2019/03/18 のログ
エインセル > 「料理とマナー……本格的な、師匠さんだった。
 秘密にしてくれるなら、私も安心。そういう、身分だから、ね」

元奴隷のミレー族、と言うのはこの国でも珍しくない存在だ。
少女は偶々物好きで善良な飼い主に出会えたから、魔術や作法も一通り教わっている。
しかし、この国ではより劣悪な境遇に晒されているものの方が多いだろう。
そういう点では、少女は割と幸運なのかもしれない。自由があって、職があるのだ。

「そ、だね。しつこいお客さんとかは、確かにいるし。
 だから、道端で、とかじゃなくて、ちゃんとお店を介してるよ。
 稼ぎがいいから、大きく稼いで、少し休むのに最適。
 だけどやっぱり、冒険したいから、そういう時は、安宿、だね」

つまり節約。日々是精進。それこそが少女の日常だ。
だから今日の様な僥倖は、何よりも得難いものである。
さて、たっぷり食べて、一日働いたら、眠くなってくるのが道理。
はふぅ、と欠伸を一つ零すと、少女はもそもそと立ち上がって。

「……と、それじゃ、今日はこれで、帰ろっかな。
 明日もお仕事だから、寝なきゃだし。お腹いっぱいだから、いい夢見られそう。
 きっとセインとはまた会えそうな気がするから、またね。ばいばい」

僅かにはにかんで手を振ると、店主にもご馳走様、と声をかけて。
そのまま少女はその小さな体を宵闇に溶かすように去っていく。
その際、うっかりと気絶した男達を踏みつけてしまったのは、内緒だ――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場通り」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場通り」からエインセルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にタマモさんが現れました。
タマモ > ここは王都マグメール、平民地区のどこか。
とん、とん、とん、と少女は屋根を伝い移動をしていた。
その眼下には、そんな少女を追うように駆け回る、冒険者達。

「まったく、久々に会えば…いやはや、冒険者とは怖いのぅ?」

くすくすと笑いながら、少女はそれを見遣る。
どうしてこうなった?とか問われれば、以前、悪戯をした冒険者の仲間達だ、そう答えるしかなかろう。
いや、そもそも、その時に挑んで来たのは冒険者達の方だ。
だから、ちょっと数人を打ちのめし、残した女子を美味しく頂いた、以上?
詳細は、その女子に悪いので、言わないでおこう。
………あぁ、うん、追い掛けて来る理由がそれなのだろう、きっと。

今もこうして、わざと見えるぎりぎりで逃げ回っている。
少女が本気を出せば、撒く事は簡単なのに。

タマモ > より楽しめそうな、そんな相手が居れば、すぐにでもこの冒険者達は撒こう。
しかし、そんな相手が居なければ、もう少し付き合って貰うつもりだ。

時折、建物の間に降り立ち、捕まえられそうなぎりぎりまで様子見をする。
その手が触れる寸前に、流れるような動きで、それを避ける。
何度かそれを繰り返し、壁を蹴って屋根の上に、また屋根伝いに逃げ回る。
先程から、小馬鹿にするように、それを繰り返し続けていた。

「ほれほれ、妾はここじゃ。
こうして何度か好機を作ってやっておるのじゃが、まだまだ捕まえられぬか?ん?」

何度目か、地面に降り立ち、冒険者達が到達するのを待つ。
駆けて来た冒険者達、それらは頭に血が上っているのは、よく見ずとも分かるもので。
ひらひらと手を振るも、それに応える動きは、捕らえようと飛び掛って来るもの。
だが、しかし…

「ふむふむ………勢いは良い、じゃが甘い」

ゆらり、と少女はその身を揺らがせる。
飛び掛って来た冒険者達、その内一人目は、すっ、と半歩身をずらし、避ける。
二人目は、伸ばす手、その手首を取り、まずはそのまま引き寄せる。
その勢いを利用し、とん、と足を払い、先程抜けていった一人目の冒険者へと突っ込ませた。
ぶつかり合う二人は、そのまま地面を転がって。

