2020/01/07 のログ
> 【落ちられてしまったようなので、続けます。】
> 嬉々として依頼を受けたいと思える様な依頼もなく、女は戻ることにする、最初に座っていたテーブルに戻って、腰を下ろす女は、酒の追加を注文する。
女は、テーブルに頬杖をついて、思考することにする、確実ではないが当たれば大きい遺跡にするか。何時でも手の足りない軍の方に行ってお手伝いするか。
それとも、何か依頼とか飛び込んでこないかしら、と考えても見るけれど、その飛び込んできた依頼が先程の掲示板であることを考えれば……うん。

「あまりぃ期待はできない……と言う所なのよねぇ。」

はふ、と赤い唇からため息を吐き出す女はやって来たお酒を受け取って、一口呷る。
摘みにジャーキーを注文して、かぷ、と一口かじって、もぐもぐ、と少しずつ味わうようにかじることに。
うーん、と女は二階の方に視線を向けてお酒を一つ呷ってみせるのだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にウイユオールさんが現れました。
ウイユオール > 何か手ごろな仕事を探して、訪れてはみたものの──

「あー……」

依頼を張り付けるボードの前に立って、少年は何とも言えない声を漏らした。
旬と呼べる時間から、わずかにずれてしまったらしい。
今すぐ仕事を請けないと明日の生活にも困る、というほどではないにせよ、毎日の生活に余裕があるわけでもない。
ボードの前で、眼を細めて残った依頼を視界に入れていく。
市街地の、未開発地域の廃墟エリアの見回り──
そんな表題の羊皮紙を手にとる。
開発事情で放置されている区画にはたまに魔物や不逞の輩が住み着く。
そういったものの有無を確認したり、状況に応じてはその場で排除する仕事だ。
実質警備員のような役回りであり、定額の報酬が見込めるが、決して大きな儲けにはならない地味な仕事である。
通例がそうであるように、この手の仕事は相互のカバーを可能とする二人以上が推奨される。
一人でこなす冒険者もいるが……
少年は周囲をきょろきょろと見回し、上階に鼻先を向けている女性のもとへ歩いて行った。
仕事にありついた様子には見えないが、冒険者だろう、という判断である。あの、と声をかけて、

「この依頼、興味ありますか?」

と、如何にも地味な仕事内容が書かれた羊皮紙を彼女に向かって差し出して見せるのだった。

> 視線を外し思考に耽っている女は新たな気配に意識を強くは向けていなかった。そもそも冒険者ギルドと言うべき場所なので、人の出入りは多いのである、が。流石に、自分に近づいてくる気配に対してはある程度意識を向けるものである。
明確な視線と、歩く音、意識が少しずつ少しずつ、近づく存在に向けられていく。
女の黄色い瞳は、ゆるり、と自分の近くに来た少年に向けられた。

「あらぁ?坊やはぁ、冒険者、なのぉ?」

甘ったるい、間延びした声が少年に向けられるのである。
視線は遠慮なく彼の全身を舐めまわすように眺められてふぅん?と軽く彼の事を品定める。
まだ、成人していない事が判る、この辺りの顔ではなく、むしろ―――片親の故郷の方面の顔であることが判る。
冒険者であるという事なのだろう、羊皮紙を手にできるのは冒険者だけではないが――先程掲示板に張られていた其れなので、それを手にすることができえるのは冒険者である証左でもある。

「とりあえずぅ、その依頼を、改めてぇ、見せてもらってもぉ?」

先程は、ちらりと流し読みしていたが、持ってきたという事、見落としもあるかもしれないので、手を出して、その羊皮紙を求めることに。
そして、ぽんぽん、と自分の隣を軽くたたいて見せて。

「あと、おねぃさん、おにちくに、なりたくないしぃ?坊やも、お座りなさいなぁ。」

と、にんまり笑いながら、座って、と指示するのである。

ウイユオール > 近付いて行くと、至近距離に踏み込む前に、彼女の視線がこちらに向くのが分かった。
喧噪のある屋内ですぐ気配を察知するという事は、相応の力量を有している証拠である。軽装からしてシーフだろうか?
こういった、相手の力量を無意識に探ってしまうのは、冒険者特有の癖とも言えた。
返って来るのは、酒精に酔っているような間延びした声だが、恐らく深酒はしていないのだろう。

