2019/12/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にレミィさんが現れました。
レミィ > 大事なお客様の使用人に言づけて来店の約束を取り付けられたのは仕事納めも近いこんな日付。
街にはちょうど冬中祭のバザールが立ち、賑わっている頃だろう。

日も落ちて、雇いのお針子も売り子も返した後。
暖炉の火は落とさずにウィンドウのカーテンだけを引き来客を待つ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「うぅっ、寒ィ」

約束の時間、指定された場所へと向かう間。
男は、寒さに首を縮ませながら、そう呟いていた。最近の寒さは、本当に厳しい。

「こりゃ、とっとと店にお邪魔させてもらったほうがいいな」

指定された待ち合わせ場所である店の前で、うん、と頷くと。
男は、実に自然な様子で店内へと入っていく。

「う~っす、悪い、待たせたか~?」

そこにいた人物にそう声をかけつつ。
男は、寒い寒い、などと言いつつ暖炉の近くへと向かう。
実に、気安い振る舞いだ。

レミィ > ドアが開くと表情がぱっと明るくなり、寒そうにしていた男に笑みかける。

「いらっしゃい。時間通りよ、セイン。
 あなた案外と寒がりなのね」

相手が暖炉で温まっている間、奥で温湯を用意してウィスキーのお湯割りでも用意をしようか。
そうして相手に人心地がつけば商談用のソファセットで湯気立つホットウィスキーを給仕。

「たっぷりお時間頂けたから、いい仕事ができたわ。
 見てもらったほうが早いと思うのよね」

床の上でハンガーラックの車輪を転ばして運ぶのは黒い生地のベストが1着、スラックスが2本。ワイシャツは襟の形違いで3着。

詳細は以下の通り(分割→)

レミィ > ・黒いベスト
一見デザインはバックレスのカマーベストであるが左右の裏地には大小のポケットやフックを連ねたバンドが備えている。現在は見本とばかりに1本のツールナイフがフックの一本に引っかけられているが表からのシルエットは崩していない縫製。
なにかとサイズを気にする男へのジョークか実用の為か、右身ごろの裏地の中央を縦断するように使い古した布メジャーが縫い付けられている。
・スラックス2本
シルエットは現在顧客が着用しているものとは変わらないが、フロントジッパーのスラックスとサイドジッパーの礼装し様のもの。
フロントジッパーのものは前ポッケは二重底の隠しポケットつき。
・ワイシャツのデザインはレギュラーシャツカラー、スタンドカラー、ウィングカラー

