2021/02/06 のログ
■フォンティーン > 序に言えば好い加減酒の回った連中ばかりの室内は喧噪塗れで、
『紙』の持ち主が何ぞ不穏な事を呟いていた――のも、
丁度近場の卓のメンバーが盛大に酒同士を打ち合わせていた所為で聞こえていない。
確かに此処は不用意に価値のある物を出せる場でも無かったが、良いカモフラージュには満ちていた。
んん、――と咳払いが細い咽喉から一つ。
外套に目元は隠れ勝ちながら、口に出した後でその場を立ち去って良いのか
迷っている様子が凍り付いた様な硬直にあっさりと滲み出ていた。
同時に今の発言を何とか誤魔化したい意図も、咳払いの方に。
そんな葛藤の中、聞こえなかったという一縷の望みは巡る頸に潰え、
かち合う視線に口元から目元に手が移る。
「ご免。意図的ではない――と、信じて貰えると有難い、の…だけど、
見てはいけない物を見ていたとしたら、詫びは即金以外だと有難い。」
笑う音に怒ってはいない様子と見て取れば、手から顔をあげるも、
手招く仕種には萎れた葉の様に歩み寄って居住まい正しく小さくなって腰かけた。
先ず金銭の断りが出る辺り人として拙い。両手で温もりのあるカップを包みつつ。
「少し――ね。…今は作られていない紙だと聞いて居たもので。」
■影時 > そう。この時間を回ってもこの酒場は騒がしい。
故にある種の隠れ話などを遣るにしても、程良い塩梅とも言える。
本当に大事な話であれば、それこそ個室でも借りてすればいい。
問題のこの地図も、真贋を明らかにできないがためにこの場に出していたようなものだ。
銜えた串を摘まんで皿に置きつつ、聞こえてきた声の主を吟味するように見遣る。
このあたりには珍しい異邦の装束を纏う己とは違い、思っている以上に若いのだろうか。
逡巡めいた風情、気配を漂わせる所作を眺めて目を細める。
生憎と聞こえなかった、とするには己の耳は誤魔化しようがない。
「良いさ。隠し事にすンなら、はなっからこんな処で広げちゃいねぇな。
侘びなら身体一つで、というのも――冗談だ」
余程持ち合わせがないのか。返す冗句としては劣悪な類だが、無理な取り立ての気はない。
抱くにしても、引き換えとするには強引が過ぎる。
向こうの所作を見遣りながら、少し考えて酒杯を傾ける。
「複写、模写用の紙だろうなぁ恐らくは。
他に原本の類はあるかもしらんが、この辺りの書き込みとか読めたりするか?」
ホットワインに合うかどうかは怪しいが、皿に残ってる串焼き肉の一本を勧めつつ尋ねる。
■フォンティーン > 「…――それなら好かった。確かに言われてみればその通りだ。」
一歩踏み込めば誰に絡まれるかも判らず、酔払いのカップが飛んでくる危険性も無いとは言えない。
或いは紙自体を奪おうと悪乗りをする輩も無いとは言えない。
席を空ける際の佇まいで相当力のある人物なのだろうとは察せられた物の、
不測の事態の多い場所で広げているとしたら彼自身の迂闊もあるの、だと。
彼自身に気づかされて漸うと安堵の吐息。
続けられた冗談には一拍、理解できていない間があった物の、
程無く人界に出て来てからの学びで理解が追い付けば、
直ぐに続く音吐に「こら」と苦笑で咎めるのみにし。
警戒を抱かせない軽妙さというのが、目の前の相手にはあった。
「嗚呼、――密事の文書に良く用いられていたもので、
対となる薬液に浸す筈なの。でも随分古い物だね。補間できるか怪しい。」
酒肴の勧めには驚いて目を瞬き、少し申し訳なさそうに眉尻を下げると
肉が食べられないのだと指先でばつを作り、代わりに彼が手酌している瓶に手を差し伸べた。
盃が空けば、注ぐ心づもり。
「うん、どれ?……幾つか単語は判る…けど、
ん。…装飾語が多くて文脈が繋がらない。此処は洞、…此処は月、とか。断片的には。」
■影時 > 「そも、本物かどうかすら怪しいヤツだからなあ」
仮にこの地図が例えば宝の地図なら――金になる財宝が待っている、と。そう思うのは短絡だ。
金銀宝石の類は確かに財貨となるが、地図として残した者の宝が例外なくそうであるとは思い込みも甚だしい。
