2020/05/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からブレイドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイヌさんが現れました。
イヌ > 普通酒場というのは夜に営業しているイメージかもしれない。
だが、冒険者の宿、ギルド、冒険者の店を兼ねている店の場合、ギルドとしての側面があるため、昼間から営業していることも珍しくは無い。

「はい、炒り豆とサラダ、お待たせいたしました」

そんな酒場で、一人のミレーの少女が働いていた。
銀の髪を揺らし、ついでにバストとヒップも揺らしながら。
給仕の仕事に汗を流している。

「はい、ご注文ですね。少々お待ちくださいませ」

本来はメイド、そして冒険者である少女だが。
時に、人手の足りていない店を手伝うこともある。
ちょっとした、ボランティアのようなものであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にヴェルソートさんが現れました。
ヴェルソート > 「あー…だるい。」
せっせと少女が仕事をしている一方、宿になっている二階部分からうめき声と共に降りてくる男一人。
片方しかない腕で壁伝いに降りてくれば、適当な席にそのまま腰掛けて。

「よいしょ、っと…揚げじゃがと冷たい水おくれー……って、あれ?」
近くに居た少女に注文を投げると…見覚えのある姿に首を傾げる。
確か、割と結構な頻度で最近パーティを組んでる彼の家で見かけたメイドじゃなかろうか。
自分と同じ隻腕だったので、記憶に残っていたらしいが…ここでバイトでもしているのだろうかと首を傾げて。

イヌ > 「あら?」

そうして働いている少女は、二階から降りて来て呻く人影を見て、おや、と思う。
宿泊していたお客様か、と考えつつ。その人物が注文をすれば。

「はい、かしこまりましたー」

と、元気に声を上げ、注文を通す。
しばらくした後、少女は相手に近づき、冷たい水と、揚げたイモを差し出し。

「はい、お待たせいたしました。
 ……あの、どうか致しましたか?」

相手にそう言いつつ、少女も首をかしげる。
そこで、少女は両手をぽん、と打ち。

「あ……。これはこれは、どうも」

そう。相手の正体……というか。
素性に思い至ったのだ。自分の雇用主が良く一緒に仕事をしている人物ではなかったか? と。
なので、給仕としてではなく、関係者として、改めて一礼をする少女。

ヴェルソート > 「おぉ、はやい……でもイモは揚げたて…ここの親父さん先読みでもしてるんだろうか。」
さして時間もかからず、細切りの揚げたじゃがいもに塩をふりかけたそれ…いわゆるフライドポテトと冷たい水に礼を言って、とりあえず乾いた喉を潤すためにグビグビと水を飲み干して。

「っふは…ぁー、どうも。そういや名乗ってなかったっけか。
 おじさんヴェルソートって言うの。長いからヴェルでいいさね。
 セイン君、元気にしてるかい?…あっちっ!」
ひらりと手を振り、そういえば言葉をかわしたことはなかったなと思いだして、改めて名乗り。
彼女の主の様子を話題代わりになんとはなしに尋ねてみながら、揚げじゃがを口に放り込み…熱さに慌てる。

イヌ > 「単純に、人気のメニューなので。
 数多く準備しているだけだと思いますよ」

相手の言葉に、くすり、と笑い、そう言う少女。
そのまま、相手に声をかけられれば。

「あ、これはご丁寧にどうも……。
 私は、イヌ、と申します。どうぞよろしくお願い致します。
 それが……最近、あまり元気がないようでして」

相手に名乗ってもらったので、少女も自己紹介をし、再度一礼。
そうして、相手が慌てれば、水とふきんを差し出し。

「だ、だいじょうぶですか?
 火傷とかなさってませんか?」

そう心配する。大した火傷ではないかもしれないが。
やはり、目の前でケガをされたりすると心配らしい。

ヴェルソート > 「む…まあそっか、安くて美味いもんなぁ揚げじゃが。」
店によって厚さや皮付きとか結構差が出るのも面白い。ちなみにここは細切り皮付きだ。
そうして、彼女の自己紹介を受けたのは良いのだが……。

「……相変わらずのネーミングセンスめ。」
女の子にイヌとかいう名前付けるかあいつ…と小さく呟くけども、まあ今更だろうし自分が殊更騒ぎ立てることもないだろう。

「っ…はぁ、あー…大丈夫大丈夫、思ったより熱いのが舌に乗っかって驚いただけだから。」
差し出された水をクイ、と飲んで舌を冷やせば、布巾で軽く手を拭きながらも大丈夫と返し、最初にもらった冷たい水で続けてちびちびと舌を冷やしつつ…話題代わりに投げた近況を尋ねると、なにやら芳しくないらしい。