セイン=ディバン > 「もういい歳だからな」

相手を見ずにそういいながら、暖炉にあたる男。
ちら、と覗き見るようにした相手の表情。
なんでそんなに明るいのかねぇ、と。クスクスと笑い。

「お、お前さんがそう言うってことは。
 よっぽどの自信作か?」

どれどれ、と。ホットウィスキーを貰いつつ、相手が見せてくる服へと近づく男。
手に取り、じぃ、と真剣な表情で見ていたかと思えば。

「……これ、着ていいか?」

この場での着替えを相手に問いつつ、早くも男はシャツやスラックスを脱ぎ始める。

レミィ > 「歳なんて気にしちゃ負けよ」

ふふん、と機嫌良さそうな含み笑いが語尾に乗ったはず。
自信作かと問われれば、ファッション・モデルもかくやと言うほどにびしりと胸を張って表情ほころばす。

「あったぼーよ?
 アタシ手ずから楽しく夜なべ仕事させてもらったわ。
 どうぞどうぞ、着て頂戴な?」

相手が着替えるなら脱ぐ服を受け取ってハンガーへと掛けて吊るす。
そうして新しい服を相手が召せば目視でチェックを。

「どう? 窮屈なところはない?
 それからこれは、プレゼントよ……今すぐにでも王城のパーティーに忍び込めそうね?」

仕立て台の抽斗から取り出すのは、ネクタイが黒のものとシルバーのものが1本ずつ。黒の蝶タイが1本。丁寧にソファテーブルに並べる。

セイン=ディバン > 「気にするわい。オレぁもう中年親父なんだからな」

少なくとも、若者ほど寒さに強くはないのだ、とボヤきつつ。
相手の得意げな様子に、くす、と微笑み。

「そいつぁ、手間ぁかけさせたな。
 あぁ、早速着させてもらう」

相手に感謝を伝えつつ、服を着替える男。
そのまま、腰をひねったり、少し歩いてみたりと。
実際に動いて、着心地を確認する。

「あぁ、大丈夫そうだな……。
 ……これはまた。至れり尽くせり、ってやつじゃないか」

相手からの贈り物に、驚いた表情になりつつも。
どこか、嬉しそうに笑う男。
そうして、男は相手から距離を取れば。
店の調度やテーブルなどに触れぬよう。
目にも留まらぬ速さで、回し蹴り、上段蹴りと蹴りを放った後、懐からリボルバーを抜き、構えてみせる。

「……動きやすさもバツグンだ。それに、何と言っても軽い。
 こいつぁ完璧な仕事だぜ、レミィ」

相手の仕事に納得し、驚嘆し。
男は、相手に向き直り、そう告げる。
そのまま、空間から大量の金貨が入った袋を取り出せば、テーブルに置き。

「さて……そうなると。
 プレゼントの分も含めて、礼がしたいな。
 なにか、してほしいことはないか?」

レミィ > 「本物の中年男が気を悪くしちゃうわね」

仮にも冒険者でしょうに、って苦笑いに目を細める。
脱衣、着衣。それから動作でのフィッティングを見守って満足そうな様子を見れば己も頷く。

「気に入っていただけるなら何よりよ──」

それから銃を構える仕草には一瞬驚くが、この男の愛用の得物だったと思い出せば納得した表情になり。

「動きやすさと軽さは生地のお陰とも言えるわね。
 アタシもいい経験になったわ」

テーブルに置かれる金貨袋には「頂いても?」と許可を得てから中身を改め、きっちりと領収書にサインする。

「お礼、ね──何か便利な技術があれば教えて欲しいかしら。
 あと、これの実用性を試して欲しいのだけれど」

一双の黒いシルク手袋を差し出す。
一見は普通の手袋だが、親指人差し指中指の腹側にだけ第一関節の位置にスリットが入っていて指先を出すことができる精密作業可能な手袋だ。
”気のせい””先入観”の効果が入らないように明言はしていないが火のエレメントがエンチャントしてある。手を加えたものの腕が確かならば温熱効果はあるはず。

セイン=ディバン > 「いや、俺本物の中年だっての」

少なくとも、お前よりは一回りは歳喰ってるんだからな。
そう目で訴える男。実際のところ、寒さ耐性以外でも、歳を実感することが多くなった男である。

「いや、マジでちょっと驚いてる。
 ドワーフから買った、初代のこのシャツとか以上の着心地だ」

やはり、腕の立つ縫製人のスキルは違うな、などと感心しつつ。
男は、構えた銃を懐に戻す。

「言っても、その生地を活かせるのはお前さんの腕だろ?
 いや、本当にありがとう」

相手が金貨を改めるのを見てから、男は満足そうに頷く。
本当に。良い取引ができた、と大満足なのである。

「……技術、ね。つっても、オレが教えられるようなことっていうと……」

相手から受け取った手袋をつけつつ、悩む男。
瞬間、手が暖かいことに気が付き、相手をちら、と見る。
さて。男が教授できるスキル、となると。
料理、ナイフテクニック、鑑定、解錠、四元素以外の魔術、隠密行動、銃の使い方、各種文字の解読、罠の解除。
おおよそこれくらいだが。相手が求めるような技術はあるだろうか?

