2020/02/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエリザベートさんが現れました。
■エリザベート > 細く入り組んだ裏路地、と言えど、普段であれば恐らく、
其れなりに賑わっているのだろう界隈。
然し、未だ夜も明け切らぬ頃――――通りを歩く人影も見当たらず、
偶に曲がり角から顔を覗かせる酔漢の類も、一気に蒼褪めて踵を返す。
そんな裏通りを漂い歩く、白い女の姿がひとつ。
実のところ、通りをひとつふたつ隔てた何処かでは、
誰かが女を捜しているらしい。
純粋に女の身柄を心配する侍女か、其れとも女を攫う途中の悪漢か。
何れにしても、捜されている対象たる己には関係が無い。
誰かが手を伸ばして、物理的に動きを阻みでもしない限り、
幽鬼の如き女の彷徨は、未だ続く。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にジェイクさんが現れました。
■ジェイク > 早朝、兵舎に訪れた使いの者に叩き起こされての緊急招集。
何でも、さる貴人が行方不明となり、その捜索に当たれと云う事らしい。
生憎と本日の朝の交代時間までは当直勤務であり、眠い目を擦りながら無人の街を兵士達が練り歩く。
時折、見掛ける酔い潰れた酔漢や、売春宿から忍び出る御仁に事情聴取を掛けながらの捜索の果て。
裏路地にて白色の衣服を着込んだ幽鬼のような女の姿を見掛ければ、行く手を遮るように数人の兵士が取り囲む。
「あー、アンタ、……エリザベート様、か?」
兵士達の集団の先頭に立つ男が女の貌を覗き込みながら代表して声を掛けた。
白髪に、青紫の双眸、そして、白色の衣服。背格好も含めて依頼の人相書き通りであるが。
貴人と呼ぶには、何処か違和感めいたものを感じさせる雰囲気に、怪訝な表情を隠し切れないでいた。
■エリザベート > ゆらゆらと、ふらふらと、通りを辿る白い足先が止まる。
前方に立ち塞がる、屈強な兵士たちが目に入ったからである。
ぼんやりと彼らを見遣る眼差しは、つまり、盲いている訳では無い。
但し、目に映るものを正しく認識出来ているかどうかは、甚だ怪しかった。
「エ、リ……わたくし、は………
―――――わたくしは、わたくし、よ?」
変なことを聞くのね、とでも言いたげに、小首を傾げながら。
返答にも何もなっていない、其の声には感情の色すら皆無であり。
「あなたは、だぁ、れ……
おさんぽ、の、邪魔、しないで、頂戴」
子供の様な物言いと共に、不躾に差し伸べた左手の人差し指が、
此方に向かい声を発した兵士を指し示す。
兵士たちの中に、観察力に長けた者が居たなら、
女の左手、薬指に光る指輪の存在にも気付くだろう。
■ジェイク > 焦点が合っているのか、いないのかも定かではない虚ろな双眸が向けられる。
化粧もされずに蒼白い、その顔の、されども、美貌を見遣れば、
そのまま、視線を寝間着のような薄手の衣服に包まれたボディラインに這わせる。
貴人と云うよりも、高級娼婦と呼んだ方がしっくりとくる女が白い肌の中で映える紅い唇を開き。
「……はぁ? なんだ、アンタ、……イカれてるのか?」
凡そ、会話らしい会話が通じない痴呆めいた子供のような言葉が放たれる。
先頭にて対応していた男が、怪訝そうに眉根を顰めると、背後の一人が何かに気付き、あっ、と声を漏らす。
囁かれる小声の話に耳を傾ければ、彼女の薬指の指輪の存在に男も視線を向ける。
どうやら、さる貴人と目の前の狂人は同一人物であるらしい。
人相書きよりも余程に特徴的なその事を使者が伝えなかったのは、それが醜聞だからだろう。
悪賢さに関しては人一倍、頭の回転が速い男は、口角を吊り上げて女に嗤い掛ける。
「悪い悪い、人違いだったわ。お姫様が狂人の筈がないからなぁ。
なぁ、アンタ、……お散歩、よりも、イイ事しようぜ。俺達が遊んでやるよ」
彼の物言いに背後の兵士達も、言わんとする事を理解したならば、全員がにやにやと笑い始める。
分散して女の背後にまで廻り込み、その肩や腰へと手を伸ばせば、裏路地の更に暗がりへと女を連れ込んでいこうとして――――。
■エリザベート > 何よりも如実に、己が捜索対象であると知らしめる特徴。
其れを兵士たちに伝えなかったのは、曲りなりにも王家の血を引く女が、
頭の螺子の外れた狂女だなどと、一介の平民に教えて良いことでは無い、と、
何処かの誰かが判断した為であろう。
あるいは無事に捜し出す気すら、其の誰かには無かったのかも知れない。
イカレているのか、と問われても、女はただ首を傾げているばかり。
兵士たちが何事かに気付き、密かに交わしている遣り取りにも、
興味無さげに視線をふらふらと泳がせ始める。
前から退いてくれないのなら、踵を返して来た道を戻ろうか。
そう、思い始めた頃合いだった。
「……あそ、ぶ?
