2021/12/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 年の瀬が押し迫っている頃、方々を走り回っていた小さな商人は王都に戻ったばかり。
己の店の近くの飯屋で、提供速度優先の食事を終えてから小一時間も経過していまい。
食後の一服も差し置いて、足を向けたのは通り数本先にある一つの冒険者ギルド。
ギルド職員が依頼の持ち込みや受諾をする事務的エリアに併設される形で、会員同士の情報交換のための談話スペースもある設えだ。
平素なら窓口は閉じて久しい時間だが、何かと物流と人の流れの生じている昨今の事情を鑑みて営業時間が延長されているらしい。

「嗚呼、ここが仕事仕舞いをしておったら手が尽きてしまうところじゃった。」

助かった…と、幼さの残る顔に安堵の色を浮かべ、カウンターに。
残業真っ只中で多少疲労の色が見えるギルド職員に会釈をし、大人用の椅子にぴょこりと飛び乗って。
明らかに子供でしかない見目ではあるけれど、これまでに幾度も仕事を持ち込んていることから客と認識されるのに支障はなかった。
寧ろ、この場にはそぐわぬ風体だからこそ記憶に残り易いという側面もあろうが。

「夜更けまでご苦労な事じゃ。 故に、早々に用件に取り掛かろうかの。
 タナールの砦方面に急ぎの荷運びをせねばならぬのだが、人足が足らぬ。護衛も足らぬ。
 特に護衛については街道沿いの治安が胡乱故、相応の人選をしてもらいたいのじゃが。」

費用についてはケチるつもりは無いと言い切って、誰か良い人選は無いかと問い。

ホウセン > 一先ず営業時間に滑り込めたことで一息つき、フルフルと身震い。
何かと隙間の多い北方帝国由来の相続の隙間から入り込んでいた冷気を払い出すように。
ともすれば、犬の類の挙動にも似た愛嬌はあろうが、顔立ちそのものは全ての線が鋭利で冷たく整っている。
取り急ぎ声を掛けられそうなギルド所属員の一覧を捲り始めた職員を他所に、黒い瞳は手持無沙汰そうに談話スペースへ。
商談をしている声を掻き消すまでではないが、それなりの騒がしさになっているのは、酒精の働きによるところが大きいのだろう。
聞くとはなしに耳を傾けると、手柄話やら苦労話が酒の肴のようで。

「ふむ、どこぞで聞いたような話に類型できるのは、それだけ頻度の高い事柄と目するべきか、一つの秀逸な話が模倣を生んでおるのか…」

吟遊詩人の歌う冒険譚に、異なる時代、異なる土地の話でも共通する英雄像が見て取れるように。
酒の批評に、特定の言い回しを用いるように。
職員の作業が終わるまでの待ち時間、取り留めのない思考をぼやきつつ、窓口から見て取れる五つの卓を順繰りに見遣る。
腕に覚えのありそうな冒険者が目に留まれば、直接交渉で一本釣りしてしまおうという魂胆が無いでもない。
四人、三人、三人、二人、一人。
同一パーティーで集まっている者、顔見知りと出会って話し込んでいる者、待ち合わせをしているのかもしれぬ者。
ぱっちりとした大きな目を心持ち細めて眺める仕草は、明瞭な値踏みの色を宿して。

ホウセン > その晩、商談が滞りなく成立したかは、また別の話で――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からホウセンさんが去りました。