2021/03/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 商業港」にビョルンさんが現れました。
■ビョルン > 遅れて第二便が到着すると聞けばまた港へと荷馬車を走らせる。
荷役の雇い人に腕の立つ部下。
再検分は昨夜の差し押さえでほぼ回収できる見通しが立ったが。
──今夜の分は利子分と報復分である。
「面倒になる前にとっとと運べ」
舐め切った債務者が王都で商売できなくなる迄。
僭越なれど商売の厳しさを教えて差し上げよう。
昨夜と同じ旗を掲げた輸送船から積み荷を己の荷馬車へ積み替える。
その一切を取り仕切り。
ご案内:「王都マグメール 商業港」にゲーゲン・アングリフさんが現れました。
■ゲーゲン・アングリフ > 「……」
港の開けた場所を覗き見るように。
中年男は、建物の影に隠れながら、かすかに顔を覗かせていた。
男が依頼されたのは、荷物の回収。
なぜそのようなことを、と疑問に思っていた男だが。
その理由は港についてすぐにわかった。
「……なぁに運ばせたのか知らないけれど。
厄介なことになってるじゃあないですかぁ……」
目の前で手際よく進む荷物の差し押さえと積み直し。
その様子に、男はため息を吐きながら、頭を両手で押さえ、しゃがみこむ。
明らかに自分の力量を超えた仕事ではあるが。
受けた依頼を放棄するわけにもいかず……男は、のそのそと歩き始める。
「……えぇ~、っと。すみませ~ん。
その。貧民地区の酒場宛の荷物があるはずなんですけど……」
力ない笑顔を浮かべたまま、ぺこぺこと頭を下げつつ。
ゆっくりゆっくりと近づきながら、そう問いかける男。
表情には、ある種の悲壮感のようなものすら浮かんでいた。
■ビョルン > 二頭立ての荷馬車が3台。
そこへ荷運びや用心棒を合わせて数名ずつ。
約20人ほどの数の暴力で港の一角を制圧し、積み荷の差し押さえを行っているところ。
はじめ、倉庫か何かの陰にいたのだろう。
男が近づき、遠慮そうに声をかけてくると視線を相手へと向けて上から下へとその人相風体や所持品を見定めるような視線を投げかける。
頭を下げる様にはあからさまな戦意はないと受け取る。
「ああ、あるかもね。──で、」
まずは、この男が確かにルチアーノ商会の雇われ者でないことを見定めねばならぬ。
右手を刀の柄に掛けながら、鋭い視線を再び投げかける。
老獪な業師の擬態なれば、相手をするに不足はなかそう。
■ゲーゲン・アングリフ > 男も、ある程度は立ち回りというか……。
どうすべきか、というのは理解しているのだろう。
遠くから声をかけつつ、争うつもりはありません、という気配を匂わせるのだが。
「え、っと……」
集団の中で、明らかに雰囲気の違う若者の返答に。
男は足を止め、困った、という風に笑顔を強め。
頭をぽりぽりと掻く。
次に何を言えばいいのか、と考えている内に、若者が刀に手を伸ばしたので。
男は両手を上げて声を張る。
「ああああああのっ!
私、貧民地区の酒場の雇われでして!
