2019/07/03 のログ
ご案内:「平民地区・広場」にルビィ・ガレットさんが現れました。
ルビィ・ガレット > 今、広場の中央奥に設置されている、掲示板の前にいる。
冒険者ギルドの掲示板に貼り出されている依頼内容とは、ここのは趣が違う。

「……ペットの捜索や旅行中、家主に代わって留守番、
 ――1日だけ、恋人の振りをして欲しい。敷居が高く感じられる雑貨店や喫茶店に一緒に入って欲しい。
 絵のモデル、募集。家庭教師、募集。……ラブレターの代筆? 

 ――自分で書けよ」

全体的に個性的で、なんというか、平和なものが多い。
掲示板に貼り出されている内容をなんとなく、声に出して読み上げていたが。
つい、依頼内容に突っ込んでしまう。薄い苦笑いを浮かべながら。

ルビィ・ガレット > 広場に入る際、こんな時間帯にすれ違った青年がいたが。
ひょっとして、ラブレター代筆の依頼を貼り紙したのは彼だったか。
掲示板の前、軽く顎に手の甲側の指を添えながら。小さく首を傾げた。

「――いや、案外。『1日だけ、恋人の振りをしてくれる人募集』のほうかもな。
 ……筆跡がなんとなく、硬質で。男の字に見えるし」

当て推量でものを言う。薄ら笑いを浮かべながら。
笑ってしまうのは仕方ない。当事者にとっては深刻かも知れないが、
それにしても依頼内容が「情けない」のだから。

「こういう、私からすれば"ふざけた"依頼が混じっていると。
 ――なんか。……私も『おかしな依頼』をしたくなってくるな」

たとえば、何がいいだろうか。
軽く腕を組んで、思案顔。紙類や筆記用具は、カバンの中に入っていたはず。
……即席の依頼内容は、何にすべきか。

ご案内:「平民地区・広場」にジェルヴェさんが現れました。
ジェルヴェ > (風が通り過ぎるたび、分かりやすい程甘ったるい花の香が纏わりついたように匂い立つ。
移り香を疎みながらの帰路の途中。大通りから広場へ意識せずとも足が赴くのは、ここ最近の習慣のためだ。

敷地内に設置されている掲示板。今夜も変わらず張り付けられた数枚を温い風にはためかせ、街灯に照らされながら佇んでいる――けれど、どうやら今夜は先客がいるらしい。
広場の出入り口辺りで掲示板の前に建つ女性と思しき一人の後ろ姿を確認し、少し迷ったが予定は変えず。
先客が真ん前を占領しているわけでもそこに張り付いているわけでもないから、掲示物の確認くらいすぐに済むだろうと。視線をボードへ向けたまま近付いてゆく)

「―――……えっ。募集すんの?」

(その最中。呟く程度の、おそらくはひとり言だろう。零された言葉をいくつか拾い釣られてその女性の方を見てみれば、何やら思案げな素振りだ。
思わず浮かんだ驚きがそのまま声に出た。端的に聞いたひとり言を端的に解釈したままで、近付いていくなり男は首を傾けて、彼女の顔を横から伺い)

「一日彼氏。全然探す必要なさそうだけど」

ルビィ・ガレット > 種族上、知覚能力は高いほうだが。
考え事に気を取られ――場所が場所だし、少し油断していたのもある――、背後から近づく影に遅れを取る。

結局、彼の存在に気づいたのは、声を掛けられてから。
女にしては珍しい事態だ。相手は気配を消していた訳でもないのに。
そんな自分に内心焦り、軽く失望しつつも。……人当たりのいい笑みを浮かべれば、

「――ひょっとして、お兄さんが私の恋人になってくれるの? 1日だけ、だけど」

何事もなかったかのように、気さくに。軽口で返してみせる。
身長差の関係上、軽く相手を見上げるようにしながら。

ジェルヴェ > (不躾に、その上無遠慮に容姿の確認まで済ませた上でそう続けた直後。赤みを帯びた彼女の瞳と視線が合った。澄んだ色味を視認した直後になにかを連想しかけるが、頭で答えを掴むより先に軽やかに笑む相手の反応に注意が向けられる。
彼女に怯んだ様子は無い。―――成る程、腕に覚えがある為か。装いから、すぐに問いを投げ返す相手の様子をそう紐付けて)