「あ、はい。そうです」

問いかけに対しては、素直に事実を述べた。歳のせいで、たまにそう見られない事もある。
無論、相手も自分と同様に仲間の力量を観察する眼を持っている冒険者ばかりなので、それはそれでいつもの事だ。
こくりとひとつ頷いて、羊皮紙を相手の方に向けてから手渡す。
ある一定以上を稼ぎ出す冒険者にとっては、小遣い稼ぎ程度の仕事ではあるため、断られることは気にならない。

「え、ああ……うん、わかりました」

隣の席を示されると、少し目を丸くするものの、特に抵抗はなかったのでそのまま彼女の隣に腰を落ち着ける。
対面を勧められることはよくあるが、隣を勧められることは比較的珍しいというだけだ。
どちらにせよ、こちらを突っ立たせておくのは忍びないという気遣いらしいことだし。
おにちく……? と首を傾げたすぐあと、ああ鬼畜か、と納得。
とりあえず、彼女が文面を改めている間は邪魔しないように、行儀よく口を閉ざして待つ。

> やはり冒険者らしい、彼の返答に、ふぅん、と納得の返答をする。彼が自分の事を見るのは、自分と同じだから、なのだろう、冒険者として、パーティを組むに値する相手なのか、を確認するための、品定めの視線。
ギルドに居れば、良く受ける類の視線である、いちいち気にするのも――――。

女はやおら自分の胸元に腕を回して、少し見えている豊満な胸を押し上げるように自分の体を抱く。

「えっちなおねぃさんはぁ……大丈夫、かしらぁ?」

自分の実力、冒険者としてのそれではなくて、性的な魅力を醸し出して見せるのは、彼女なりの冗談でもあり。
純情であろうか、彼をからかって居るのは目に見えて判るところであろうか。
其れは其れとして、と、差し出された羊皮紙を手にして眺めることにするのだ。

「………坊やひとりでもぉ、これ、十分だと、思うのだけれどもぉ、やっぱ、外見……ね?」

金の瞳は、羊皮紙を眺めなるほど、と女は呟く。彼の実力は確かであり、未成年でギルドに所属して居られる事実と言うのが、証拠でもある。
しかし、依頼者の印象は、実力とイコールでは無かろう、強力な後ろ盾があるならばともかく、そういう物がなければ、判断材料に青年未成年は大きく依る物である。
依頼内容は、国や、其れに近しい公的機関からのモノであれば、一層の事である。

「ふふ、こういう言い方の方がぁ、可愛いでしょぉ?」

言葉の意味を問わぬ相手―――理解を示した時点で、彼が、同郷である事を暴露したことになるだろう、愉しげに笑って見せたあと女は軽くウインクをパチリ、として見せてから、しゅるり、と羊皮紙を丸めて返そうか。

そして、口を開く。

「―――何故?」

女の声は、甘く蕩けたそれであり、しかし、口調は変わる。
自分以外にも冒険者はたくさんいるのだ、そして、彼のような外見で損をする系であるならば、外見的にも強そうな戦士を選ぶのが良いだろう。
実力が供わなくとも、彼ならばそれをフォローできるのが判るから。
其れなのに、なぜ、シーフであり、女の自分を相方として選んだのか、その理由を、女は求めた。

ウイユオール > 待てと言われた忠犬宜しく、膝の上に手を置いて待っていたのだが──

「はっ、えっ!?」

胸元を強調するようなポーズとともに放たれた言葉に、完全に意表を突かれて素っ頓狂な声を上げてしまう。
言われなければ意識しなかったものを、そんな事を言われると急に彼女の体つきを意識してしまう。

「だ、だ、大丈夫──です! 多分、きっと、ハイ」

彼女にしてみれば、大して深い意味のない挨拶程度のからかいだったのかもしれないが、
思い切り挙動不審な反応をしてしまう。ダメです、と答えるほど肝が据わっていないし、大丈夫と答えるしかないというもの。
勿論、せわしなく左右に動く瞳は大丈夫とは言っていなかったのだが。

と、こちらの動揺などどこ吹く風で彼女は言葉を続けた。
自分一人でも十分ではないか、と問われて少年は思わず考え込んでしまった。
何か裏がありそうな間になってしまって嫌だが、ついつい生真面目に反応してしまうのが自分では気づかない悪い癖。
すい──とウインクひとつを伴って渡された羊皮紙を手元で持て余しつつ、

