2020/05/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアカサギさんが現れました。
■アカサギ > 「……暑っ……」
平民地区、公園広場は今日も穏やかで賑やかだ。
アタシは噴水の近くのベンチで、ぐったりしていた。
理由は簡単。暑いのである。
「こういう時、黒い毛、ってのは……」
アタシの黒い毛は、見事に熱を吸っちゃってる。
今日は散歩でも、なんて思ってたけど。
こう暑くちゃ、散歩どころじゃないよぉ……。
「そこいらの屋台で、飲み物でも買おうかなぁ……」
あんまり無駄遣いはしたくないけど。
でも、こういう時に飲む冷たい飲み物って、最高に美味しいんだよねぇ……。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクライシュさんが現れました。
■クライシュ > 暑い、この時期の気温ではないと男は思うほどに。
特にインナーを着て、更に革鎧を纏っている男にしてみたら、この暑さは地獄だ。
身体の熱を逃がすことが出来ず、籠ってむしむしとする。
じゃあ脱げばいいじゃないか、と思うかもしれない。
しかし、この服装はこの男の商売道具、おいそれと脱ぐわけにはいかないのだ。
背中の大剣にしてもそうだ、傭兵が武器を持たないなど商売するつもりがないなどと言われかねない。
意地でも脱ぐつもりも、剣も置くつもりもない。
「漫画みてえに……暑くても汗一つ掻かねえなんてありえねえんだよ…。」
だが、そんな悪態くらいは許してほしい。誰にこうのかは知らないが。
その足で、男はアカサギの見ている冷たいドリンクが売っている屋台へと足を運んだ。
この暑さ、どうにかしないと本当に参ってしまいかねない。
「冷たいエールでもありゃ、最高なんだろうけどなあ……。」
■アカサギ > 「ダメだぁ、暑すぎるぅっ!」
噴水の近くのベンチだから、まだ涼しさを感じるときはあるど。
それにしたって今日は暑すぎる!
「このままじゃあウサギの干し肉にでもなっちゃうよ!
飲み物飲み物……」
アタシはガマンできず、ベンチから立ち上がり、屋台へと向かう。
とりあえず、冷たいもの。ちょっとくらいの出費はまぁ、いいよね。
と、そこで。同じく屋台に向かっている人がいて。
ちら、と。零した一言が聞こえてしまって。
「……エールぅ? 分かってないなぁ。
こういう暑い時は、同じ麦酒でも、ラガーでしょ?
よ~く冷えたラガーのあの味! エールとは深みが比べ物にならないって」
と。ついそんなことを言ってしまい、思わず口を押さえてしまう。
ちら、と相手を見上げながら。誤魔化すように、にへら、と笑い。
……い、いきなり失礼なこと言っちゃったかな……。
■クライシュ > 「………あ?」
今まさに、その冷えたエール…ではないが、氷の入った炭酸飲料を買おうとしているところだった。
後ろから突然の麦酒談議が始まろうとしているが、一睨みして。
身長にかなり差があるので、ちょうど見下ろすような形になってしまうが。
「…そっちこそわかってねえなあ?
こういう暑い時にはきんっきんに冷えたエールを、豪快に飲むのがいいんじゃねえか。
ラガーみたいな辛口じゃ、舌がピリピリして何杯もいけねえよ。」
失笑などしながら、両掌を上にあげてやれやれのポーズ。
…失礼などと思うどころか、この男持論を展開す男であった。
「思い浮かべてみろよ、ひんやり冷えたエールのジョッキに、傍らには焼いた鶏肉。
これだけで、人生の5割は勝ち組だと思わねえか?」
後ろを向き、その炭酸飲料のお金を払う。
そしてもう一度向き直り、男は指をさしながら、アカサギに突き付けるのだ。
エールという麦酒のうまさを。
■アカサギ > 「うっ……」
や、やっぱり怒っちゃったかな?
そりゃあそうだよね。いきなり上から目線で話しかけたら誰だって怒るよねそ
オイちょっとまてこの男。今なんて言った?
「……おやおやぁ? ナリはご立派なのに。
あの舌に感じる苦味、風味に弱くていらっしゃる?
それこそ、エールの軽さこそ、繰り返し飲んでたら満足感無くて。
無駄にお腹がちゃぽちゃぽになっちゃうってのよ」
相手同様。こちらは肩を竦めながら、はふぅぅぅん、なんて鼻から息を抜いてみせる。
「い~や、思わないね。
いっそ喉が痛くなるほどに冷えたラガー。
そこに、濃く味をつけた炒り豆。
これが一日を締めくくる幸せの最大にして最高の一手でしょ?」
相手の自信満々な言葉に、アタシも屋台にお金を払って。
同じ炭酸飲料を掲げて見せて、宣言する。
そう。譲る気はない。いや、エールもスキですよ?