そのっ、荷物を何とか返していただけたら嬉しいのですが!」
なんというか、必死の訴えであった。
表情からはついに笑顔が消え、焦りと困惑、祈りといった気配が滲む。
当然、男はその場から近づいたりなどしない。
若者はじめ、大勢の人間を刺激などしたくないからだ。
■ビョルン > 男の表情の変化。
降参のポーズから上がる震えたような声での言葉を聞けば、ふう、と息をつきながら刀に掛けた手を下ろす。
「──返す、とは人聞きが悪い。
オジサンのボスはルチアーノの店を通して、舶来の何かを取り寄せた──と、ここまでは合ってる?」
向こうの商会からの雇われでないのであれば、不当な私掠に見えるのも詮無いことかと苦笑うような声音が混じる。
「で、合ってたとして。
入金前なら、値段交渉から納品までウチとやり直してくれねぇかな」
荷主には取引相手が変わったということ──だ。
大粉声でのやり取りは性に合わず、ホールドアップした相手にちょいちょいと手招きをする。
■ゲーゲン・アングリフ > 懸命の訴えが、多少は効果を発揮したか。
若者の気配が、かすかに穏やかなものになれば。
男は、両手を上げたまま、はふぅ、とため息を吐く。
「……あ~……。
そう、ですねぇ……。多分、その店を通してるんだと思います」
詳しい事情は聞いていない男だが。
酒場の店主からの依頼と、今の港の状況を併せて考えれば。
恐らくそうなのだろう、という結論へとたどり着く。
「……はぁ、そうなりますよねぇ」
おおよそ、そういう話になるだろう、ということは男にも予想はできていた。
なにせ、ここまで大々的に積荷を押さえられているのだから。
目の前の若者の部隊……というか組織にも、事情があるのだろう。
そういったことを考えられないほど、男も愚かではなかった。
やや諦め気味になった男だが。手招きをされれば。
「……」
恐る恐る、といった様子で、両手を挙げたまま、若者へと近づいていく。
■ビョルン > 「幾らくらいの物なンだろ?」
2日に渡り輸送船の積み荷を2便分、まるごと差し押さえようとしている今。
余程の品でない限り、渡し渋る意味もない。
手招きされて近づいた男。そこへ向き合えば肩へ、ぽんと両掌置いてから全身へと撫で下ろそうとする。
「ボディチェック致します、ご安心ください当方にそういった趣味は御座いません。
脇腹失礼します、靴も確認致します、股の下に触れますそういった趣味では御座いません」
事務的に機械的な言葉を吐きながら通り一遍に触れれば大きな刃物や暗器を携帯していないか確認しようとするが、何か見つかるだろうか。
■ゲーゲン・アングリフ > 「さぁ……。
詳しくは聞いてないんですよ……」
中身が何か。そして、どの程度の価格なのかも聞いてはない。
せいぜい、どんな箱に入ってるか、くらいしか聞いてないのである。
「あ、あぁ。そういう……。
えっと、こちらこそ、申し訳ないです」
ボディチェックを受けながら、頭を下げる男。
こういうとき、むしろ自らボディチェックを受けることを提示しなければいけないのだが。
あまりの緊張に、男の頭が働いていないらしい。
■ビョルン > さしたる危険物が発見されなければ、相手のホールドアップも解かせる。
そうしてから、荷をいっぱいに積んでさも出発しようという1台を手の所作で止めて。
「特別だよ。
見に行こうじゃぁないか」
相手の肩を押して荷台脇に進む。
1台目は異国の食品や衣服といった軽い荷物が半分、奴隷と思しき若い女が数人。
「ありそうかい?」
自ら荷台を覗き込みながら問う。
■ゲーゲン・アングリフ > ボディチェックが終われば、手を降ろすように指示され。
そこで、ようやっと。男は安堵したような表情になる。
「あ、はい……。
なんか、気を使っていただいて申し訳ないです」
肩に手を置かれ、優しい言葉をかけられれば。
男は、ペコペコと頭を下げつつ、荷台へと近づいていく。
そうして、荷台を見れば男は視線を左右へ走らせ。
「えぇ、っと……。
……あっ……」
そうして、荷台の中。小さな木箱を見つける。
木箱に小さな、紅い布が貼り付けてあるそれを指差し。
「それ、ですね。
……一緒に中身を確認していただいても?」
そこで、恐る恐る若者にそう問いかける男。
■ビョルン > 「ああ、たまにはね」
荷台を一瞥しては、目当ての荷物を探している男の横顔を観察する。
そこに不自然な様子は感じられない。
指差された荷物を拾い上げれば箱を表返し裏返しチェックする。
何らかの文字があれば覚えておくだろう。
一度顔の横へと木箱を持ち上げて耳を近づけ、その後揺らしてから蓋に手を掛けて開いて相手へ見せる。
中身は何だろうか。
■ゲーゲン・アングリフ > 「はい、申し訳ないです……」
たまには、という言葉に更に申し訳なくなる男。
一緒に荷台を覗き込みながら、男は手早く荷物をチェックし。
「……」
若者が箱を確認するのを、息を飲みながら見守る男。
そうして、箱を差し出されたのなら。
男はそれを手に取り、べぎっ、と開封してみる。
「……」
中に敷き詰められた藁を押しのけると……。
中に入っていたのは、デカイ干し肉と、何らかのビンであった。
男は、それを若者に差し出し、確認してもらおうとする。
■ビョルン > 箱の中から現れたのの、何やら食品であることはわかる。
それ以上のことはわからず緩く首を傾げる。
「──受け取るべき荷物で、間違いないか?」
問い掛けてから、返答があればその荷馬車を港から発たせる。
「んー……、領収書なくていいなら100ゴルドでいいや」
態々港まで取りに来るとはどんな荷物だろうと思ったが。
食品であれば鑑定も値段もつけづらい。
適当に二束三文な値段告げて。
■ゲーゲン・アングリフ > 若者に中身を確認してもらうものの。
男も、ビンの中身は分からないので、首をかしげる。
「えぇ……箱に目印があったので。
……えっと……」
ビンのフタをきゅぽ、と開けて匂いを嗅げば。
中身はどうやら、香辛料のようであった。
「……はい?