更に三人目、流れるような動きで、身を屈ませ、すっと手を胸元へと押し当てる。
特に、強く押したような動作は無い。
それなのに、何かに衝突したかのように、ぶわっ、とその身が後方へと吹っ飛んで行った。
そして四人目、三人の冒険者に対する少女の対応の早さに付いてこれずで。
踏み止まっているところに、ずい、と少女が距離を詰める。

「尻尾を使う事も無し、出直してくるが良い」

そう呟けば、すっ、とそのまま背後に。
たんっ、と軽く地面を蹴って身を浮かせれば、とん、と首筋へと手刀を当てた。
僅かの間、ふらっと体を揺らがせると、その冒険者も地面へと倒れ込んだ。

手にした扇子を、ばさり、と広げる。
ぱたぱたと扇ぎながら、その冒険者達を後にし、裏通りへと歩いて行く。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」に祝夜さんが現れました。
祝夜 >  
「ぜひー、ふひー、もーだめ、あとまかせた……」

冒険者連中に混ざってタマモを追いかけていた少年、モヤシすぎてすぐに脱落
他の冒険者達を先に行かせて、路地の壁際にへなりと座り込んでしまっていた

「…やっぱ冒険者とか向いてないね、やめよ、うん…ヒモでいいや…」

ぜー、ぜー、と落ち着かない荒い呼吸を繰り返して初日から後悔していた

もちろん先にいかせた冒険者達が全滅させられているとは思いもしない

タマモ > 扇いでいた手を、ぴたりと止める。
そして、すん、少女は鼻を鳴らした。

「はて…?」

まぁ、まだ周囲に居るだろう、冒険者達の気配。
しかし、その中から感じる匂いに、かくん?と首を傾げ。
それに覚えは無いものの、己等に近いものを感じる感覚。
とん、と地面を蹴ると、たん、たん、と壁を蹴って宙を舞う。

そして…

「………冒険者達と共に行動し、何をしようと言うかのぅ?」

たん、と最後に着地をしたのは、壁際に座り込んだ少年の真ん前だ。
己を追う、興味を持ったそれに対し、そんな問いを掛けながら。

祝夜 >  
「あれ…君、他の人達は?」

なんか追われていた少女が元気そうに目の前に降り立っていた
うまく巻いてきたのだろうか…なんて思いつつ、少年個人としては少女を捕まえよう!なんて気にはならないのだろう、体力的にも

「いや~…手伝ったらお金もらえるって言うから…」

まだ肩で息をしている、よほど運動が苦手らしい
そして近くでよく見ると、追いかけていた少女が狐の特徴を持っていることに気づく

「あれ…もしかして狐?それとも、ミレー…だっけ?そっちかな…?」

タマモ > 「うん?…他の者達?」

そんな問いを逆に向けられ、視線をぐるりと巡らせる少女。
先程の場所にも、こう、視線を向ければ、少年へと戻す。

「………探せば、適当にそこらに居るじゃろう」

今だ周囲を探し回る者達、路地の先に倒れ込んでいる者達。
少女の言葉通りに、少なくは無いも、多くも無い人数が動いている事だろう。
それを、まるで他人事のように、少年へと伝える。
そして、己の問いに対する少年の答えに、じと目を向けた。

「ほほぅ…?…どれほどの金か知らんが、そんなものの為に?妾を捕らえるか?」

無造作に伸ばす手、それが少年の頭を、がしっと掴む。

「さてはて、妾が何に見える?」

少年は、間違いなく妖狐だと、この距離で確信している。
そうであれば、己の存在が何であるか、分からないものでもないだろう。
そんな事を呟く少年、その頭をぐりんぐりんと回しながら、にっこり笑顔で問うのであった。

祝夜 >  
まぁ、たいしたお金ではなかった
ただしココへ来てからというものヒモ生活も続いていたし、
たまには自分で入手したお金で何かいいところを見せてやろうかなという男の子むーぶ、のつもりであった

「うーん、なんか悪いことして追っかけられてる狐。…うわっ、やめろよ~」

そういう意味じゃないのだろうけどそう答えて、頭をぐりんぐりんされれば批難の声
おかげでフードがズレて、片方の耳がぴょこんと出てしまう

「…あ、そういえばエミリーちゃんが言ってたっけ、他にも妖狐がいるよーって…君のことなのかなあ」

タマモ > うん、相手の心は、今は読めない。
何を考えての事かは、分からないのだが…
まぁ、そんな金額が己に掛けられていたと知れば、怒り出すだろう、多分?