嫌よ、わたくし、今はおさんぽの方が――――」
基本的に、他人の意に沿うということを知らぬ狂女である。
素気無く断り、背後を振り返った時には、既に其方にも兵士たちが回り込んでいた。
「な、に………あなた、たち、
――――― い、や、…嫌っ、誰か、………!!」
身体に手を触れられるや、其れ迄の緩い調子が嘘の様、
女は激しく身を震わせて悲鳴を上げ、兵士たちの手から逃れようとするけれど。
人影疎らな早朝の裏路地、折良く通り掛かる人影は無く。
屈強な兵士たちに取り囲まれた女が一人、逃れられる筈も無かっただろう――――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエリザベートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/裏通り」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 表通りとは違い、治安の悪さが覗える。道端に棄てられたままのゴミやら野良猫の死骸やら、早くも酔っぱらって潰れている人間やら。
細い路地を抜けて、角を曲がって出てしまったそんな場所に脚を留めて眉をしかめ。
「――ぁー……、変なとこ出ちゃった……。
おかしな輩に絡まれない内にとっとと……」
少し慣れない場所に行った帰り、道を間違えて裏路地に入ってしまった。特段こんな場所に用もない。早く知っている道に戻ろうと足を速めた、その直後――
「――ってぇ! わたしゃとっとと帰るの!
ここにもあんたにも微塵も用はないの!
いーから退けってのー!」
行く手を酒の入った赤ら顔の、いかにもならず者風情の30絡みの男に阻まれて、怒鳴りつけた。スタッフを振って邪魔邪魔そこ退け!と威嚇するが――全然効果はない。にやついて下卑た笑いを浮かべて救いようもない頭の悪い誘い文句を口にしている。
頭が痛い……というように額を抑えて深々と疲れた様な溜息をつき。
こんな所じゃ、颯爽と助けに来てくれるような騎士様なんぞも期待薄だし、参ったなあ……と一応辺りを見回し。
■ティアフェル > こうやって絡んでくるのは大層うざったいが、それでもいきなり襲い掛かって来ないでいるだけでもマシな方なのかも知れない……。
50歩100歩だが。
頭の中に五つのコマンドが浮かんだ。
・走って振り切る。
・罵倒……もとい説得を試みる
・シンプルに殴る。
・エレガントに蹴る。
・いっそのことカチ割る。
基本張り倒す系に思考が偏る辺りが、ヒーラーというかアタッカー並みのファイティングスピリッツの持ち主だ。
さあ、どれで行こうかなー。などと悠長に考えていたものだからその隙に向こうが実力行使発動してきやがった。
ダイレクトに襲いかかってきて――、
「嘘でしょやめてよ!! うっかり殺意が沸くじゃないのー!!」
非常におかしな悲鳴(?)が路上に響き渡った。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/裏通り」にフェムトさんが現れました。
■フェムト > 「―――待ちたまえ!!」
