2019/10/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 太陽が傾きはじめると、すこし肌寒い風が吹いた。煽られかけた長いスカートを押さえながら、小さく身震いをする。日中がまだ暖かいから油断していたけれど、この時間まで外出する事になるなら、上着を羽織ってきてもよかったかと思う。まだ風邪を引くような寒さではないのが幸いだった。
それでものんびり歩いているよりは、先を急いだ方がいいかもしれない。完全に暗くなってしまうと、もうすこし気温も下がるだろうと思って早歩きに。けれど、すぐに足を止めてしまい、一方をじっと見つめはじめた。
小さな屋台のそばに色とりどりの箱が詰まれている。様子を窺ってみて、お店の改装を終えた記念にくじ引きをしているようだと知る。並んだ人がいいものを当てたようで、店主が手持ちのベルを鳴らしていた。

「…ぅ」

昔から、くじ運はあまりよくない。大体がっかりする結果ばかりなのだけれど、くじを引く前のどきどきは、ちょっとだけ好きだった。どうしようかと財布を覗きこむ。悩んでいる間に店主の目についてしまったのだろう、呼びかけられると断りづらく、仕方なくのろのろと短い列の後ろに並び。

ミンティ > 自分の前に並んでいるのは三人だけだから、数分も待てば順番が回ってくる。あらためて代金を確認して、紅茶一杯分くらいの値段だったからほっとした。お店のご主人に何枚かの硬貨を渡すと、入れ違いに差し出された大きな箱。そこから折り畳まれた紙を一つ引けば、なにが当たるかわかる仕組みらしい。
ギャンブルのように負けて損する事もないけれど、つい緊張して息を飲む。箱の中に手を入れて、なんとなく、なるべく奥の方から一枚を取り出した。

「…たぬき……」

紙に書かれた数字を確認してもらって、手渡されたのは小さな木彫りのたぬきだった。鎖がついているから、どこかに吊るして飾ったりするのにいいのかもしれない。
見るからに外れではあったけれど、そのたぬきが可愛かったから、ちょっと得をした気分だった。
目の前で軽く揺らしてしばらく眺めているうちに、後ろにまた一人並んで。あわてて場所を譲って歩き始める。鞄につけるか、家のどこかに飾るか、考えながらの帰り道は案外楽しいものだったようで…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミンティさんが去りました。