2019/04/11 のログ
■タン・フィール > そうして歩みながら土の潤いと緑の息吹を蘇らせながら、行く手に現れた朽ちた樹木。
2mに満たず生長をやめてしまったその木は、この土がちゃんと生きていればまだまだ育った筈の、
これから伸びようとしてたのに生命に届かなかった枝や根が、物悲しい。
「……さ、起きて。」
その木にも、粉薬と水薬をふりかけ、合図のように優しく手のひらでぽんと叩けば、
まるで生きているかのようなスピードで剥がれかけた樹皮や枯れきった枝から、
新たな葉や枝が蘇り、もこもこと起き上がるように木の根が地面から浮かび上がってくる。
満足気に、慈しむような目でそれを眺めていたが、足元がお留守になっており、
起き上がった根に足元をすくい取られて、コロンと小さな体が転げる。
「うわった…!? もぉ……おんしらず!」
転んで軽く打ったお尻をさすりながら、びーっと、大人数人分の背丈に成長した木に、舌を出して。
■タン・フィール > そして、
ひとしきり夜の公園の自然が蘇ったことを確認すると、踵を返して立ち去る。
一晩で草花や木々が息吹を取り返したのを目撃した通りがかりの人は、
夜に妖精の類が悪戯したに違いないと噂したという…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 夜の公園」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイグナスさんが現れました。
■イグナス > 「さ、む――……。」
昼間はともかく、朝方と夜は、寒い。
冬も通り過ぎたと油断している身には堪えるものだ。特に寒いのは。
軽く己の身体を抱くようにしながら、のしのしとゆっくり、おとこは平民地区の大通りを歩いていた。
時刻は夜、深夜に差し掛かろうかって頃合い。
宿に戻ろうとしたのだけれど、思いのほか、寒かったと。そういう具合だ。
――おまけに悪いことに。
「うおぉ、…や、っべェ。」
さあ、と降り始めたのは雨。慌てて走って、近くの店の軒下に。
最初は小ぶりだったけど、徐々に徐々に強くなる雨音。
どうしたものかと、やれやれといった具合に空を見上げて。