ティアフェルと酔っ払いの間に、一人の青年が颯爽と現れ立ちふさがる。
黒い髪に赤い瞳、ローブを着こみ杖を手にしたその姿は、魔法使いの様である。
「君の行いは許されざる行為だ。
素敵なお嬢さんの前に理性を失うのは解るが、
まずは落ち着いて話し合おうではないか……!」
少々格好つけたポーズを取りつつ、
酔っ払いを諭そうとしているが……
「ここは私に免じて引き下がっ……ぐはっ!!?」
酔っ払いは聞く耳を持たず、魔法使いに殴りかかる。
魔法使いの方はたった一発小突かれただけで、
盛大に吹き飛ばされて道端に無様に転がるのであった。
■ティアフェル > 「まあっ…!」
ここで格好つけて助けに入ってくれる存在なんて――いない!はい!いませんでした!と見切りをつけていたのに……案外いた。奇跡的な確率に遭遇!とここぞと乙女らしく目を輝かせてついでにわざとらしくウルウルさせながら、この暴漢の股間を蹴り潰して再起不能にしようとしていたことをひた隠しにしてか弱いフリをして両手を組み合わせていたが……。
「えっ……弱ッ! マジか……そうきたか……」
説得から入って、応じなかったら華麗に叩き伏せてくれるに違いない……と思っていたのに、まるで紙のように軽々と一発食らっただけで彼は吹き飛んでしまった。
うそでしょコレ……と瞠目しながら。
「ちょいちょいちょい、おにーさーん? へーき? 死んだ? ヒール要る?」
幸いこちらはヒーラーですので、回復もやぶさかじゃない。けれど、悠長にそんなことをしている場合ではなく、邪魔者は片づけた!次はお前だ!とばかりにまた、暴漢は飛びかかって襲い掛かってこようとしていた。――が、
「ちょ、待ちなさいよ! 怪我人が先よ!」
と、スタッフで暴漢の脳天をガチコンとどついた。
■フェムト > 酔っ払いは酔っ払いで、ティアフェルに鈍器で殴られると
あっけなく気を失って倒れる。
「……ふぅ、危ない所だったなお嬢さん。
ケガは無いかね?」
いつの間にか立ち上がっていた魔法使い、
ティアフェルを気遣う様な声をかける。
……が、こいつは何もしていない……!!
「あとすみません、差支えなければヒールお願いします……。」
殴られた鼻っ面から鼻血が止まらない。
じくじくと痛んで泣きそうだ。
都合よくこのお嬢さんはヒーラーの様であり、
恥も外聞も無く治療を求めてきた。
■ティアフェル > 昏倒して汚れた道に転がる暴漢には舌打ちを一発カマしたのを最後、もう目もくれなかったが。
「え……あ、う、うん……わたしは大丈夫……」
胸中でわたし以外は大丈夫じゃないなと考えながら、同じくらいの年齢だろうか?魔法使い風情の彼に肯いて返し。
「はいよ、お任せ! あーあ、イケメンが台無しだね。
ちょっと待って……」
結果はどうあれ助けようとしてくれてこうなったのだから、癒す責任はあるだろう。即座に応じて殴られた顔にちょっと失礼、と手を触れさせて覗き込んで鼻血がだくだくしている様子に苦笑して、怪我はここだけかと確認し。
それから、先ほど男をどついたスタッフを今度はその鼻先に翳して詠唱を口ずさんだ。
淡い光が生まれて、じんわりと暖かく彼の鼻先を包むと出血を止め、痛みを取り去り打撲痕を消し去った。
「ど? 平気?