「悪い事…軽く小悪党共を追い剝ぎ、可愛らしい男子や女子を可愛がり、何か追って来る冒険者達を追い払っておるだけじゃ。
それを良しとすると、悪しとするかじゃろう。
まったく、困ったものじゃのぅ?」

さらりと答えているが、あれだ、間違いなく一部食い違っている。
少女の言う通りに良し悪しで考えるなら…とても微妙な感じだろう。
ずれたフードから、己に近い狐の耳が見えれば、ぎゅーっと摘み上げた。
………なのだが、次に少年の言葉に含まれた名前に、ぴたりと動きが止まる。

「おや…何じゃ、エミリーの知り合いか、お主?」

知り合いの知り合いは…どう考えるべきか。
とりあえず、摘んでいた耳から指を離し、改めて問う。

祝夜 >  
「うーん、悪いか良いかはじゃあおいといて、
 とりあえず迷惑なことした狐ってことじゃあ…あいててっ!?や、やめろってばー!」

耳を摘み上げられて再び批難の声

「知り合い知り合い!この街まで案内してもらってしばらく一緒にいたんだよー。
 あーいたかった…ちぎれたり毛が抜けたらどうしてくれるのさ…まったく…乱暴な女の子はモテないよ…?」

ぱっと耳を離されて、ぷりぷりと文句を言う少年狐
とりあえず問いかけにはそう応えたものの、次は何をされるのかびびっているのか視線が泳いでいた

タマモ > 「むむむ…小悪党退治をしたのに、誰もが最後は悦んでおったのに。
迷惑とは酷い話じゃ…そうは思わんか?ん?」

前者はともかく、後者は間違いなく迷惑ものであろう。
批難の声は、そう気にした様子も見せてはいない少女である。
はふん、と溜息を吐きながら、そんな問いを。

「ふむふむ、エミリーがのぅ…まぁ、元気そうで何よりじゃ。
何を言うておる、そんな簡単に千切れたり抜けたりなんぞ、せんじゃろうに?
………ていっ」

見上げ、何かを思い出すかのような、こう、そんな仕草。
と、そんな仕草をしているも、少年の文句に、そんな返しを。
そして…最後の言葉に、ぎ、ぎぎ…と首を傾げさせ…
すっと伸ばされる手、親指で抑えるようにして、中指をぐぐぐっと撓らせて。

ばちこーんっ!と、少年の額を、指で力強く弾いた。
まぁ、要するにデコピンである。

祝夜 >  
「いやあ…ほんとにそうだったら追いかけれないんじゃない…?」

怪訝な視線、どうにも乱暴だし
嘘は言ってないとしてもなんかただそれだけで済む話じゃないんだろうなあ、と

「じゃあやっぱり君が彼女の言ってた妖狐さんかぁ、なんかイメージと違ったなぁ…」

妖狐の女の子といえばやっぱりこう、むちっ♡とかいう効果音がそこかしこに見えるような…のを想像していた

「? ん、なにして…───ぎゃあっ!!?」

とても良い音を立ててデコピンが炸裂
あわれ狐の少年はおでこを抑えて涙目である

「さっきから何するんだよ暴力狐ー!!」

タマモ > 「ふむ…まぁ、あれじゃ、深く気にしたら負けじゃ」

少年の視線に、ふいっ、と視線を逸らしながら誤魔化す。
誤魔化すと言うか、何と言うか…うん、何だろう?