ただ、エールは1、2杯も飲めばもういいなぁ、とアタシは言いたいわけ。
■クライシュ > どうやら相手、也は小さい癖に酒の味に関してはなかなかわかっているようで。
だが、男のほうも譲るつもりはなかった。
何せ酒の味を覚えて、10年も愛飲しているのがエールなのだから。
「ばーっか、その軽いからこそ味にバリエーションを持たせられるんだろうが。
ちょいとレモンを落として酸味を咥えたり、ベリー系の甘酸っぱさを足したりして、自分好みの味に仕上げる。
本当の麦酒好きだからこそ楽しめる、賢いやり方だろうがよ。」
…と、言いつつ別にあの味が苦手というわけではない。
喉にガツンと来る苦みと、鼻に抜けるホップの香り。
その味に合わせて、塩味を少しだけきつくして、硬めに湯がいた豆を熱々で…。
この暑さでこんな話をしていると、余計に飲みたくなってきてしまう。
「………なあ、煽っといてなんだけどさ…。
この話、止めねえか?飲みたくなってきちまう…。」
仕事らしい仕事をまだしていないので、今月少し危ういのだ。
■アカサギ > アタシの言葉を聞いても、相手は意見を翻すつもりはない様子。
むしろ、更に自分の意見を売り出してくる。
「いィや! そんなのはカクテルでやればいいさね!
商品が商品として提供されている以上。
ベストの飲み方とは提供されるがままの姿。
その店の自慢の一杯を、そのまま飲むことこそ酒飲みの本意ってェもんじゃねぇのかィ?」
……って、熱く語ってるんだけど。
アタシとしては相手の意見、なるほど、と思うところもあった。
あったんだけど、なんか、ほら。売り言葉に買い言葉ってあるじゃん?
と、そこで相手の一言にようやくアタシも冷静になった。
「……ふむ……。
つまり、なるほど。アタシの意見を全面的に認めるってことかな?」
確かに。この暑さのなかお酒の話とかしたのは致命的だった。
飲みたくって仕方ない。いやぁ、これはいけません。
なので、アタシは通りの近くにある酒場をぴ、と指差し。
「どうよ。今から飲み比べってのは」
■クライシュ > 相手の意見、それもまた一理あった。
その店が自信をもって出しているのだから、その店の味というものがあるのだろう。
それを弄るのであれば、確かにバーなどに行ってカクテルとして出されたもののほうが、確かに味もいい。
が、この男が持論を捻じ曲げるつもりなどない。
そして、その相手もまた持論を捻じ曲げるつもりもないようだった。
「ああ?誰が認めるって?」
その言葉はいけない、この男は割と単純なのだ。
そしてこの暑さで、冷えた麦酒の話などしたものだから、その気持ちももちろんだ。
先に止めに入った男だったが、喧嘩を売られては買うしかない。
元々血の気の多い男だからこそ、その喧嘩を指をさして受け止めた。
しかも声色からして相手は女、女に飲み比べを挑まれて、受けないはずがなかった。
「いいだろう、受けて立ってやろうじゃねえか。
ほえ面掻くんじゃねえぞ、お嬢ちゃん?」
■アカサギ > 「おや、違うのかい?
アタシはてっきり、話をやめようなんて言い出したから。
『ボクの負けですぅ』ってことなのかと思ったんだけど」
相手の反応が実に分かりやすかったので、アタシはさらにそう言い。
思いっきり相手の目の前で、キシシ、と。
まぁ、見る人が見たら苛立つだろうなぁ、という笑い方をわざとする。
そうしたら、見事に相手が乗ってくれたので。
「いいよぉ。そっちこそ。
女の前でゲボとか吐いたら、かっこ悪いよぉ?」
あっはっは、と笑いつつ。持っていた飲み物を飲み干し、屋台のおっちゃんにごみを渡す。
そのまま、先導するように酒場に入ると。
店の一番ど真ん中の席を陣取り。
「マスター! まずはエールを二杯もらおうかな!」
そう、大きな声で注文する。
周囲の客が、アタシと相手のことを見る中。
「そうだ。自己紹介がまだだったね。
アタシはアカサギ。フリーの殺し屋、時々冒険者。
よろしくね、オッチャン」
そう言って、にひっ、と笑って見せよう。
■クライシュ > …はっきり言おう、こういう相手は結構好感度が高くなる傾向がある。
別にどうとかじゃないし、上品な付き合いなんかできるはずもない。
だからこそ、素直に飲み比べしようなんていう相手がいる事自体が少ないのだ。
苛立ちそうな笑いも、こちらも笑って返せる。
機嫌のよさそうな、歯を見せる笑いで返して。
「てめえこそ、潰れたらどうなるかわかってんだろうな?