今の人間にとっては、実に取るに足りないもの、盛りを過ぎた事物である可能性もある。
食い詰め者が儲け話にあり付こうとするとなれば、概して斯様な先入観に騙される。
「宝の地図かもしれないよく分からない地図のようなもの」を見ていると、と。
白とも黒ともつかない曖昧さ加減だからこそ、不測の事態も構うことなく見ていられる。
此の手の冗句は聞き慣れていない、ということもないか。
投げた己が言の葉に帰る応えに悪い悪い、小さく舌を出し。そして、見える仕草に頷きを見せて。
「なるほど。面白ェな。読めそうならいい。寧ろ俺が礼を述べたい位だ」
他人の食の事情は深くは聴くまい。過去に訪れた土地でも、似たようなものがあった。
そのかわりと酌をしてくれる素振りを見れば頷き、卓上を滑らせて空になった杯を出そう。
「……月の位置と照らし合わせて、洞の位置を示すつもりの地図、かねぇ。
よくよく見ると、どの時節の月の欠け具合――にも見えなくもないか、この記号は。
まぁ、その実道案内のための地図だったかもしれンが」
教えてくれた礼は、すべきだろう。何か食うか?と。そう問い足しながら相手の目を見て。
■フォンティーン > 「ふぅん、…だとすればこの時間が宝だと考える事もできるけれど」
場に漂う気安い空気に当初硬直していたのは何処へ形を潜めたのか。
何処で手に入れたの、と興味を率直に問い掛ける事ができる程度には慣れが出た。
本物であるかも怪しい反面偽物だと断定する程の証拠も無い。
謂わば、手にする物が諦めなければ延々と夢を紡ぎ続ける品だと診たてるのは自分も酔いが回っているのか。
或いは様々に移り変わる色眼鏡を掛けて今を見ているような。
諦めは何処かで来るのだろうし、不測に潰える事もあるのだろう。
永遠のようで曖昧。――面白いと目元を緩める。
暫く前なら「肉体労働か」位は言っていそうな所だが、
冗談を冗談として返せる程度には多少世知を覚えたとひっそりと満足している不慣れ者。
「割と言語に関しては修めている方だと思っているのに。
…神聖都市の方の古語が入ってる。彼方のはな…儀礼に使う用語になるとお手上げだ。」
とはいえ、曖昧の儘にしておけぬ程度には自負も慾もある。
判る事を徒然と呟く物の解決には結び付かず不服を滲ませ。
単語から膨らませる印象を聞いてみればそうとしか思えない気もするし、
まだ読み解けない部分の方が多いのは間違いない。
「果物」とは向けられた視線に目を合わせての回答。
相手の選択の余地を残して大枠を告げるだけにするのは、
地図に悩まされている気分が一寸飛び火した形。
それで何を頼んでくれるのか、と視線で問い返す様。――酒場然とした此処で、だ。
■影時 > 「出来やするな。だが、そもそもこの描かれてる地勢っぽいのが何処を示すのかが分からン。
今日、完了の報告を出した仕事で報酬のついでに貰ったのさ」
こういう事柄を考えている間が愉しい、ともいう。
結局のところ、真相を露にさせると拍子抜けする結果が待っている可能性も織り込み済みだ。
一攫千金が欲しくて、この生業に手を染めているわけではない。
流れ者だからということもあるが、知らぬものを知るのが、確かめるのが愉しいのだ。
直ぐに分からないとなれば、宿の物入れに畳んで締まっておけばそれでいい。
ただ、どうせやるなら――道連れの一人や二人、居れば面白い。
「しんせーとしというと、ぁー、確か。やるだば、……ヤルダバオートとやらか。
遠くから見た事はあるが、次第によっちゃお邪魔した方がイイか」
生憎として元々は余所者だ。言いづらい、言い慣れていない言の葉には発音が危うくなる。
己が心情として、胡散臭げな響きもあるから余計なのだろう。きっと、恐らく。
言い直したうえで、ふぅむと胸の前で腕を組み、考える。
調べるとして数日。資料がないからと、直接在りそうな場所に「お邪魔する」としてさらにどれだけかかるか。
如何に貪欲な博識でも、土地勘が薄い場所に如何に振舞いつつ訪れ、事を成すか。
流れと手管を考えていれば、己が問いに返る言葉に「そう来たか」と口元を苦笑の形に歪める。
新鮮な果実のあり合わせなどがこの酒場に在るかだ。