「元気が?…俺が前ヤ…会った時にはそんな素振りなかったけど……あぁそっか…でも、アレはなぁ、俺が口出しできる問題でもねぇし…。」
元気がない、と聞くとそんな素振りはなかった気がするが、それとは別に心当たりがあったのか、頬杖をついて苦い顔をして。

イヌ > 「ですね。軽食としても人気ですし」

夜には夜で、おつまみとして人気。
昼は昼で、軽食として人気。
なので、色んな店でほぼ常備されているのだ。

「あ、あはは……」

名前のことを言われれば、苦笑する少女。
少女も思うところはあるのだが。少女自身にはどうしようもないらしく。

「そうですか。なら、いいのですが」

相手がさほど深刻なケガをしなかったとのことで、安堵する少女。
近くの客に声をかけられたので、一度注文を受け、料理を運び……。
そして、再度相手の近くへと戻り。

「はい……。最近、お酒の量も増えてしまっていますし。
 ……私も、心当たりはあるのですが」

相手同様、少女も心当たりはあるらしく。
少し、落ち込んだような表情になる。
少女の雇用主。どうやらそうとう状況は悪いらしい。

ヴェルソート > 「割と良い値段する店でも置いてるのが不思議だよな、あっちはソースとかかかってるけど。」
割と、金持ちでも味覚は大して変わらないということだろうか。
まあそのソースだけで一桁値段が増えてるということもあるのが高級飲食店の恐ろしいところだけども。
名前のつぶやきが聞こえてしまったのか苦笑する彼女、どうやら彼女自身も思うところがあったらしい、思わずこちらも苦笑いして苦労してるな、と視線で。

「舌が使えなくなるのは流石に一大事だからな、嘘はつかねぇよ。っと、長々と悪いな。」
注文の声がかかるとぱたぱたとせわしなく仕事に戻っていく彼女に謝罪と見送りをし、もぐもぐと少し冷めてちょうどよくなった揚げじゃがを食べすすめる。
隻腕になってから、頬杖をつきながら食べる、というのができなくなったのか、ちょっと残念だ。
そうして、改めて戻ってきた彼女が落ち込んだ表情を見せれば…んぐ、と口の中のじゃがいもと飲み込んでこちらも眉根を寄せ。

「酒増やしてんのかアイツ……ったく。ガス抜きくらいにはなるかね。…アイツに言伝頼めるかい?」
そう言って、そっと彼女の犬耳に耳打ちをすべく唇を寄せてひそひそと。

イヌ > 「そうですね。それだけ人気ということですよ」

相手の言葉に、そういえば、と頷きつつ。
少女も、揚げたイモについて思う。
腹持ちもそれなり。お値段もそれなり。
実に素晴らしい食事だと思う。

「一大事、ですか……?
 あぁ、そういえば、吟遊詩人だとお聞きしておりました」

なるほど。それは確かに。
舌は商売道具だ、と少女は納得しつつ。
ある程度接客をすれば、少女は相手の近くへ戻り。
どうやら、この相手は雇用主の関係者だから、特に力を入れて接客しよう、というつもりらしい。

「はい、私でよろしければ。
 しっかりとお伝えします」

相手から伝言を頼まれれば。
少女は力強く頷き、相手の伝言を聞いていく。

ヴェルソート > 「まあ、ネックは油すごい使う事だよな。」
食用油を鍋一杯使うのだけは玉に瑕、まあ美味いから良いけど、なぞと締めくくって。
結局、美味しければそれでよし、安ければなおよし、だ。

「そうそう、歌えなくなったら流石に俺、役立たずもいいとこだからな。」
さすがにそれは困る、と苦笑いして肩を竦め。最後の上げジャガを口に放り込み、塩気と油を水で諸共飲み込んで、ふぅ…と息を吐き出す。
そうして耳に唇を寄せれば、通るようなテノールが鼓膜へと。

「元気無いって聞いたから押しかけてやる。嫌なら俺がそっち行くまでに俺のとこに来い。って伝えとくれ……じゃ、頼むな?」
伝言を伝え、目を細めれば…ごちそうさま、と水も飲み干して一息吐いて。
そろそろ、美少女の給仕を独り占めしていることへの視線が少しばかり刺さりだす頃だ。