明日の朝になったら素っ裸でベッドの上でも知らねえぞ、お嬢ちゃん?」
笑って、そういう言葉で言い返す。
男は店の入り口に大剣を置き、促されるままに真ん中の丸テーブルに座る。
勿論その向きは、アカサギと向かい合う形で。
「あ、ついでにレモン果汁とベリーソースも付けといてくれ。」
先ほどの持論通り、男は味を変えるための果物を要求した。
だが、その傍らに鶏肉は用意しない、もちろん酔い覚ましの水なども用意しない。
そんなもの、今は必要ないだろう。
「おう、よろしくな。俺の名前はクライシュ。
今は冒険者なんかやってるけど、もともとは傭兵だ。」
などと言いつつ、『左手で』握手を求めた。
■アカサギ > 「あんまり自信満々にしてると、後々痛い目見ると思うよ?
店先でごみに埋まって寝てなければいいけどね」
時期によっては、良く見るよね。
お店の近くでもう潰れて寝ちゃってる人。
あれは……なんでしょう。見ていて切なくなる。
「あ、味に変化をつけるのは自由、ってことにしようか。
後は、お互い一杯飲んだら、次の注文は相手がする。
交互に注文して、飲みなくなったら負けね」
ルールはこんなところ。酒は何を頼んでもいいけど、同じ酒を飲むこと。
注文は交互に。味の変更などはオッケー。おつまみは無し。
水も無し。純粋にお酒だけでの飲み比べだ。
「へぇ……よろしくねクライシュ。
どうりで、身体おっきいワケだ」
相手の名前を記憶して、そのまま左手での握手に応じる。
そうして、一杯目のエールが届けば。
「よし……それじゃあ、勝負!」
アタシは、それを一気に飲み干していく。
急に始まった飲み比べに、盛り上がる周囲の客。
すぐさま客達の間で賭けが成立し始める。
■クライシュ > 「アッハッハ、ガキの頃ならいざ知らず、今そんな情けねえ姿晒さねえよ。」
だが、確かによく見る光景だ。特にこの暑くなってくる時期。
確かに飲みたくなる気持ちもわかる、飲んでしまう気持ちもわかる。
だが、そうまでなって酒に飲まれて…いや、気持ちはわかるのだが。
「OK、それでいいぜアカサギ。
負けたほうは、ここの飲み代を7:3な?」
最初の一杯目、エールが届けばこれは味に変化をもたらさずに。
アカサギのいう通り、エールは軽い飲み口だから腰、ぐいぐい行ける。
まさに最初の一杯目にしては最適だと、自分は思っていた。
まずはこれで胃を鳴らし、次の一杯目に備えるのだ。
豪快に、ジョッキを手でもって飲み干す。
喉に走るこの冷えた感触、そして適度なアルコールの感じ。
まさしく最初の一杯目には、これしかないと思えた。
「くうーーー!たまんねえぜ!
マスター、お代わりだ。ラガーをジョッキで2杯分な!」
そして、飲み切ったのであればすぐさま次の注文である。
この程度ならばまだまだいける、むしろこれからというところだ。
■アカサギ > 「傍から見ていると滑稽な姿なんだけどねぇ」
飲みすぎての路上での睡眠は、意識混濁による気絶の場合がある。
飲みすぎはいけません。ダメ、絶対。
お酒は無理なく。楽しく飲みましょう。
「うん。それでいいよぉ?」
そこでアタシは、クライシュに向かって笑い。
懐から、一枚のメモを取り出して渡す。
そのまま、周りの客には見えないように、し~、というジェスチャーもしてみせて。
「うん、美味しい!
