2021/01/23 のログ
タピオカ > まるでお店が細々と営業していると言いたい放題の彼と、そんな声音を全く意にしない店主。きっと付き合いも長いのだろう、コンビのようなやりとりに肩を小さく震わせて笑って。
枝葉に緩い風が吹いたかのように。
手品のように滑らかな動きで注文した酒精が手元に届けられると再びお礼を言って口元をグラスに沿わせ。
蜂蜜酒とはまた違った、アルコールを伴った甘さに出迎えられて目尻が蕩ける。
美味しい、と言うかわりにマスターへと笑顔を手向け。

「えへ。ここで50ゴルド、って言うのも味気が無いもの。
よしっ。賭けが整ったね。
……いくよ?よく見てて……」

にわかにカウンター上に緊張感が走る。
羊皮紙がめくれたその瞬間、互いに決まる運命。カードに見立てた羊皮紙の端を指でつまみ。裏返す前に時間をかける。
相手の顔を見て。マスターの顔を見て。
顔を見せるのは、相手の予想通りの数字。

「……っあは!
僕の最後の砦は、グレンの砦よりも小さかったみたい。
仕方ない。グレン。……僕と窓の無いお部屋に行こ……?
……なんてね!困らせちゃってごめんなさい。そんな気じゃなかったみたいだから、冗談だったって事にしてよ」

運の大小を、砦の大小とかけてみせる。
戯れ混じりに相手の腕をとろうとする仕草をみせて、その手をひっこめる。
少し困ったような笑みを浮かべる相手に、無理強いをするつもりはなく。
軽く両手を上げて。緩く首を振って。

「じゃあ、そろそろ僕はギルドに行って報酬を受け取ってくるよ。
ごちそうさま。
……グレン、それにマスター!
今日はありがと。またね!」

注文したカクテルを飲み干せば、口も身体もぬくもった。
楽しい会話とお酒だった、とにこやかな表情で支払いを済ませ。マントを羽織ると、ゆるく手を揺らして挨拶をし。
お店を後に、軽い足音が夜道に続き――。

グレン=ギムレット > 男はともかく。マスターの年齢は不詳。
かなりの高齢ではあるだろうが、振る舞いからは生気が溢れている。
そんなマスターであるが、少女の笑顔を見れば。
少し嬉しそうに口元を緩ませ。
すぐに無表情に戻ると、グラスを拭き始める。

「まぁ、そりゃあそうだな。
 あぁ、いいぜ。勝負、ってところだ」

確かに。ちょっとした賭けとはいえ。
小額の金銭を賭けても、面白みには欠けるかもしれない。
男はそう納得し、相手の動きを見守り……。

「ははは、みたいだな。
 ただまぁ、本格的に勝負したら、分からないかもしれないがな。
 ……あぁ、いや。すまない。乗り気じゃない、って訳じゃないんだ。
 ただ、話が旨すぎると思ってな?」

まさか、ではないが。わざと負けたのか? などと考える男だが。
少女のこれまでの振る舞いから考えるに。
相手の職業を聞いた上で、その生業をバカにするようなマネはしない、という確信があった。
詰まるところ、この少女は本当に、賭けをして。
そして、負けたら体で払うつもりだった、ということになり。

「あぁ、そうか。
 ……そうだなぁ。じゃあ、タピオカ。
 もしもまた、次に会ったら。
 その時に、可愛がらせてくれ。
 それまでに、窓の無い宿の中で、グレードの高い宿を探しておくからさ」

相手が店を出ようとするのなら、そう告げ。
この場では、賭けの勝ち分を取り立てることはしない男。
相手が会計を済ませれば、男は一人、静かに酒を飲む体勢に戻るが。
マスターの視線は。無言ながら『あまり女に恥をかかせるな』などと訴えており。
多少なりとも、居心地が悪くなったようではあった……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からタピオカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からグレン=ギムレットさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 王都の繁華街に位置する一軒の酒場。
2階に宿屋も兼ねるその店は主に冒険者達で盛況を見せていた。
酔い潰れた客を上階の部屋に放り込めば、店側は宿賃も稼げ、
宿賃はリーズナブルなので客側も帰りを気にせずに飲める、とWin-Winな関係故である。

その状況を見込んで夜鷹の娼婦達も冒険者に酌をして春を鬻ぐ為に集まり、
華やかな女達を目当てに男やもめも集まるために店も得をするという経済の縮図が為される店は、
相応の繁盛店である事を示すように客席はほぼ荒くれ者と女達で埋め尽くされていた。

そんな人々で賑わう中、一際、明るく振る舞っているのは頬傷の中年冒険者で、
他の卓の客達にまで調子良く話し掛けながら景気の良い笑い声を撒き散らしていた。

「いやぁ、ホントにラッキーだったぜ。
 ゴブリンの巣穴に潜り込んでみたら、コカトリスを飼ってやがって、その卵が売れてガッポガッポよ。
 あ、お姉ちゃん、エール追加ね。ついでに此処の全員にも一杯奢ってやって」

ガハハ、と喧しい笑い声を響かせて、盛大な法螺の如き話を吹聴する男。
そんな男が煙たがられないのは、その羽振りの好さのお陰で、彼の奢りによる乾杯は既に複数回に及んでいた。

トーラス > 酒場での盛り上がりは奢りの酒のお陰で益々盛況になるばかり――――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にフォンティーンさんが現れました。