2021/04/08 のログ
■ギデオン > 薄暗がりの一角から、騎士は興ありげに酒場の喧騒を眺めていた。ゆったりとこの席に落ち着いてから、二杯ほど騎士は酒の追加を給仕に告げた。
それでも、騎士が前もって亭主に渡した金額は十二分に過ぎるものだ。これはよい客だと、亭主がほくほく顔になれば、給仕とて悪い気はしない。
騎士の許へは、良く冷えた酒がすぐにも運ばれてくるのだった。
だが、やはり何も食事をしようとはしない。
ただ静かに酒場の様子を眺めながら酒杯を傾けているだけの様子を、少しばかり店が落ち着いたからか、亭主もまた興ありげに時折眺めていた。
尤も、酒場にしてみれば手間と仕入れに値が張る料理を頼まず、こうして酒ばかりが進む客というのは、実入りがよくて歓迎なのだ。
である以上、余計な詮索は無用と、亭主もさほどはこの騎士風の男を気にしない。
そしてそれこそ…この男が望むところでもあった。
己が風変わりな客であることは十分に自覚がある。
ならば、そのような客がこうして落ち着いて長居するには…何より酒場の亭主に気に入られるのが肝要と。
そう、弁えての振舞だった…。
■ギデオン > やがて。
この魔都の夜も更けてゆく…。
賑わい喧騒に満ちていた酒場からも、一人二人と酔漢が去り始める頃合いが訪れた。
騎士風の男もまた、ほどなく席を静かに立った。
居流れる酔漢達を縫い、程の良いところで店を出る。
眠らねばならぬ身でもなく、休まねばならぬ身でもない。
暑さも寒さも苦にならぬというより感じぬと言ってよい身体だ。
そんな騎士は、今宵をどのように過ごしたものか…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からギデオンさんが去りました。