イヌ > 「店によっては、油を限界まで使うそうですね」

くたびれてほぼ真っ黒、なんて色の油で揚げたイモ。
さすがにそれは遠慮したいなぁ、という思い。

「でしたら。熱いものを召し上がる際は十分にお気をつけてくださいね」

くす、と。ちょっとイヤミなことを言いつつ。
少女は、相手に笑顔を見せる。

「……はい、確かに。
 ですけれど、あまりご主人様を甘やかさないでくださいね?」

メイドにあるまじき言葉を小声で囁きつつ。
少女は、相手からの伝言をしっかりと記憶する。
そうして、相手が立ち上がれば。皿をすっ、と片付け。

ヴェルソート > 「あー、そういえば。 使い終わった油に紙を差して火を付けると、明かりにできるとかいう話聞いたことあるな。」
ほんとかどうかは知らねぇけど、使い終わった油なら使いみちとしては妥当な気はするな、なんて聞きかじりの豆知識を披露しつつ。
流石に自分も、真っ黒の油で揚げられたイモは遠慮したいが…多分、夜の酒の肴の揚げじゃがはそんな感じではないだろうか、安酒場では特に。

「ははっ、そうするさね。ありがとな、イヌちゃん?」
少しばかりの皮肉を含んだ言葉にクスクスと笑えば、呼んで良いものか少しばかり逡巡していた彼女の名前を口にしてちょっとだけ意趣返しなぞしつつ。

「あー…まあ、それは…んんむ…まぁ、頑張る。」
甘やかすな、と言われると別に甘やかしているつもりはないが、厳しくしろという意味でなら難しい。
結局、曖昧な返事しか返せないのに苦い顔をしつつも…彼女にお代を渡すと立ち上がってグッ、と伸びをして。

「さて…とりあえずもう一眠りしてから、働くとするかね。…ごちそうさま。」
ひら、と酒場の主人と給仕の少女に隻腕を振れば、コツコツと階段を上がっていくだろう。

イヌ > 「へぇ……それなら、ゴミも出にくいですね」

意外な利用法だ、と感心する少女。
今度、実践してみようかな、と思いつつ。
イモについて、というか油を使う料理について思いを馳せる。
油の処理が簡単になれば、料理の幅も広がるなぁ、なんて。

「はい。ふふっ」

名前を覚えてもらい、嬉しいのか。
少女は、口元を抑えて更に笑う。
その辺りは、歳相応の少女だ。

「お願いしますね?」

念のためにもう一度言う少女。
少女としては、あまり雇用主が周囲の人間に助けてもらってばかりではよくない、と思っているらしい。
かといって、雇用主が周囲のために動きすぎるのもイヤなので、そこは難しい話なのだが。

「はい。ありがとうございました」

受け取った代金を店主へと私、少女もまた、片づけへと移る。
まだまだ客はいるし、仕事はあるのだから。

ヴェルソート > 「まあ、聞きかじりだからほんとかどうかは試したことねぇけどな。」
感心する彼女に肩を竦め、まあ今度機会があれば試してみるかと思っているのはこちらも同じ。
どちらにしろ、油をそんな大量に使うことも、あまりないかもしれないが。

「……まあ、うん、多分。」
念を押されると、やはり曖昧にしか答えられず視線をそらす。
自信が無いというよりは、自分と彼の関係上、それは割と難しい事柄であったので。

「ごちそうさま。また縁があれば、話そうぜ。」
ひら、と彼女に手を振り、そのまま階段を上がれば……部屋で一眠りして、夜…本業に精を出すのだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイヌさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からヴェルソートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイルルゥさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアレフさんが現れました。
イルルゥ > 「ふぅ……」

冒険者ギルドの中、併設された食堂。
そこに…依頼を一つ終え、一息つくフード姿の少女。
今回は単独だったが、特に問題なく依頼を終えることができた。

一つ、椅子に座って注文を。
あまり肉類を食べすぎてもいけないから、野菜もそれなりに。
お腹いっぱいになると、これもまた動きが鈍るので控えめに。
何があるかわからないからこそ、いつでも動けるように体を整えるのは基本だ。

「――――……」

ふぅ、と水を飲んで。
少しだけ、周りに視線を巡らせよう。

アレフ > そんな時。ギルドの食堂の入り口に、ひょっこり見知った顔が現れる。
少年は少女を見つけると、とっても嬉しそうに、にぱー、と笑う。そして、ぶんぶんと勢いよく手を振った。