「………妾が、どう伝えられていたのか、気になるところじゃ」

なんだかこう、どこか期待外れ感を感じる少年の言葉。
その様子から、間違いなく間違ったものを受け付けられているな、とか感じられた。

「ふふんっ、余計な事ばかり言うておると…
………どうなるか、分かったものではないぞ?」

綺麗に決まった一撃に、額を抑え涙目の少年。
続く言葉に、少々脅すように、言葉に合間を入れ…
ずずぃっと、覗き込むように顔を寄せてみせ。

祝夜 >  
正確には伝えられたというよりは、
女の妖狐であるという情報から少年が勝手に想像していただけだったが
今はそんなことよりも、おでこがいたい

「余計なことっていうか、本当のことしか言ってないじゃん… な、なんだよぉ…」

顔を寄せられればちょっとたじろぐようにずりずりと下がる、すぐ壁だけど
でも近くで見ると整った綺麗な顔立ちしてるなぁ、なんて感想も抱いたりして
きっと黙っていれば美しい、みたいなタイプなんだと勝手に思った

タマモ > 想像と言うか、妄想と言うか、複雑なものである。
答えの返って来ないのを見ると、何かありそうだが…気にしない。

「この程度、暴力の内に入らん。
こんなか弱い妾を捕まえて、何を言うておるのじゃ、お主は。
………さてはて、何じゃろうな?」

こう、自慢気に胸を張りながら、言ってのける少女。
知人が聞けば、突っ込まれそうな言葉も、今はなる事もない。
そして、何だろう…何か、かちん、と来た気がする。
だから、顔を寄せたまま、すすっと手を伸ばし…がしっ、と少年の両肩を掴んでみた。

祝夜 >  
「うわー…じゃあ何になるっていうの…」

耳を引っ張ったりデコピンしたり…悪戯の範疇かもしれないけど、いたい

「かよわい…?アレだけの人数に追い回されて平然としてる子が…?
 えっ、なになに、これ以上なにする気なのさぁ!」

がっ、と両肩を掴まれる
逃れようと身体を揺すってみるが、哀れモヤシすぎて女の子のような抵抗である

タマモ > 「うん?…この程度、ただの戯れじゃろう?」

少年の想像通り、少女からすれば、そんなものだった。
自分がされたら?…もちろん、痛いに決まっている。

「………お主は、何も見ていなかった。
ふふ…それを認めさせるには、何をするのじゃと思う?」

あ、うん、己自身もそう力が強い訳でもない。
だがしかし、この少年はそれ以上に力が無かった。
それならば、どうすると思うだろうか?
しゅるり、と伸びる数本の尻尾が少年へと、ゆっくりと絡み付き始める。

祝夜 >  
「…じゃあやり返してもいい?」

じとっとした目を向けてそう言葉を返してみる
もちろん相手は暴力的ながらも女の子だ、本当にやるつもりはないけれど

そしてなんだか意味深なことを言いつつ、しっぽを絡みつかせはじめる少女…

「え?何も見てなかったって…ちょっ、本当に何する気なのさ!?」

力はまぁモヤシなのでともかくとして、
尻尾の数も、自分より格上の妖狐なのは明白
耳ひっぱりからのデコピン、次はどんな痛いことをされるのかと戦々恐々のようであった

タマモ > 「妾を誰だと思うておる、却下に決まっておるわ」

もちろん、理由は痛いからである。
当然の事ながら、そんな事を言う訳もないのだが。
本当にやるかやらないか分からないのだ、そう答えるもので。

「さぁて、妾は一体、何をおっ始める気なんじゃろうな?」

考えてみれば、この少年の尻尾の数、確認してなかったなと。
にまにまと、浮かべているのは、悪戯っ子そうな笑み。
少年へと絡みついた尻尾は、更に広がりをみせ、衣服の隙間にも入り込んだりして。
…ここから、本当に何が行われるのか…それは、今すぐ理解出来るような事ではないだろう。