暑いときは冷えたお酒だねぇ!」
相手と同時に、一杯目を飲み干し、そう宣言する。
さっきの話ではないけど。
エールには、フルーティな風味、軽やかさ、味わいがある。
なるほど、確かに最初の一杯にするなら、エールはいいかもしれないが。
と。内心で思いつつ……。
「ちょっとちょっと、周りのお客さんたち。
勝手に賭けの対象にしないでよ。
賭けするってんなら、一口10ゴルドから。
アタシに払ってよね」
と、周囲の客にいってのける。
しばしの間の後、賭けに参加している客達は。
……まぁ、こいつらも酔っていたのだろう。
なぜか、そんな義務も無いのに、あたしに向かって金を払い始めるのである。
そこであたしは、クライシュに流し目を送り、続いて、渡したメモをちらと見る。
……もしもクライシュがメモの中をのぞくのなら、この文字が見えるはずだ。
『客どもから上手く巻き上げたお金で飲み代を払ってしまおう。
あまったら、勝ったほうが7、負けたほうが3の取り分で』
と。
■クライシュ > 一杯目のエールを飲み切った時に、男はアカサギにこっそりと。
テーブルの舌から渡されたメモを受け取り、その中身を見ようとした。
なんだこれ、と聞く前にアカサギに聞こうとしたが、そのジェスチャーに何やらよからぬことを、と思った。
しかし、その顔はどこか邪悪に歪み、合図として片目をつぶるウィンク。
メモの内容を見て、男はくくっと喉を鳴らして笑った。
こいつも悪だなと思い、だが職業とこういうところに来るのだから。
このくらいの悪知恵くらい浮かぶのだろう。
そして周りの客も、昼間から飲んでいるのだから相当良い鵜も回っているはず。
なんや怪しまれずに、賭けの代金を払っていく様子を見ながら、次のラガーが届くのを待っていた。
「だよな、そいつに関しては俺も同感だ。
特にこう、一仕事終えてからこいつを一杯やると、また格別なんだよな。
体中火照りまくってるときに、こいつで熱を冷ましてよ。」
その傍らに、何か酒に合うつまみでもあれば最高だ。
酒の味を知り、それにのまれることなく飲み続けられるのならば。
■アカサギ > アタシだって、ある程度は世間を知っている。
だからこそ……外で議論をしていたとき。
クライシュから、『金の匂いがあまりしない』ということに気づけた。
(そもそも、この手のタイプなら。
飲みたくなったら飲みに行くだろうしね)
誘いもせず、一人で酒を飲みに行く気配も無い。
そうなると、金欠なのではないか、ということくらいは予想できる。
途中の経過はどうあれ。アタシが煽って飲みに誘ったのだから。
『二人して懐痛めずに飲む』くらいはしてあげてもいいよね。
「九頭龍の水浴び場って知ってる?
アソコで東の国式の、お風呂に浸かって……。
その後に一杯、なんて最高だよ?」
うんうん、と。クライシュの言葉に頷きつつ。
二杯目の酒、ラガーが届けば、それも一気に飲む。
麦酒は喉で味わうべし! だ。
「くあぁぁぁっ! この、深い味わい……!
ラガーが美味い内は死ねねぇ、ってねェ!」
我ながらオッサン臭いとは思うけど、本当に美味いんだから仕方ない。
ぐびぐびとそれを飲みほし、ジョッキを机に叩き付け。
「マスター! エール二杯おかわりで!
……次は、エールに味変更、試してみよう」
いい飲みっぷりのクライシュのオススメの飲み方なのだ。
きっと美味しいに違いないので、試してみようと思う。
次の酒が届くまでの間、アタシはクライシュを見て。
「そういえば、傭兵から冒険者になった、って言ってたけど。
何で? 冒険者もそうだけど、傭兵だって、稼ぎは同じくらい稼げるでしょ?」
というか、素直に疑問。
冒険者も傭兵も、危ない橋を渡る仕事って点では同じ。
なのに、なんでわざわざ冒険者に転身したんだろうか。
■クライシュ > 「んあ、九頭竜の水浴び場?
すまねえ、この国に居ついてまだそこまで日がたってなくてよ、あんまりその辺見に行ってねえんだわ。」
こういう見かけに対して、いろいろなところを見に行くということはあまりしていないのだ。
この町に来てまだ1週間やそこら、すべての施設を頭に入れているわけではない。
だが、話しぶりからして風呂屋らしい。
これからの季節、きっとその風呂屋も繁盛することだろう、汗を落とし、そのあとでうまい飯に酒を飲み。
いろいろと想像しながら、男は二杯目のラガーに手を付けた。
「でも、確かに熱い湯に浸かった後にあおる酒は格別だな、そいつに関しては、思いっきりよくわかるぜ。」
と、言いつつラガーを飲み干した。
喉にビリリと来る深い苦み、だがそのあとの後味は非常にすっきりしている。
いつまでも口の中に残っていない、だがそれでいて心地いい、深い香りが鼻から抜けていく。
「…~~~~~っかぁぁぁ!ばっきゃろう、ラガーだけじゃねえんだよ!
