだから、あたしが決めた名前がいい!とか言いそうだし」

妹に聞いてみるのを頭の中で想像してみる。まったく他意はなく、きらきらした目でこっちの考える名前を聞いてくる姿がありありと浮かぶ。姉の立場が、つらい。やはりテーブルに突っ伏すはめになる。

イレーネ > オーナーはこっちで決めていいと言う、妹は絶対こっちの考えを聞いてくる、なんて八方塞がりなんだろう、とテーブルに投げ出した腕をうねうねさせながら唸る。二方しか塞がってないけど、なんてしようもない事はすぐ浮かんでくる。どのみち他に選択肢はないけれど。

「……絶対、あの子の方が頭は回ると思うのよね。店のあれこれ覚えるのもあたしよりずっと早かったし。まぁ、うん。あの子があたしにあれこれ聞いてくるのって、信頼の証なのよね……お姉ちゃん、苦手分野も頑張って考えなきゃいけないの、つらいわぁ」

運動する方なら、流石に妹よりも自信があった。体を張って動き回るのは、あの子の為にもずっとやってきたことだし。でも頭を使うのは苦手、そっち方面は任せてしまいたかった。
実際の所、一番頭が回るのは――思いつく中ではオーナー、のはずなんだけれど。先手を打って任されてしまっては元も子もない。

イレーネ > 「あ、でもあの人は……なんかこう、頭が良いって言うより考えてることが別次元と言うか、読めない
トコ、あるよね。あれは――ちょっと怖かったっけ」

空になったティーカップに、まだ残っているポットの中身を注ぎつつ。一瞬、身震いをして。
いつもだいたい掴みどころのない、ふわふわしたオーナーの姿を思い浮かべる。ある日、いつもよりもっとぼんやりしている姿を見たことがある。あれはなんと言うか、別人のようにすら感じて怖かった記憶。ああ、魔女ってやっぱり怖い所は怖いんだ、って後でちょっと泣きそうになった思い出。
自身、それなりに戦ったりもできるつもりで居るけれど、あの状態のオーナーに勝てる気はしない、と言うかそもそも戦いたくない、あれは怖すぎ――と、思い出してぶるぶる震えていたりして。ポットに魔法でもかかっているのか、わりと時間が経ってもまだ温かい紅茶を一口、クッキーも一口。

「あぁ、ほっとする……疲れ気味の時にこういうの、効くよね……」

はぁ、と紅茶で温め直した吐息を漏らし。あたし、今とっても若々しさを失ってないかしら――なんてふと思ってしまって、ちょっぴりほろりとしたりもしつつ。

イレーネ > 色々と考え事があったり、依頼品関係で走り回ったり、それもあってなんだかモヤモヤした気分だったけれど。
休憩しつつ、あまり関係ない方向へ思考を逸していたら、だいぶ落ち着いてきた気がする。
直面している問題は解決してはいないのだけれど。

よし、もうちょっと頑張ろう、なんて。
だいぶだらけていたのを、ぴしっと背筋を伸ばして。広げていた書類をきちんと纏めて仕舞い込み、席を立つ。

「……あ、そうだ。エネリにクッキー、お土産に持って帰ろうかな――これ、持ち帰り用に少し包みでもらえますか?」

店、兼家で待っているであろう妹用に、包んでもらったクッキーの袋。
名前のことはまたじっくり考えてみよう、もしかすると、可能性は少ないながらも妹が先に思いついてくれるかもしれないし。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイレーネさんが去りました。