い、いや、いいんですか? そんな、お安い値段で……」
唐突に。若者が格安の値段を提示してきたので。
男は、逆に驚きうろたえることになる。
しかし、それで荷物が回収できるのならば、と。
男は懐から100ゴルドを取り出し、若者へと差し出す。
■ビョルン > 船便で丁重に輸送されてきたのを鑑みれば、希少肉のハムとそのためのソースあたりだろうか。
荷物が間違いないようなら、頷く。
「ああ、気候が変われば食べ物は足が速くなる。
押さえたところで叩き売りに近いことをして捌くか──…」
または、食い詰めている貧民地区の家に配るくらいだ。
「まぁ、誰の物かわからなければその値段で売るつもりだから何な問題はない──毎度あり」
金を受け取りながら言い添えて、それをポッケに仕舞う。
そろそろ次の荷馬車の支度が整いそうだ。
「俺ァBB商会って所の頭、ビョルンだ。
おじさん、名前は」
貧民地区と男は言ったか。
ならば今後も顔が合う機会があるのやもしれぬ。
素っ気ない口調で問いかけ。
■ゲーゲン・アングリフ > 「そういって頂けると……」
助かります、といい。頭を下げる男。
なんとか無事に依頼をこなせそうで、気分も少しは落ち着いたようであり。
力無いとはいえ、男の表情に笑顔が浮かぶ。
「いえ、こちらこそ。
お手数かけてしまい、申し訳ないです」
金を相手に渡し、再度頭を下げる男。
荷物を小脇に抱えたところで、相手に名乗られれば。
「……ビョルンさんですか。
えっと、私はゲーゲン・アングリフと言います。
以後、お見知りおきを……」
名乗られた以上、自己紹介しないわけにはいかない。
なので、男も名乗り、相手に笑顔を見せる。
■ビョルン > 疲労が土台を支えているような笑顔を見ればふすっと笑うような息をひとつ。
「互いに仕事が早く済んで良かったぢゃアないか。
──のんびり水浴びにでも行くといいよ」
そう吐けば、名乗りにはこちらこそ宜しくと頷く。
「それでは、持ち場に戻るとしよう──いい息抜きになったよ」
己が立っていた位置にはそれなりに腕の立つ部下が警邏の姿勢で立っているだろう。
男へと軽く手を振ってそこへ戻れば、この日は他に何事もなく積み荷の移動を終えたことだろう。
■ゲーゲン・アングリフ > 「水浴び、ですか……。
いいですね」
はぁ、と。相手の提案には、やや実感の湧かないような声。
どうやら、水浴びという行楽と自身が結びつかない様子だ。
「本当に、ありがとうございました。
では、私はこれで……」
息抜きになった、などと言われれば。
ふぅっ、と思いため息を吐き、その場を後にする。
……その足取りは、やはり緊張からか。
かなり、足早であった。
ご案内:「王都マグメール 商業港」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 商業港」からゲーゲン・アングリフさんが去りました。