「えーっと……」

色々な言葉に返そうとするが、最後の何故? が一番肝要であろう、と判断してそこを答えることにする。

「…………」

段々と弱った様子で眉を下げ、彼女のほうを一瞥……

「それは、その、仕事にあぶれていたら、可哀想だから──ですけど」

正直に言うと、失礼な気がしてあまり言いたくなかったので困っていたのだった。
実のところ深い考えがあったわけではなく、自分と同じように一人でここにいる彼女が、依頼にありつけず困っていたら、
何となく気分が良くないというそれだけである。普通に、ありがちな助け合い精神の発露というやつだった。

「す、すいません、気を悪くしたようなら、謝ります。可哀想とか、そんなこと言われたら嫌ですよね、ほんと大した理由はなくて」

へこへこと頭を何度も小刻みに下げ、弁解に勤しみ。

> からかい混じりの、悪戯な質問に対して彼は思ったような、初々しい返答をしてくれる、女は楽しそうに笑いを零して、お酒を軽く呷る。
大丈夫と言う返答に対しても、笑いをこらえるので必死になるレベルであった。

「そう、ねぇ。坊や。実力が有る者は、それを自負している物が殆どよぉ?可哀そうと思うのは、強者の視線であり、坊やは私の事を守ってあげるべき存在、手助けをするべき存在―――つまり、自分よりも格下と、視ている、という事よ?
坊やにその気が無かったとしても、おねいさんの為を思ってのことかもしれないけれど。

残酷な宣言でもあるわぁ?
困ってるようだから助ける――つまり、お前は弱いから、一緒にやってやるよ、と宣言してるようなものだものぉ?」

助け合いの精神、其れは恵まれているから、裕福だから、その余裕があるから生まれるものであり、持たざる者から見れば、其れは侮辱ともとれるものである。
女は、慈しむ様に目を細め言葉を放つのは、別に怒っているからではない。

「まあ、坊やと、私の生まれの国は、それを尊ぶ国柄なのだけれども、ね。わざわざ注意させて貰うのは、君が坊やであるから、よ?大人の男性だったら、今頃おねいさん、席を立ってるわ?
坊やは、まだ若くて幼いから、今のうちに勉強しておくべき、よね?

折角だし、今回は、おねいさんは、同行してあげるわ。」

いいこいいこ、と頭を撫でる女は、ふぅ、と息を吐き出して見せる。
そして、耳元に唇を寄せて見せるのだ。
ぽそぽそ、と囁くのだ、彼に何かを。

ウイユオール > 彼女の言葉は、言われてみればもっとも──と思うことばかりであった。
基本的に自立していることが前提条件のようなものである冒険者相手には、言うのも思うのも礼を失することである。
あまり美徳がどうとかは意識していないが、正直に答えることばかりが誠実とも言えない、と改めて教えられるやりとりだ。

「すいません、勉強します」

色々考えたすえに、顎を引く会釈めいた一礼を返して詫びの言葉を述べる。
こういったやりとりの後で慰めを欲しそうにしゅんとうなだれる、といった反応を示すほどには、少年は幼くはなかった。
冒険者稼業の常識は、失敗は実績をあげることで挽回することである。
素直に、ふてくされることなく注意を受け取っておくのがその第一歩と言えるだろう。

羊皮紙を手に席を立とうとしたところで、意外な言葉。

「え……いいんですか?」

ありがとうございます、と言いかけて、頭を撫でられると、わっと小さな声を上げる。
またも意表をつかれて反応に困っていると、耳元に寄せられる唇──
そして、囁かれた言葉に、思わずまじまじと彼女のほうを見て、
──眼を丸くしたあと、こくこくと何度か頷いて見せる。
あえて囁かれた言葉の意味を、無為に帰してはそれこそ、再び呆れられてしまうというものだ。
その言葉の意味を理解して、胸に秘めておけばいい。

ただ、間違いなく彼女を見る眼は変わっていた。
よっぽど辺鄙な土地のありえないくらい小さな故郷で生まれたどうしを見付けた時のように。

> 「いいこ。いいこ。素直な子は、おねぃさん、大好きよぉ?じゃあ、受付で依頼を受けてぇ、依頼人の所にぃ行きましょうかぁ。」

彼の頭をよしよし、よしよし、と撫でて、女はにっこりと笑って見せる、経験が少なかっただけであり、彼自身の善意は好意が持てるものだ。
ちゃんと弁えれば、良い冒険者になるだろう、先輩冒険者として、そう言った処を教えてあげる必要があるだろう。