「んん、おにーさん金ないから。高い店とか連れてけないよ?
 …経費別ならも少し詳しく聞かせてもらう」

(愛想の良い柔らかい笑みには、こちらも同じく口角を上げて。冗談めかした調子を続けて返すが、懐が寒いのは実際のところ事実だった。何せ知人の店で財布の中身を巻き上げられた帰りである。)

ルビィ・ガレット > 本当は、少したじろいだり。言葉に詰まって見せたり。
ともかく、多少は動揺している様子を彼に見せるべきだったかも知れない。
――そのへんの、普通の女として。自分を見せたかったのなら。

女は内心を蔽い隠して、平静を装って見せる癖があるものだから。
「人間として振る舞い」が少し杜撰な嫌いがある。……とは言え。
彼のほうは、「冒険者だから――」と。適当なところで納得してくれているようだが。

「えっ。……あ、そっか。『恋人の振り』ってふつー、割り勘や奢りまでも再現するのね?
 ――にしても、高い店って。……あたしが男の人にたかる女に見えるんですか?」

高い店、経費――別なら。
そのあたりの言葉で、暖色の双眸を瞬かせる。こちらからすれば、予想外の言葉だった。
遅れて、どこか世間知らずに近いことを言えば、いったんは納得した様子を見せるも。

彼の真意を覘こうと、少し不機嫌そうな表情を作ってから。
訝しげな声音で問い掛ける。……実際はそれほど怒ってはいない。
下心、本心としては、だ。彼の面白い反応が見たいと思っていた。

ジェルヴェ > 「そりゃまあ、周りの誰かに向けた『振り』なら当人たちは恋人のつもりでいないと駄目じゃねぇかな。
 ちなみに君と俺だと割り勘はつらい。俺が、体裁的に。」

(諸経費について等、細々考えを詰めていた所で声をかけてしまったのだろうか。否、多分この様子だと、恋人募集を考えあぐねていたという状況自体聞き間違いの早とちりである可能性が高そうだが。
けれど、真偽のほどは余り気にしてはいなかった。
―もし雇われた場合。それを想定して小さな笑い声交じりに話を続ける折、放った先の男の言葉を気にしたようで丸く形の良い目に不服げな視線を注がれると、)

「たかる。…あれ、奢られる事とか、ないの?そんな可愛かったらこう、『今夜は誰の財布で夕食たべようかしら』って、できそうなのに」

(つい声が静かに弾んで、夜の広場に会話の声音が幾らか響いた。
不満そうな表情に―と言うよりは、彼女の捉え方が男にとって新鮮だと思ったのだろう。眉を寄せてもう少し笑い顔を濃くさせると、軽口めいた調子で台詞を続けて)

ルビィ・ガレット > 「割り勘のほうが、つらい。――じゃあ、割り勘のほうで。
 もし、恋人の振りをするなら。そうしましょうか。……懐具合が寂しいんですもんね?」

元々、「おかしな依頼」候補として思いついていたのは、精々「あなたの秘密を教えてください」くらいだった。詳細や謝礼の内容は、曖昧なままで。
そのあたりを詰めて考えようとしていた所、彼に声を掛けられ、今に至る。……そして、女は人の話をちゃんと聞いていたのか。わざとずれたいらえを彼に返す。それも愉しげに。

「可愛っ……――お兄さん。そういうこと。女の人になら誰にでも言ってそう。
 ――あたし、そんなことしません。金銭的に困ってないし。
 それに、奢られたら。……『何か』を返さなきゃいけないでしょう?」

作り物の不機嫌顔が、一気に破綻する。軽く目を見開き、言葉を失う。
……数秒後、表情を薄い苦笑いに変えて。軽口でそう返して見せるも。頬が薄っすら赤いのは、どうにもできず。
内心の動揺を頑張って抑え付けながら、彼の質問に答えていく。