レミィ > 「でも若い子にオジサン呼ばわりされたらムカッとしちゃわない?
 それも、相手によるのかしら。
 セイン的には何歳からが中年なわけ?」

一方の己は一番体力が安定しているとも言える年頃だろうか。
まだ中年期は迎えて居らぬ故に実感持てずに問いかけた。

「そこは、それ──ヒトにはヒトの手心が必要、ってことじゃないの。
 型紙は取ってあるから、普段使いのシャツのご用命なら幾らでもお請けするわよ」

──いい年越しができるわね。
そう呟きながら店舗の金庫に金貨袋を仕舞う。

「貸しにしておいてあげるわ、なんていうのはお嫌かしら。
 具体的な何か、なんて急には思いつかないものよ──…」

そうして、チラ見してくる視線にはうん、と頷く。

「その手袋の生地は一般的な高級シルクだから気を付けてね。
 どう? あったかい?」

セイン=ディバン > 「ん~……まぁ、それは無くもないんだが。
 実際、若いやつから見たらオッサンだし……。
 ん? 30過ぎて、腰や肩に鈍い何かを感じて。
 朝起きたら喉が痛くて、脂っこいものを食べて胸焼けするようになったら中年」

そして、それこそ自分である、とばかりに。
ちょっと悲しい、遠い目をするのであった。

「はは、なるほどな?
 ……ホント、アフターサービスまで万全かよ」

この店以外で服が買えなくなるじゃないか、と。
男は、少し困ったように微笑むのであった。

「……まぁ、別にいいけど。
 あ、そういえば。……ホレ」

相手ん、貸し、と言われれば。男は、頬を掻きながら納得するのだが。
そこで、思い出したように相手に、空間から取り出した本を差し出す。
それは、王都の学校で使われている、教本であり。
本当に幼い子供が読み書き算術を学ぶレベルのものから。
魔術習得のための基礎、というレベルの慣用表現時点まで。
様々な段階の学問書であった。

「あぁ、つまりこの手袋でガードすんな、ってことね。
 あったかい。ちょっとびっくりしたぞ?」

これ、何か仕掛けてるのか? と言いつつ。男は、相手に近づき、腰を抱く。まるで、相手の腰に暖かさをおすそ分けするよう。

レミィ > 「アラやだ。
 アタシが30過ぎたら体調はどうあれもう少し抵抗をしてみせるわよ──…。
 『ああ嫌だ中年男になんざ、なりたくもねぇや』」

最後のセンテンス、じとっと相手を見ながらやれやれって仕草で首を振る。

「──客商売はね、リピーター大事よ。
 最初の仕事はとりわけ丁寧にってね」

困ったような表情には「御贔屓に」ってウィンク投げつける。
それから中空から本が取り出されれば受け取って、いつぞやの会話を思い出す。
中身をぺらぺらと捲れば新線は吸い込まれるようで。

「へぇ、面白そう。
 割と、絵も多いのね──ありがとう、読んでみるわ」

何かを習いたいと思っても、裁縫と金銭管理と簡単な家事以外のものをあまり知らない。
少しでも見聞が広まれば強請る物のバリエーションも増えようかというもので。

「そう、本当に防寒と手の汚れ隠しくらいにしかならないわ──それこそ、ものは試しに作ってみた程度のものよ。
 ……アタシも、詳しくは分からないけど錬金術師の合成スキルらしいわよ。ちょっと、伝手があってね」

手袋で触れる相手の手に自らの手を重ねる。
シルクの生地越しに体温を感じられる程であり。

「効果はあったようね。よかったわ」

にっこりと笑むのであった。

セイン=ディバン > 「抵抗は無意味だぞ~。オレだって冒険者成りたての12の頃。
 そして、バリバリ仕事してた20の頭の頃は、ここまで老いるとは思ってなかったんだ。
 『ガキにゃあ出せない渋さってのがあるのさ』」

