2020/04/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 冒険者ギルド」にアレフさんが現れました。
アレフ > 随分と、スライム退治にも慣れてきた。
十個のスライムの核も、以前に比べれば短期間で集められるようになってきた。

「三体くらいなら、まとめて出てきても平気かなあ」

今日も袋にスライムの核を十個集めて、少年は冒険者ギルドのドアを開く。

「行ってきましたぁ」

よっこいしょ、と。ギルドの受付へと袋を乗せて。
受付職員のおねーさんが、討伐確認をしてくれている手元を好奇心丸出しで覗き込む少年。

やはり…まだまだおのぼりさん全開なのだった。

ご案内:「王都マグメール 冒険者ギルド」にイルルゥさんが現れました。
イルルゥ > 報告をする少年の隣に、フードを被った姿が…これもまた受付さんに依頼の報告をしている。
どうやら、ゴブリンの群れの討伐だったようだ。

「はい。数は12体ほどで…えっと、パーティの人が盾をしてくれて…」

などと言いつつ。
その姿は、ギルド内ではちょっとした噂になっているもの。
常にフードは外さないものの、非常に友好的であり。
面倒で危険な斥候も気にせず行ってくれる。
その上、本人の戦闘力も中々、と言う実力面でも目立つ人物だ。

「……あなたも、お疲れ様?」

報告を手早く終わらせて、フードの内をあまり見せないように少年に話しかける。
そのため、少しうつむき気味だが、フードから覗く口元は微笑んでいて。

アレフ > はいどうぞ、と言われながら受け取った報酬は、ここのところの定番の額。
これで少年は、数日分の宿代と食費が十二分に賄えるから、少しずつ蓄えも増えている。

もう少し、いい武器や防具があったら、スライム卒業してゴブリンくらい…と、そう思っていた矢先。
ゴブリン十二体…。
すごいなあ、と。少年は傍らの声を聴いて驚いた。
自分とあんまり変わらないくらい小柄。

あんまりまじまじと見つめてしまっていたものだから。
少年は問われた言葉にただもう、こくこく、こくこく、と頷くしかできなかったのだけれど。

イルルゥ > もちろん、一人で狩ったわけではない。
少女はあくまで、自分の取り分を貰いに来ただけだ。
けれどそれでも…ゴブリンは村を襲ったりする脅威度もそれなりに高く、報酬もスライムより少し良い。

「あ、えっと。ごめんね、急に。
私、スライムが少し苦手で…パーティを組んで狩ってるの?」

魔法の力があるとはいえ、彼女が得意とする打撃とスライムは非常に相性が悪い。
逆に、それをソロで狩れる少年に興味が出たようで。
こっちこっち、と冒険者ギルド内の椅子に導いて一緒に座ろうと。
その間も、少しうつむき気味のままだ。

アレフ > 今度の少年の答えは、ふるふる、ふるふる、という首を横に振る仕草。
別段、しゃべれないわけではないことは、先ほどまで受付で受け答えしていたことで知れるだろうけれど。

