2021/07/12 のログ
■キルシュナ > 石畳のそこかしこに水たまりが出来る程の雨にも関わらず、濡れた足音一つ立てずに背後から忍び寄っていたらしい長身が、すれ違いざまにひょいとお辞儀するかに腰を折り曲げ濡れネズミの顔を確認する。
「――――にゃは♪ なんや見覚えのある後ろ姿やと思ったけど、やっぱナータちゃんやったか。久しぶりやねぇ、ナータちゃん」
ぴくくっと猫耳を跳ねさせながらにかっと大口に浮かべた笑みで八重歯を覗かせたのは、かつて九頭龍温泉でとんでもない変態プレイを敢行してきた黒猫ミレー、キルシュナであった。
黒髪の前下がりボブ、左の目元に入れられたハート型のタトゥ、褐色肌に爆乳とむちむちの尻肉を蓄えたグラマラスな肢体。
温泉では裸身であったその長躯が纏うのは、エロ猫らしい煽情的な衣装である。
胸元を大きくはだけ、裾をヘソ上で縛った白ブラウスは豊満な乳房の丸みと黒ブラのレース飾りを見せつけて、ローライズのホットパンツからはハイレグの角度もエグイTバックショーツのサイドストリングが覗いている。
そんな卑猥な体躯を大きめの傘で雨から守る猫娘は
「こないな所で出会うたのも何かの縁や。ほれ、こっちきて傘に入っとき」
コートに含まれた雨水がこちらの衣服に染み込む事も頓着せずに、無造作に伸ばした長腕で少女の身体を抱き寄せようとする。
彼女がとっさに反応せぬなら、その小躯は肩を抱かれ、キルシュナの爆乳に頬を密着させつつ大傘の庇護に入る事となるだろう。
■ナータ > 「へ……?」
随分とうろうろとしたか。
さてそろそろ踏ん切りをつけないといけない。
そんな折、素っ頓狂な声が漏れた。
唐突に、自分の名を呼ばれたから。
自分を追い抜いた相手に視線を向けるとそこにいたのは
黒猫のミレー族。
「あ……キルシュナ……さん?」
相手の名を、顔を、そして―――前回であったときのことを思います。
夜も深まり冷たくなった雨など関係ないようにカア、っと顔が火照る。
前回あったのはそう、九頭竜。
そこで自分は―――
「あ、えとそのその、お久しぶり――――ひゃっ……」
恥ずかしさに視線を逸らそうとして、有無を言わさずに。
露出の多いその衣装、素肌に少女のコートが張り付くように当たる。
逃れるでも払うでもなく、その腕に肩を抱かれて、それでも少女は視線を合わせられなかった。
「お、お久しぶりです……」
改めて、挨拶するのが精一杯の様子で。
■キルシュナ > 「くふふふふっ♥ なんやナータちゃん、そない顔赤くして。………は、はぁん? さては前回ウチにされたあれやこれやを思い浮かべたんやな? このスケベ♥」
上手く捕らえる事に成功した少女の熱帯びた頬を、うりうりぃなどといいつつ人差し指でつつく。
そんなにまにま笑いの戯れが、徐々に表情を消していき、代わりに猫娘の美貌に表れたのは怪訝な顔。
つついていた人差し指もそれに合わせて変化して、少女の頬を親指と共にふにふにと摘まんで弄び始める。
「前回もなんや引っ掛かるもんあったんやけど……、なぁ、ナータちゃん。ナータちゃんて、ウチと以前に会うたこと、ある? いや、ウチのおっぱいちゅーちゅー啜って色んなもんぶち撒けてもうた風呂場での出会いの前の事やで?♥」
問いかけの中で赤面する少女の羞恥を更に煽る様な言葉をさらっと加える悪戯を施しつつも、質問自体は真面目そのもの。
なおも小首を傾げつつ、頬の感触を確かめていた繊指は少女の下唇を摘まんで弄び、赤髪の被さるうなじに埋めた鼻先はくんかくんかとその体臭を嗅ぎまくる。
■ナータ > 「やっ……そ、それは、その……」
あからさまに図星な様子を見せるも
言葉は言い淀み。
同意などできるはずもなく。
確かに少女がこの街に来た理由は――――だけれども。
「キ、キルシュナさんとお会いしたこと……?
って、そ、それをそのっ、道の真ん中で口にするのは……
ど、どうかと思いますっ」
突かれていた頬の指の動きが、弄ぶように変わる。
少女が口にしなかった過去の行為の露呈に慌てて首を振るも
過去に彼女と会った記憶……
思い出そうとしても思い当たらずに。
不思議そうに首をかしげるも、そこに鼻先を近づけられて。
「か、かがないで……くださいっ」
今日はお風呂に入っていないから。
雨はシャワーじゃないんです、とでも言いたげに身を捩った。
■キルシュナ > 「にひひひひひっ♥ 別にえぇやん、これだけ雨降っとったらウチらの会話なんだぁれも聞けへんて」
普段であれば、露出度の高いエロ猫と、少し薄汚れてはいても整った顔立ちは十分に可愛らしいと言える少女との必要以上の密着は、すれ違う酔っぱらいからの不躾で猥褻な視線を集めてしまっただろう。
しかし、女二人の身体を十二分に覆ってくれる大きな傘と、降り続く雨の鬱陶しさがヴェールとなって少女の体面を守っていた。
「――――おほぉぉ、この芳しくも生々しい香り……っ♥ いやぁ、ウチ、風呂上がりの清潔一辺倒な匂いよりも、女冒険者の野営3日目くらいの熟成された臭いが好きなんよねぇ―――って、ちゃうわ! そないなアレやなくて―――――……いや、やっぱこの匂い知っとるで! ナータちゃんとウチ、随分昔やけどたしかに会うとる……!」
年頃の少女らしい気恥ずかしさに身悶える小躯を、むっちりと肉付いた褐色の肢体が一層強く抱きすくめ、長い睫毛を閉ざした美貌がなおも深く彼女の体臭を肺腑に吸い込む。
そうしてようやく思い至る何かを記憶の彼方から呼び覚ましたのか、かっと見開いた切れ長の双眸が金瞳を――――大粒の雨の降り続く曇天の夜空へと、それと同じ光景を描き出す記憶の彼方へと向け
「あれは……そう…………せや、こないな雨が降っとって……………」
―――――真面目な人物が同じことをやればさぞ絵になっただろう一幕も、この変態猫がやればコントの前フリの様に見えてしまうのは、日頃の行いが悪すぎるせいなのだろう。
そんな客観的シュール感にもめげず、変態猫の意識は過去へと飛ぶ。
至近距離から見下ろす金瞳が抱きすくめた少女の意思も道連れとして―――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からキルシュナさんが去りました。
■ナータ > 「だ、誰かが聞き耳立ててるかもしれないじゃないですかっ!