ジェルヴェ > 「あー、そうかー。それだとおにーさん会計のときに店員の目が気になる事になるけど、所持金心配してくれたお嬢さんなりの優しさだと受け取っておく」

(依頼主―(仮)である―の方針ならばそれは絶対だ。苦いような痛いような、複雑そうな色を緩い笑みに浮かべたまま瞑目するとその光景がまざまざ浮かぶようだった。
そこそこ年下、に見える、女性と割り勘で食事なり飲酒なりの会計を済ませる、恋人らしき男。それを冷めた目で見る想像上の店員。
器用にも考えただけで少し胸が痛くなったので、前向きな思考を唱えておいた。

―言葉を少しだけ詰まらせて。不満そうな雰囲気は表情から消えたが、しっかりと否定を重ねる彼女の声には明確な自立心が窺えた。
容姿で徳をすることが多そうだ、との表現に嘘や世辞はなく。だからこそ彼女が言った『たかる』という句が意外に聞こえたのかもしれない。
先のやり取りでわざとらしくおどけて渋めた顔を解いた男は、感心したように浅く口許を弧に曲げると、視線を彼女から掲示板へ移して)

「そんな、見返り求めてくるような男に奢られてやること無いよ。普通は美女連れて歩けるだけでステータス、…まあ、ひょっとしたらとか考えてはいるけど。
 だからお嬢さんも今度から誘われたら気前よく奢られるといい。飯でも、酒でも。俺の時は割り勘ナシで。」

ルビィ・ガレット > 「……お金の支払い時に、感情が。表情や目つきに出る店員なんて。
 ――マナー違反でしょう。教育がなっていない。人付き合いの形は人それぞれだし。
 お兄さんは別に、堂々と胸を張ってても――って、あれ??」

なぜだろう。目の前の男をからかって遊ぶつもりだったのに。
いつの間にか、彼を擁護している立場の自分。……相手に毒気でも抜かれたか。
なんだか調子が狂った半吸血鬼は、僅かに視線を相手から逸らすと。どこでもない場所を見て。軽い、現実逃避。

……が。相手の微妙な表情の変化に気づけば、また視線を彼に戻した。
自分が普段浮かべる微笑とは違って、性質の良さそうな、相手のそれ。
――なんだろう。そう考えていたら、

「……少食だし。人と一緒に食事をするのがあまり好きじゃないのよ。
 その『ひょっとしたら』を裏切るのも面倒で――ねえ、その『ひょっとしたら』って考えているのはあなた? 
 
 ――誘ってるの?」

彼の横顔を見ながら答える。
途中で主語が曖昧に感じられて。そのあたりはわざわざ、薄い笑みを浮かべながら確認して。
途中から彼の言葉が誘い文句に聞こえてきたのは、果たして自分の自惚れか。それも一応、確認する。

ジェルヴェ > (敢えて逆手を取り痛いところを突いてきた。彼女は彼女でそうして冗談を楽しんでいると思っていたが、最終的には空想上の店員に白い目で見られるシナリオでいた男が、庇われていた。
そんなつもりではなかった、とでも言うように、彼女も途中で気付いたらしい。疑問符を挟む声に吹き出し掛けたのを、そっと俯いて手を口に宛がい、蓋をして堪えておく。
趣旨が迷子になったことが素の様相だとでもしたら、多分。ここで笑ったら、先程よりいくらか本気で不服そうに睨まれる――ような気がして。)

「ああうん、見るから食細そう。サラダとスープでお腹いっぱいとか言いそうな…、…俺?」

(笑いを堪えて、無事にそれが成功し、口許を覆った手を下ろしながらもう一度掲示板を見ると、そこで期限付きの恋人を募る掲示物を見つけた。
成る程これが発端か。今更彼女の呟いていた内容の全貌を幾らか判明させながら、視線でそれぞれ無造作に張り付けられた用紙を追い勝手にイメージした印象を相槌として返す中で。
投げかけられた問いに、正面に向けた顔を隣へ。最初に声をかけた時と同じ恰好で、首を傾けて自分の視線よりもずっと低い、小柄な彼女の顔を見遣ると)