…これまた、おのぼりさん特有の人見知り、というやつなのであったけれども。

それでも少年は、とことこと、誘われるままについてゆく。
よっこいしょ、と椅子にかけて少年は、初めて口を開いた。

「こ、こんにちは。
 あのう…ぼくはまだ、一人です。初めたてだから、なかなか誰も組んでくれなくて…」

あはははは、と。少年は笑うけれど。
少しばかり寂しそうな、乾いた笑いであるような…。

イルルゥ > 特に、言葉を発せられなくても彼女が怒ることはない。
少年の様子から、緊張していることはすぐに分かったから。

「一人……」

それはそれですごいなあ、なんて椅子に座りながら思う。
2人PTでも組んで、前衛と魔法職…というのがスライムの安定の狩り方でもある。

「良かったら、私と少し組んでみる?私も別に固定のパーティってわけじゃなくて、今回限りで解散だったの」

何だか寂しそうなのが放っておけず、そう言って。
勿論無理しているわけではなく、本当に今はソロの状態だ。

アレフ > その言葉を聞いた少年の表情といったら。
はじめは、きょとん。
そして、黒目がちのどんぐりまなこを見開いて、それはそれは嬉しそうに微笑んだ。

「い、いいんですか!?」

よかったぁ…と。ほっこりと少年は息をつく。
いいのか、そんなに簡単に人を信用していいのか、と。
思わず誰かのツッコミが入るかもしれない。

「ぼくは、アレフです。よろしくお願いします」

自己紹介とその挨拶のために。少年はわざわざ椅子から降りて、ぴょこん、と勢いよく頭を下げた、のだった。

イルルゥ > 予想外に喜んでくれた。
それに少し驚きつつも自分も立ち上がって。
ゆっくりとお辞儀をしよう。

「もちろん。アレフ…くん?私はイルルゥ。イルルゥ・ガルゥだよ」

呼び名に迷いつつこちらも自己紹介を

「どうする?君が大丈夫なら簡単な依頼を受けてみてもいいし…それか、今日は仮結成のお祝いでもする?」

と言って、判断を委ねてみよう。

アレフ > 「イルルゥ…イルルゥさん…」

名前を呼ぶ様子は、まるで初めてできたパーティメンバーのその名前を、噛み締め味わっているかのよう。
にっこにっこと、それはもう、嬉しくて仕方がないようだ。

「ええと、ええと…っ!」

少年は、掲示板とパーティメンバーとなってくれたフードの姿とを、忙しなく交互に見比べている。

少しでももっと冒険したい、という気持ちがやっぱり強い中。
一人でのスライム狩りで、薬草やら何やらいろいろと使ってしまったことも思い出した。

「そしたら…イルルゥさん。ぼく…ごちそうしたいです!」

冒険を終えて帰ったきたばかりなのはお互い様だから、まずは祝杯…の方を少年は選んだものらしい。

イルルゥ > つい、フードの内の笑顔が濃くなる。
怪しい姿ではあるが、感情表現をしないというわけではなく

「誰かと組む経験って必要だと思うから…私も始めたての頃はそうしてもらったし」

なんて一言付け加えてから。
補充は既に道すがら済ませており、少女は次の冒険にもすぐ行ける状態であったけれど。

「ごちそうって…、いいよ、私が奢ってあげる。いこいこ」

自分より報酬も少ないだろうに。
奢ってくれるという相手にクスリと笑って。
ギルドに併設されている食堂に案内しよう。

「ええと、ゴーグ鳥の油焼き大盛りと、シュルのサラダ、果実水2つ。支払いは私で。」

そうして、反論を言われる前に…さっさと注文してしまおう
肉料理と野菜と甘い果実水だ。

アレフ > 笑顔というものは、伝わるものなのだと、故郷のおばーちゃんは言っていた。
もうよく目が見えないことも多いおばーちゃんは、少年が微笑むと必ず微笑み返してくれた。そんなおばーちゃんが言うのだから間違いない。
少年もまた、フードの奥の素顔が笑顔を浮かべてくれたその瞬間に、照れくさそうにまた、笑顔を返していた。

そして二人は、食堂へと移る。

少年もここでは何度か食事をし、そのたびに肉や魚をそれはもう、モリモリと食べていた。

「だ、だめですよぅ、今回はほら、ぼく…お礼したいからっ」

こういう立ち居振る舞いが大人なんだろうなあと、少年はどこか眩しく思いながら。下手すると自分より小柄かもしれない相手へ尊敬のまなざしを送るのだった。

「あと、パンもください!」

美味しい肉と野菜を食べるなら、絶対にパンが欲しくなる。
ここのパンは、少し硬いけれどしっかりとしていて、それは食べ応えがあって大好きなのだと、少年はにこにことして…。

