2019/07/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシスター・マルレーンさんが現れました。
シスター・マルレーン > 今日は休みます!

ばーん、とはっきり言い放ったのは、旅に出てから初めてのこと。
仕事で割と心がぽっきり折れたからだけれど、身体も割と限界だ。

冒険者の仕事は休みつつ、普通の買い出しやら、お祈りやら。
普通のシスターとして過ごす、平和なお昼。

「………はー、こんなに平和な毎日が続けばいいんですけど。」

とても緩い笑顔で、ほわほわと楽し気に商店街を歩く金髪のシスター。
冒険者兼シスターとして、割と重い荷物を毎日背負っている女である。

今日は冒険者ではないのだけれど。

シスター・マルレーン > 最近、仕事をこなす速度が明らかに遅くなっていたのだ。
笑顔も無くなって、動きが不意に止まることも増えて。

とかく、追い込まれていたのだろう。
生真面目な彼女は、荷物を抱えながら歩きながらも、ほわほわと幸せそうに顔を緩める。

………とはいえ、彼女の本質は変わらない。

「……そういえば、海での調査も仕事にありましたし。
 水に入る衣装は流石に修道服も免除されていましたね………。」

ふと思い出せば、衣料品の出店を眺める。
水着と呼ばれるアレだ。

シスター・マルレーン > 「………いや無理です。」

全身を分厚い布で覆い続けてきた彼女には刺激の強すぎる水着の数々。
思わず、おおう、と仰け反って視線を反らしてしまう。

「………なんですかこれ、これでどうやって身を守るんですか。」

冒険者用の水着ってないんですかね!? って思わず周囲をきょろきょろとする。

シスター・マルレーン > 「いえ私ではないんです、友達のものを見ようカト。」

店員にはすさまじくぎこちない対応をする。
シスターとしてくるんじゃなかった、とすさまじく後悔するも、時すでに遅し。

最近の流行どころか、何が運動に向いているのかもわからぬ女。
店員に聞くのも憚られ、さてどうするか、と壁を眺めながら悩む。

はたから見れば、何もかかっていない壁だけを眺める謎のシスターである。

シスター・マルレーン > 「そのええと、海辺での活動に使うのですが、動きやすいものや、……運動に向いているものはありますか?」

ようやっと勇気を出して、質問をしてみるも。

うちは全部運動にも向いてますよ!!

という恐ろしいまでのセールストークに撃沈する。
くっ、恐ろしい店員………。

「………ゆ、ゆっくり考えますね。」

どんなものが似合いますか、とは流石に恥ずかしくて聞けずに、はははははは、と店員から遠ざかるシスター。

シスター・マルレーン > 「なんですかこれ。」

紐じゃん。
紐を手に取って遠い目をする。いやこんなの絶対無理だわ。
これが命令だったら逃亡する自信がある。

「………どんなのが売れてるんでしょうかね。」

なんて、周囲の人が何を手に取るか、ちょっと眺めてしまう。
あまり行儀がよいことではないことは分かっているのだが、誰かお助けを、なんて都合のいいことを思ってしまう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にルビィ・ガレットさんが現れました。
ルビィ・ガレット > 昼過ぎ。冒険者ギルドからの帰り道。
客引きの声に呼び止められる。場所と時間帯からして、いかがわしいものではないだろう――そう踏んで、女にしては珍しく立ち止まって。
無視をせず、店員のいるほうへ歩み寄るのだが。

「……し、下着は間に合ってるというか。――え、違う?
 何がどう違うんですか。あたし、ともかく、興味が無……」

視界に入った商品の類いは一見、女には下着にしか見えなくて。
慌てて説明を挟んでくる店員。言われてみれば違う気もするが、まともに取り合う気も無く。

そのまま元来た道を戻ろうとした矢先、修道服の女性が半吸血鬼の目に留まった。
目立つ格好だから、というよりも――、

「……に、似合うと思いますよ」

彼女が持っていた、もはや衣類の機能を満たしていない紐状の「何か」が衝撃的で。
つい視線が合ってしまって、口から出てきた言葉は。
相手をフォローしているかと言うよりは、窮地に追いやる言だったかも知れない。