手を挙げ、近場を通りがかる酒場の店員を呼び止め、数言話して注文を通す。
暫し待てば――運ばれてくるのは、硝子細工の鉢にカットして盛られた林檎や南洋産の柑橘だ。
在庫として、焼き菓子やジャムにでもするつもりだったのだろう。
少々酸味が強いのを、甘いカクテルを浸したいわばフルーツポンチめいた体裁で整えている。
値段は少々張るが、情報料ついてとしては適切だろう。
■フォンティーン > 「んん――…、……、…だから、…
それは又報酬と言いつつ、依頼主殿も価値を測りかねたのだろうね。」
地形には未だ目を配る余裕も無く、知識慾を刺激する文字から意識が離れず。
口の中で音を跳ねさせ、彼是と想像を組み立ててみる物の、
次々と消えていくのに落胆してから線で描かれた図の方へと目を向けた。
手に入れた経緯は良し悪し兎も角只愉悦。
大体物語も始まりは大層な事では無くて行き場のない味噌っかすが多いものだから、寧ろ上等とでも言いたげに。
「そう。ヤなんとか。…古語だから出入りのできるような所には手掛かりが無いかもしれない。
其れにあちらは戦場が近いのでしょう?」
此方はもっと酷く、最初の単音しか記憶していなかった。
今は外見こそ取り繕うものの種族も文化も違う名付けは如何も頭に入りづらく、
神聖都市という意味合いで辛うじて通じさせている次第。
一宗教の総本山に対し敬意の薄い物言いをすれば、
鼻腔を擽る甘く瑞々しい香りに視線を上げると、わ、と小さな歓声。
声を上げた己が恥ずかしかったのか、耳元に紅を一刷毛上らせつつ、
「これは――満点。……君もどう?」
ぐうの音も出ないと破顔した。
質にした心算も無かったが――預かった儘の盃に程々の量酒を注いで返すと両手で丁寧に押し遣り。
硝子鉢に添えられたカトラリ。汁気を懸念して匙が選ばれたらしいのを使って一匙掬った後、その匙を相手へと向けて首傾け。
■影時 > 「そうだろうなぁ。
何せ、何か見つかったら教えてくれ、ということで気前よく呉れた程だぞ」
人手と文献を総出で総ざらいすれば、王国が保持している地図と片っ端から照合できただろう。
しかし、そうせずに己に下賜ではないがくれたのは、何かと分からぬものに投資したくないという現実的な面からだろう。
さもありなん。貴族は市井で思う程に金がないこともしばしばだ。
そうでなければ、資産を売り払うことだってない。
ともあれ、向こうも浪漫を解するものか。その気配を感じれば、目尻を下げて。
「そうそう、そのナンタラ、だ。……手がかりとなりそうなものを「仕入れる」となりゃ手間だな。
あー。いや、借りて――戻すとなると、余計か」
戦場に近いとも聞いているが、一度実地を検めて見る必要もありそうだ。
王都内で漁れる処があれば一番いいが、そうでないとした場合の算段も立てなければならない。
書籍の紛失一つで動くほどか。そうでないなら、用が済んだ後に戻すのは容易いのか、等々。
どうやら、向こうも件の神聖都市には近い印象を持っているように見える。
この国の生まれではない、のだろうか。脳裏で並行して向こうの素性も考えれていれば。
「やるじゃねェか。試しに頼んでみたが、中々どうしていい具合に出してくるモンだ。
――ああ、ンじゃ遠慮なく」
どうやら希望に適ったらしい。歳相応の娘のように響く声と、続く所作に己も釣られて快く笑う。
満たされた杯を会釈と共に受け取った後、向こうの提案に迷うことなく頷く。
失礼、と浅く立ち上がり、向けられた匙より――ぱくり。遠慮なく含んで飲み干す。
酒精もそうだが、程良い甘味と果実の酸味がよく合う。
■フォンティーン > 「教えるだけで良いのね。依頼主殿は商人か…或いは裕福でない貴族、かな。」
実利を求めず話だけで良いと受け取れる流れ。
詳しく聞く程に鷹揚さと現実主義が人物像を形作る。
資金や人材に余裕があれば冒険者を頼ろうとはしない種類の人でもありそうだが、
如何して目の前の人物に依頼する事になったのか。得心と疑問を綯交ぜにして首肯を繰り返す。
「うんうん、なんとか。…それは伝手も資金もいると思う。
