2021/07/13 のログ
エリア > きょろきょろと視線を辺りへ忙しなく巡らせていたが。ふとその視座がこちらへ向いた視線とかち合うように留まる。

「――あら……?」

香油で磨かれた頬にゆったりと指先を当てて小さく首を傾ける。
自然と下方へ向く目線、小柄な少女へと向けているものだからそうなって。
緩やかな瞬きで睫毛を上下させると、そのまま少々思案の間。
ナンパ、などと意気込んではいるが、さすがにその相手に彼女は少々幼いのではないか。そんな懸念を過らせて、うーん…と逡巡したが。
取り敢えず――、

「こんにちは」

目が合った事だし、にっこりと柔和な笑みを投げかけながら何気ない、見ず知らずの間柄でも不審ではない程度の挨拶を口にした。

初心者なのだから、ナンパ相手は案外このくらいの子でもアリかも知れない。などと内心でこっそり考え。
単に自由行動に付き合ってくれる束の間のお友達を探しているだけ。別に取って食う訳でも勿論強姦する気もないのだから至って気楽に。

ティルニア > 思考力がどこか遠くに飛んでいってしまっていて、視線が重なった事にも気がつかない。
なにやら思案するような仕草まで絵になっているなあと、まるで美しい絵画でも観賞しているような気分で表情が緩む。
美術館なんかでこんな顔していたら、それこそ周囲から奇異の視線を向けられたかもしれない。幸い、色んな人が行き交う広場の中では悪目立ちする事もなく。

「……っ!」

そんな感じで、ばれていないつもりの堂々とした盗み見を楽しんでいたら当の本人がこちらへとやってくる。
最初はどこかへ移動するんだろうくらいに考えていたけれど、目があったまま距離が縮まるにつれて、ようやく自分の視線に気がつかれていたのだと、悟った時には遅かった。
柔らかな微笑みとともに声をかけられて、びっくう!と派手に震え上がって。

「あ、あ、あ、あ、あ、こ、ここ、ここ、こ、こっ…ン、ちわっ!」

なにはともあれ挨拶くらいは返さないといけない。そう考えたけれど、とっさに言葉が出てこず、しどろもどろ。
にわとりみたいにココココ繰り返したあと、どもりながらもやっとの思いで挨拶をして。
いきなり喋ったものだから、咥えたままのアイスキャンディがぽろりと零れる。それを慌ててお手玉して、どうにか落とさずに済んだものの、見るからに挙動不審なのは否めないだろう。

エリア > 見られている。彼女のあどけない双眸からの視線はがっつり刺さる。
こちらもきょろきょろ辺りを伺っている所だったしこれで気づかないとか、ただの目くらだ。

故に、早い段階で気づいてさらにそちらを向いたのだが、当人はそれに気づいていないと言う、いっそ小さな奇跡。

ゆったりとした調子で歩み寄ればまだ、数歩はそちらから距離を取った、近づきすぎて無礼に当たらないように、警戒されないようにと考慮したディスタンスでしたが。

声を掛ければ、挙動不審レベルで仰天した声が返って来たので、一瞬きょとん、と軽く目を丸くしてしまった。

しかし、そうか、彼女はまだ幼げで平民の様で急に見知らぬ貴族然とした相手に声を掛けられれば何も後ろめたいことはなくても驚くものなのかも知れない。
そんな風に独自に解釈をしては、っふ、と口元に少し可笑し気な笑みを刷き。

「御機嫌よう、可愛らしいお嬢さん。おやつの最中に失礼いたしましたわ。
ご多忙中ではございませんでしたか?」

まず、ナンパの初手として今お暇かどうかの確認。改めて挨拶を投げかけつつ、アイスキャンディを落っことしそうになった事については謝罪して。

ティルニア > 極々稀に裕福な層からの依頼を受けて薬を作ったりはするものの、本当に稀な話。
その経験の中でも、こうたおやかな人物とのコミュニケーションというものは取ったおぼえがなく、だから余計に慌ててしまう。
じっと見ていた事を咎められたりするのだろうかと青褪めかけそうな場面。
それでも今以上に取り乱さずに済んだのは、変わらず柔らかな物腰で接してもらえたおかげだろう。
とりあえず無事に掴み取ったアイスキャンディを咥え直して、その冷たさで混乱しきった頭を冷やそうとする。
それから口を自由にして深呼吸。盗み見について咎められるどころか彼女の方から謝罪をされると、ちぎれそうな勢いで首をぶんぶんと振って。

「ご、ごご、きげんよおっ、ございます…!いえ、これは…ちゃんと掴めたので、だいじょぶ、です…!
ご、ごたぼお?あ、えーっと…暇、でした!うちは、これからどっか遊びに行こうかなーって考えてた途中で!」

深呼吸の意味があったのか怪しい、ぎくしゃくした口調ながらも元気よく返事。
そうやって声を出しているうちに少しは落ち着きが戻ってきて、もう一度深呼吸をすると、小首をかしげ。

「えーと、迷子さん、とかですか?うちもあんまりこの辺に詳しいとかじゃないですけど、大通りまでの案内くらいなら…」

いかにも上流階級の人といった様子の女性。もしかしたら道に迷って困っているのだろうかと尋ねてみて。

エリア > 小さくて感情を隠す事なく素直に晒してくれている様な少女の様子が、こちらはこちらで妙な安心感を覚える。
子供でも油断してしまうと足元を掬われるのはこちら、なんて事は珍しい事でもない。
しかし、無用な警戒はそれこそ不要と言う様な邪気の無さに、無意識に和んだ様な親し気な笑みを浮かべて。
噛みまくった彼女の返答にやはり、微笑まし気に表情を緩め。