「いるるさんっ!」

そのまま、とっとっと、と駆け足で。少年もまた少女が座るテーブルまで。

「冒険、どうでしたかっ!?」

ここのところ、お互いソロで冒険をしてみることが多かったから。こうして顔を合わせるのはとても久しぶりだ。
尊敬する先輩冒険者が依頼を失敗するとは思っていないから。
少年の質問は、自分が未経験だったり未知な何かが、その冒険にはあっただろうかと問う言葉。

イルルゥ > 「ん。」

がやがやと騒がしいギルドでも良く通る声が少女の耳に届く。
振り返れば、子犬のように手を振る少年の姿。
丁度隣が空いていたから、ぽふ、と隣の席を示して、座ってもらおう。

「んー…、どう…って、難しい。
えっと…今回はボアの討伐だったけど、特にトラブルも無かった…かな」

ボア、とは大きな蛇の魔物だ。
種類によっては毒持ちもいて、動きも素早い。
運ばれてきた野菜をぱく、と食べながら、思い出す。
とは言っても、少女の場合触れられさえすれば、魔力に耐性の無い種族なら致命打を与えることはできるため、それほど苦にはならなかった。

「アレフ君、は?」

言葉少なにではあるが、聞き返してみる。
素質のある少年をそれとなくギルドに口添えしておいたのだ。
その分色々な依頼を紹介されたはずだが、どうだったのだろうと。

アレフ > 「ボア…」

水蛇とも呼ばれ、相当大きな個体も存在すると聞く。
少年は眼を真ん丸にして驚いた。

少女が口利きをしていてくれたとは知らない少年もまた、冒険を共にできなかった間のことを、ちょこん、と隣に座りながら話し始めた。

「えっと…、オークの討伐、一人で行ってきました!
 それから…火焔草の採取と…」

少女と二人で挑んだモンスター。少年は一人で挑んでクリアすることもできたらしい。誉めて誉めてと、その顔が言っている。
そして、ポーションの材料になる、なかなか見つけることが難しい採取の依頼も、なんとか一人でこなしたのだと、胸を張る。

「九頭竜山脈の城塞都市に盗賊がたくさんいて、探すの苦労しちゃいました…」

見つかると追いかけられちゃうから、と少年は笑い…。

イルルゥ > 「……そう、なんだ」

くすりと笑って、その報告を聞く。
オークも、そして採取の依頼も…少年が以前に受けていた依頼とは段違いの難易度だ。
それを、問題なくこなしてくるということは、やっぱり素質がとても高いのだろうと。
これは、追い抜かれるのも時間の問題かなあ、と優しい目線を少年に向ける。

「頑張ったね」

短い言葉だが、しっかりと褒める。

「盗賊が………、何かされなかった…?」

盗賊も、あくどい手段を持っていることが多い。
魔物とはまた違う方法を持って、攻撃してくることも多い。
だから、余計なケガなどしていないかと、フードの内からじ、と少年を見て。

「…でも、無事、だね。…今度、また…別の依頼でも一緒に受ける…?」

少年と自分はギルド内としては固定パーティというわけではなく。
お互いが空いている時には一緒に依頼を受ける…という間柄ではある。
大きなケガは無さそうだと判断すればそんな提案をして。

アレフ > 「頑張って逃げました!」

何かされなかったか、と心配してくれる少女に、少年は胸を張ってそう答え。
魔物相手には冷静に闘う少年だけれど、やはり同じ人相手となると、やはり問答無用に剣を振るう、というのは躊躇われるらしい。
闘いたくないから、逃げました、と。少年はこともなげにそう言った。
そして、通りかかったウェイトレスさんに、オレンジジュースをとオーダー。

「はい、ぜひ!」

少年もまた、この尊敬する先輩冒険者と組むのはとてもありがたいことなのだった。

今の自分に足りない何かが体験できる依頼だったり。
こういうことに挑戦してみたいなあ、という依頼だったり。
もしくは少年自身が自覚していない成長の糧になりそうな依頼だったり。

そういう依頼を選んでくれていることがよくわかっていたから。

「討伐でも採取でもいいし…キャラバンの護衛とか、そういうのもいいですねぇ」

でも、護衛だと人と闘わなくちゃならないこともあるかなー…、と。届いたオレンジジュースを飲みながら、ぽつり。

やっぱりまだ、人と闘うことには強い抵抗があるようで。

イルルゥ > 「…そっか………」

逃げることも恥ではない。
けれど、討伐や捕縛ができないということもまた、少し壁になる可能性もある。
現に…逃げるだけではどうしようもない人間相手の依頼、というのもある。
責めるでもなく、ただ優しい目で見つめて。

