2019/12/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアルナさんが現れました。
■アルナ > ひとがたくさん集まる場所には、それなりの決まりごとがある。
守っていればまったく安心、というわけでもないが、守らなければもっと危ない。
そんな道理すら知らないウサギの化身がひとり、頑丈な鉄格子の嵌まる牢獄の中にいた。
やたらと重くゴツイつくりの黒い金属製の首輪を填められて、冷たい床にぺたりと座り。
きゅくるるる、と情けない音を立てているお腹を、両手で押さえ撫で摩りながら。
「ねぇ……ごめんなさい、ですの、
ほんのちょっと、かじっただけですのぉ……」
お店に並んでいる食べ物は、お金を払わなければ食べてはいけない。
――――知らなかったとはいえ、なるほど、ワルイコトをしたのだろう、多分、きっと。
かじりついた瞬間に首根っこを掴まれ、そのまま衛兵に引き渡されたので、
結局食べられたわけでもないのだし、許してくれても良いのでは、
――――なんて、誰に言っても通りそうにない理屈を、大真面目に考えているウサギであった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にマヌエラさんが現れました。
■マヌエラ > 「かわいそう……」
少女が捕えられた通りとは逆に、看守の返事すらない牢獄で、お腹を抱えて座り込んでいる中に響いた声。
続けて、かつんかつんと足音が。鉄格子のはまった窓から覗くか細い月光だけが不確かな灯りのこの場所で、全身を自身の金髪で覆うかのような、魔術師然とした女が歩いてきた。
その、おっとりした顔立ちは、言葉通りに悲し気に歪み、労し気な視線を檻の中の仔兎に向ける。
「かわいそうに……お腹を空かせていたのですね……。
あまりの空腹に、罪を犯してしまった、と――お金もなかったのでしょう。
しかし、食べなければ生きてはいけません。お金がなければ生きてはいけないなんて……残酷過ぎます」
魔術師然とした女は、哀し気に言葉を紡ぎながら、少女を閉じ込める鉄格子の前で立ち止まり、視線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「こんばんは……。苦しむ声が聞こえたので、お邪魔してしまいました」
得体の知れない女は、安心させるように微笑んだ。状況は少々、いや、かなり異様だが。
■アルナ > 不意に現れた、誰か。
懐かしいような香りがする、それはもしかすると、いつかのご主人さまに似た香りだったろうか。
大きく目を見開いて、パチパチと瞬きを何度か繰り返し。
「おか、ね……おかね、ありませ、ん。
でも……アルナは、ごはん、食べたかった、から、」
だから、食べようとしただけなのに。
見る間に涙が盛りあがり、白い頬を音もなく伝う。
けれどどれだけ哀れっぽく泣いてみせようと、お腹の音を奏でようと。
ウサギが人の身で犯した罪が減じられることは、きっとないのだろう。
だからきっと、夜が更けるまで。
あるいは夜が明けるまで、ウサギの身は牢獄に留め置かれるのであろう。
それとも、もっと悲惨な運命が待ち受けているのだろうか。
ウサギの小さな頭では、とても想像の及ぶものではなかった――――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアルナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からマヌエラさんが去りました。