シスター・マルレーン > 「どういう!?」

一撃で瀕死である。通りすがりの艶やかな髪色の、高貴さを感じさせる女性にいきなりそう声をかけられれば、あまりの衝撃に背後に電流が走ってしまう。

「いやいやいやいやいや、これはですね、丁度目に入っただけで。
 あるじゃないですか、これは無いな、みたいな。
 ほら、シスターですよ、私。
 これ着てはちょっと無理です、無理ですから。」

ぷるぷると首を横に振りながら、大丈夫大丈夫、違いますからね、と必死に自己フォロー。

「その、水辺で働くお仕事があったので、水辺で動ける衣服として有名らしく………
 どんなものが似合うかな、と考えていたところ、なんです。」

あははは、あはは、と乾いた笑顔で説明しながら、紐水着は元あった場所に返しておこう。
店員が「お買い求めですか」って来る前に。

ルビィ・ガレット > ……明らかに言葉の選択を誤ったようで。
店員に、今度こそ"適切な"フォローを自分の代わりに頼みたかったが。
振り返ればもういない。……いつの間にか、よその客の接客に忙しそうで。

「――い、いや。『主の思し召し』だとか。
 聖なる徒としての、上から押し付けられた意味のよくわからない『試練』だとか。
 ……ともかく、修練の一環として御自(おんみずか)ら受難しているのかと」

だから、自力でやるしかなかったのだが。
……結果は散々である。自分で言ってて途中で意味がよくわからなかった。
ともあれ、事情をかいつまんで相手から聞ければ、安堵したような息を漏らして。

「どちらにせよ、それ――着ないんですね? ……よかったです」

紐水着が相手の手によって元の場所へ戻されれば、「これが正しい」とでも言いたげに深く頷いた。
過激だとか、独創的な趣味をお持ちでない限り、目の前の女性みたいな人が。あんな格好。
……してはいけないと思ったから。

シスター・マルレーン > 「あ、その試練は………あるから困るんですよね。」

遠い目をして、目のハイライトが消える。
なんやかんや理由をつけてぐいぐいといろいろ押し付けられる未来が見えた気がする。

「………よ、よかったです。
 本気で似合うと思われていたらどうしようかと思って。

 ……いや、まあ、その、普通に海辺で作業したいだけですからね。
 あまり露骨に肌を露出すると、それはそれで怒られますし。」

相手が悪乗りしているわけではないと分かれば、こっちもほっと胸を撫でおろして。
……その上で、ふと思いつく。

「……その、実は生まれてこの方この服以外はほとんど着たことがないのですが。
 こういった衣装は、どのようなものが良いのでしょうか。」

自分よりもよっぽど衣服に詳しそうな目の前の女性に、これ幸いと助けを求めてみる。
きっと自分よりも詳しいのだろう、なんて勝手な思い込み。

ルビィ・ガレット > 「………」

こちらも遠い目になる。――あるのかよ、と。
だが、言葉にはしまい。薄い笑みを浮かべて、それを相手に向けるのみ。
安っぽい同情や気楽な共感の言葉など、何になるのか。そう思っての判断で。

「………あたしはこんなの、"全部の"女性に絶対似合わないと思います。
 『似合う』と感じる人は女性の敵か、『治すと死んじゃう病気』の人かと。
 
 あ、あぁ~……最初のほうでそう言ってましたもんね。水場でお仕事があるようなこと。
 夏場とは言え、あまり肌を晒すと日焼けしちゃいますもんね」

言葉の端々に、常識的な感覚と過激さをちらつかせる。
今のところ、両者の波長は合っている。……と、思いたい。
知り合ったばかりのシスターの話に相槌を打っていたが、

「――えっ。あたし? ……参考になるかしら。
 お店の人に相談したほうが正確な気も……うぅん」

水着選びの相談を持ちかけられれば、少し驚いて。

シスター・マルレーン > 「ああ、よかった。………そう思ってくれて。」

ほっと胸を撫でおろす。
ええ、そういう女性の敵が何故か教会内部にもいるんですよね、とは流石に口にできない。

「そうなんです。いや、去年はこの恰好で仕事をすることになってまして。
 それで熱中症でばったりいきまして………。
 流石に今年は水着の着用は認められたんですけどね。」