イルルゥ > 顔も何も見えないけれど、少女は確かに微笑んでいて。
相手の食欲を知らない少女は適当な…おおよそ二人分だと思える量を注文して

「ふふ。じゃあ、パンの代金だけ払って?」

折衷案として、そう言ってから。
料理が来るまで雑談しようと。

「そういえば…スライムはどうやって倒してるの?魔法かな…」

剣では核を正確に貫かないと討伐は難しい。
だからこそ、少年が魔法を使えるのではないかと思って。

「あ…そういえば、言ってなかった。私はどちらかというと前衛だから。
罠の探知とかもできるよ。斥候は任せて」

簡単に、けれど少し自慢げに自分のできることを伝えていこう。

アレフ > 料理に先立ち届けられた果実水。それを、かんぱーい、の言葉と共に合わせてから。
一口、口を湿らせるようにして、少年は問われた言葉に答えてゆく。

「魔法もですけど…。それは、たくさんの群れとぶつかっちゃった時で…」

スライム一体が相手なら、剣です、と。少年はこともなく告げた。

「故郷でもスライム退治はしてたので、慣れてますから」

曰く、半透明でほぼ視認は不可能なその核が、少年には見える…否、わかるのだ、という。不定形の粘体が、今どんなかたちをしているか。そのかたちによって、核がどこにあるのかは、慣れればすぐわかります、などと。

…もしかすると、なかなかの逸材なのかも、しれない。

「罠探知!」

どんぐりまなこがまた見開かれる。

なんでも、遺跡探索の依頼を受けようとして、窓口のおねーさんに止められたのだとか。ちゃんと、役割分担できないと危ない、と。

「そしたら、そしたら、イルルゥさん!
 ぼく、最初の依頼はどこかの遺跡がいいです、たんけん、た、探検したいですっ!」

と、早くもどんぐりまなこをキラキラさせて。

イルルゥ > 同じくかんぱーい、と緩く。
ただ、やはり上は向かないけれど。

「おー…!
大抵みんな、巻物とかで処理してるから、剣で対抗できるのはすごい」

素直にそう称賛する
これが傲慢ちきな冒険者ならただの見得の可能性もあるけれど。
少年にそんな様子はない。信用しても良さそうだ。

「遺跡かあ…、いいよ。近くにそんなに脅威じゃない場所があったはずだから、そこに行ってみる?」

調査依頼があったはず、なんて言って。
報酬はそれほど多くない。
しかし、数は少ないものの知能のあるモンスターによってしっかり罠なども仕掛けられており。
そういった経験を積むには最適な場所だ。

「あ、料理来たね」

丁度、手早く焼かれた鶏肉と野菜が運ばれてくる。
大皿に盛られているそれを少年のほうに多めに取り分けて、お皿を渡そう。

アレフ > 「ただ、慣れてるだけですよぅ…」

褒められ慣れていないのか、少年は嬉しそうに頬を染めると、照れ隠しなのかまた、グラスを口許に寄せて果実水を、一口。
告げられる説明に、それはもう、素直に頷きながら耳傾ける。なるほど、それではどんな遺跡に挑むかは、ちゃんと教えてもらいながら決めよう、なんて。
話を聞きながら考え込んでいる様子。
そこへ、と。

「う、わぁぁ………♡ ♡ ♡」

運ばれてきた料理に、少年の声は語尾にハートが舞っている。ジュぅ、という焼き立ての証のような音。
それと共に立ち昇る香ばしい薫り。
ちょっとハーブが添えてあるのが気が利いている。ますます、食欲がそそられるからだ。

