2021/03/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 商業港」にビョルンさんが現れました。
ビョルン > 暗くなり始めた王都の空の下。
二頭立ての荷馬車が3台連なり、港湾地域へ駆け入ってくる。

ちょうど一艘の輸送船が積み荷を降ろしているところへぴたりと着ければ荷台からはそれぞれ数人ずつ男たちが飛び降りた。

「その荷は全部、うちのだ──離れな」

船が掲げた旗を確認すれば帯刀したスーツ姿の男は荷下ろしを仕切っていた者に低く告げる。
そうして手振りで荷馬車から降りた男たちに積み荷を移せと告げる。

事業拡大の金子を己の金庫から借り出し、のらりくらりとした口上で焦げ付かせ返す気配のない商会の商品だ。
全て差し押さえる心算。
そして、そういった落とし前を遂行するのが今日の己の任務であった。

──邪魔すれば斬る。

それが雇われの用心棒であろうと商人本人であろうとも。
右手は刀の柄に掛け、警戒している。

ご案内:「王都マグメール 商業港」にタピオカさんが現れました。
ビョルン > ダイラスからバフートを経由して都の港に来た船らしい。
舶来の品は異国の美術品や装飾品、飲食物と多岐に渡った。

「──奴隷もか、構わん。
 荷物は丁寧に扱って一切の例外なく持ち帰る」

恐らく、王都で売り捌けない物はない。
男たちの仕事を、終始眺める。

荷馬車が一台出発したようだ。

タピオカ > 茜色が迫る頃。
王都の腐土に根を張り、着実に勢力を蓄えている血盟家の若衆が金を返さない不埒者の所有物を差し押さえている最中。
密かに、港湾地域にてその様子を眺めるフード姿の小さな人影があった。

まずは一台目の荷馬車、比較的重量の軽い絵画や名家の紋入り柄杓、黄金の燭台などが入った荷馬車が出発した、その数秒後。荷馬車を引いていた一頭の馬が突然暴れだして横転。もう一頭も手綱が絡まった状態で後ろ足立ちになり、負担のかかりすぎた車軸が割れ、馬車は折れた車輪を引きずって斜めのまま停止した。

若衆頭の率いていた部下の男たちが地面に転がり、毒づいて身体をさすりながら、めいめい帯びた武器を構える。
その数人が見据える先に、ほっそりとしたフード姿の人影が何の構えもとらずに立っていた。

「驚かせてごめんね。どっちが悪い事をしてるかわからないけど、僕はあの船を持ってる商人に雇われてる用心棒なんだ。
だから、手をひいてくれないかな――」

夕日を背にしたシルエットが、少し先で回収作業を指揮する若衆頭を見つめ。――ひゅっ。
言葉が終わる前に、小ぶりのククリナイフが前回転しながら金髪碧眼、線の細い、まだ少年の域を出ない相手の額へと一直線に飛ぶ。

瞬殺ではなく一種の威嚇だ。
よほど注意がそれていない限り、対処は叶うだろう。

ビョルン > 今しがた出た馬車に起きた異変。
瞬間のみ驚いたような表情を向けて振り返る。

確認した先、馬車は事故を起こしたわけではなくどうやら下手人がいるらしいと見る。
そうしてその小柄な下手人が言葉を終えるとともに発した閃光。
投擲であると気づけば半歩横へ体軸を移動して避ける。背後に落ちる刃物には目もやらず。

「こちとら、正当に債権を回収しているだけ──なんだが、聞く気はねェって事──…」

そう利きかけた口を止め、己への攻撃に色めき立つ男たちへ緩く手を振って治める。
あくまで商品は回収する所存で、待機中の3台目を指差せば荷役する男たちはそこへと荷物を移し始めるだろう。

「──うちの奴らにも手を出さないでもらおう。
 あとお馬さんにもゴメンナサイ言うように。
 どうしても止めて欲しいなら、俺を斃しにおいで」

左手を軽く広げ、右手でちょいちょいと手招いて挑発の仕草。

タピオカ > 「うん。だって、事情を聞いたらお仕事にならなくなっちゃうからね。僕は検事でも裁判官でもなくて、用心棒。
正しさの神様がどっちについてたかは、また後で。
――へえ。今のナイフを半歩横で避けられるんだ」

手下の数は荷馬車の数から10人程度といったところだろう。
相応の手練だとしても人間相手で、夕闇の港湾地区という視界の聞きづらく建物の多い状況なら1人でさばく自信があったものの、彼が緩く手を振った事で対集団戦は避けられた。
フードの影の奥から、まるで立ち話のような気軽さの口調。
そして、それなりに加減なく投げたナイフを見切った相手の動きに瞳細め。

「そっちのみなさんが手を出さなくて、かつ、荷物を置いていってくれるのなら手は出さないよ。それ以外は保証しないかな。
あはは、お馬さんの手当はちゃんと僕が面倒見るから。
――それじゃ、遠慮なく」