あはは、と笑いながら。
話を穏やかに聞いてもらえることに、リラックスした表情を浮かべて。

「あ、ええ、そうですね。
 その、お店の人に聞いたら「全部似合いますよ」って………」

少し困った目で笑って。………肩を竦める。

「あ、もちろん、それで全部決めるわけじゃないから安心してください。
 ……私、この町の教会で働いて……ついでに、冒険者としても働いています、シスター・マルレーンと言います。」

ルビィ・ガレット > 「――シスターって言うだけで。優しそうだし。包容力ありそうですし。
 ……だから、あなたは。今までは。『そういう話』を聴いて、共感して。
 
 誰かの気持ちを。受け止めてあげることのほうが、多かったのかも知れませんね」

想像の域を出ないが。彼女のような人間は職業柄、そういう好ましい、
"都合のいい"イメージを勝手に持たれて。求められることが多い気がして。
同情するわけではないが……慮るような口振りで静かにそう、女は言った。

「え。……この格好で? ――確かに、支給された制服で作業したほうが。
 自分の立場を意識して、仕事に取り組めますし。責任感も出るかもしれませんが。
 ……酷いなあ。一番尊いのは、上の指示を聞いて動いてくれる人たちなのに」

紅茶色の目が、僅かに見開く。相手は劣悪な環境で働かされているのだろうか。
もしくはそれに近い状況で、か。迂闊な意見、同調は避けたいところだが……、
つい自分の口から出た言葉は、自分でも意外なほどにまともで。善性の感じられるもの。

「……全部似合うのなら、それって他のお店に行っても『全部似合う』ということになるんじゃあ。
 言葉の綾かも知れないけど。杜撰な接客ね……」

そういった勢いのセールストーク、リップサービスで売れ行きが増す場合もあるかも知れないが。
ため息混じりにそう言えば、ちらとだけ忙しそうにしている店員を盗み見て。

「――あ、こちらこそ申し遅れました。
 あたしはルビィ・ガレット。……同じく冒険者です。

 シスター・マルレーン。お好きな色はありますか?」

手短に自己紹介を済ませば、水着選びの話に戻ろうと。
彼女の色味の好みを確かめる。――内心、相手が自分の正体を知ったらどんな顔をするのか。
想像しながら……。

シスター・マルレーン > 「いやあ、そんなことはないですよ。
 私は外を歩いて、いろいろな場所を見て、街を見て。
 苦しんでいる人も、楽しく過ごしている人も見ていますから。

 それよりも、ずっと同じ場所にいて、同じ暮らしを続けて。
 それでいて人の思いを受け止められる街のシスターの方が、よっぽど。」

相手の言葉に、少しだけ頬を染めながら、照れた表情を掌で隠して。

「……それに、私自身が大雑把ですからね!」

にひ、と子供のような笑顔で照れ隠し。
そうやって認めて、慮ってもらえる。
たくさんの人に思ってもらったけれど、やはり……うれしいもの。

「………あはははは。
 そこはその、私の口から「そうですよね」は言えませんのでー……?」

ぺろ、と舌を出して笑いながら、目で口ほどに物を言っておく。
ひどいんですよもー、なんて、口にはしない愚痴。
明るく、それでいて冗談を解す、人の良さそうな修道女。

「ま、一人ひとりに合わせて考えるのは、大変だとは思いますしね。
 私はこんな格好ですし、特に……

 ……好きな色、ですか。 ……黄色か、……な?」

鮮やかな、そして爽やかな色を想像しながら、んー、と頬に指をあてて悩む所作。

ルビィ・ガレット > 「……そうやって、自分と誰かを比べて。『隔たり』だとか『差異』を感じられるのって。
 大事ですよ。健全な証拠でもあると思います。
 生涯、ずっと……時間や努力で埋められないものもあるから」

存外、真剣な言葉を交わしている自分がいる。
相手の照れた様子には、少し眩しそうに目を細めて。

「……大雑把なら。やっぱりさっきの『紐状の何か』、着てみます?」

涼しげで控えめな笑みを浮かべながら、彼女が少し前に戻した「それ」を指差す。
――細かいことを気にしない性分なら、着れるでしょう、と。言外につまり、そう言っており。
女の本性が滲み出す。人の慌てた顔が好きなのだ。無論、からかうことも。