くくっ、と笑いつつ、しかして。相手の若さはうらやましいなぁ、と思う。
下手をすれば、若々しい十代よりも、二十代の方がうらやましく見えるのだ。年齢が近い分。

「まったく。商売上手だな」

相手のウインクに、贔屓にするよ、と笑う男。
そうして、相手が以前話した、学術書を読み始めれば。

「初等部、中等部、見習い魔術師、魔術師試験と、段階分けてある。
 あと、辞書な。読みやすいやつと、単語数の多いやつの二つ」

これがあれば、かなり学びやすいはずだ、と。
男は、相手に一式をプレゼントしご満悦。
いいことしたなぁ、なんて笑顔。

「ふぅん。でも、これいいなぁ。商品になるぜ、きっと。
 こういうのがあれば、喜ぶやつは多いだろうからな」

手を重ねながら、互いに体温を交換するような形。
近い距離、相手の笑みに、男も笑みを返し。
つ、と。一息に距離を詰めれば、相手の額に、軽くキスをする。

「こちらこそ、本当に感謝するよ。
 何から何まで。大助かりだ」

そのまま、相手の髪を撫でる男。
まるで、幼い子供相手にするような。男にしては珍しい、ピュアな行為だ。

レミィ > 「老いだなんて、なんだか矢鱈に生々しいじゃない。
 ……渋みを主張したきゃ、言葉はお控えなさいな」

口を開けば悪餓鬼じみた文言も多い男にちくりと言葉の刺を刺して、にんまり笑って刺し傷拭う。
いざ歳を重ねりゃどう思うんだろ、ってところは無論未知の。

「それが全てとは言わないけれど、先立つものはお金。
 お金で買えない物もあるけれど、お金がなければ何も買えないってね」

夢売る現実主義者は宣うて。
与えられる書物のあらまし聞けば、うんうんと頷いて。

「これで暫く勉強はできそうね。
 魔法に適性があるのかどうかわからないけれど──やってみるわ」

大事にするね、とテーブルに本を並べ置く。
こちらも満足そうに相手と手を重ね、指を交互にする所謂恋人繋ぎにして。

「それは、火のものなんだって。
 夏には、水と風を付与すればどうか──だなんて言っていたわ。
 アタシには、まだ珍紛漢紛だけれど」

より距離が近くなれば微笑みと含み笑う声は自然と零れる。

「ありがとう。
 なんだか褒めてもらえたみたいで、とても嬉しいの」

額に唇が触れると、相手へもう片腕も伸ばして一度ぎゅっとハグをして。

「たまにはいいわね、こういうのも──癒し、ね。
 格好つけたり偽らずに、けれど一緒に居てくれるなんてあなたには感謝しているのよ」

少し面映ゆそうに、感謝の言葉を紡いで。

セイン=ディバン > 「色々あるのさ。オレにもな。
 ふん。オレは沈黙よりも雄弁をとるのさ」

そのほうがオレらしいからな、と笑う男。
この男の評価については、黙っていればいい男なのに、なんて声もある。

「間違いないな。綺麗言だけでわたっていけるほど。
 この世の中は甘くはないからな」

冒険者だからこそ分かる。ロマンでは腹は膨れない、ということ。
この国ならなおさら、である。

「あぁ、がんばってみな。
 分からない部分があったら、俺に聞くといい」

自分も、多少は教えられる部分があるだろう、と。
勉学に意欲を燃やす相手に、男は親身になる構えだ。

「へぇ、なるほどな。
 ……おもしろそうだな。その発想は」

距離を近づけつつ、他愛もない会話をする。
それが、なんだか酷く安心できて。
男の笑みは、とても柔らかなものになっていく。

「みたい、じゃなくって。褒めてる。
 お、っとと……」

相手に抱きつかれれば、支えるようにする男。
そのまま、相手の背中を優しく撫で。

「こっちこそ、ってやつだ。
 少なくとも、レミィと一緒にいると楽しい、ってのは間違いない。
 それに、オレぁキライなヤツとはつるまないからな」

まっすぐな言葉には、まっすぐな言葉を返すのだが。
さすがに男もテレているのか、視線はちょっと逸らしてしまっていた。