馬の足止めは、自分でも心が痛んだ。
荷馬車を逃してしまっては用心棒にならないからそうしたが、自分も遊牧民の端くれ、乗馬にも馬にも尊敬の念はある。
挑発の仕草に緩く微笑むと、まっすぐ。
夜風になって距離を詰めた。足音は建物に反響して姿よりも遅く響き、剣が届く間合いに入ると走りながら一瞬で左手で曲刀を抜き払う。その曲刀を振るわずに――フェイントで、握った右の拳を相手のみぞおちに見舞おうと。

ビョルン > 詳らかに経緯を語ろうと、この手合いは退かぬのだろう。
回避に言及されればちらりと歯を見せ、

「まぁね? 慌てたようにドタバタ逃げた方が楽しかったかい?
 まるで──止まって見えたものだから、ついね」

と、かろく言い放ち肩を竦める。
荷物を移動させる指示は出したものの、己が戦闘中となれば馬車が全て港を出るということもないだろう。

「──随分と強気だ」

己へ向けて褐色の野禽は敏捷に駆け出した。
足音に耳を澄ませて前方へと青緑の視線を据えたまま、肩の横で挑発で手招いたまままだ刀を抜かない。
相手が風の如く距離を削いでくる。その中で見切る瞬間は相手が曲刀へ手を掛けた瞬間だろう。
袖を抜いて肩へと羽織らせておいたコートの襟首を掴み、相手へ向けて投げる。
上等な冬物生地は相手の視界を塞ぎ、上半身へと纏わりつくだろうか。

「───ッ、」

それでも狂いなく己へと沈もうとする拳は受け止める。
受け止めた以上相手の動きも止めんと、コートの上から腕を回そうとし。

タピオカ > 「ふふ。お兄さんの目は鷹の目なんだね。
もしかしたら背中にも、もうひとつぐらい目がついてたり?」

視細胞の多さが動体視力に直結するわけでも無いだろうけれど。動物の目に例えたら妥当だろうか。
それにしても打ち回しの軽い物言いの爽やかさだ。腰に得物帯びていても、自分の唇が滑らかになっている事に気づく。

戦闘をしている限り馬車は足止め状態になってくれるようで有り難い。

夜の港湾地区を奔る。
踏み出した利き足が再び踏み出すまで、まばたきひとつの間で2度か3度。身を躱すも応じるも、素手も武器でも応じられる用意と心づもりもあった。そんな勢いで突進するも、羽織っていたコートという搦め手が投網のように広がると、幾分と攻撃が鈍くなり。

「ん、ぅっ……!」

とっさに心の目に切り替え、目星をつけた場所へ素手を見舞うも手応えがなく。
厚手の衣服の中でもがく下手人に腕が回れば、少年じみた声や体つきながらも明らかに柔く細い肢体の感触が伝えられる。

そのまま、半ばコートにくるまれたまま腕で拘束され。
やがて揉み合いにて上等の冬物生地がずれていくと、そこにはフードがめくれた褐色肌の少女の姿。未だ戦意を失わず、左手に曲刀を握ったままでじっと青緑の瞳で彼を見据えて。

「その剣、……抜かないの?」

ほぼ、顔と顔をつきあわせる格好。逆に曲刀を使おうとするとスキになる距離にて、そんな台詞を投げかけ。

タピオカ > 「かっこいい掟だね。それ。
でも、経費申請ってところが微妙にかっこわるくて笑っちゃうかも」

緩く首が揺れるたびに、ゆるく目元をかかる金髪がさらさらなびくのを見上げながら、くすりと肩を震わせ。
しかし、瞳も握る得物の剣呑な輝きもそのまま。

あれなんだ?と注意を引きつけようとする一瞬にも気をとられずに。逆に、そのわずかな演技の間にするりと腕の間から抜け出て一歩、距離を置き。

「斬らない相手を斬ることはできないよ。
だから、お兄さんとは戦わない。
でも、手ぶらで帰るわけにもいかないから。
悪いけど、向こうの1台は頂いていくね。
――それじゃあ」

剣戟よりも修理費用に気をとられる人との命のやりとりに参加する気にならず。
曲刀を鞘に納めた。
彼の横を走り抜けると、用心棒としてのせめての矜持。
差し押さえようとしている奴隷が積まれた荷馬車へと向かい、彼の手下たちを外へ引っ張り出して御者席に乗りそのまま王都のどこかへと消えていこうと試みるが。
どういう顛末になるかは若衆頭の出方に任せ――。

ご案内:「王都マグメール 商業港」からタピオカさんが去りました。
ビョルン > 「格好悪いか、なら嘘だ」

ともあれ。
己の手下が取り囲む中で女を切り刻むというのは些か気が退けた。

故に逃げられるなら逃げられるに任す。
相手が馬車を奪おうとするがそこは流石に多勢に無勢。荷台から蹴り落されるのが関の山だろう。
船が定期便であるなれば幾度でも差し押さえの機会はあろうというもの。
金額としては相応の商品を積み込めば己も馬車の一台に乗り込む。

なんだったのでしょう、と首を傾げた手下には「さあ」とだけ返した。
倒れる馬のみ哀れであったとか。

ご案内:「王都マグメール 商業港」からビョルンさんが去りました。