2020/11/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリゼラさんが現れました。
■リゼラ > 沢山の人が立てる靴音に混じって、ほとんど音の立たない素足が混じる。それは人込みを歩き慣れておらず、うっかり入り込んでしまった繁華街の大通りで、あっちにぶつかり、こっちに押され……と人波に流されてよろめいていた。
「っはあぁ……えらい人おるんやねえ……こんなにいはったらぶつからんと歩くんが一苦労やわ……」
押し出されるようにして人の流れから弾かれて、よろ、と人通りの薄い路地裏にまろびでた。
手近な店舗の軒先で、はあ、と息を吐き出したが、一息つく暇もなく、その店の呼び込みに声を掛けられて慌てて、首を振り。
逃げるようにしてまた、余計に深く路地裏へと迷い込んで。
「…………人が少ななったんはええけど……どこら辺なんかな、ここは………」
最初から街の地理などほぼ把握していないのだが、ここにきていよいよ本格的に迷子になってしまった。
眉を下げて人気の薄く、時折野良猫が通り過ぎていく裏通りで立ち尽くす一見人間の女のようなバンシー。
■リゼラ > 「……ん? あ……お散歩しよるん? うちはなあ……散歩とも言えんし……迷子なんかなあ?
まあ、どこへ行ったらええかなんて、もう分からんねんけど……」
足元へすり寄って来た人懐っこい野良猫に屈み込んで路地の隅で、話しかける。平時より人と接し慣れているのか、猫は語り掛けられる声に返事をするかの様に、ナァ、と鳴いた。恐らく言っている意味など理解していないが、こうして鳴けばウケが良い事を知っているのだろう。
元より通じているかどうかはお構いなしに、ただ今は話し相手が他にいない手持無沙汰と淋しさから。
「あんた、ここがどの辺りか判る? 知っとったら教えて欲しいんやけどなあ…………
………あかんか。そらそうやわな」
額から背中まで毛の流れに従って野良猫を撫でながら、とうとう道を尋ね始めるが……、勿論、「ここはですね」なんて返答がある筈もない。ぐるぐると喉から音を発しながら目を細め「もっと撫でろ」と催促がくるばかり。
ふう、と息を吐き出しながら、猫を腕に抱き上げ。
「これから、どないしたらええんやろねぇ……」
ぼそりと、所在なげに壁に背を凭せ掛けて呟いた。
まるで身一つで夜逃げしてきた様な風情だ。
■リゼラ > 「あっ……待って……」
しばらく腕の中で大人しく抱かれていた野良猫が、不意に、ピン、と耳を立てて髭を震わせて視線を通りの向こうに向け、するり、と腕の中から滑り出て行ってしまった。
反射的に手を伸ばして、たっと路地を蹴り、四本足で駆け出す毛むくじゃらの小さな背中を追いかけて。
そのまま猫を追って余計に路地の奥まで。どこをどう進んだものか自分でも判らないで入り込んで行ってしまうのだった……
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からリゼラさんが去りました。