何はともあれ――気持ちが嬉しかった! ありがとう! お疲れ! かっこよかったよ!」
例え防御力紙で殴られて鼻血だくだくになろうと、弱いのに立ちはだかって助けようとしてくれた心根を評価した。がし、と握手を交わそうと。
■フェムト > ティアフェルが魔法を唱えると、
青年の傷跡がみるみるうちに癒され、流血も止まった。
「……ありがとうございます。
……えーと、ごめんねなんだか気を遣わせて……。」
ティアフェルの感謝の言葉に今更気まずくなりつつも、
差し出されたその手を握り返す。
……その握手は、青年よりも少女の方が力強かったと言う。
「しかし君、こんな所にどうして迷い込んでしまったんだ?
この辺りは悪漢の巣窟だ、君には相応しい場所とは言えない。」
比較的治安の良い平民街でも、
ひとつ路地を外れて裏に入ればどんな危険が潜んでいるか分からない。
「かく言う私も迷子でね。
……冒険者ギルドへはどうやって行くのだろうか……?」
そんな危険地帯へ、この男も迷い込んできてしまったそうだ。
■ティアフェル > よし、ちゃんと効いた、良かった。
と施術の様子を確認しながらひとつ肯いて安堵し。
「いやいや、元はと云えばわたしのせいだし。
ううん、黙って素通りされるよか、張り倒されても割り込んでくれる人は気持ちがいいよ」
晴れやかに笑いながら握手を交わして、ぐ、と親指を立てて見せ。
「ちょっと用事があって、出先から帰る途中に道を間違えちゃって……。
いやー、そういう君にもなかなかに不似合いな場所……。
――はいはいはい、来ると思ってましたよー。そんなことじゃないかと思ってたよー。
ここに迷子団が結成されてしまった……」
相手も迷子と聞いてどこか察していたかのように、こくこくと肯き。
お先真っ暗なコンビが一丁上がりだと分かっては遠い目をして、またコマンドを開いた。
「はい、では。
わたしたちの行く先、です、が――
・棒倒しで決める。
・勘に頼る。
・とにかく記憶を頼りに戻る。
・何もかも諦めて放浪の旅に出たことにする。
――のいずれか、どれがいいですか?」
真顔でぴ、と人差し指を突き立ててコマンドを提示した。まだマシなのはひとつくらいしかない選択肢だ。
■フェムト > 「ありがとう。
そう言って頂けると私のプライドも幾らか保たれる。」
介入は無駄骨であったが、あまりの情けなさに軽蔑もされてない様だ。
「ほう、この展開を読んでいたとは……
……やるな………。」
そんなことじゃないか、とのティアフェルの言葉に、神妙な顔で呟く……。
……だがそんなに大した事ではない。
「ふ……そうだな……。
……ここは運を天に任せてみようじゃないか。
ということで棒倒しで決めよう。」
そう言うと、自分の杖を立てて、手を離し……
「えーと、あっちだってさ。」
杖の先が差すのは、青年が飛び込んできたのと逆の方向。
■ティアフェル > 「うん、わたしはそういうスピリッツを評価します。
どうぞそのまま、例え鼻血噴くことになろうが気高く生きて行ってください」
若干余計な言葉をひっつけながらも、彼の生きざまに関しては好印象高評価をお届けして。
「君が殴り倒された時点で色んなタイプの絶望が容易く想像できたよ?」
簡単な推測やで、と真顔で語った。
「よーし、じゃあ先手が君……えっと、名前なんて云うの?
わたしは、ティアフェル。みんなティアって呼ぶから良かったらそう呼んで」
倒されていく棒の行く先を眺めてから、彼の方に顔を向けて遅ればせながら名乗り。
「よーし、あっちね!
38手のヤバイ事態は想定した!上で行くぞ!」
悪い想像をたんとしておけばいざそれに陥っても慌てなくて済むという思考の元、そう口にして、杖の倒れた方に向かって歩き出しつつ。ふと浮かんだ疑問を口にした。
「ね、ところでさ……魔法使い……だよね?
魔法で分かったりしない? 行先とか……」
■フェムト > 「……冗談抜きに、君は心が広いな?