「だって、良い子はちゃんと育てれば、良い子のまま育つものでしょう?冒険者は、ルールの外に有るからこそ、善意をもって、生きるべきなのよ。
知らぬは悪ではない、学ばないのが悪、なのよ。」

しぃ、と口元に人差し指を立てて、内緒と、笑って見せる。
さて、と言いながら。

「おねいさんは、式条・焔(しきじょう・ほむら)というのよ?相棒の名前は、教えてもらえないかしらぁ?
あと、詳しくお互いの手段を訊かないといけないし、部屋へ、行きましょう?」

冒険者の技術は、其れこそ企業秘密ともいえるもの。
パーティを組むならば、お互いの技などを教え合う必要も有るのだからと。
女は、おいで、と自分の部屋へと、彼を誘う事に。

冒険の準備は、此処から始まるのだ――――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からウイユオールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/大通り」にミストさんが現れました。
ミスト > 日も暮れた時間帯の大通り。
普段ならとっくに宿に引っ込んでいるか出先で宿泊をしている時間であるが今日は明かりを片手に大通りを歩く。
それも買い物ではなく大通りの巡回という仕事を受けたために。

「なんていうかさ…‥最初からアレだよね…」

本当は冒険者二人に衛兵一人の3人で回るはずだった仕事。
しかし始まって早々に相棒の冒険者と衛兵は酒場の呼び込みに捕まり消えてしまう。
後は一人で仕事をするしかなく予定されたルートで酔っ払いや質が悪そうなのが居ないかと確認をして歩く。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/大通り」にインクさんが現れました。
インク > 夜の大通り、今日は騒ぎもなく大人しい夜だ。
そんな中……一軒の酒場に一人の少年の姿。
身なりの良い恰好に、少し長めの黒髪。
琥珀色のグラスを片手に、何と無しに大通りを眺めている。

……未成年の飲酒、というのもこの国ではそれほど珍しくはないかもしれないが、
かなり夜も更けているのに少年一人というのは、少し注意した方がいいだろうか。

ミスト > 「ギルドに戻ったらきっちり報告してやるんだから…」

大の男一人がか弱い女性一人を歩かせるなんて。
そんな事を口にしながら巡回を続ければ目に付くのは一軒の酒場。
遅い時間でやっている店と言えば酒場ぐらいしかなく、そこで酒を飲む人がいるのも珍しい訳でもない。

そして未成年が飲んでいても誰も気にしないであろうが問題は時間。
パッと見ると貴族だろうというのは判るが付き人がいる様子はなく…声をかけるべきかなと考えてしまい。

「ねえ、もう遅い時間だけど帰らなくていいの?」

大通りを眺める視界に割り込むように近づいては唐突にそう声をかけていくわけで。

インク > 「………ん?」
誰かから声を掛けられ振り向く。
また、小うるさい衛兵に目をつけられたか……
と、思いきや、そこには凛々しいながらも美しい女性の姿。

「あぁ、ごめんなさいお姉さん。
 もうこんな時間ですか…。
 そうですね、少し長居しすぎてしまいました。」
懐から時計を取り出し時間を見ると、既に深夜。
柔和な笑みを浮かべると、意外と従順にミストに答える。

「お姉さんは衛兵ではなさそうですし……
 巡回のお仕事中の冒険者の方……?」

ミスト > 「ちゃんと時間は見ないと駄目だよ?普通に物騒なんだしね」

一瞬不機嫌そうに見えた少年が時計を見た後の笑みに気のせいかと。
こんな時間にまでいるのに意外と従順な姿を見せる事にきっと気のせいと思うことにして。

「ボク?ボクは巡回の仕事を受けた冒険者だよ。
この通り衛兵の制服も着てないよね」

衛兵ならいざ知らず冒険者にまで衛兵の服装を支給する事はしない依頼主。
そのせいで格好は普段の姿と同じ冒険者スタイル。
その格好で衛兵と言っても先ず信じる者はいないので簡単に正体をあかし。

「それよりも早く帰った方がよくない?護衛も居ないみたいだしさ」

一度少年から視線を外して酒場内を見回し、それっぽい人影がなければ今よりも遅くなる前にと言葉を続けて。

インク > 「はい、ごめんなさい。
 ……気を付けます。」
少しバツが悪そうな笑みで、頭を下げて謝る。
確かに、この時間ともなれば物騒な輩も多く出る。
だからこそ、ミストの様な仕事の需要もあるのだが。