全部の酒が旨いうちに、仏さん拝むわけにはいかねえだろうがよ!」
などと、こんなセリフが出てくるほどには上機嫌なのだ。
昼間から飲む趣味がないというだけなのだが、やはりこういう暑い時には冷えた麦酒が体に染みわたる。
「味変するなら、最初はレモンがおすすめだぜ。
味がさっぱりして、魚料理なんかにも合う味になるんだ。」
甘みを足したいときには甘みの強いフルーツを、そして刺激が欲しい時にはスパイスを。
いろいろな味を楽しめるのもまた、エールの楽しみ方だった。
が、次に続いた質問に、あっはっはと軽く笑った。
「ああ、済まねえ、言い方がまずったな。
傭兵を辞めたわけじゃねえよ、ただ本部からお呼びがかからねえから、冒険者やって路銀を稼いでるって感じだな。」
■アカサギ > 「うん。平民地区にある旅館なんだけどね。
お風呂は大浴場、そして東式。要するに本当に。
東の地のお宿、って感じなんだよね」
説明しつつ、アタシはクライシュの耳に口近づけ。
(……ここだけの話、ってんじゃないんだけど。
知る人は知ってる有名な噂。
そのお宿、『そ~いう目的』の客も多い宿なのさ)
こういう言い方をすれば、勘の良い人間ならどんな宿かは分かるだろう。
……アタシも、時々しか行かないけど。
まぁ~、あちこちで色事がねぇ……。
「でしょう? まぁ、寒い日に燗で、ってのもいいんだけどねぇ」
季節によって、酒の味は変わる。寒い日に、暖かい部屋で冷、というのもオツ。
あぁ、なんかそんな話してたら『酒』がほしくなっちゃうなぁ。
「あっはっは、そりゃあそうだねぇ。
まだまだ、色んな酒が誕生するだろうし」
人類の歴史。すなわち、酒、料理、戦争、色の歴史。
今後まだ見ぬ酒と出会えるのだろうから、そうそう死ねないよね。
「おぉ、ありがとう。そうさせてもらおうかな。
……クライシュさんや。こうなってくると。
……ルールで決めたとはいえ、ちょっと」
食べ物ほしくないです? なんて。
舌を出しながら言う。
いや、実質この勝負は形骸化したので。
楽しく飲めればいいかな、とか思っちゃってますよ?
「なるほど。つまり、副業ってことね?」
じゃあ、アタシとおんなじだぁ。
なんだろ、ちょっと親近感。
そこで届いた三杯目のエールに、アタシはレモンを絞り。
「改めて、ステキな出会いにカンパーイ!」
■クライシュ > 「………ンあ?」
九頭竜の水浴び場、そこがどういう目的で使われるのか。
最初の質問だけで言えば、ただの所謂風呂付の寝泊まりできる宿、というだけだった。
だが、耳打ちで告げられたセリフに、いつものような一言を添えて聞いてみれば、ああなるほどと思った。
先日からも思ったが、この国はどこか性に関してはかなり奔放な気がする。
奴隷が普通に裸で売られていたり、この国の種族がそういう店を平気で開いていたりもした。
ならばそういう店があっても別に気になるようなことでもない。
そもそも、そんな話で赤面して顔をそらすような、初心な男に見られるだろうか?
「そういうこったよ、アカサギ。
傭兵兼冒険者なんてやってるけど、正直酒が飲めれば何でもいいんだ、俺は。」
いろんな歴史があるだろう、だがその歴史にはかならずアカサギの思うようなことが多発している。
きっと、今もどこかで血が流れて、誰かが飯を作り、酒を飲んでいる。
届いたエールにベリーソースを混ぜながら。
アカサギの言葉に、再び豪快に笑った。
だからこの勝負はきっと、もはや引き分けということになるのだろう。
「オッケー、ルール変更。酒は交互にだけど飯の注文は自由ってことにすっか。
んじゃ、マスター。こっちに焼き鳥2つくれや。」
ベリーソールを落としたエルの色は、濃い紫色に変化する。
実は、ホップの苦みは意外とあっさり消せるのだ、こうしてソースを少し落としてやっただけで。
副業、という言葉には大きくうなずき、そして右手でジョッキを打ち鳴らせる。
「おう、そっちもな。酒飲み友達ができるなんて、久しぶりだぜ。」
■アカサギ > アタシの一言でクライシュは察したようで。
しかして、大げさに反応しない辺りは、なるほど。慣れてるという感じ。
まぁ、冒険者やってて、ウブな人間とかってのは。
あんまりいないだろうからねぇ。
「アタシはまぁ、色々とあるんですが。
でもまぁ、酒がのめれば幸せ、ってのはあるかなぁ」
昔は全然苦手だったんだけどなぁ……。
こっちに戻ってきてからは、もう、飲むようになっちゃてたし。
あ、ベリーソース混ぜてる。
「わーい、いいねいいね。
どれ……ぎゅぅ、う、うぅっ、っとぉ……。
……ん、美味しいっ!」
アタシもレモンを絞りきり、エールに口をつけてみる。
うん、これは。風味に変化があって、さわやか。
なんだろうか。飲みやすさが際立つなぁ。
口の中の苦さが洗い流されていく感じ?