取り分けてもらうまではもう、行儀よく。
そして、いそいそと少年はフォークとナイフを手に取った。

「いただきまーす♡ ♡ ♡」

もむもむ、はむはむ、それはもう、美味しそうに笑み崩れながら、少年はぴりりと胡椒の効いたゴーグ鳥のもも肉あたりに大満足。

イルルゥ > 「いやいや、あれを剣でって…。……ふふ……♪」

更に褒めようとしたけれど。
皿を渡した端から美味しそうに食べていく姿に、言葉は中断せざるをえず。
見ているこっちが幸せになりそうな食べっぷりだ。

少女の方はと言うと控えめに料理を取っていって。

「美味しそうに食べるね。どんどん食べていいよ。
ちょっとぐらい贅沢してもいいでしょ、お祝いだし。…足りる?」

お皿が空になる度に、取り分けてあげて。
フードで見えないけれど、その内から視線がしっかりと少年に向いていて。

「いっぱい食べたら…アレフくんもあんな風になるのかな」

くすり、と笑ってみるのは丁度依頼を受けていった屈強な冒険者。
そんな想像を浮かべつつ、料理が消えていくのを見守っている。

アレフ > ほどなく運ばれてくるパン。
少年は、そのパンを器用に割ると、鳥肉とサラダをナイフとフォークで挟み込んだ。

「こうして食べると美味しいんですよぅ」

パンの切れ端で、ゴーグ鳥の皿に残ったソースも掬う。
不思議と行儀の悪さより、田舎の村の、どんな食材も無駄にしない躾の方が感じられるような、そんな食べっぷりだ。

「ほぃひぃれす……♡」

むぐむぐ、もむもむ。
笑み蕩けた顔でそれはもう、シアワセそうに。少年はフードの奥の、よく見えない顔へと告げるのだ。

そして、ふと誘われた視線のその先。
いかにもな屈強な戦士の姿に少年は、きらきらと瞳輝かせる。

「はいっ!早く立派で強そうな戦士になるんですっ!!」

強い戦士ではなく、強そうな。
…おそらくそんなことを言ってしまうのは、少年がいかにも少女めいた外見を、実は気にしている、という証…。

イルルゥ > 不作法など、冒険者ギルドと言う場所では気にするはずもない。

「ほんと?私もやってみよ…んぐ。んぐ。……うん。美味しい…」

わざと少し大きく驚いてから。
教えてもらった通り、ソースをパンに付けて食べる。

「よかった。…そっか。…私ができるだけ、手助けしてあげるね」

自分も誘われることがあるから、いつでも、と言うわけにはいかないかもしれないけれど。
それでも、放っておけない幼い雰囲気の少年をサポートしてあげたいと思っていて。

「あ。果実水無くなったね。給仕さん忙しそうだから…直接貰ってくる」

と言って、空の木グラスを持っていく。
しかし、お代わりを持ってこようとしたところに。

『おわ、と、っと…っ!』

別の…急いでいたらしい冒険者がぶつかる。
何とか躱そうとしたものの…少年の様子を見ていたからか、反応が少し遅れ。
果実水がたっぷり入った器が衝撃で少女の手から飛び…、偶然少年の方へとその中身をぶちまけようと。

アレフ > 「ね、美味しいでしょ」

なんだか、そんな楽しみを共有すること自体が嬉しくて。
こんな小さなことでも、仲間、という感じがあるのが嬉しくて。
少年はもう、とにもかくにもにこにこ、にこにこと嬉しそう。

先輩冒険者がなにくれとなく世話を焼いてくれるのがくすぐったいけど、それもやっぱり嬉しくて。
なんだか、照れくさいなあ…という、そんな気持ちに…………。

盛大に水をかけられた。
いや、キモチの問題ではなく、物理的に。

「ひゃあああっ!?」

春とは言えまだ水を浴びるには早い。
ふわふわの黒髪が水に濡れると、少年はなんだかますます仔犬めいた雰囲気になってしまうのだった…。

イルルゥ > 『とと、済まねえ!』

何て言いながら原因の冒険者は去っていく。

「ちょ、ちょっと…、わ、アレフ君、大丈夫…?」

応急処置用の布をローブから取り出して。
少年の黒髪と見える範囲の身体を拭いていこうと。
当然、少し焦っているのかフードの内の…鼻までが少年からは見えるだろう。

「ごめんね。避けれればよかったのに…」

申し訳なさそうに、何度も何度も…頬や髪を拭いていく。
ほんの少し、身だしなみに気は使っているのか…清潔な女の子の匂いが少年に纏わりついて。

アレフ > 「だ、だいじょ……、ぅひゃっ!?」

髪から垂れた滴が伝って、首筋に。そこから背中に這っていったからもう大変。
ぴゃ、と姿勢を正すけれども、冷たいものは冷たいのだ。
おまけに果実水だから、そのうちべとべとしてくるのは請け合いだった。