…手間を惜しまなければ、いえでも、そんな物を貸してくれる人に心当たりがある?」
伝聞調である事からも生きた情報でないことは確実。
情報の重要度から照らし合わせただけの只の憶測は、
二人の間で思い描いている手法に乖離があるからこそ。
真っ当で正面からの手立てしか取って来なかった人種特有の困惑を浮かべ、
相手の脳裏を思い描こうとする様に目を細めた。
「暫く食べていなかったの。故郷では当たり前に食べていたから…うれしい。
――…あ、」
何かと付き纏う金銭難の気配。肉は駄目で果物は毎食。
食の有り様から云えば可也特殊な部類。
気付けば周囲の人も一組二組と消えて、或いは一組は酔い潰れて、
笑い合う様は何処かこの場所に不釣り合いな朗らかさ。
身を乗り出す前に果物を攫う口に慌てて匙の下に片手を添えつつ、
「器用」だと呟きながら自分も一匙掬って含み。
■影時 > 「後者、だなァ。特段口止めはされちゃいねぇが何処の誰かとは言えんな。
見ての通り俺は余所者だが、特に同郷の辺りから来たものについては目が利くンでな」
依頼人によっては他言無用、ということはあるが、その辺りの念押しは確か無かった。
無かったとはいえ、場所が場所だ。
周囲の喧騒と人の目を鑑みれば、伏せておくのは最低限のエチケットだろう。
舶来の蒐集品の目利きを頼まれたのさ、とだけ言い添え、杯を傾ける。
「――頼みこみゃあ、出来なくはねぇ伝手は一つある。
だが、資金については頼み辛ぇな。
最悪、在りそうな処から「借りるか」「仕入れるか」だ。その辺りを愉しんで歩む心はあるかい?」
己がパトロンとも言える雇用主の伝手を辿る方が、一番――というよりは唯一だろう。
難しい場合、どうするか。少なくとも己よりは真っ当であろう相手が思いつかない手段を、選ぶ。
人が悪そうに唇を釣り上げつつ、戯れるように対面の相手を見詰めて問おう。
最終手段である。だが、それしかないならばそうすることに躊躇いはない。
「そう云うってこたぁ、森の出かね。っと、すまんね。俺が先に口付けちまった。
気づけば結構時過ぎてたんだな……」
果実の類を採りやすい場所となれば、まずそう算段は付く。
肉を好まない、食しないところは何かの教えに基づく気もしないが、少々今の段階では曖昧だ。
また頼んでみるかと今回の出物に決めつつ、舌の上に残る風味が酒精に消えるのを惜しむ。
ふと、呟きを聞けば結果として先に食べてしまったような様に片手拝みと共に、視線を横に遣る。
酔い潰れたり。笑い上戸を決め込んで更に酒を頼むもの。
いい相手でも見つけたのか、上階の仮宿に上がっていくものなど、残る姿と消えた姿がある。
■フォンティーン > 「矢張り。…大丈夫、其処まで明かそうとは思っていないよ。
君への信頼を好奇心で侵害するのは良くないでしょう。
そういえば変わった装束を身に着けているね。東――の方?」
もぐ――と、果物を嚙み締めれば甘酸っぱい欠片が露を吐き出す。
表情を自然と緩まされながら、ある程度迄の見立てが当たっていたなら其れで満足。
仕事の内容まで聞かせて貰えたのであれば過分というもの。
匙を抱えた人差し指を立て、果汁に濡れる唇の前に立てると目を細めた。
生憎と衣装には詳しくない物の、流石に特徴的な其れ。余所者の単語に喚起されて問い返し。
「浪漫に身を捧ぐというのも中々の快楽だ。
…――とはいえ、其処で切り札を切って良い物かという迷いは常にあるね。
在りそうな……」
頼み込む事が容易い人もいる。頼む事に重みを持つ人もいる。
相手がどちらかは未だ判別付かなかったが身銭を切る味わいがあるように、
夢想する物に手を厚く尽くす快楽は間違いなくある。
表情は悪さが滲んで居るのに悪戯を企む様なかろさに、目を瞬く。
暫くして意味する所を理解すれば言葉を途切れさせて詰まる。
簡単な流れ図だ、諦められるか如何かというだけの。
「…――此処で諦めたり、他人に任す、というのの辛さを判ってその顔をしてるね。
……他の手を尽くしてから。」
考えて、考えた。恐らく掴まれている。
酒肴として手放せなかったこの時間の間に、慾が既に上回っている事を。