それに聞かれてなくてもっ」
一切外連味なく痴態の過去を話しかけた相手に向けてわたわたと手を振って。
確かに雨音と傘で遮られるかもしれないが―――
「だ、だからっ、嗅がないでくださいっ!……
私と、キルシュナさんが……?どこで……?」
この街に来るまで、出身の村はミレーに対して思うところはなく
寧ろ良好な関係を築いていた。
それでもこんな―――騒々しい―――存在が来たならば憶えているはず。
記憶のかなたを呼び起こしたろう相手雨の降る暗い夜空を見上げた後
光った金の眼差しが少女にも向けられ―――
少女は意識を飛ばした。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からナータさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエリアさんが現れました。
■エリア > 今日のお目付け役はちょろかった。
普段はお堅く生真面目な従者ばかり宛がわれて、平民地区など富裕地区よりも治安に問題がある場所に出かける際は必ず付き従って来ては、黙ってついて来るばかりではなく貴族としての振る舞いを少しでも逸脱すれば、あれこれうるさく口出しをしてくる。
――そんな小うるさい侍従は今はいない。いつもの従者に都合がつかなくなり、代わりの者が派遣されて来たものの――ちょっと小遣いを握らせて余所で遊んで来てよろしい、と告げると非常に話の分かるうつけだった為、愛想よく『それでは後程』などと頷き、屋敷に帰還する際にまた落ち合うという運びとなった。
「いつもこうでしたら、気楽に羽を伸ばせていいのですが……。次もあの者に共を頼める様になりませんかしら……」
一人きりの自由行動。そんなここにいる者は当たり前に行っている事すら稀有な事項に含まれる貴族の娘としては、隣にお目付け役がいないというだけの事でかなりの解放感を覚える。
表情も伸び伸びと緩めては、まだ昼日中の街をぶらぶらと自由気ままにそぞろ歩き始めた。
従者と別れた街の広場からは、多種多様なギルドの建物がいくつか並ぶギルド通りから、商店ばかりが立ち並ぶ大通り、飲食店が軒を連ねる通りから裏に逸れれば遊興施設が数立ち並ぶ、地区でも少々治安に欠ける裏通りに出る。
広場の真ん中で、さて、どこに行こうか、と放射線状に伸びる三叉路の向こうを眺めてのんびりと小首を傾げ。
「ギルド……にはさっぱり御用はありませんし……行くとしたら商店街か、飲食店街ですかしら――屋台街で食べ歩きなんてアツいですわぁ……。
それから、商店街で流行の小物を手に入れて……いっそドレスも買って着替えてしまいましょうか」
普段からしたくともなかなか自由にならなかった事を手あたり次第に浮かび上がらせては実行しようと弾んだ声で呟き。
「さて――それには、口うるさくないお共が欲しい所ですわ。
ええ、お友達が。
どなたかに声を掛けてみましょうか、ナンパ……と言ったかしら。初めてですが、上手くいきますかしら」
――遊びに付き合ってくれる様な方を現地調達してしまおう、と世間知らずな女は大胆不敵な思考を閃かせて、うきうきと辺りを見回し、広場を行き過ぎる方々を物色し始めた――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティルニアさんが現れました。
■ティルニア > 薬師としての腕を磨くため故郷から遠い地への旅を命じられた。
とはいえ遊びたい盛りの年頃。人も物も多い王都で暮らしていれば、どうしても勉強ばかりに集中できなくなってしまう。
そんなわけで重たい学問書を放り出し、日も高い時間から街中をぶらぶらと歩き回っていた。
途中、小さな公園でよく冷えたアイスキャンディを購入して、ますます気分は上向きになり。
色々な方向へと道を伸ばした広場までやってくると、ベンチに腰かけながら、これからどこへ行こうかと思案中。
アイスキャンディを咥えながら、行き交う人々をなんとなく、ぼーっと眺めていたけれど。
「はぇー……」
ふと目についた一人の女性に視線が釘付けになってしまった。
平民地区で見かける人が着ているようなものよりも、明らかに仕立てのよさそうなドレス。
薄青色の肌触りがよさそうな生地と、緩く癖がついた蜂蜜色の髪とが作り出す彩りに、思わず見惚れてしまう。
周囲から見たら、ちびっこが間抜け面をさらしているとしか思われているかもしれない。