「あ、ありがと…ございます。
 大丈夫ですよう、すぐに水を浴びます」

幸い、宿は遠くないしと、そんなことを言いつつ少年は振り向く。
そして、フードの奥、少しだけ覗いている顔を、悪意もなくしげしげと見つめると…にっこりと微笑んだ。

「イルルゥさんの眼は…綺麗ですねぇ…」

と、そんなことを柔らかい口調で言うのだった。

イルルゥ > 丁寧に拭いていくも、やはり服の内まで入り込んだ水は拭うことはできない。

「…っ、あ…えーと……うん。ありが、とう…。
じゃなくて、宿に水浴び場はある?これ、べとべとして気持ち悪いと思う…」

褒められると、少し照れたようにびく、と動きが止まって。
驚いたのだろうか、と思われるかもしれないけれど。
実際は、近づいてしまったことに少し警戒したのだ。

ただ、少年に非はないため…しっかりと見える部分だけでも、拭いていこう。

「もしないなら、私が取ってる宿に案内するよ。
どっちにしても今日はお祝いのつもりだったし…料理は、運んでもらえばいいし」

残った料理を宿屋で食べられる…もちろん追加料金はかかるが。
そんなサービスもここにはあり、食事はそこでも続きができる。
どう?と少年に尋ねてみよう。

アレフ > 「あぅ…」

着ているものの替えはまだあまり持ち合わせがないから。
少年は洗えるものならすぐに洗ってしまいたいと、こくん、とひとつ頷いて見せる。

食事は大概終わっているし、それよりも今は、おばーちゃんが縫ってくれた服を労わる方が先決だった。

「宿は…水を汲んでもらってこないとならないので…」

そこそこ、水浴びは大変なのだ。
けれど、お邪魔してしまってよいものか、という遠慮も若干あるようで。

結局…大好きな祖母の手作りの衣服を大事にする、ということを、少年は優先したらしい。
小さな声で、お邪魔します、と。それはそれは申し訳なさそうに言うのだった。

イルルゥ > 一応、彼女が泊っている宿屋は女性に配慮されており。
ある程度、溜められた水を使う魔導機構が付けられている。
その分一泊は高額だが、彼女は満足していた。

「それなら、私の部屋にどうぞ。すぐに水、使えるだろうし…」

私のせいもあるし、遠慮しないで、と。
連れだって、宿まで案内しよう。

部屋自体は平民地区に良くある形の部屋だけれど。
扉が入口以外に一つついており、その先に水浴び場がある。

「ええと…、そっちに水浴び場あるから。後は…服洗ってもここに干してくれていいから。
代わりは…私の外套があるから、水を浴びた後はそれを羽織ってくれれば…」

大きな…体を拭くようの布と、外套を渡して。
水浴びをするように促していく。

アレフ > 「はーぃ」

少年はこんな時も素直だ。
宿までついていった後、きょろきょろと部屋を見回してしまったのは、これはご愛敬。
そして、手渡された乾いた清潔な布と外套を手にして、少年は示された扉を出て行った。

扉の向こうでは、衣服を脱ぐ気配がある。
そしてまずは、衣服を洗っているのだろう、そんな気配が届いてくる。
そして…。

「ひゃああ、つめたっ!」

どうやら、魔導機械の使い方をよく知らぬらしい。
勢いよく出たのは冷水で、その冷水をなんとも賑やかに浴びている気配が部屋の中まで筒抜けだった。

イルルゥ > 部屋の周りを見渡せば、彼女の予備の冒険道具などもあるだろう。
示した扉の奥から聞こえる声に、少し心配になって

「大丈夫?使いかた、わかる?」

扉の前から、声をかけてみよう。
丁度、運ばれてきた料理を並べ終わったところ。
多少とはいえ、注文したものを食べられないのは辛い。

「アレフくーん?」

魔動機具は…確かに慣れていなければ、勢いの調整などはやりにくい。

アレフ > わひゃ、とか、うひゃあ、とか。
扉の向こうから届いてくるのは、そんな頓狂でちょっとおマヌケな声ばかり。
どうやら問いかける声は届いていない。
困ってもいるようだけれど、どことなく楽しんでるんじゃあるまいかと、聞いていて疑いたくなってくるような、そんな声はやはり、歳相応の子供のもの。