目元に睫毛の影を落とし、声を幾分潜めてから一息に認める音を吐き。
慾を認める悦と羞恥の懊悩が少し、頬を紅潮させていた。
「構わないよ。私が言ったのだもの。…そうだね、
ねえ、上にあがって行く人達がいるけど、此処でも部屋を借りられるの?」
森出身の宛てには微笑って返し、半ば答えたのも同然。
緩み放しの頬で歯ごたえのある林檎を幾つかに齧りつつ、
時の経過をすっかりと範疇外に話していたから夢から目覚めた様。
上階への階段を辿る足音を聞いて問い。
■影時 > 「然様か。ン、ならいい。仕事人としての最低限の心得として、そこまではちょっとな。
ああ、――東の方になるかね。此処じゃねぇ彼方の方から来た」
根掘り葉掘り聞くタチではなくて、むしろほっとした。
このような場所に足を運ぶとなれば同業者だろう。弁えているとなれば、己も言うことは無い。
見える相手の仕草と、続くその言葉に顎を引いて頷く。
風貌もそうだが、装いもとなれば隠すべくもない。否、隠しようもないからこそ敢えてこの装束を選んでいる。
この辺りであれば、シェンヤンの者という言い訳もできなくはなかったが。
「俺としてはどちらでも同じ位に愉しめンだが、事が容易に済むなら其方を選ぶな。
学ぶに当たって躊躇う事はないとはいえ、面倒がない手段がないなら、選択の余地もあるまいよ。
――……ン、そうだな。まずは手ぇ尽くしてからだ」
辿れる伝手も「若しかしたら」という程度のものだ。可能性は半々でしかない。
丁々発止の大立ち回りをして、結局至る所が仕様もない、という予測もあるのに、其処に力を注ぐのは酔狂か。
云わんとするところを察して、勿論だと云いつつ向こうの表情と詞を研ぎらせる様をどこか、にまりとした風情で見る。
諦めるか、否か。その心を問う。勿論、好き好んで危うい線は踏まない。それはリスクを減らす意味でも重要だから。
「じゃぁ、忝い、だな。
――上か。借りられるぞ。仮眠ついでの仮宿や、報酬の相談、二人でシケ込む等、色々な」
当たらずとも、というところか。今はそう読みつつ、足音を聞いたのか。
その問いに応え、酔っちまったかねとある種の予測も混ぜながら尋ねてみようか。
上階の物音は喧騒もあるのか、響いてこない。
冒険者ギルドの直轄ということもあれば、防音も施錠もしっかりしている。
■フォンティーン > 「彼是と喋ってしまう人なら私も少し気をつけなきゃいけなくなるから、ほっとした。
何処かの人が多い街みたいだものね。不思議な所だ。」
例えば我が事、この地図の事。
どの程度の口の重さか見るには図らずも丁度良い試金石。
話し合う際に気を遣う必要が無いのなら会話をするのも幾分か気楽だった。
此処、彼方、全て含めて何処かと纏めて称して仕舞えば口の端を引いて笑う。
「余力を残すという意味では難易度を基準にするのも間違っていない。
何を容易とするかは興味の在処だから人それぞれで良いんじゃないかな。
…それなら、良い。」
冒険者なら、何が正解なんて悧巧な答えは無い筈だ。
頼れる伝手があるなら頼るのも良いし、別の機会に取っておくのも間違いではない。
何処に重きをおくかというだけ。其の宛先の宝が存在から不明瞭という大きな問題も残ってはいるが。
此方の返答を聞いて笑っている相手からは目を背け、暫く無言で果実を食む。
「――値段聞いてみる。
美味しかったのだけど、アルコールが結構効いていた。」
頷きは酔いを懸念する音吐に返したもの。足音、扉の音、其れが幾つあったろう。
まるで眠りに誘うように耳に付いてしまっていた。
綺麗に汁まで飲み終えてしまった分、許容量を超えた様で、
答えは返せる物の外を長く歩くのは御免、という気分。こっそりと目を擦る。
■影時 > 「あーれやこれやと広言する奴は、この仕事に向いてねェさな。
ま、こっから先の話についてはそろそろ気を付けないといけないかもしれンが。
同郷の出はそうそう見かけんが、存外――な。結構多いもんだ、ここは」
仕事次第では、他言無用の断りを含むものも受ける。その点ではギルドからの信任はあると認識している。
