2021/09/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 道端には、辻ヒーラーが鎮座していた。
木切れで作られたらしい、看板と思しきものには『臨時診療所 ―ヒールいたします― 』と書かれた文字が見える。
閉店してずいぶん経つ店舗の壁に看板を立てかけ、脇に椅子代わりの木箱をふたつ並べ、そのひとつに座って道行く人々へと声を掛けている一人のヒーラー。
「ヒールいかがですかー。
痛みに速攻、傷に一撃、病気は瞬く間……立ちどころに身体のお悩み解決してみせます」
一部問題のあるを散らして口角を上げ、一見にこやかに愛想を振りまきながら患者を待つ女の目は、だが笑っていなかった。
普段は冒険者として、パーティに参加してダンジョンへ潜ったり、もしくはギルドから依頼を受けてヒーラーを必要とする現場に派遣されたりと忙しく仕事をしていたのだが、今はその合間。
いつもはオフとして遊興に充てたり身体を休めたりということに使っている時間を投入して街頭に座り辻ヒールしていた。
■ティアフェル > 本来とは異なる診療スタイルを俄かに見せている。
その理由は、
金が要る。
その一言に尽きた。
仔細を云えば実家の4男がやんちゃしすぎてやらかした賠償が降りかかってきたため。ただでさえ子沢山、育ち盛りを抱えて経済的に楽ではない家の財力では到底払い切れず、独り立ちしてどうにか稼げている長女にお鉢が回ってきた。
そのような鉢は速攻で叩き割ってやりたいところだが、そうもいかず。
「あのガキ、今度帰ったら憶えてろよ……大人になったら耳揃えて返済させてやる……」
呪いの言葉を吐き、主に精神的疲労を滲ませながら休みを潰して患者を癒していた。
けれどそんなコンディションでやってるせいか、客足ならぬ患者足はぱたりと途絶えて。街燈の下、休息も労働もできず途方に暮れたような呟きが漏れる。
「患者さん、来ないなあ……」
時間が悪いのか場所が悪いのか、単に回復魔法を必要とする者もいないのか。閑古鳥が鳴き始めて一刻ほど経過。
今ならちょっとくらい安くしたっていい。沢山払ってくれるなら云うことないがちょっとくらいサービスしてもいい。肩揉んでもいい。乳は揉ませない。
怪我人~病人~とついに念じ始めながら街の片隅でヒーラーとしては問題の見られる女が患者を待っていた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティアフェルさんが去りました。