せっかく料理を並べてくれているというのに、さては水遊びでもしてるんじゃないだろうなと、そろそろ気になりかけてきたところで…。

「あ、ありがとうございましたぁ!」

と、まだまだ黒い髪からぽたぽた滴を垂らした顔がひょっこりのぞく。
首から下を隠しているのは、どうやらまだ裸であるらしい。
瑞々しい、少年の裸身は、冷水を浴びたことでかえって体温を高めようと始めている…。
そんな身体は今、無垢な子供らしさと牡の中間にあるような、瑞々しい匂いを放ちはじめ…。

イルルゥ > 水の代金は一応使いすぎると請求が入ってしまうけれど。

「……使えてるならいっか…」

声をかけても、楽しそうにしてくれているのならいいだろうと思ったところで。
ば、と出てくる少年の顔

「ちょ、ちょっと…服、…というか、早く……上がってきた方がいいよ。
風邪、引いちゃう、から……、………」

ぷい、とフード姿が後ろを向く。
外套だけ渡したのは失敗だった。
本来であれば、シャツなども貸してあげればよかった。
少年だと…言ってしまえば侮っていた彼からは。
瑞々しい子供らしさと…大人になろうとする雄の匂いが漂ってしまっていて。

すたすたと歩き、備え付けられたテーブルについて待っていよう。
その間、身体がじくじくと疼くのは、何とか耐えるしかないけれど。
まるで運動した後のように、は、あ、…と息が漏れてしまう。

アレフ > 「はーぃ」

という、また素直な返事が返される。
扉の外では、洗った衣服を乾かしている、そんな気配がするだろう。
けれど程なく、なんとか水気を拭ったようで、外套をすっぽり被った少年が、頬を桜に染めて戻ってきた。

やはり、冷水だけで浴びたのだろう。
冷えてしまった身体を温めねばと、水気を拭われた後の身体の方が備えているのだ。
血行が促進されて、頬には桜が散っている。
汗のにおいこそないけれど、水を浴びたことで肌身の瑞々しさはむしろいっそう、いや増して。

「ありがとう、イルルゥさん。お借りしたタオルも洗って干しておきました」

と、少年はようやくさっぱりしてご機嫌な様子…。
そう、少女に燃え始めた情欲の滾りも知らぬまま…。

イルルゥ > 「………う、うん」

先ほどまで明るく接していたことが信じられない。
少年の身体を、顔を見るだけで顔が火照り、もじもじと身体が椅子の上で揺れてしまう。

ミレー族である少女には…更に匂い立つ少年特有の香りは媚薬のように働き。
何とか、少年が席に着いても我慢しようと思っていたけれど。
近づいてくるなら、それも叶わない。

(あ、ぅ…ぅ………)

情欲の火には耐えられず。
ゆらり、と幽鬼のようにせっかく座った椅子から立ち上がり…。

「あれふ、くん……ごめ、ん………」

そう、部屋に声を響かせて。
ゆったりと、少年に近づいていこう―――

アレフ > きょとん、と少年は。近寄るフード姿の少女を見上げている。
ごめん、と言われてもこてん、と小首をかしげるだけだ。

そして…

「はぃ…?」

と、にっこり微笑み少女を見上げる…。
信頼しきったその顔は、きっと受け止めてくれると思わせるだろう。

そう、どんなことだとて…。

少女と少年が、『仲間』として、とっぷりと『結ばれる』のは、これからのこと。…

ご案内:「王都マグメール 冒険者ギルド」からイルルゥさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 冒険者ギルド」からアレフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアカリさんが現れました。
アカリ > この王都マグメールに連れられてから何日経ったのか。
仮の寝床も確保した少女が最近しているのは、この王都を歩き回る事だった。
自分の住んでいるところがどんなところなのか、その程度は知っておきたいのは当然で。
歩いて歩いて、並ぶ建物や露店の前で足を止めては覗き込む。