「じゃあ……少し変わった依頼、受けてみる…?」

自信ありげな少年に、少し緊張した面持ちで。
別にやらなくてもいいけどね、と前置きしてから

「ハイブラゼールって、知ってる…?
あそこの、闘技場で…冒険者の育成って名目で、模擬戦をやるみたいなの
……そこで、私の相手、とか」

ととと、と…掲示板に走っていき。
一枚依頼書を持ってくる。

そしてぴら、と見せるのは…依頼書の一枚だ。
そこには確かに、闘技場での依頼が書かれていて。
しかも依頼対象はペアだという。

依頼料も上々、それに……対人経験も積むことができる。
殺すことなく、まずは戦う経験を。

「もちろん、手加減するし…、魔道具で安全も確保されてるみたいだから…
練習に、丁度いいと思う」

これから、少年が大きくなるためにはそんな経験も必要なのだ。
積極的にやれ、とは言わないが。
経験しておかないと…逆に危険な場合もある。
せめて、強制的に戦闘になった時のいなし方ぐらいは覚えておかないといけない、と。

アレフ > 頭にクエスチョンマークをたくさん浮かべて少年は、少女が差し出した依頼を覗き込む。
ふむふむと読み進めるうちに、次第にどんぐりまなこは真ん丸に…。

「ふぇぇ~………」

こんな依頼も来ることがあるのかと、少年はそれはもう、驚いたらしい。
ド田舎の辺境から出てきた少年には、闘技場というものが存在する、ハイブラゼールの街もどうやら想像ができないようだ。

この王都ですら、少年にとっては別世界。
危険で誘惑に満ち溢れて、そして背徳的な街だと思っていたけれど。
どうやらその街はさらに危険で、背徳の遊興が街にあふれているようなのだ。

「…ぼ、ぼくなんかが受けて、だいじょぶ…ですか…?」

依頼として模擬戦をやるだならまだしも。
ハイブラゼールまでの旅や、その街で、尊敬する先輩冒険者に迷惑かけたりしないだろうかと、どうやら少年はそちらに気を回しているようで…。

イルルゥ > 「うん。……だいじょーぶ、だよ。
わたしも、いるし……夜、気を付ければ、そんなに……
それに、アレフくん」

こく、と頷いた。
まん丸お目目の少年に、口元に笑みを浮かべて。
持ってきてくれた料理…肉と野菜の混じったサラダを一口。
もぐもぐ、と咀嚼してから…

「……、嫌な、話になるけど。
…依頼を横取り、したり…、追い詰められて、人と戦わないといけないこともあると思う…
だから、練習。…まだ気乗りしないなら…」

これは、必要な事。
これから、依頼がより難しくなるにつれて、そういうことも当然増えてくる。
難しい依頼をこなしていき有名になれば、なおさらだ。

「……私に、勝ったら、1つ、なんでも…言う事聞いてあげるって言ったら、どうする…?」

くすりと、今度は意地悪な笑み。
からかうようだが、声音は嘘をついておらず。

アレフ > やっぱりこの先輩冒険者は、自分に足りないところをきちんと考えてくれているのだと、少年はしみじみと感じていた。
人と争うこと。
それはやっぱり、気が進まない。

王都までの長い旅の間だって、追剥に狙われたことは何度もあった。
その度に、魔法で動きを止めて逃げ出したり。
その時一緒にいてくれた魔物に脅してもらったり。
そうして凌いできたけれど、一時しのぎと言われても仕方ない方法なのは、少年もよく理解したのだった。

「うん…ぼく、やります…」

やっぱり、気は進まないけど、これは必要なこと。
テーブルの上へと視線を落としてそう答えていた少年。
けれど、少女が告げた最後の言葉に、きょととん、とどんぐりまなこを見開いた。
そして…。

