2021/09/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にナータさんが現れました。
ナータ > 「ふぃー……」
今日は遠方までの配達で遅くなった。
その分、駄賃程度の上乗せはあったが。

帰りがけに雇い主の老婆が告げた。
明日は幼児があるから仕事は休みだ、と。

となると、途端に翌日することがなくなる。
他に仕事のあてなどないのだから。

安宿で寝ているだけになるんだろうな。
そんな自分の明日を想像し、なんとなく宿にすぐに戻りたくはなかった。

安食堂で腹を満たすと、散歩がてらあてもなく平民地区をうろついていた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にマヌエラさんが現れました。
マヌエラ > いかにも魔術師めいた三角帽にローブ、その上からじゃらじゃらと無数のタリスマン。
全身で魔女だと主張しているような女が、ナータの向かい側から歩いて来る。

「こんばんは」

ナータに気づいた女は、夜中の平民地区ですれ違うには少々温和過ぎるような、呑気と言ってもいい声と表情で礼をした。

「どうなさったんですか。お嬢さんのような可愛らしい方が、夜中の一人歩きは危ないですよ」

人好きのする性格なのか、話しかけてすら来るのだった。

ナータ > 幾つかの角を曲がった先に「それ」はいた。
向こう側から歩いてくる存在は、歩を進めるだけで
装飾から音を立てて存在をアピールするかのようでもあり。

「こ、こんばん……は……?」

できれば「厄介ごと」は避けるのがこの街の常であったが
相手から挨拶を向けられた。
その温和な声色からして取って食われること、襲われることはないか、と。
すこしおどおどとした様子で挨拶を返して。

「えっと……あはは、することもないし、お金も……ないし
ふらふらーっと、散歩を……」

手持ちが怪しい事を告げるのは、強盗しても得はない、と暗に告げるかのようでもあり。

ともあれ手持無沙汰な自分であることに少し恥ずかしいのか頬を掻いて。

マヌエラ > 「まあ……それは大変」

散歩しているのだから大変と言う程でもない筈だが。
女はおっとりとした顔立ちに困り眉で小首を傾げる。
長く、うねる金髪が揺れて。

「お散歩もいいですが、早めに休まれた方がいいですよ」

 やはり人好きのする笑顔でそう告げ――

「そうです。
 保護してあげますね」

 "取って食われることはない”
 その印象は、ある意味、完全に間違いだった。

 女がほほえみながら居住まいを正した瞬間、
 そのローブの合わせの間から――無数の触手がどぱっ、と伸びて。
 少女を捕食するかのように絡め取らんと、
 そして己の中へ引きずり込まんとする。

ナータ > 「……?」

想定外の相手の反応、返答に、此方も首を傾げた。
向かい合うように首を傾げた二人。

けれど安穏とした雰囲気は、ほんの一瞬で変化する?

「え?やっ―――ひっ……!」

悲鳴は一瞬であった。
相手のローブの合わせ目から現れたのは、少女を貫かんばかりの勢いで溢れ出た触手。

けれどそれらは少女の周囲で弧を描き、背後から横から、呑み込むようにして。

「やっ……」

もう一つ、否定の言葉を上げようとした少女はそのまま勢いよく
相手の腕―――若しくはローブ、若しくは触手の沼の中に引き寄せられ、その全身を触手が包み込んだ。

マヌエラ > にこ、と微笑んで少女を抱きしめ。
そのまま、己の内側へと。
触手の群れの中へと沈み込ませていく。

同時に、自分自身も、
月の光によってできた己の影の中へ沈んでいって。

とぷん。

誰もいなくなる。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からマヌエラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からナータさんが去りました。