「……友達?」
乾杯したアタシだけど。友達、と聞いて動きを止めてしまう。
友達。友達……。しかも、異性の。
……そう、アタシには友達が少ない。それこそ、本当にいないってくらい、少ない。
なので、友達、なんていわれると。
「……」
照れる。照れてしまう。顔が熱くなるのが分かり。
アタシは、一気にエールを飲み干していく。
■クライシュ > 紫色に染まったエール、それを口につけて一気に飲み干す。
このベリーは、おそらくブルーベリーとクランベリーを混ぜているのだろう。
ほのかな酸味を残しつつ、甘みが口の中に広がっていく。
本気で麦酒を飲む人間にしてみたら、まるでジュースだなと揶揄われるかもしれない。
だが、味に変化をもたらせて別の楽しみをもたらせるのも、麦酒のいいところだろう。
少なくとも、この男の飲み方は味に変化をもたらせつつ、飽きずに楽しく、だ。
「酒以外の幸せ……なあ?
まあ、確かに俺もいろいろとあるけどよ…今は酒かな、うん。」
別の幸せ、というか楽しみ、というか愉しみ。
今は言うべきじゃないだろう、まだ日が昇っているし、他の客も多い。
一応そういうところはわきまえているつもりだ、昼間からするのも別に構わないのだが。
「そうだぜ、友達だ。酒飲み友達、同業の友達。
まあ、暗殺者がっていうのも悪くはないけどな。」
女の飲み友達なんて、そうそうできるものではなかった。
だから、男も少しだけ嬉しく思ったりもしている。
今まで、女なんて抱いてなんぼの生活だったから、こうして目の前で堂々と飲み比べを挑んでくる女が、珍しく。
そして何よりも、最初のやり取りが楽しかったから。
「………アカサギ、どした?」
突然ペースが速くなるのに、首をかしげ。
■アカサギ > 「美味しい食べ物。ちょっとした娯楽。
人生で、大事、って言われるものっていろいろあるけどね」
結局のところ、幸せって人それぞれだし。
後は、状況によっても変わってくる。
これがあれば幸せ、ってのはあっても。
幸せはこれじゃないと、っていうのは。ないんだよね、きっと。
「……と、友達。
アタシと、クライシュ、が?」
繰り返される言葉に、思わず確認してしまう。
アタシを指差して、クライシュを指差して。
アタシから、友達になって、って言うんじゃなくって。
友達だ、って。異性に言われるとか。
無い、っていうか、初めてのこと。
「……や、その。
アタシ、男の人の、友達とか。
いたこと、ないから」
ぐい、とジョッキを空にして、4杯目、ラガーを頼んで。
そこで、つい。クライシュの顔が見えちゃったから。
アタシは、顔を隠すようにして。
「……テレ、る。っていうかぁ……」
友達が。増えました。
■クライシュ > 人生で大事なこと、それは何だろうと少し考えたことがある。
しかし、考えただけで実際にこれだと答えを出したことはない。
たくさんある事実の中で、これが楽しいと、これがいいと思ったことだけをして生きてきたつもりだ。
だから、幸せの定義なんて考えるだけ、無駄だと思う。
自分が幸せならそれでいいじゃないか、幸せじゃないならそれをぶち壊せばいい。
そんな、脳筋な考えをしているからこそ、裏表がないのかもしれないが。
「………そんなにおかしいことか?
いや、確かに男と女で性別は違うけどよ、友達ってのはそう言うもんだろ?」
別に、恋人になれと言っているわけではない。
酒を飲んで楽しい、飯を食って笑い合える。
男の友達の定義はそれのみだ、そしてそれを宣言した以上、男は決してそれを取り消すことも、裏切ることもしない。
だから、4杯目のラガーに注文するアカサギの顔が赤面してる様子に、くくっと喉を鳴らして笑った。
「なんだよ、豪快に酒を飲んだり麦酒にこだわりとかあるけど、可愛いところあるじゃねえか。
でもよ、俺は一度言った言葉を取り消したりはしねえぞ?」
だが、一度言った言葉は取り消さない。
だから今度は右手で、握手を求めるのだ。
■アカサギ > この国の人間に限った話じゃないけど。
人生っていうのは、そりゃあ多種多様だ。
だからこそ、幸せとはなんぞや、ということを定義するのは難しい。
結局のところ、その人の幸せっていうのは。
きっと、他人が完璧に理解することはできないんだろうなぁ。
共感は。できるんだろうけど。
「いや、その。アタシ、仕事が仕事だしさ。
男の、っていうか。うん。
ぶっちゃけ、友達全然いないんだよね……」
勢いに任せて告白する。
最近友達は出来ましたけど。
多分、友達が多いです、っていう人に比べたら、全然なので。
「か、カワイイとか! バカにしてんだろ!
