2021/05/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
■トーラス > 王都に幾つか存在する冒険者ギルドの支部の一つ。
とは言うものの、その実態は冒険者が客として集まる酒場兼宿屋であり、
申し訳ない程度に店内の掲示板に日銭を稼ぐための依頼文が貼られているに過ぎない。
それでも、1階の酒場では冒険者を始めとした荒くれ者や、彼らを相手に春を鬻ぐ娼婦、
その他にも飲食の為に訪れた一般客達にて相応の賑わいを見せていた。
その賑わいの中心、客達がそれぞれの卓にて同席の身内や仲間と思い思いの
時間や食事を愉しんでいる中で、独り、周囲の卓の客にちょっかいを掛ける中年男の影が一つ。
本来であれば、嫌われそうな行為であるが、誰も文句を言わず、また、店主も黙認する理由は至極単純で。
「いやぁ、運が良かったぜぇ。冒険の最中にコカトリスの卵を見付けてよぉ。
貴族の美食家が高値で買ってくれたぜ。アレは鶏と蛇のどっちの卵なんだろうな?
と、んん?グラスが空じゃないか? マスター、こっちの人に俺の奢りで同じのもう一杯。ほら、乾~杯~♪」
等と、傍迷惑ながらも、明快にて、周囲の客達に見境なくも奢りを振る舞う故。
奢られた方は多少困惑するも、ただで酒が飲めるとあって強く文句を口にする事もできず、
店主も彼のお陰で儲かる上に支払い許容額も抑えている為に、この行為を見て見ぬ振りをする始末。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にロクサーヌさんが現れました。
■ロクサーヌ > 腕に覚えあり、百戦錬磨のツワモノから、駆け出しの新人冒険者まで。
今宵も雑多な人々で賑わうギルドに、己が訪れるのは二回目だ。
ギイ、と体重かけて扉を開き、依頼が掲示されている壁を一瞥したが、
とりあえず、まっすぐにカウンターへ向かい。
「おっちゃん、この前のあれ、どうなった?
いいの、見つけてくれたかい?」
勢いつけて高いカウンターに取りつき、上体を引きあげたら、
爪先立ちで、ほとんどぶら下がっているような格好になった。
尋ねた相手は己に気づくと、古傷の目立つ顔を軽く顰めて、
『あそこの壁に貼り出してやったけどな、お前、もう少し出せねぇのかって、
館のババアに言っとけよ。
あの値段じゃ、余禄狙いのド新人しか捕まらねぇぜ』
「うっさいな、ガメツイこと言うなよ、おっちゃん。
マダムのこと、陰でババアとか呼んでるのバラしたら、
アンタ、今度から料金二倍増しになるよ?」
ぽんぽんと言い返す、己の用事は館のマダムに頼まれた、
求人広告の首尾を確かめること。
本当ならば、掲示を自らの目で確かめるべきなのだろうが、
あいにく、娼館育ちの己に読み書きの知識はない。
広告は確かに貼られているが、上から別の紙が貼られているし、
『娼館の用心棒』にしては少し安すぎるしで、見通しは明るくなさそうだ。
もっとも、安いのは目の前の男が、中間搾取する気満々のせいだったが、
残念ながらそんな裏事情も、己には知る由もなく。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
■トーラス > 食堂や酒場も兼ね備えて夜も冒険者達で賑わいを見せるギルド。
荒くれ者達が木製のグラスを掲げて麦酒を酌み交わす中、
周囲の飲んだくれ仲間と陽気に酒を呑む中年冒険者の姿がある。
まだ泡の残るぬるい麦酒で唇を示していれば、仲間の一人が、
興味深そうに此の場には余り似付かわしくない訪問者の姿を指し示し。
「……んんっ? 何だありゃ?」
カウンターにて男相手に何やら話している様子の小柄な子供。
少年、否、少女の姿を視界に収めると猫をも殺す好奇心を抑え切れず、
周囲の仲間が留める声も耳に入れずに、男の示す依頼の掲示板の前へと足を運び、
掲示板に貼られた依頼文や広告に視線を巡らせていけば、
他の依頼の下に追いやられた紙片を掴むとピンを外して中身を眺め。
「へぇ、娼館の用心棒か。確かに此の値段じゃ相場に足りてねぇな。
お嬢ちゃんが、依頼を出してるのはこいつで間違いないのかい?」
紙片を片手に抓み、ひらひらと揺らしながら、男と少女の許へと近付いていき。
■ロクサーヌ > 『あぁ?あれをババア以外、どう呼べってんだよ』
ますます顔を顰めて返すカウンターの男に、むっと眉を寄せて口を開いた刹那。
背後からかかる声に、カウンターへ半ばぶら下がった格好のまま、首だけ回して振り返り、
「……そう、だと思うけど、字、読めないから分かんないよ。
ていうか、なんだい、アンタ」
相手が手にした紙を、申し訳程度に一瞥して。
くちびるを尖らせながら、無愛想丸出しで問い返す己の頭へ、
カウンターの男がぺちりと平手をくれた。
『こら、なんだその態度はよ。
――――確かにソイツで間違いないが、値段の交渉は受けてないよ。
何しろ、ここんちのババアは業突張りだからな』
「いって、……あ、こいつ、またババアって言ったな!?