余所者とはいえ、実績を積み、信頼に足る実行者ということをを示した者としての信任だ。
一方で、危ない橋を渡ることに「必要であれば」と即決できる側面もある。
ともあれ、気楽に通じ合えると分かれば、己も胸襟を開くに足る。
「持ち合わせの悉くは詰まるところ手段だ。
真っ当にどうこうできるなら、それを選ばん理由はない。
で、俺にはこっちの古語等をどうにかできる持ち合わせがない。手伝ってくれるなら、有難いがね」
そう、「借りる」または「仕入れる」にしても知識者を交えなければ、目的達成にはつながらない。
一番の問題として、宝があるのかどうなのかという事柄が不明なのが不味いが、今当面の所として……。
「俺の払いだ。その時についでに訊くといい。……払うもの払って、上の部屋借りるか?」
気づけば冷えて少し硬くなった肉を齧り、皿に齧って胃に納め、盃を大きく呷る。
其れで丁度、瓶の中身も干してしまえる。
向こうの椀の有様も見れば、綺麗に汁までのみ終えて限度いっぱいと言ったところだろう。
目を擦る姿からの応えがあれば、手を挙げて支払いまで終えてしまおうか。
■フォンティーン > 「それは確かに、だけど…居る、でしょう?余り後先を考えずに仕事を引き受ける子も。
私も何時か同郷の人と会うのかな。それは一寸吃驚して仕舞いそう。」
相手の人誑しと云えそうな話し易さが、押さえる所を押さえた人柄の上に成り立つのであれば、
人の警戒を寛げる資質はより得難い物なのだろうと察しはつく。
仕事としての自負を如何身に着けるのかは、個々人による所が大きいのだろうけども。
「――手伝わないっていう選択肢が大分前に潰れているって、知ってる癖に。
うん。詳しい事は又相談、でも良い?」
他に人の手を借りるとすればあるかどうか判らない宝探しだという所を
念押しして断っておく必要がありそうな酔狂事。
未だ手伝ってくれるなら――と云う相手に不服を唱えるのは、
好い加減酔いが回ってきている証拠かもしれない。
果汁で割られているホットワインと、果実主体の皿で酔えるのだから燃費は良い。
酔いを自覚して仕舞えば加速度的に身体の気怠さが圧し掛かる中、
支払いで呼ばれた店員へと部屋の空きと値段を聞き、
辛うじて足りそうな様子であればその場で押さえて仕舞い、向かいを振り返った。
「一寸足りないかと思ったけど…。今日は素敵な物をご馳走様。」
■影時 > 「ああ、居る居る。その末路の例も含めて、よぉく知っているさな。
んー、どうだろうな。思ったより驚かんかもしれないぞ?」
駆け出しというよりは、駆け出しから中堅位まで登ったあたりから多いかもしれない。
折角の定期的な仕事をこなす契約を得ながら、契約を反故にする行いの結果等々、存外多い。
忍びの者だから、ではないが、契約履行の精神も何もかも、培った経験からだ。
「ははは、違いない。
――良いともさ。急ぐようなコトでも何でも無ぇし」
ご尤もとばかりに肩を竦め、続く言葉については勿論と頷こう。
何せ事為すに窮すれば、力押しではなくとも褒められた手段に移ることにもなるのだ。
念のためとはいえ、確認については大事なことだ。
今はとりあえず、酔いを思えば改めてということに断る理由はない。
酒精の量だけで云えば勝るにも関わらず、酔った素振りも何もなく己も支払いを終える。
値段については、相互の持ち合わせは問題ないようだ。
「どーいたしまして、だ。と、そうだ。名乗っちゃいなかったな。
俺は影時という。もし急ぎの用などあるなら、此処か直で俺の宿に来るといい」
寧ろ此方こそ有難い、と。その念も込めて頭を下げた後、忘れていたとばかりに名乗ろう。
連絡を付けるに困るなら、ギルドか己が宿に手紙など置いておけば良い。
ギルド員に訊けば、逗留先の宿は教えてくれることだろう。
■フォンティーン > 「末路は――知らないけど、余り幸せではなさそう。」
冒険者としての期間も実績も両方足りなくて、相手の言う意味を想像する事が出来なかった。
有態に考えれば自分と同様の経験値の者達だろうから、然程重責のある仕事等引き受けていないと、思いたい。
そう願う心情は多分に希望も含んでいたが。