「…今のは、一般論。
 でも誘っていいなら、俺も一般論にホイホイ乗っかるよ」

(話す合間に向けた視線からでは、ほのかに微笑むその表情の真意を男に読むことは出来なかった。口角を引き上げて、答えとも質問返しとも取れる言葉を紡ぐ。
最後のほうなどはわざわざ内緒話のように、声を潜めた口振りで。)

ルビィ・ガレット > 「………」

温度の低い目線で彼を見遣る。一見、無表情で何も思っていないような顔付きだが、相手の笑いそうな気配にそれとなく気づいた訳で。
はっきりと指摘しないのは、大人げないから。現状、飽くまで"気配"があるだけだし。
ナンとも言えない心持ちで黙っていたが、やがて、世間話のように話し出す。

「――吸血は月に2回。"人の食事"は月に10日から14、5日くらい、摂ればいい。
 ……と、言っても。1日1食での計算だけども――そう、あなた。

 名前はなんて言うの? ……私はルビィ・ガレット」

薄い笑みを浮かべたまま、相手の短い問い掛けに頷けば。
そろそろ二人称呼びも飽きてきたところ。彼の名を尋ねてから、遅れて自分から名乗って。
――ところで。さりげない口調、話の流れで、自分の正体を端的に示した訳だが。

彼はどんな反応を見せてくれるのだろう。

「……いいも何も――あなたにまだ、誘う気持ちがあるなら、ね?」

静かながらに通る声で返す。女の顔は笑っている。片頬を器用に持ち上げて。
その際、彼女の白い歯が少し見えるが……それは尖っておらず、普通で。

ジェルヴェ > (交わす冗句の延長か本気で了承を得ようとしているのか、含みを孕んだ男の笑みが程なく、驚いたような色合いに移ろう。ほんの僅かに目を丸くさせる程度、笑みの名残はまだ口許に残したままで。
傾げた首の角度だけが明らかに、深く。深くなっていった。
―吸血。人の、食事。月に―――二週間。
人だらけの、少なくともそうと思い込んでいる街に住まう一般市民には馴染みのない情報をすらりと耳に流し入れ、捻った頭が数拍遅れで処理を終わらせる。
つまり、彼女は)

「……待って、それは小食ってレベルじゃない。メシ誘えるタイミングよくて月に2回あるかどうかじゃん」

(人ならざる者、否それよりも。情報を整理した結果、男にとって重要なのはそこだった。
捻った首をもとに戻して、体ごと彼女へ向き直る。
笑う彼女の口許に知り得た情報から浮かぶ特徴的な証は見当たらないが、男にしてみれば真実、例えそれがはぐらかす意図を持った嘘だったとしても同じ事だ。小食の度合いが想定より大分違う。その発言により、誘えるチャンスが極端に限られたのだから。

怯んだ様子や―畏怖した仕草も雰囲気もまるで無く。僅かに寄せて顰めた眉は、難題に当たったとでも言いたげに。顎に手を置き視線を伏せて、月に二回、むしろそれ以下の食事の周期を見事狙い撃つ事ができるのだろうかと、思考を働かせかける途中、)

「えー、マジかぁ。どう…いや酒なら、……――あぁごめん、先に名前か。俺ね、ジェルヴェ。
 …ええと、ルビィ、…ちゃん?」

(はたと気付いて顎に添えた手を下ろす。名を聞かれていて、そして告げて貰っていた。聞いた音をそのまま復唱して、呼び方に迷った挙句最後に疑問符を付けたのは思い至った為だ。もしかすると、見た目がそのまま彼女の年齢ではないのかもしれない。)

ルビィ・ガレット > 「……途中から、お前と話していて嫌な予感はしていたんだ。
 ――あの、さ? 問題はそこか? 『誘えるタイミング』って……正確にはお前が『襲われるタイミング』だろうが」

はぁぁ……。ダンピールは深いため息を漏らした。
正直、彼と話していて、途中から感性のずれというか。……まあ。典型的な、わかりやすい。反応は返してくれないだろうな、と。
勘付いてはいた。