出入り禁止にするぞ、アンタ!」
再度、カウンターへ向き直ってそうわめく、元気だけが取り柄のような子供だった。
■トーラス > 「俺か? こう見えても冒険者だ。トーラスってんだ」
無愛想な貌で問い返してくる少女の反応に口角を弛め、
彼女と男のまるで親子のようなやり取りに、かかっと嗤いを洩らす。
値段交渉の余地はないとするならば、他の冒険者では引き受けたがらない報酬に、
ふむ、と頷きながら、カウンターに向き直る少女の体躯を眺め。
「まぁ、俺も娼館には度々、世話になってるからな。
依頼を引き受けたら、お前んとこの店で遊ぶ時には贔屓にしてもらえそうか?
だったら、この依頼、俺が引き受けても良いぜ」
先程迄、一緒に卓を囲んで酒を酌み交わしていた冒険者仲間は、
互いに顔を見合わせると肩を竦めて苦笑めいた表情を滲ませる。
このギルドでも十年以上のキャリアを持つベテランである癖に、
未だに薬草採取やドブ攫い等の初心者向けの低報酬の依頼を受けたがる悪癖持ち。
流石に相場の悪い依頼には付き合い切れない、と勝手にやってくれ、と言わんばかりの態度を滲ませて。
■ロクサーヌ > 告げられた名前を、己はほとんど右から左へ聞き流していた。
しかし、色よい返事が返ってくるとなれば、もちろん話は別である。
ぶん、と勢い良く、冒険者だという男の方へ顔を向け、
「……ホントかい?
えっと……そりゃあ、もちろん、アンタの働きが良けりゃ、
マダムだってそのくらいの融通は、きかせてくれると思うけど」
たん、とカウンターの側面を蹴って、勢いをつけて着地する。
身体ごと向き直って相対し、上目づかいの眼差しが、値踏みするように男を見据え、
「……アンタ、……えっと、トーラス、っていったっけ。
アンタ、腕は確かなのかい?
仕事そっちのけで女の尻追っかけるようなヤツなら、コッチがお断りだよ」
生意気言うな、このガキが、などと、背後からかかる声には知らんふりだ。
なにしろ、これはマダムから託された大事な仕事。
変なのを掴まされてくるわけにはいかないのだ、という意気込みは、
偉そうに腕組みをした態度からも伝わる、かも知れない。
■トーラス > 値踏みするような視線と生意気な声を向けられると口端を弛める。
髪と不精髭を伸ばして、布のシャツに藍染のズボンという恰好は、
他の筋骨隆々の荒くれ者や酒場でも鎧を脱がない見栄っ張りに比べれば冴えない風貌に映るかも知れず。
一回り以上も年上の冒険者相手に威勢の良い生意気な啖呵を切る様を愉快そうに眺め。
「ははっ、威勢のいい嬢ちゃんだな。安心しろよ。
お前んとこのマダムが結構な熟女ならば、俺の名前を聞いた事があるかも知れない程度にはな」
彼女の年の頃や最近の若い冒険者には浸透もしていないかも知れないが、
かつて10年近く前の全盛期には名を馳せた事もある冒険者の端くれ。
相手の娼館の主が、この街で根を張っているならば、噂程度は聞いた事があるかも知れない、と豪語する。
カウンターの男も、ある程度以上の腕利きである事は保証するような素振りを見せる筈で。
「何だったら、このまま、娼館に案内してくれ。
マダムに直接、面接して貰えりゃ、話も早いだろう?」
使い走りに過ぎない少女と此れ以上、この場で問答しても大した意味はあるまい、と。
懐からゴルド硬貨を取り出すとカウンターに呑み賃として置き残して、
相手が勤める娼館へと案内してくれるようにと彼女を促して――――。
■ロクサーヌ > 子供ならではの威勢の良さ、無知であればこその無鉄砲。
それを笑って許す、相手の度量の大きさが、己にとっては幸いだった。
どうやらある一定の年齢以上の人々には、名の知られているらしい相手。
大きな瞳をぱちぱちと瞬かせ、背後から何やら囁いてくるギルドの男を、
ちら、と振り返ってから、
「ふうん、……ずいぶん、自信ありげだね。
まあ、いいけど………マダムに会わせりゃ、はっきりすることだし」
マダム、と己が呼ぶ娼館の主は、恐らく目の前の男より、いくつも年上だ。
この街生まれ、この街育ち、きっと相手の名を聞けば、
すぐにあれこれ思い出してくれるだろう。
己の目には、少しばかりオジサン過ぎるようにも思えるが、そこは、まあ。
「んじゃ、ついてきなよ、トーラス。
おっちゃん、………マダムに、よぉく伝えとくからね」
にぃ、と口端をつりあげて笑う表情も、どちらかと言えば少年じみている。
うっせえ、クソガキ、とっとと帰れ、などという罵声を背にして、
先に立ってギルドを後に、冒険者の男を連れて、夜の街へと踏み出した―――――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からロクサーヌさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にギデオンさんが現れました。
■ギデオン > 平民地区の一画、喧騒に満ちる酒場は今、戦場から帰陣した兵達で占められていた。
命のあること、そして首尾よく報酬を得た傭兵達の中に…その男の姿もあった。
戦場では、随所に竜の意匠が施された真紅の甲冑を纏っていた。
今は、白いブラウスに漆黒の狩猟ズボンという、まるでお忍びの貴族とでもいうような姿だ。
戦場にて報酬を得、王都へと帰陣する道すがら、周囲に居流れていた傭兵達が気づけば、いつの間にかその男は軍装を解き、身軽な姿で旅程を稼いでいたのだった。
ひとまず、懐は暖まった。
人の世に混じって暮らすうちに、すっかりと馴染みとなってしまった酒を今宵も嗜みながら、その男は兵達の喧騒からは距離をおき、酒場の一隅にて一人酒杯を傾ける…。