「――そうですよね。軽率でした」

小さく頭を下げる。相手は冗談めかして、話を軽い感じに持っていってくれたけども。
こちらとしては、「少しでも悩ませることを言ってしまったか」と。気になったので。

「黄色、ですか。……聞いておいてなんですけど。
 私はシスターって、青の水着が似合うと思うんです。……ほら。あなたの髪との対比で。
 例えば『仕事だから――』と言って、地味な黒の水着を選んでも。

 かえって、あなたの髪色が際立つと思うんですよ。悪い意味ではありませんけども。
 私用ではなく仕事で水着を選ぶのなら、見た目のバランスがいい青がよろしいかと。

 ……つまり、暗過ぎない寒色系等の水着でしょうか」

最終的にどうするかは、相手次第だが。
自分でも意外なほど、具体的な助言に及んでいた。

シスター・マルレーン > 「そうですね、埋められないものは間違いなくあるでしょう。
 ……それを嘆いても始まりませんし、何より私はいい経験をさせてもらってる側ですからね。
 その分頑張らなきゃいけませんよね。」

ぐ、っと拳を握って、よし、と気合を入れるのだけれど。

「いやそれだけは。」

膝から崩れ落ちるようにへにゃりと腰を折って、それはそれだけは、と首をぷるぷると横に振る。
いやいやそれはほんとにアレですからまずいですから。
分かりやすく慌てて、いやいやもう勘弁してください、なんて笑って見せる。
相手がきっと冗談で言っているであろうことは、前後の会話から明白。
……ですよね、と、一瞬冗談ですよねと確認するように笑顔が強張るけど。

「あはは、いいんですよ。
 言わないだけで思ってますからネー。言っちゃったけど私は何を思ってるとは言ってないですからセーフですよね、ええ、きっと。
 きっと許してくれるでしょう。ええ。」

真面目に頭を下げられれば、ちょっとだけ慌てたように、むしろ明るく笑いとばしてみせる。
気にすることないですよ、と、直接ではなく間接的に伝えるように。

「………あ、なるほど。
 見た目のバランスですね。 いやー………この仕事を続けていると、こう、人生の9割以上この恰好なので、色合いのバランスとか全然分からなくなっちゃうんですよね………。
 ルビィさんが偶然通りかかってくれて、今日の私の出会いに感謝ですね。」

何も考えていなかった彼女にとっては、ありがたいアドバイス。
ぱ、っと笑顔になれば、そういった水着をもそもそと探す。
ええ、紐は見えない、見えないですってば。

「案外、思いっきり肌出すものなんですね……。」

それ以外の水着も割としっかり身体を出すことに、選びながらも困った顔をして。

ルビィ・ガレット > 気合を入れて引き締まったかと思いきや、
自分の言葉のせいですぐにそれが緩む相手を見て。
……息を漏らす音だけで、器用に笑う。

あまり間髪入れずに「冗談ですよ」と言ってやってから、

「……内側に秘めてることって、何かの拍子に表に飛び出しちゃうものですから。
 ――誰かを巻き込んでもいいから。たまには吐き出したほうがいいと思います。
 
 ふふ、ところで。――『きっと許してくれる』って、誰が?」

少しだけ声量を絞ると。真顔に近い笑顔でそう言って。
こちらも遠まわしな表現に努める。最後の問い掛けは好奇心で聞いていた。

「修道服を着ていると、着飾れるのは――お洒落は見えない所からとも言いますが――、
 下着くらいになっちゃいますからねー……。で、でも9割以上??
 それだと、服装に悩まないかも知れませんが……してみたい服装とかって。
 
 シスター・マルレーンは。個人的にはないんですか?」

服装の話題を続けていると、自然と自分の格好も気になってくる。
外套で大部分が隠れることが多いとは言え、手を抜いているつもりは無いのだが……、
傍から見ればどうなのだろう。そう考えながら、相手の服の好みを聞き出そうとする。

「上下に水着を着用した上で、腰に布を巻くようなデザインのものも。
 あるみたい……ですが。実際、作業時には邪魔になりそうだしなあ。
 肌を出すのは……人目が気になります? ――それとも、直射日光?」

自分もそれとなく、彼女に合いそうな水着を探しつつ。
相手の一番の懸念事項は何かと確認する。ひょっとしたら両者か。

シスター・マルレーン > 「案外それが私は思いっきり漏れ出る方なんですよねぇー……
 神に対する敬意が足りないとよく言われます。」

とほほ、と頬をぽりぽりとかいて。もちろん、神ですよ、と許してくれる相手を考える。
ええ、きっと、きっと、多分?

