2019/04/23 のログ
春芳院 > 幾度か揺さぶった事で、倒れていた人影が仰向けへと変わり容貌が露になるだろうか。性別が正確に判断できなかったのは、暗闇のせいだけでは無かった様。端正な顔立ち、見とれる様な銀髪も相俟って何処か中性的な印象を受けた。ずっと眺めていたい、然し今はそんな邪な想いを抱いている場合では無かった。軽く耳を相手の顔に近づけ寄せる。呼吸の音は聴こえる。生命が途絶えていないのを確認出来れば、安堵の吐息を軽く吐き出し。只、問い掛けに対し応答は全く無い。取り合えず病院へ────行ける時間帯では無さそう。と、あれば。

「うちに……連れていくしかない。」

決断に至れば、早速相手の身体を抱えようとするだろうか。其の際に、意識が戻れば一番良いけれど。仮に抱えようと身体に触れる事叶ったとしても、人間の女は非力。そう易々運べる訳も無く、四苦八苦し結局再度下ろす事になるかもしれない筈で。

ルヴィエラ > (――彼女が其の重みを背負うのならば
其の体温と、その見目よりも軽い印象を覚えるだろう。
とは言え、其の重みを、女の腕力で易々と運べぬのは当然か。
幾度か、降ろして仕舞うのならば、きっとその幾度目かで
ふと、女の努力を制止する様に、其の背中を、片掌が柔く触れるだろう。)

「―――――……大丈夫、そして済まないね、君は随分と優しい娘の様だ。」

(――響いた声音は、その音色だけで女の、何処か奥底に息衝く物を絡め取る様に。
ゆっくりと開いた紅い瞳が、女の双眸を捉えて重なれば、穏やかな笑みを湛えて。)

「―――――……すまないが、少し休ませて貰って良いかな?」

(そして、其の背を柔く指先で撫ぜながら、問うか。
女の家には、近付いて居る筈だ。 其処で休ませて貰えるだろうか、と。
代わりに、女から了承が得られるなら、ゆっくりと立ち上がる筈だ
女に肩を借りる様なてい、ではあるけれど)。

春芳院 > 背中に掛かる重み、自分が想像していたよりは軽い印象を受ける。けれど、成人男性況してや長身の相手を背負って歩くのは些か難儀で有り。着物と下駄という、身動き取りにくい格好である事も大変さに拍車を掛けていた。幾度か小休止がてら相手を下ろす事、何回目に成ったか。後方から響く声音。体内の奥底迄、琴線に触れる様な。触れられたのは琴線だけで無く、掌の温もりが柔らく背中に伝う。感触に、思わずびくり、と肩が跳ねてしまう。意識が戻った事に、安堵の貌を浮かべた。

「良かった、お目覚めになりはったんやね。──嗚呼、どうか謝らんといて下さい。此れ位しか、出来ひんくて此方が寧ろ謝らないかんのに。」

背後から、麗しい紅い眸が此方の翡翠を捉えてくる。重なる視線に、何故だか惹き付けられ。穏和な微笑も相俟って、初対面の相手に心をうは回れた様な感覚になる。そんな想いを断ち切る如く、軽く首を左右に振ったのは不審に見られなかったかどうか。

「……えぇ……、えぇ。勿論。其のつもりで……。───あ……、どうか、無理しんといて下さいな。家までやったら、何とか背負って行けますから……。」

指先が背中をなぞる感覚に、淡い熱がじわりと上がってくる。相手の願いを断れる訳も、断る理由も無く。立ち上がろうとする相手に、心配気に告げるも肩を貸し乍でも自力で地に立てたのを見届けられれば、安心したとばかりに柔らかく微笑を携え、彼に向けた。

ルヴィエラ > (――彼女が、未だ背負い続けようとするなら
其の時は、無理はせぬ様にと降ろすよう促すだろう。
地面に足を降ろせば、そっと、彼女の肩に片掌を乗せた儘
そうして、少しばかり重みを預けながら、彼女が案内する場所へと進むだろう。)

「――――……すまないね、だが、君の様に親切な娘に出会えて運が良かった。」

(言葉を、発するたびに、人の感情を
其の奥底に秘められた物に、触れられる様な感覚すら。
娼婦である娘に、果たして其れは如何感じられるだろうか。
言葉そのものが、まるで娘を愛でて居る様な響きで染み込むのなら。

いずれにしても、娘の家まではきっと、後僅かだと言う。
ならば、其の場所までは、共に行く筈だ
開かれた扉の向こうへと、姿が共に消えるまでは、直ぐ――)。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 路地裏」から春芳院さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 路地裏」からルヴィエラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイグナスさんが現れました。
イグナス > 日中は日差しが強くて、ようやく夜になってひんやりとした風。
…どうやらそういう時期にまでやってきたらしい。
夜風を浴びながら、ぐびり。酒をいっぱい喉に通して、大男は思考を巡らせていた。

「ん―……、いい時期だァ。…昼寝、とか。」

そういう怠惰なことを口にして、のそりと身体を起き上がらせた。
平民地区広場の、ベンチ。ぐごご、ぐがが、ってさっきまで大いびきをかいて眠りこけてたようだった。
で、気付けば空にはまん丸い月。少しだけ、おお、と驚いてからの。

「なあおい、お前、そこのお前さん。今何時ごろかわかるかァ。」

目端を歩いてた人影に声を掛けた。さて、逃げるか、反応してくれるか、どうだろう。