自分の故郷の事には如何かなとはぐらかした心算は無い物の、
考える事が億劫になり始めている酔いの影響もあって曖昧に。
己よりも余程酒精の強い酒を飲んでいたように思うのに、
語りにも立ち居振る舞いにも乱れた所のない様子に「狡い」と一言不条理な云い様。
改めての話を受け入れて貰えば礼を告げ、何処か茫洋と遠くを眺めるような目元。
「か――と、き?…カーゲトキ。本当に東の響きね。
私はフォンティーン。宿は、正直今は定まって居ないから、
決まる迄はこのギルドに顔を出すようにする。」
ぎ――と、椅子を鳴らして立ち上がる。
幾分言い辛そうにする相手の名前。特に濁る音が言い辛そうで口ずさむ様子を見せつつ。
定宿の無い身故このギルドへの伝言で連絡を受け取ると伝えた。
ふらつく足は堪えて、手を差し伸べると挨拶代わりに伸びた黒髪を一つ撫ぜ様と。
「お休みなさい。又、今度。」
■影時 > 「――ご想像にお任せする、と」
こう言えば、薄々と察せられるだろう。
受諾可能な依頼の枠が減る降格ならば善し。最悪、ギルドからの追放もあり得る。
冒険者ギルドは数あれど、少なくとも追放者の情報共有もある。
つまりは、真っ当な冒険者としての保障は請けられないという末路だ。
立ち上がれば、持参物である太刀を腰に帯び、問題の地図を丁寧に畳んで懐に納めよう。
酔った風が見えないのが「狡い」のか。種も仕掛けもないとなれば、困惑げに一瞬眉を顰めて。
「ええと、ふぉん、てぃーん。……フォンティーンか。分かった、覚えた。
んじゃぁ、用があるなら相互に――だな」
直ぐに言いなれないのは、こちらもだ。音を確かめ、次の発音で音律を確かめ。
己が髪を撫ぜる手にくすぐったげにしながら、ゆるゆると手を伸ばす。
背丈のある相手の頭をぽん、と撫でることが叶えば、そうして。
「おやすみ。また、な」
その言葉と共に、手を振って――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」からフォンティーンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」から影時さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にルナさんが現れました。
■ルナ > 「これは少しお高いですか。他で探すべきでしょうか…」
日の高い時間帯の平民地区の広場。
そこで行われている蚤の市で一つの露店を眺める。
露店に並ぶ短めのロッドを真剣に眺めてはその値段に購入を悩んでしまい。
「あれば便利ですけど…今すぐ欲しいという物でもないですし」
どうしようかと困ったように頬に手を当て。
店主の売り文句を聞き流しながら財布の中身と値段を考えて。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からルナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」にルインさんが現れました。
■ルイン > 夕暮れの時間帯、人で込み合う冒険者ギルド。
その依頼掲示板の前で何か簡単にできる依頼がないかと探す。
懐の余裕は心ともないが時間を取られる依頼を受ける余裕がなく、
例え報酬が安くてもこの際と探すのだが…。
「中々にないですね…新人向けを受ける訳にはいきませんし。
困りましたね…。」
薬草採取などの依頼は新人が多く受けるので持っていけば受付嬢にいい顔はされず。
かと言い、害獣駆除は罠の設置に時間がかかり、討伐は一人では論外。
そうなると配達とかになるのだが、そういう依頼は今はなく。
どうしようと腕を組んでは首を傾げ、今ある中で選びきれずに悩んでしまう。
■ルイン > そうして悩み新しい依頼が出てくるのを待ってみるもやはりめぼしいものはなく…。
脚は朝1で依頼を探そう、そう決めればギルドを後にする。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」からルインさんが去りました。