包容力があると言うのか。物事の優先順位が一般人と違うのか。
彼の何が決定的なのか、女にはわからないけども。……ともかく。
こちらから律儀に指摘せざるを得ないほどに、毒気を再度抜かれてしまい。

口調も、素の男性的な、どこか尊大なものに。取って代わり。

「――酒は酔えないし、味がよくわからない。……ジェルヴェ、ね。覚えておく。
 ……呼び捨てでいい。ちゃん付けのほうが気色悪い」

複雑そうな表情を浮かべている。気持ちの持って行き場がない、と言外に言いたげに。
彼の言い掛けの言葉を拾えば。それをまた、律儀に応えて。
彼女にしては珍しく、露骨な嫌味や皮肉も無いまま、彼の名前を反芻した。

相手が呼称に迷ったことについても、そのニュアンスを察して応えて。
……それから、胡乱な目つきで彼を見上げた。

「突っ込みたいところはいろいろあるが……つまり、私はあなたを襲っていいわけ?」

途中、挑発的な笑みに目元が歪んで。

ジェルヴェ > 「いや、さすがに俺もその『襲われる』の意味が色っぽい話じゃない事くらいは分かってる。実際そうなったら最終的には多分、食物連鎖的なオチが付くんだ」

(論点がずれている。若しくは方向性が違う。がらりと雰囲気を変えた口振りでの彼女の指摘には大真面目な顔でそこまで夢は見ていないと主張するが、おそらくその返答すらも彼女からしてみれば”そうではない”のかも知れない。

覚えておく、と名前をなぞられて。それをきっかけに、一先ず機会の有無についての考察は中断する事にした。
最初に声をかけた時、少し前の印象とは随分変わった口調を彼女が続けて重ねるたびに、小難しく固めていた男の表情からは力みが解れ、興味深げに口許には浅く笑みが滲んでいって)

「……んん、よくは無ェんだろうけどさ。いざとなったら許可もいらねぇだろ、きっと」

(彼女がその気になりさえすれば。男の、己の意思などは彼女の取る行動に何ら影響しないのではないか。
可笑しそうに笑って呑気に構えるその態度の根底がその予測にあった。餌を油断させておくなら、正体を隠し伏せた方が恐らく利点も多いだろう。その上でヒトではないと告げた彼女を、少なくとも今この時に不安に思う必要は無いと。

―――だから、そう続けながら、男は腰に手を当て重心を片側へ傾け、気楽な姿勢で視線を合わす。―確か、人を魅了する力があるのだったか。だとしたら余りじっと見つめ続けているのは拙いだろう。精々そうして聞きかじった特徴を気に留めるくらいしか、そも対策しようがない。)

「―…ルビィ。メシか酒は、まァ見かけたらとりあえず声掛けてみるとして。
 貧民街。一般女子じゃねぇなら歩けるよな。おにーさん繁華街から外れた所のバーによく居るから。もうほぼ毎日居るから、」

(重ねる男の口振りも、幾何か最初の頃とは変化していた。
健気に頑張る冒険者風の若い女。初対面の普通の女性と、そのつもりで選んでいた言葉が、ほんの節々で砕けつつある。)

「襲いたくなったら、其処おいで。
 そのあたりで名前出して聞けば、場所もすぐ判るだろうから」

ルビィ・ガレット > 「……お前みたいなやつって、ほんとう、なんだか――食指が動かないんだよな。
 ――ジェルヴェ、お前。女にモテないよな?」

こちらもまた、斬新と言うか失礼な切り口から入る。
何がどう、どうなって。そんな結論が出たのか。自身でもよくわからないが……。
なぜか、そんな気がした。……としか、言えない。

「――お前みたいな。……警戒も命乞いも、交渉もしないやつって。嫌いだ。
 ほんとう、やりづらい。――……ちっ」

表情を歪め、露骨に悪態を吐くものの。言葉自体は否定的であるものの。
女から"本物の"嫌悪感は、漂っておらず。彼みたいなタイプに対する処世術が、単に本当に、わからないと言った具合。
……そして、空が白み、明るくなってきても焦る様子の無いダンピール。