「天罰落ちますかねー、私。
 こう………文句言いながらもやってるんで、そこは何とか許してもらえれば……。」

相手の言葉に対して笑顔のままで、頬をぽりぽりもう二回ほど。
冗談交じりのおどけた様子を見せながら、さらなる質問にううん、と少しだけ唸って。

「………気が付いたときからずーっとこの恰好でしたから、不便を感じたことはありませんけれど。
 そうですね、したい恰好………………。

 こう、大勢の相手と戦う時くらいは、相手に捕まれやすい恰好は嫌だなーって思ったりしますけど。
 きっとルビィさんが聞いているのはそういうことじゃない気が自分でしてます。」

悩みながら出てくる答えは、ひたすらに実戦かつ武闘派な答えで、そんなことしか出てこない自分に遠い目をする。

「特には、無いですね……
 直射日光は気にしないんですけど、あんまり変な意味で視線を集めるのも、そのー。

 恥ずかしいかなー、なんて……。」

自分の指をちょんちょんとつつき合わせながら、本音がぽろり。
いや、別に見られて困るってわけでもないんですが。見られるとも思ってないんですが。
頬がすこーし赤くなる。

ルビィ・ガレット > 「敬意と不満の強さって、反比例するのかしら。
 綺麗な理屈ではそうなのでしょうけども――実際は、違うと思います」

それとなく、相手を擁護するような言葉を吐く。
続く言葉には、うっかり苦笑いを浮かべて。

「――生きている時点で罪深いんですから。"今更"天罰なんて落ちてきやしませんよ、我々は」

日常会話の声のトーンで、穿ったことを言って。
神への不敬を通り越して、冒涜とも少し違って、「何か」を通り過ぎて行った者の言葉。
もしくは。「ある地点」にたどり着いた者の言葉。

「………ん。うぅん。その。――シスター・マルレーンにはまだ早かったみたいです。
 えっと。そのー。……うん。あなたはそのままでいいと思います……よ?」

肯定して受け入れるようなことを言いたいのに、言葉の語尾が疑問系になってしまう。
女の視線もどこか遠くを捉えており。彼女みたいな人はいったん、誰かの「着せ替え人形」になったほうが。
……本人のためなんだろうか? 口には出さないが、そんなことをこっそり思ったり。

「普段着がその修道服でしたら、体の7割8割を露出させるなんて。
 ……ふつーに考えて抵抗ありますよね、わかります」

共感を示すかのように、小さく何度も頷いて。

「目立ったり、人の視線を集めるのがお厭でしたら。……一時的に人の立ち入りを規制して、人目を減らすとか。
 ――後は、視線除けの魔術……似たような格好の仕事仲間と複数で作業する……、
 見てきたやつを問答無用でぶん殴――、あ、なんでもないですー」

思いつく限りの具体策を口に出していたら。
不穏なものが混じった。女はすぐ笑顔を見せ、『無かった事』にするのだが。

シスター・マルレーン > 「まあ、不満があるのは他の場所ですし。……お、っと。また出ちゃった。」

ぺろ、と舌を出して微笑みながら、相手の言葉に少しだけ首を傾げる。
何かあったのだろう。 それはきっと彼女の持っている重い罪で。
職業柄、そんな言葉には敏感ではあれど、同時に踏み込む怖さもよく理解はしている。

穏やかに微笑みながら。

「そ、そうですよね、まだ早いですね。
 ええ、もうちょっといろいろな服装をイメージして、似合う格好だとかを考えられるようになりたいものです。
 ………最終的にそれで鎖帷子とかになりそうな自分が嫌ですね!」