感心したぞ……。」
と、本心からの言葉を。
青年の言う通り、きっとティアフェルは寛大な心の持ち主だろう。
「ふむ、おかしいな。
私の読みでは、彼(酔っ払い)は私に触れる事すらできずひれ伏すはずだったのだが……。」
彼の中ではどういうストーリーが予想されていたのだろうか。
「ティア君か、私はフェムト=エストレア。
良ければ覚えておいてくれたまえ。」
杖を拾いながら名を名乗り返す。
「君、そんなに都合の良い魔法があれば苦労はしないよ。」
と、言いながらも、杖に手をかざし。
呪文の様なものを詠唱すると、杖先に灯したランプの火が、
青年の手の平に燃え移る。
「つまり我々は、労せず帰る事が出来そうだ。
……≪望郷の火≫。」
その火が強く燃え盛ったかと思えば、
手の平を離れて、二人を導くようにゆっくりと宙を浮かび始めた。
都合の良い魔法を、青年は使えた様である。
……ちなみに火が指し示すのは、先ほど杖が差したのと反対方向であった。
■ティアフェル > 「ありがと。そういう君もね」
こちらも高評価をいただいて上機嫌そうな表情で笑いかけて。
どうもどうもと会釈した。
「どこをどう読んだらそうなるそれ?
酔っ払いに正論(?)説いてそれで改心するとでも?
どこの宗教よ。何教よ。やばい」
どうも冗談ではない様子に不審そうに眉を寄せて。
彼のことを妄想族、と認識した。
「フェムト君?
フルネームは忘れちゃうかもだけど、うん、よろしくね」
同年代と見えるという気安さからか、親し気に笑いかけてひらひらと片手を振り。
「――そうよねー。魔法も万能じゃ……って!!
で き る ん か い !!
棒を倒した意味は?!
わたしのコマンド全無駄か!」
魔法でなんでもできる訳じゃないか、そもそもそれなら迷子になっていないか…と諦めた様に肯きかけたが、そんな都合のいい魔法は存在したし、帰り道は知れたようだ。
思わず全力で突っ込まざるを得なかった。
そして、予想を裏切ることなく――棒が倒れた反対方向に導きの火は示した。
棒が倒れた反対方向……ってことは、彼がやってきた方向の筈であり。
「ちょ、あんた……そっち来た方向なんじゃん?」
どんな迷い方したんだ、と物凄く不審そうな眼差しを突き刺さるほどの勢いで注いだ。
■フェムト > 「うむ、魔法とは万能では無いが至極便利なモノだ。
特に、この私が扱うものはな……!」
得意気な様子で言う青年。
この魔法は使用者が来た道を示すものであり、
やがては二人を冒険者ギルドへと導くだろう。
そんなものがあるなら最初から使えばいいのだが、
彼は今の今までこの魔法の事を忘れていたのだ。
「大丈夫だ、ティア君。
私の言う事は時に不正確だが、魔法は嘘をつかないさ。」
不審気なティアフェルに、笑顔で言葉を返す。
……自分の発言があんまり信用置けないことの自覚はあるらしい。
■ティアフェル > 「そんな便利機能をお持ちの魔法使いさんが、何故にこんなところで迷子になった上、暴漢を倒せずにむしろ張り倒されて鼻血なんか噴いちゃったのかね?」
得意げな様子が余計に信用を置けない。めっちゃめちゃ疑わしそうなまなこで尋ねた。
この人は悪い奴ではなさそうだが、頼りないことには違いない気がした。
「今のところ常に不正確な気がしますが!
いや、魔法の腕は確かなのかも知れないけどさ……使う魔法を間違えちゃったりは…しない? 大丈夫?」
お気楽そうな様子にまだ多少向ける疑惑。大丈夫かな…とは思ったが、まあ、最悪の想定はできている。ので一応素直に魔法の導きを信じて歩き出して。
「魔法使いって変わった人が多いけど、フェムト君はひと際変わり者だね。
性格がいいから、お茶目だなーって感じで受け止められてる気がするけどさ」
内心で彼のことを勝手にボケキャラ、と失敬な評価を下していた。
しかし、面白い人には違いないので知り合えたこと自体は楽しそうで。