彼女にとって、太陽の光は禁忌ではなく。ただ、日中は文字通り、弱体化してしまうのだが。

「……貧民街。知り合いの魔術師がそこに住んでいるし、行ったことはある。
 ――バーに、ほぼ毎日? 呑んだくれているか。さては、そこの店員か」

彼の緊張感のない笑みについては、諦めたと言うよりも慣れてきつつあり。
砕けてきた口調については、まったく気にも留めず。むしろ、そのほうがこちらも話しやすく。
言いながら、「ひょっとしたら両方か」と思いついたあたりで、彼の「襲いたくなったら――」という言葉が聞こえてきて、

「……お前の危機管理と言うよりも死生観、どうなっているんだか」

物珍しい物を見るような眼差しを彼に向けた。

ジェルヴェ > 「あっは、良くない。そういうの良くないよルビィ。自分が魅力感じないイコール他の女も全員そうだろうみたいな…
 ………俺いまフラれたね?」

(街灯の明かりが夜に目立たなくなってからどれくらい経っただろう。周囲が明るみ始めていることに気付かず、すっかり話し込んでしまっていた。
一つ間違えば狩られかけていた、とも。言えなくはない。けれど男はどこまでも呑気に、風に揺れる件の恋人募集の掲示物の如くひらひらと軽々しい調子のままだ。
モテない、嫌い、一つ一つ拾えば耳が痛い言われようだが、それにも胸に手を当てて、傷ついたと嘆く素振りで可笑しそうに笑っている。)

「さー、どうなってんだろうな。…まァ、まともに死ねるとは思ってないから、美人に殺されんなら人以外だろうがそれもアリかな」

(どこまでも緩く、危機感は空っぽのよう。面と向かった『嫌い』の言葉が最後に大きな笑いの波を引き連れたようで暫く男は声を弾ませていたが、落ち着いた頃に呼吸を整えると呼気を吐くのに合わせて言い放つ。
そして軽く持ち上げた両手を胸の高さあたりで翳す。綴ったばかりの自身の言葉が頭で無意識に反芻されるのを断ち切るように、一度視線を伏せて掌を彼女へ向けると、「ただ、」そう変わらぬ口振りで台詞を続けた。)

「娼館帰りで殺されんのは流石にちょっと嫌なのでー、そろそろ退散します。
 …じゃあ、またな。ルビィちゃん」

(下ろした瞼を持ち上げて。別れを告げたのは、やはり掴み所なく笑う口角を上げた男の口から。
嫌がられた呼び方を最後になぞり、片手は下ろし、もう片手は「バイバイ」と付け足して。ひらひら振って見せてから踵を返し、男の歩は貧民地区の方角へと向けられる。

―――夜更けからすっかり明け方となった、帰路の途中。朝日が、雲間から顔を出した。そういえば吸血鬼―らしき―は、日光が苦手だとされているはずだが。
案外、定説も当てにならない。灰にも塵にもなりそうになかった彼女の姿を思い出しながら、男の姿はそのまま、広場の外へ―――)

ルビィ・ガレット > 「すまない。……ジェルヴェ――お前、男にならモテるかも知れない」

自分でも何を謝ったのかわからない。「振られた」のくだりは綺麗に無視して、微妙にフォローになっていないことを言い出した。
いや、彼の性的指向はわからないので。なんとも言えないのだが。
……それにしても。暖簾に腕押し、というか。堪えているようで真に堪えている感じのしない相手。

いつもなら、むきになったり。強がって何かを言い返すのだろうが。
こちらが想定している反応とあまりにも違うものだから。
……対策のしようがない。それが正直なところ。現状は。

「――『天国への扉は誰にでも開かれており、主は"そのままのあなた"であなたが来られることをお待ちです』……そんな言葉をどこかで聞いたけどな。
 ……お前なァ、私の知り合いと同じようなことを言い出すなよ」