「ふーん、それなりにはちゃんと揃っているようかしら?
まっ、そうでなければワタクシが暮らすに値する場所ではありませんものね」

そんな偉そうな言葉を誰にいうでなく呟きながら、更に先へ先へと進んで行く。
勿論見た事もない建物の場合は少しだけ長く足を止めるだろう。
そう立ち寄る事のない酒場とか変わった商品の並ぶ店、後は縁の無かった冒険者ギルドとか。
そんな少女ではあるのだが、この少女自身もそれなりに目立ってる事に気付いていなかった。
この辺りではそう見掛ける事もない異国風のドレス姿なのだから当然といえば当然なのだけど。
王都で全く見掛けない訳ではないのだが、ここは平民地区なのだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にライヨウさんが現れました。
ライヨウ > 「やれやれ、今日は中々に疲れる仕事だったな…」
富裕層での客を相手の商売を終えて疲れた顔の男…男性客ばかりの時は我儘な客も多く、いつも疲れてしまう…そんな時の気分転換にと人々が多く集まる活気の溢れた平民地区へと足を向けていた。

適当に店々を廻り日用品などを買い込み、紙袋を抱えて少し酒でも入れて行こうか…そんな事を考えていると、人々の雑踏の中にちょこちょこと動きまわるこの王都では珍しいドレスに身を包んだ人影を見つける。

「…ずいぶんと目立つな…」
自分も異国風の衣装を身に包んでいるが、やはり年頃の少女と言う事も有ってかどうしても人々の中でも浮いて目立ってしまう。
そんな彼女の傍へと近付いて行き、背後から声を掛けてみた。

「今日は平民地区の探検か? 出歩くなら言ってくれれば付き合うぞ?」
ひょんな事から宿を提供する事になった少女、彼女が部屋で大人しくしているタイプで無いのは覚悟していたが行先も告げずに出歩くのはいつ迄経っても慣れないでいた。

アカリ > 今はどこを覗き込んでいるのか。
そんなところで聞き覚えのある声が耳に届いた。

「あら、ライヨウ様では御座いませんか。
今日のお仕事はこちらでしたの?
アナタにはお仕事がありますもの、それにワタクシ一人でも大丈夫ですわ?」

その声に振り返れば、その動きに合わせドレスの裾がフワリと靡く。
背の高い相手に身を少し屈めて見上げるように、自身満々に胸を張るようにしながらそう答える。

ライヨウ > 「いや、仕事の帰りに買い物が有ったんでね」
振り返った少女に日用品の詰め込まれた紙袋を見せ。

「大丈夫なのは判っているがな、余りに気まぐれに飛び出していくからな…せめて書置きぐらいは残してほしい物だ」
出会った時から変わらずの自信に満ち溢れた様子に苦笑して見せ
「それにここらはまだ安全だが、もう少しスラム寄りになると
安全とは言い切れないからな…遠くから見ても判る程度には目立って居たし」
大っぴらに語って歩くには問題の有る彼女の正体、それでなくとも
目立つ格好なのだ。
狭い路地の奥を覗けばスラムも近く、花宿やいかがわしい酒場等が
ちらほらと顔を出してくる地域、流石に一人で歩かせる訳にはいかないと首を振って見せた。

アカリ > 「そうでしたの、それはお疲れ様ですわね?
ところで今日のお夕食は何でしょうか?」

男性が抱えて見せる紙袋を見詰めながら、何か思い出したかのようにポンッと手を打って。
ニッコリと浮かべる笑顔と共にそう聞いてみるのだ。

「あら、ワタクシは子供では御座いませんもの。
それでも、ワタクシを過保護に扱いたいのでしたら喜んでお受けしますよ?」

調子そのままにそう続ける少女だが、他の場所の話が出れば不思議そうに首を傾げてみせる。

「そのスラム寄り?とは何処の事でしょうか?
此処だって安全とは言い切れないのでしょうし、きっとそう変わりませんわ。
ワタクシが眠っていた場所だってそうだったんですしね」