「あぁ、やっぱり。
 お姉さんみたいな人に注意されて良かったです、
 衛兵は……ほら、ちょっとおっかないし、頭も固いから。」
と、言う少年の言動からは、夜遊びは今日に限らず慣れているのだろうか。

「そうですね……ただ……
 ここ最近、何かと物騒ですから。
 真に不躾なお願いで申し訳ないのですが、
 僕を家まで送っていただけませんか?」
丁寧で上品な言葉遣いは、貴族の出だろうか。
ただ、その申し出は少年の言う通り不躾で身勝手なモノだが。

ミスト > 「うんうん、素直な事は良い事だよ」

文句も言わずに頭を下げて謝る少年に何度か頷き。
貴族は間違いがあっても正しいと文句を言うものが多いだけにこの姿を見ては好印象をもってしまう。

「ボクは偶々目に付いたから声をかけただけだよ。
衛兵は……そもそも仕事をしないからね…。アレは固いっていうよりやる気がないんだと思うよ?」

実際に今日に組んだ衛兵は早々に酒場に消えているので仕事をしてるの?というのが素直な感想。
そしてふと少年の言葉によくあるのかと見てしまう。

何時も物騒な気がするんだけどさ……日が暮れたら特にだしね。
え、ボクが?んー……家ってどのあたりなの?」

外見だけでなく言葉使いも丁寧で貴族で決まりかなと感が。
送るには異論はないが巡回もしなければならず、まずは家の場所を聞いていく。

インク > 「ありがとうございます。
 お姉さんも、優しそうな人で安心しました。」
引き締まった体、長い黒髪もまた美しい……
と、ほんの一瞬だけ好色な視線を覗かせる。

こういうタイプの女性は、家のメイドや魔法学校の生徒にはなかなかいない。

「あー、一人で巡回しているのは、
 もしかしてそういう事ですか?」
ミストの声色から、目敏く察する。
こういう仕事は普通、数人で組んで巡回するものだ。
そんな怠惰な衛兵に、今は少し有難くも思う。

「はい、僕の家は富裕層の方ですが……
 そんなに遠くはありませんよ、案内します。」
そう言うと、酒場の店員に会計を済ませて、店の入り口に。

「さ、行きましょうか。
 あ、申し遅れました、僕はインク=ルドヴァースと申します。
 どうかお見知りおきを、お姉さん。」

ミスト > 「お礼なんていいよ。
優しくないと思うんだけどな」

やっぱり貴族の人だと髪や身なりも綺麗だなとつい見てしまい。
一瞬だけの視線には違和感を感じて首を傾げてしまう。

「まあ……そう言う事かな。最初は3人だったんだけどね」

やはり衛兵が真面目でないのは共通の認識なのかあっさりといない理由を悟られ。
一人だけの巡回、貴族の人に知られて大丈夫かなと心配になってしまう訳で。

「富裕地区だよね、やっぱり……
近いならまあいいかな」

あまり巡回ルートから離れるのは困るが近いなら大丈夫かと考えて頷き。
店の入り口に向かう少年の後を追いかけて。

「それじゃ……ルドヴァース君って呼ぶ方がいいかな。
私はミストだよ、よろしくね」

そう名乗り返し、案内よろしくと軽く肩を叩いて。

インク > 「いえいえ、きっと優しいはず。
 ……これから、わかると思います。」
意味ありげに、小さな声で呟く。

「あぁ、やっぱり。
 一人でお仕事、大変ですね。
 ……せめて、僕を送っていただく報酬くらいは払いましょう。」
少年から、気前の良い申し出。
理不尽に仕事を押し付けられた、見返りくらいはあってもいいだろう。

「インクで大丈夫ですよ、ミストさん。
 ではいきましょうか。
 ……んー、今日は本当に寒い……。」
少年が先立ち、富裕街への道を歩く。

途中、自分が魔法学校の生徒である事や、
時折こうして酒場に行くこともあるだとか、
他愛もない会話を挟んで。

しばらくすると……
富裕街、には違いないが、街並みに違和感を覚えるかもしれない。
ひっそりと静かな通りに、住居と言うよりは宿が目立つ。
それも、貴族らが身を忍んで訪れる事の多い、連れ合い宿が……。