「え、…っと、…なんでも…?」

なんでも言うこと、きく。
ほんとに『なんでも』だろうか。ぱちくりと少年は瞬いて、あわあわと慌てて少女に問いかけた。

「ほ、ほんとに…っ、なんでも…っ!?」

珍しいことに、随分勢い込んでいる。
ふんすふんすと鼻息荒くして、返事がイエスだったなら、これは相当やる気になった証拠だろう。

イルルゥ > 「うん……、別に、好きになれってわけじゃなくて…
方法を、知ってほしい。…どうすれば、殺さずに、凌げるか。
……嫌い、でしょ。そういうの」

一般的に憎まれ、駆逐対象となっている魔物すら。
少年は仲間にしようとする。
だから…悪人だろうと殺すのは躊躇うだろうと。
それならそれで、やりようはある。

抵抗しなければ、その時の『相手』はつけあがる。
荷物を、命を、大切なものを、少年から奪っていくだろう。
だから、対抗する手段くらいは用意しておきたい。
ただいきなり実戦は難しいだろう。
だから、依頼にかこつけて、練習だ。
そんな気の進まないであろう依頼に対して、ご褒美のつもりだったのだけど。

「……♪、……うん……、なんでも。勝てたら、だよ?」

鼻息を荒くする少年にこくりと頷き。

「そう簡単には、負けてあげない、けど。」

やる気を出させるために、更に煽る。
もちろん、練習に身が入れば入るほどいいのだ。
少年が大成するためなら、その手助けをしたいと、少女は思っていて。

アレフ > 「うん。多分ぼく、嫌いです。人と闘うの」

故郷の村でも、きちんと鍛錬をしたし。
狩りの経験で、命を奪うことにも慣らされたけれど。
でもやっぱり、闘うことというか、争うことは好きになれない少年なのだった。

けれど…。

「よぉし、がんばります…!」

ふんす、ふんすと、鼻息が荒い。
なんだか妙にやる気になっているのは、少女が提示してくれたそのご褒美が、少年にはずいぶんと魅力的であったということらしい。

ストローをズズズ~、と行儀悪く鳴らして。
カタン、と音立てて少年は空のグラスをテーブルへと。

「そうと決まったら、特訓しなきゃ!」

あたふたわたわた、ポーチからコインを取り出すと少年は、テーブルに音立ててそれを置いて。
そして、とっとっと、とギルドの扉へ走り出す…。
そして、出てゆく間際に振り向くと、ぶんぶんぶん、と少女に向けて、手を振って。

「ぼく、絶対にいるるさんに勝ちますよーっ!」

…と。なんともにぱーとした微笑みと共に、平和的と言うかのんびりとした勝利宣言をしたのだった。

そのまま少年は、どうやら少女には内緒の秘密特訓に出向いたようで…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアレフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイルルゥさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にプレストさんが現れました。
プレスト > 平民地区でも夕食を終えた後の平和な時間帯。
酒場等からも人が表に出ている。ほろ酔い加減や泥酔に近い状態で歩く人の数も多い。
声をかけやすそうな。若しくは引っ掛けやすそうな相手を探し、往来をぼんやりと佇んでいた。
と言っても手には何かを持つわけでも無い。ただの口だけで誤魔化すつもりでもあり。もしくは必要ならば酒の一杯でも奢るつもりだった。

「――っても、そうそうそんな気軽に良い女でもいるとは限らねぇけど。」

実際良い女が一人で歩いていても、先に声を掛けられたり或いは遅れてツレが並び立つ姿も何度も見ている。
結局運があるか、それともないかはこの後判る話。
視線だけはせわしなく店と店の間を、往来を往復している。

プレスト > 「もうちょい腹ごしらえしとくべきだったかー。」

軽い調子の呟き。空腹であれば弱い酒も良く回る。
自身の顔は赤く、耳の先までほんのりと染まる。酩酊状態の演技をするならば、ある程度説得力のある顔色ともいえる。
といって、その状態で往来を歩いても不要のトラブルに巻き込まれる事を警戒しているのか、ただ壁際に背中を預けて往来に目を向けるのみ。
この状況ならスリの方が怖いので、ポケットに手を突っ込んで今日はそこまで手持ちの多くないゴルドを死守していた。

詐欺るか、ナンパするか。どっちかが出来れば、神にでも感謝するとしよう。
いるかどうかはともかく。神も感謝されても困る様な内容だろうが。

プレスト > ――残念。今宵も出会いは無かった。
で、あればこの街に長く留まる理由もない。馬車に乗って違う街に出るのも面白そうだろう。
余り遠出をしたくはないが、そもそもが真っ当な働き方を拒む性分だ。
壁から背を離し、人の数が少なくなる頃合いを見計らってその場を。
――その街を後にする馬車に乗る姿がある事だろう。

どの街か、集落に向かうか。どこかに面白い場でもあるのかもしれないのだから。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からプレストさんが去りました。