……う、うぅっ。じゃ、じゃあまぁ。
と、友達、ってことで……」
差し出される右手。アタシは、それを握って、握手して。
そのまま、届いたラガーを、一気に飲む。
う、うぅぅぅっ、き、効くぅぅぅぅっ……!
■クライシュ > 「仕事……ああ、まあ確かになあ。」
冒険者をやっているけれども、暗殺者。
そういう友達ができにくいというのも理解できる。
傭兵などしている自分にしてみても、友達などその団の中ではいる物の女の友達というのは、本当になかなか。
だから、こういうふうに酒を飲みながら笑って過ごせる友達は、できれば嬉しいものだ。
「いいじゃねえか、別に。何やってても、普通にしてりゃできるもんだと思うぜ?
そもそも、傭兵やってる俺だって、本気で友達って言えるヤツなんて、片手あれば十分だよ。」
笑って見せて、ラガーを口につける。
ペースがどんどん上がっていくけれども、大丈夫だろうかという心配はまあまあしつつ。
とはいえさすがに4杯目ともなると、目が少し回ってきた。
限界はまだ遠いが…これ以上だとそろそろ顔に出てくるころか。
まあ、実はこっそりと。
最初の麦酒談議の時にそんな予感がしていたのだ。
最初は潰してやろうかとは思っていたものの、思ったよりも相手が強いし、何よりも。
その話しぶり、雰囲気、それらを全部ひっくるめて、楽しかった。
それが、友達にしようと思った判断だった。
■アカサギ > 「基本的に、殺し屋って好かれる仕事ではないからね」
お金をもらって、ターゲットを始末するお仕事。
なんていうのかな。職業差別、みたいなのは経験してないけど。
それでもやっぱり、ちょっと距離取られることはあるよね。
「そうかなぁ……。
う~ん……まぁ、あれだよ?
そんな、百人千人の友達がほしい、ってことでもないんだけど」
豪快に笑うクライシュを見て思うのは。
クライシュは、交友関係は広そうだなぁ、ということ。
四杯目のラガーを飲みきって、アタシは一度、息を吐く。
さすがに、短時間で飲みすぎたかなぁ。
「……あむあむ」
そうして、届いた鳥を食べつつ、はふぅぅん、と。
いやぁ、やっぱり麦酒系統には、鳥が、合いますよ……。
思わず顔がほころんでしまう。これぞ、幸せ、というヤツである。
■クライシュ > 「傭兵も似たようなもんだよ、血なまぐさいのはお互い一緒さ。」
結局は、誰かからお金をもらって、誰かから奪って。
そんなことをするから、傭兵だって評判はよろしくはない。
汚いことも何でもやった自覚もあるからこそ。
だからこそ、交友は広くても結局は浅い付き合いしかないのだ。
一期一会と言えば聞こえはいいかもしれない、しかしそれは逆を言えばその程度の付き合いでしかないのだ。
心の底から、友達と呼べる人間でもない限り、深い付き合いはしない。
ようやく届いた鳥焼き。
それを食いながら、男は笑みを浮かべる。
友達少ないけれども、まあ人生楽しければ何でもいい。
酒を飲んで、こうやって話して、そしてまたこの町で会うこともあるだろう。
あ、とそういえば……。
「…いけね、そろそろ俺は宿を決めとかねえとな。
…シャーネ―から、ここはお前の勝ちってことにしといてやるよ、マスター、わりいけど酒代、付けといてくれや。」
そのうち払うからよ、と男は笑った。
マスターも、おそらくはこういう話は慣れているのだろう、快く許可してくれた。
■アカサギ > 「……まぁ、そうかもね」
お互いそういった稼業である。
なんというか、その道以外の道もあったんだろうなぁ、とか思うけど。
もうこの道歩んじゃってるし。
しかも、すれ違った人は追いかけなかったし、と。
ま、そんな所なのである。悔いても仕方ない。
「ん、宿決まってなかったの!?