祝夜 >  
「知らないし!女の子の妖狐ってことしか聞いてないっての!」

突然誰と思うておるとか言われても知るわけがないので精一杯の抗議だ
…とか言ってるうちにするすると少女の尻尾は少年の衣服に入り込みはじめ…

「あ、そのにまにま顔ちょっとかわいいかも…じゃなくって!あっやば──」

ぽんっ、と集中が切れ尻尾が飛び出る、金色のふさふさとした一本尾
それを見た妖狐の少女は少年が格下の存在であることを確信するだろう
その後どうなったかは…きっと少女の気分次第───

ひょんなことから裏路地で邂逅した妖狐の二人ではあったものの、
どこか破茶滅茶とした日々の幕開けを予感させたものとなった…のかもしれない

ご案内:「王都マグメール 平民地区」から祝夜さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にタマモさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場通り」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > 日も落ちて、少し混み合う時間帯。
酒場どおりを行き交う人並みの中に交じるフードをかぶった冒険者。
日は落ちても鋭い寒さを感じることも殆どなくなったこの頃
このあたりの賑わいも増しているようだ。
やはり温かいと生き物は元気になるものなのだろう。
元気ついでになんか肉でも食って日頃の労をねぎらおうという算段であったが…

「…(人、多くねぇか?)」

なんか祭りや催し物があったという話も聞かないが…
むしろ冬の閑散さになれきってしまっていたせいなのだろうか。
少しばかり困惑しつつも人並みから少し外れて店を探す。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場通り」に黒須さんが現れました。
ブレイド > 飯が旨い店って言うものは、この時間ではほとんど席が埋まってしまっている。
給仕が美形、かわいいなどという店もまた然り。
つまるところ、そこそこ無難な店に落ち着くのが常だ。
運が良ければいい店に滑り込めるかもしれないが…
だが、逆に、人があまり寄り付かない場所ならばどうか。つまり、穴場を探す。
一般の平民地区の住人は、ごろつきやチンピラ、不良衛兵を恐れて路地には足を運ばない。
そういうところにある店は、ごろつきのたまり場か、多くの客入りを望まない趣味的な店だ。
今回は後者を狙う。

「さて…っと…」

少しばかり道からそれて、路地に続く道をヒョイッと覗き込む。
明かりはポツポツとあるが…店がありそうな気配はない。次。

黒須 > 「ふぅ…。」

(人波の中、目立つような巨体を持っていた男が歩いている。
ニット帽に黒い皮じゃん、黒いYシャツを着て、黒いズボンにドラゴンの爪の形をしたバックルのあるズボンを身に着け、ドガドガと歩いていた。
久しぶりに酒でも飲んで日を過ごすかと思いながら、ボーっと歩いていると、不意にブレイドにぶつかってしまう。)

「あ…わりぃ、ちと、ボーっとしちまった…って、あ?」

(振り返り、ぶつかった相手に謝ると、鼻を軽く動かして匂いを嗅ぎ取った。
一度嗅いだことのあるその匂いに気付き、近づいては聞く)

「…あー…ブレイドか?」

ブレイド > 「って…デカブツがボーッとしてんじゃねぇよ。気をつけやがれ」

ふいに巨体がぶつかればバランスを崩してたたらを踏む。
チンピラのような風体のその男ににらみをきかせればまた店探しへと戻ろうとするのだが…
更にふいをつくように名前を呼ばれた。

「あん?なんだよ…どっかであったか?」

今までの依頼人にこんなでかい男はいなかったような気がする。
たしか…なんか…どこかで見覚えが…。
人の顔を覚えるのは得意なのだが、いや、そうだあったことはある。あるが…

「えーっと…だれだっけ…」

黒須 > 「あ?俺を忘れ…ああ、そうか…。あん時は獣人の姿だったな…。」

(相手の言い方や睨みに対しては特に苛立ちもなかった。
自分が起こした問題ならばそれ相応の対応をされて当然である)