あっはっは、と明るく笑って。
着せ替え人形くらいがちょうどいいのかもしれない。きっと彼女自身の成長に任せていては、きっとこのままのような気がするだろう、うん。

「そうそう、そうなんです。
 でも水場でこの恰好も厳しいですし……。

 あ、なるほど。 魔術は難しいですけど…………。
 人の立ち入りを規制して、仲間を募って………ぶっ飛ばして………。」

しっかり指でカウントしつつ、ぷ、っと笑ってしまう。
まるで本当に聖母のような、慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、そして言うのだ。

「ルビィさん、それは私が一番最初に思いついた手段です………。」

仲間ですね。私たちきっと仲間ですね!
いい笑顔で握手を求めて。脳筋バトルシスターは笑顔で懐いて。

ルビィ・ガレット > 見た目の年相応にしっかりしていて、それなりに責任感もあると思いきや――、
どこか抜けていたり。ずれていたり。幼さが所々溢れたり。
目の前の修道女の印象は、なんだか安定しない。

非常に多面的。人間味が豊か……とでもいうか。
こちらの意味深な言葉に踏み込んでこないあたり。
――やはり、気遣いもできる人なのだろう。女はそう考えていて。

「……一番手っ取り早いのは、恋人を作って。『着飾るしかない状況』に自分を追い込むか。
 もしくは――美意識の高い、女友達の『餌食』になることですか、ね。
 彼女たちが用意してくる服を、『着れ』と言われれば、とりあえず着てみる訳ですよ」

律儀に、妙に具体的な助言をする。仮に、彼女の同性の友人が同職の者ばかりでも、
私服に気を遣っている者もいるかも知れないし。さすがに身嗜みに気を遣うために、
恋人を作るのはハードルが高いだろうが。……しかし、彼女からすればどちらも荒療治に近いかも知れず。

「……………………」

母親よりも大人びた、冷めた子どものような目つきで相手を見る。
彼女のいい笑顔をよそに、女は相手がせっかく戻した『紐状の何か』をテキパキと探し当て、
それを掴み。――シスターの握手を求める片手に、無理やりそれを握らせれば、

「――店員さーーーん! やっ、ぱり! このッ、人!!
 これ、買うんですって。……すっごく迷っていたけど、『決心』が付いたんですって」

大声で店の者を呼び付けた。大慌てで、営業スマイルで駆け寄ってくる店員。
その店員と入れ替わるように、半吸血鬼はこの場を立ち去る。

シスター・マルレーン > 「コイビト。」

繰り返して、目をぱちくりと瞬かせる。
なんだろう、とっても遠い次元の言葉のような気がする。むしろ考えたこともあんまりなかった。
言葉のイントネーションも若干おかしい。
彼女なりに真面目に、真っ直ぐに取り組んできた結果だろうか。こういうところが子供のようなところが抜けきらぬ原因か。

「……ああ………そういう知り合いなら、いたような。
 美意識が高いかと言われると、よく分からないんですけど。」

ううー……ん、と唸る。そんなことが頼めるかどうかは、ちょびっと分からない。
お願い事とか、あんまりしたことないし。

笑顔を向けていたのにあっさりと裏切られて、ひゃー!? っと思わず悲鳴をあげる。

「ええーーーっ!? ちょ、待ってくださいルビィさーーんっ!
 いや、違います違います! 私じゃないです! ええ最初に言った通り私の友達がーっ!!」

必死にガード、防戦。
やはり大雑把でテキトーな明るいシスターは、そういう格好が似合うのかもしれなかった。
いやでもやっぱりそれは無い。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からルビィ・ガレットさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシスター・マルレーンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にモールドさんが現れました。
モールド > 平民地区と富裕地区の境目に居を構える、エステ店「オブシーン」。
清潔感が見て取れる店構えと、利用者の声、そしてその値段設定から平民、貴族を問わずに評判の良い店だ。

その実態は、優良店とは間違っても言い難いものであるけれど。
今日もまた、愛しの恋人や旦那の為、または自身の美を磨く為にとその身を嬲られる客が一人。
淫らで変態的な施術を受け、それでも認識上は「素晴らしいサービス」を受けて満足そうに店を後にする。
その胎には雄の種がたっぷりと仕込まれ、つい先ほどまでその証を魔導具に晒して記録していた事を知るのは今、店の主ただ一人だ。