男性の心配を余所に少女の自信は崩れる事を知らない。
寧ろ、それを教えた事で興味を持ってしまったとも思えるかもしれないだろう。
現に見せる表情にどこか期待の色が見えてしまうのだから。

ライヨウ > 「まあ確かに今日の客は疲れたな…ん?なんだ夕食もまだだったのか? それじゃあどこかで食べていくのも良いかもな」
いつもは宿の1階の酒場で済ませる事も多い夕食だったが、
こうして二人とも外に出ているなら何か他の場所に行くのも悪くないかもしれない。

「子供じゃないから忠告しているんだ…、そりゃあアカリの眠っていた場所って遺跡だろう?そこと比べるのはな…危険の質が違うしな」
仕立ての良さそうな異国風ドレスを纏った少女…そんな彼女がスラムに近寄っていくなんてそれこそ鴨が葱を背負っている様な物だろう…しかし敢えて口にしてしまった事によりかえって興味を惹く結果になってしまったらしく…

「いや待て、そう興味有りそうな顔をするな…後で絶対に一人で出かける気だろう? ここら辺ならまだしもスラム街には奴隷市やら売春宿やらただでさえアカリの身に危険そうな場所ばかりだぞ?」

アカリ > 「何時もは食べてませんわ、だって必要ないですもの。
でもアナタが居ると食べさせてくれますし、美味しいものって食べてて幸せな気分になれるじゃないですか。
何処かに食べに行くのでしたら喜んで付いて行きますわ」

きっと今此処で初めて知ったであろう事実。
それを澄ました顔で伝える少女。
何処かで食事をとろうとの話が出れば、嬉しそうな笑顔を浮かべるのだ。

「ええ、ワタクシに見合う立派な遺跡でしたよ?
危険の質が違う、のですか?うーん、よく分かりませんわ」

口元に指先を当てながら考える様な仕草。
それもすぐに戻ればそう返すも、再び聞き慣れない単語に少女の興味は更に膨らんでいるか。

「そんな事は…御座いませんわ?
ええ、勿論そうですわよ?」

スラム、奴隷市、売春宿、その単語は覚えておこうと言葉にせず心の中で思う。
好奇心旺盛な少女だ、男性の考えは間違いなく的中しているだろう事は、きっと予想出来ているに違いない

ライヨウ > 「そうだったのか…? 俺が遅い時はどうしてるのかと思ってたら…それならシェンヤン料理でも食べに行くとするか?」
食事が必要ない事にも驚いたが、まさか一人の時は何も取っていなかったとは…しかし食事事態に意味を見いだせていない訳では無い様で、
自分達の利用している宿では食べられないシェンヤン料理へと誘ってみる。

「遺跡は魔物やら罠やらの危険だが避けようはあるからな…
待て待てその目は絶対に良からぬ事を考えているだろう?」
「ただでさえアカリは目立つんだ、スラム街に何て一人で足を踏み入れて見ろ、直ぐに浚われて良くて売春宿、悪けりゃ奴隷市域になっちまうぞ?」
彼女の瞳が好奇心に光った様に見えると浚われたら自分がどんな目に合うかは流石に想像できるよな?と慌てて釘を刺す。

アカリ > 「あら、心配してくれてましたのね?良い心掛けです。
ワタクシの口に合う美味しい料理でしたら何でも構いません。
さ、そのお店まで案内して下さい?」

自分に向けられた心遣いに対し、満足そうに頷く少女。
料理への誘いがあれば当然の様に案内を促すのだ。

「……そんな訳、御座いませんわよ?
あの時は目を覚ましたばかりで油断をしていたから連れ出されたんですからね?
もう簡単に浚われたりなんてしませんからね?
まあ、その売春宿とか奴隷市とかはちょっと気になってますけど」

男性の言葉に対する返答までに少し間が空いた。
勘が鋭くなくとも、その意味を察する事は出来るだろう。
そして、後に続く言葉がそれを確信に変えるのだ。