「突然お声掛けしてしまったので、驚かせてしまいましたかしら。お許し下さいませね。
あら、それなら良かった……わたくしもですのよ。これから街で遊ぶ所ですの」

彼女の言葉にどこか嬉しそうに目を細め、そっと観察した処、そちらも連れの類は見受けられず、それどころか道に迷ったのか気遣ってくれて案内、と申し出てもらえばふんわりとまた笑みを深め、小柄な彼女と目線を合せるように腰を少し落として。

「うふふ、ご親切な方。それでしたら宜しければ、ですけれど、少しお付き合い願えますこと?
わたくし、一人では淋しいと思っておりましたの。お連れになって下さる方を探しておりました。あなたの様な可愛らしい方がご一緒して下さるととても嬉しいのですが、如何でしょうか?」

相手にとってはこれまた急な申し出にはなってしまうので、殊更に柔らかな語調と妙な他意はないと示すように鷹揚な笑みを向けて、首を僅かに傾けて見せた。

ティルニア > 遠目に眺めていた時でも視線をひかれるような相手。そんな女性と近い距離での会話となると、盗み見していた時が嘘のように目があわせづらくなった。
一応話す時には相手の目を見るようにしようと意識するものの、たまに照れたように視線を逸らしたりして。
わざわざこちらの視線の高さにあわせるよう腰を落とす姿勢になってくれる優しい対応に、頬をうっすら上気させる。
そんな感じで、多少落ち着きはしたものの挙動不審なのは変わらないまま。

「おつきあい?えーと、うちが、ですか?
えっと、一人で遊ぶよりは誰かと一緒の方がって思うし、それは全然、……!
 あ、えと、うちとっ?あ、ああああの、はいっ!うちなんかでよければ喜んで!」

公園でぼーっとしていたら、つい見惚れてしまうような女性に声をかけられた。その時点で少し現実感が薄れていたから、申し出を受けてもきょとんとした顔。
相手が今語った言葉をなぞるように用件を確認して、やっとの事で自分がお誘いをかけられたのとだと理解すると、また慌てふためき始めた。
それでもおいしい話に食いつくような元気のよさで、ぴょんとベンチから腰を上げると、何度も首肯を繰り返す。

「あ、えっと、ど、どんなとこ行きたいなーとかって、あの、あれば!
遊ぶとことかなら、ちょっとは案内できるかなって思います!」

学ぶための旅なのに遊ぶ事ばかりおぼえている。師が聞けば嘆きそうな話だけれど、今ばかりは少し得意げに申し出て。

エリア > 貴族が主に住まう様な富裕地区では埋もれてしまい、特に目立つ訳でもないと思っていたが、こと平民地区においてはそうでもない様で。
しかし、それが寧ろ今日のお連れをゲットできる切っ掛けとなったのならば一つ僥倖。
はにかむように目を反らす所作が何だか初々しくてやはり可愛らしく映る。手足は細く上背もなく顔立ちも幼い、小動物の様な少女が申し出に戸惑いつつも了承してくれると。さらに嬉し気に笑みを深めて、指先を合せるように両手指を軽く組み合わせ。

「是非、ご一緒いただけると幸いですわ。
良かったですわ、有難う御座います。宜しくお願い致しますね。
――わたくし、エルセリア……いえ、エリア、とお呼び下さい。
お名前を伺っても宜しくて?」

長ったらしい名前は必要ないと判断し、略称を名乗っては今日一日遊んでもらう新しいお友達へおっとりと尋ねて。
元気よく立ち上がる様子、何度も頷く様子に楽し気に相好を崩しながら、

「でしたら、この街に合う様な軽やかなドレスが欲しいのですが、どこかお店をご存知かしら?」

少し目立つし長い裾が邪魔な絹のドレスよりも裾が短くて動きやすい、この地区でのお洒落なドレスに着替えたいと思っていた所を素直に出して、案内役としても優秀らしい少女に尋ねた。

ティルニア > 視線が重なると、照れていたのを誤魔化すようにぎこちなく笑って。そんな事を何度か繰り返しているうちに、少しずつ慣れてきてはいる。
それでも田舎の村から出てきた身にとって、貴族らしい優雅なふるまいが不自然でない相手との会話は非日常的なもの。
彼女のふとした仕草にも目を丸くして見惚れるような瞬間が何度となくあって。

「あ…!名前っ、ええっと、うちはティルニア…、って、いいます!
ティルでもニアでもティルニアでも、あの、好きな感じで…だいじょうぶですっ!」

彼女の方から先に名乗られて、自分がまだ名乗っていなかった事を思い出す。
なにかしらやらかすたびに声が大きくなってしまうせいで、たまに周囲の人からくすくす笑われているけれど、そこまで気を回す余裕はない。
頭の中は、この人をどんな場所に案内したら喜んでもらえるか考えるので精いっぱい。

「服。んんっ…あの、エリアっ…さまに、似合うようなのが見つかるかどうか、ですけど…お店なら!」

したい事を先に申し出てもらえると内心安堵する。
知ってますと、首をぶんぶん縦に振りつつ、少しずつ溶けてきていたアイスキャンディを強引に頬張り、残った棒をゴミ箱に捨てて。
案内の大役を仰せつかったからなのか、少し胸を張った姿勢で、こちらですと歩きはじめて――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティルニアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエリアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエリアさんが去りました。