おかしげに笑う相手を前にしている間、女は特に指摘も反論もせず、ぐっ……と堪えていた。
狙っているわけではないのだが、こちらが反応すればするほど、彼を喜ばせる気がしたので。
死生観についての回答を得られれば、吸血種らしからぬことを言い出して。とは言え、自分の言葉ではないのだが。続く彼の言葉には、呆れた様子にため息混じりに。そう返して。

それから、

「――今度ちゃん付けにしたら半殺しにする」

娼館のくだりには無反応だったのに、呼称については瞬時に反応した。
その言葉が去り行く彼にちゃんと届いたかどうか。……また会った時にでも確認すればいいか。

彼を見送った後、朝日の中、帰路をたどって――。

ご案内:「平民地区・広場」からルビィ・ガレットさんが去りました。
ご案内:「平民地区・広場」からジェルヴェさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 エステ店「オブシーン」」にモールドさんが現れました。
モールド > 平民地区と富裕地区の境目に居を構える、エステ店「オブシーン」。
清潔感が見て取れる店構えと、利用者の声、そしてその値段設定から平民、貴族を問わずに評判の良い店だ。
この国としては珍しく、ミレー族に対しても偏見は無いともいわれている。

無論、それには理由があるのだが。

その店を切り盛りしているのは一人の男。
今現在、その店の入り口は「只今施術中」という看板がかけられていた。

「うん、だいぶ解れてきたねぇ…お尻のマッサージ、気に入ったのかい?
 ――嗚呼、勿論、これで綺麗になるとも。綺麗になった体を恋人も喜んでくれるだろうよ♥」

施術用の個室では、寝台の上で四つん這いとなり、腰を突き出した女の姿。
オイルで淫らにその体を光らせ、悩まし気に揺れるその尻からは野太い玩具が生えていた。
ぎゅぽっ、ぐっぽ、にゅっぽ、と今日の始まりには経験も無かった筈のアナル粘膜は目一杯に広げられ。
オイルを混ぜ込んだその音は、下品極まりないプレイ内容を良く示している。
それを美容行為だと受け入れている女の反応は、確りと記録映像用の魔導具へと撮影されていた。

恋人の為に身を磨くのだと勇んできた女であったが、そうとは知らずに不貞を働き、しかもそれを記録されている。
本人のみがそれを知らぬまま、他人の女の体の隅々までを味わい、暴き、それを一部の見世物にする行為は進み。

全てが終わり、店を後にした女の姿は満足そうで、良い体験をした、という実感のみを残す。
今日もこうして毒牙にかかる女の姿が、絶える事は無かった。

モールド > この店は、足を踏み入れた瞬間に特製の魔導具の餌食にかかる。
此方の意のままに…とまでは行かないが、酷く抵抗が薄れ、美容行為だと嘯く事が可能となる認識操作の魔導具だ。
これも、ある貴族の力添えのお陰であり、それを利用しての女たちの痴態を裏にて売り捌く、という目的があった。

故にミレー族だろうが何だろうが、雌が乱れる様を撮れれば何でも良い。
店を後にする頃には詳しい事はさっぱりと忘れ、良いサービスを受けたという記憶しか残らぬのだから身の安全だって保障されている。

さて、今相手をした客が捌けたのならば、店の前にかけられていた看板を外し、受付にて待機。
予約の客が来るまでは、まだ時間がある。
それまでに飛び入りの客が来るか、それとも暇な時が続くのか。

次なる客に手をかける事を想像し、中年らしく酷く歪んだ笑顔を浮かべながら受付を続ける。

こうしたねちっこい性格も、女を責めて貶める映像や写真を撮るには相性が良く。
故に貴族にも重宝され、店を任されている理由の一つとなっていた。

モールド > やがて、予約の客が訪れる時間となった。
今日の予約は、上の貴族から特に念入りにと言い含められている客だ。

貴族か、それとも王族か。
仔細は聞いていないが、きっと見目に麗しい人物であるのだろう。

嗚呼、そんな人物が淫らな姿を晒す様が、今から楽しみだ。

今日もこうして、餌食になる客が、増えていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 エステ店「オブシーン」」からモールドさんが去りました。