店に一歩足を踏み入れれば、設置された魔導具の効果で認識に影響を受けてしまう。
エステの効果を宣伝するように店内へと飾られたパネル一つをとっても、それは美貌を喧伝するものではなく。
素肌を晒し、卑猥な落書きを施されて玩具を銜え込む姿であったり。
男のペニスを美味そうにしゃぶり、恍惚とした表情を浮かべているものであったり。
更には犬の様に首輪とリードをつけられて、屈辱的なポーズを取らされながらも矢張り蕩けた表情を浮かべるものであったりと様々だ。

女の、否、牝の美しさを象徴するという意味ではそれは一部で納得できる写真の数々であるかもしれない。
けれども、此処は表面上は普通のエステ。誰もが、それを見た途端に逃げ帰るだろう
――それも魔導具の効果で「ちょっと過激だが魅力的なスタイルを見せる女性」とでも変換されるのだろうが。

さて。今日は後一件、予約があるがそれまでにはまだ時間がある。
獲物となる客が来るか、それとも予約の時間まで暇を過ごすこととなるか。
のんびりと受付を続けながら、次なる客をどう料理しようかと、にやけているのであった。

モールド > やがて、予約の客が訪れる時間となった。
今日の予約は、上の貴族から特に念入りにと言い含められている客だ。

貴族か、それとも王族か。
仔細は聞いていないが、きっと見目に麗しい人物であるのだろう。

嗚呼、そんな人物が淫らな姿を晒す様が、今から楽しみだ。

今日もこうして、餌食になる客が、増えていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からモールドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にネコさんが現れました。
ネコ > 『……』

平民地区、通りに面したとある店舗にて、少女が商品を見ていたが。
求めていたものはなかったのか、首を振り、店を後にした。

『……クソっ、こんなことなら貧民地区に行くべきだったか』

左手で頭を掻きつつぼやく少女。
メイド服に身を包む少女だが。その右腕は存在しない。
少女の求めていたもの、それは、義手であった。

『しゃーねぇ、こうなりゃ散歩がてら、色んな店に行くか』

ため息を吐きつつ、通りを歩く少女。
暗殺者ギルドで聞いた噂を元に、武器屋に行ってみたものの。
噂はしょせん噂。義手など売っていなかった。

『……義肢を売ってる店、ねぇ』

そんなの心当たりなんてない、と。少女はげんなりした顔だ。

ネコ > 少女は、ぶつぶつと言いながら通りを歩いていった……。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からネコさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にスバルさんが現れました。
スバル > 平民地区の一角、少年の家にほど近い場所、少年は、とことこと、歩いていた。
 今は夜であり、こんな時間に一人で歩くのは流石に憲兵などに見つけられてしまえば咎められてしまうだろうけれど。
 歩く人がまったくいない時間帯というわけでもなかった。
 少年は一応の警戒をしているのか、右手には籠手を、腰には、脇差と呼ばれるショートソードを佩いていた。
 まあ、少しでも腕の立つ人物であれば、少年はそれを護身用に身に着けているだけであり
 その扱いに長けているとか、そういうわけではないことは確かであろう。
 そして、少年はある方向へ、民家の密集している場所に向かい、歩いていくのだった。

スバル > 「………っ。」

 少年は小さく息を吐き出す。
 母親に課せられた訓練を思い出して、それを実行していた、容赦のないメニューを渡されて、それを繰り返す毎日。
 訓練だけではなくて、家事をして、訓練をして、戻ってくる。
 そんな日常に、対し、疲労を覚えないわけではなく、少年は自分の疲労の度合いに、息を吐き出すのだ。
 今も、訓練を終えて帰るのだけれど、夕方に初めて終わったのがつい先ほどという所。

 これを日常的に……と思うと、少年はくじけてしまいそうだけれど。
 しかし、首を横に振ってふらふらと歩くのだ。
 もっと、頑張らないと。

 髪の毛の下に隠れた凶眼は、決意をもって、前を見据える。
 とはいえ、10歳の少年には酷な、練習量ではないだろうか、と訓練メニューを見て、思うのだった。