それは、引き止めてごめんね。
ふふっ。わかった。じゃあ、また遊ぼうね」
少し白々しいその言葉に笑いつつ。
アタシは、見事勝利を手にして。
客どもから巻き上げたお金で、二人分の食事代を払う。
ちょうど、ほぼほぼぴったり、っていう感じ。
そのまま、アタシは店を後にして、すっかり涼しくなった風に、また幸せを感じるのであった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からクライシュさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアカサギさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨店」にピングさんが現れました。
■ピング > 少しばかり昼の日差しが力を増してきた今日この頃。
じりじりと地面から照り返す熱を緩和させるべく、建屋の前の道へと打ち水をする人がちらほらと。
この雑貨屋の店主もその一人。
柄杓で桶から水を掬い、軽く振るって道を濡らし、繰り返しその動作を続けていた。
その内に、
―――ぱしゃんっ、と。
偶然通りかかった人に柄杓の水を思いっきりかけてしまった。
視界の端に映った際に、あぁこりゃ女性だと思った瞬間に手が滑ってしまった訳ではないのである。
今、顔を上げて相手の姿を見れば、そこにはきっと素敵な濡れ鼠な光景が見れるはず、等とは決して思っていない。
あぁこりゃすまない!と大げさな程に吃驚した様相で謝罪を向け、濡らしてしまった相手の姿を顔を上げてご確認。
店に入ればお詫びの着替えなど幾らでも揃っているから、それを謝罪のネタにするつもりだ。…まぁ、それが普通の代物である可能性は限りなく低いのだが。
さて件の相手は知り合いか、それとも見知らぬ人になるだろうか。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨店」にミコトさんが現れました。
■ミコト > 店の前で足を止めたのは異国の白い衣に身を包んだ少女だった。
雪よりもなお白い髪、透き通るような白い肌、何もかも白い少女はゆっくりと首を回して視線を店主へと向ける。
その瞳すらも白い――一目で人ではないことがわかる異様な少女だった。
「構わぬ、気にする必要はない。店主よ。」
街を徘徊していれば嫌がらせを受けることもある。
しかし、すぐさま謝った店主の様子から、単純な不注意だろうと推測出来る。
故に少女は、白い衣が肌に張り付き、その下の肌を透かせていても気にする様子はなかった。
■ピング > 何しろ、暑い日だ。
そうそう大事にはなるまいと軽い気持ちで謝意を伝えながら顔をあげれば、果たして其処には季節感にそぐわぬ真っ白な存在。
そして何ぞ文句の一つでも言われるかと思っていれば、返って来た言葉は何ともお優しい物だった。
その口調が見目の歳に見合わぬものだから、更に目を瞬いてしまったのだが。
「お嬢ちゃん…お嬢ちゃん?あー、すまんすまん。
何にせよ、こっちの不手際だ。替えの服とタオルくらいはあるからよ。ちょいと寄ってきな。」
布が肌に張り付き、その肢体のラインを浮かばせるその姿は、常であれば鼻の下を伸ばしていただろう。
しかしどうにも、今日はそんな気が起きなかった。
触れ難い、とでも言うべきなのか。或いは恐れ多いというべきなのか。
言語化し難い思いに首を捻りながらも、何にせよこのまま放置する訳にもいかず。
店の中へと招くよう声をかけ、相手が応えてくれるならば着替えとタオルを貸し出すのだろう。
余りの紳士な対応っぷりに本人ですら首を捻る。そんな一日となるのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨店」からピングさんが去りました。
■ミコト > 「すまない。」
店内へと招き入れられ、親切にも着替えとタオルを手渡されると小さく頭を下げる。
着替えは断ったものの、善き人なのだろうと少女は思う。
そして、とりあえずの始末を終えると小さく頭を下げて店から出る。
そして、去り際、善き人の為に簡易ながらも悪しき者を遠ざける祈りを捧げその場を後にしたのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨店」からミコトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にマコさんが現れました。
■マコ > 「ふー、今日は暑い日だったなぁ……。」
夜になって少しマシになったとはいえ、まだ少し蒸し暑い感じがする。
公園のベンチに座って、マコは空を見上げながら今日の晩御飯としゃれこんでいた。
食欲がない、というわけではない。
お金がないというわけでもないのだが、今日は酒場で一杯やろうかな、という考えに至らなかったのだ。
ここのところ、宿の中でずっとおとなしくしているばかりだったから、外の空気を吸いたい。
ギルドのほうでも、仕事がめっきりと少なくなっていた。
まあ、むしろ仕事がないほうがいい傾向なのだろうけれども、冒険者であるマコにとっては死活問題だ。
どこかでアルバイトでも探したほうがいいかな、と思ったが。
「……ボク、できることないんだよねぇ………。」
今までずっと、冒険者しかやってこなかったので。
配膳の簡単な仕事くらいなら出来るだろう、しかしそういう仕事は全然手が足りているらしい。
じゃあ何か作るか、といっても今までそんなことしたことがない。
日々の生活を賄えるだけの賃金を払ってもらえる仕事、となると難しい。
まあ、もうすぐ水辺の依頼も増えてくるだろう。
その時になったら一気に稼いで、冬を越せるだけのお金を貯えよう。
まだ大丈夫、と前向きに考えているものの、先行きはどうなることやら。