「黒須・狼だ…。前にシャルレの話をしただろ?
…名前だけ言っても思い出せねぇなら、一回店に行くか?近くに信頼できる店がある、飯も酒もうまいぞ?」

(こんな人波の中で本来の姿になれば余計なことを起こして面倒なことになる。
それだけは一番嫌である為、証明できる空間を作ろうとしていた)

ブレイド > 「あー……」

そういえばそんなやついたなとうなずく。
こんな顔はしていなかったが。
獣人の姿という言葉から、自由に姿が変えられるとかそういうやつか。
ならば今の顔を知らなくても仕方がない。

「いや、思い出した。思い出したが…なんかようか?
流石にまた前の話がらみだってなら遠慮しとくぜ?」

シャルレがらみでなければこの男が自分に絡んでくる理由が特に思いつかない。
前回の話し合いでは仲良くしようという空気でもなかったし。
警戒こそしてはいないが、疑問符が頭の中に浮かんでいるのもまた無理からぬ事。

「そうじゃねぇなら…まぁ、腹も減ってるし飯くらいは付き合うけどよ」

黒須 > (どうやら記憶は薄いようだ。
それもそのはず、自分としてもあまり自分の知り合いを増やすように行動をしていないため、忘れられているのはなんとなく察せれた。)

「いや、用事って言う程のことはねぇ。
だが…見た所、店を探しているように見えたしな。俺もここの住人ってこともあって、勧めてぇ店があるって所だ。
あー、あの話のことならしねぇよ。聞きたいなら話すし、嫌なら話さねぇ。それだけだ。」

(前回の酒飲み会の時に不意に話した話題。
あれに関しては色々と影を作るように話し、相手の頭には疑問符を作り置いてしまったのを察している。
そのため、聞きたいか聞きたくないかでその先の話題を考えようとしていた。)

「ひとまず飯だな…こっちだ…。」

(自分の歩いていた方向に付いてこさせるよう顎で指し、逸れない程度にゆっくりと歩いて行く)

ブレイド > 彼の思うように、彼自身への印象は薄い。
そして、あまり好意的ではない。
だが、相手が特に敵対する様子を見せないならば、こちらもいちゃもんつけようなどとは思わない。
勧めたい店があるというだけならば、それに乗るのも吝かではない。

「見たところって…ぶつかるまで気づいてなかったんじゃねぇか?
概ね正解ってとこだがよ。
ま、気分のよくねー話がねぇってなら断る理由もねぇ」

身長差はあるが、だからといって舐められるのは本意ではない。
強気な態度を崩すことなく、男について歩く。
店につくまでは、向こうが話しかけてこない限りは無言で。
雑談をする…には、まだ不信のほうが強いといった感じか。

黒須 > 「悪いな…今日は特別ボーっとしてたみてぇでよ?気付かなかったな…。
…逆だがな?俺にとっちゃ気分のいい話だ。ま、着いたら話すとするか…。」

(この前の疑問を解決させるように店に着いたら話そうと思い、そのまま歩き続けると、明るい笑い声の響く酒場が近づいてきた。
看板のない酒場とわかる程度の物が置いてある店に到着した。)

「着いたぞ。…あと、どうでも良いが、隣が俺の家だ。」

(指を刺して先にある一軒家を指さした後、店のドアを開いて中に入る。
客は様々な人たちが居た、男、女、大柄、小柄、家族、友人など…幅広い客層で店内は賑わっており、いい意味で騒がしかった。)

「…よぉ、親父。」

(酒場のマスターと思われる男性に軽く挨拶すると、黒須の体が一瞬強く光る。
強面な男の姿から狼の獣人の姿となり、カウンター席に腰を下ろした。
褐色肌にたくましい口髭を生やし、優しそうに笑いながら黒須とブレイドの対応についた。)

「俺はいつものやつを…こっちには…まぁ、軽く一杯奢ってくれ。」

(了解したと言うような雰囲気を出してはカウンターでそのまま注文通りの酒を用意していく。)

ブレイド > 「そーかよ。気分のいい話ってやつのせいなら気をつけたほうがいいぜ?
気分のいい話に泥塗りたくりたくねーならな。
ぶつかったのがオレでよかったけど、アホなごろつきだったらこうはいかねぇだろ」

気分のいい話。
一体何なのか…というか、やはり話があるのではないかと少し眉をひそめる。
彼につれられ歩いていけば、少しばかり騒がしい…酒場?
看板もないので、賑やかさくらいでしか判断ができない。
中を覗けば、内装でわかるが。

「家とか軽々しく教えて大丈夫かよ。オレがあんたの味方とは限らねーだろうに…
つか、友達の友達は友達だなんて甘っちょろい考えはしてねーだろ?あんたも」

自分に家まで教えるあたり、警戒心を解かせるためか。
店の中は賑わっているようだ。看板のない店だと言うのに老若男女揃い踏み…
近所の住人だろうか?
ともあれ、彼の隣に腰を下ろせば、ひげの親父に果実酒と簡単なツマミを注文する。

「んで?話とか言ってたけど?」

黒須 > 「アホなごろつきなんざ、死ぬほど見て来たな…。
薬中おやじに言い訳女、正論を述べたたがるガキ、嫌なモンばっかてのは、人以上に知っているだろうしよ?」

(貧民地区での金貸し客はほとんどが訳アリばかりであり、とにかく面倒くさい奴らばっかりであった。
話してもわからない様な奴や、突然凶器を取り出す人間など山ほど居た。)

「確かにな?けど…あいつの知り合いとなれば話は簡単だ。あいつがとんでもないクソ野郎とお友達になっているはずがねぇしよ?
ま、襲撃に雇用が何しようだが…俺の首は取れないだろうがよ?」

(ベーっと舌を出してはそれを噛むように歯で挟み、自分の首を指で着る様な仕草をする。
寝起きもよく、嗅覚や聴覚、直感も鋭く、貧民地区ではそれで生きていたのであった。
自分の前にも提供されたロックのウィスキーを受け取り、一口飲んでは軽く息を吐く。)

「ああ、そうだったな…。
俺もコソコソするのは嫌だからよ?率直に言っちまえば…。
シャルレ…。俺はあいつの恋人だ…。」

ブレイド > 「不幸自慢しろなんて言ってねーよ。
絡まれていい気分にミソつけられたくなきゃ気をつけろっていってんだよ」

気遣うわけではないが、少し頭を抑えて忠告しておく。
首はとれないと…まぁずいぶんと自信ががあるらしいので、神に説教たれているようなものかもしれないが…。
とる気もないが。

「はー…まあいいや…んで?」

話をさらに促せば、でてくる意外な言葉。
それを聞けば、ふかーーーーーく眉間にシワを寄せて

「は?」

あまりにもいきなりだったので言葉にも詰まった。

「それで気分がいいってお前…大丈夫か?
恋人ができて有頂天ってわけでもねぇだろうに…それともなんかめでたいことでもあったのかよ?
それともなにか?恋人に近寄ってたクソガキがいたから始末するには絶好の機会とかそういうアレか?
最近の話だってなら、そりゃおめでとさん。幸せにしてやってくれよってくらいは言わせてもらうがよ」

というか、いきなり何を言い出すかと思えば…
構えて損したと肩を落とす

「おっさん、果実酒もういっぱい」

惚気でも聞かされるなら、もういっぱい飲まないとやってられなさそうだ。

黒須 > 「あ?なんかあったか?」

(関係性の話をしてしまえばそれだけでの話であり、それ以上に何を求めていたのかは黒須でもわからなかった。
深く眉間にシワを寄せたブレイドの顔を見れば片眉を上げて逆にこちらが疑問符を浮かべた。)

「ま、とにかく落ち着け…。
最初に言えば、あいつに近づけば何かするなんざことは言わねぇ、互いに束縛するのは慣れてねぇし、今後お前が近づいたとしても俺は何もいわねぇし、始末もしねぇ。
それと…気分が良いってのはちと事情があってよ…。
元々、貧民地区に居た俺は酒と女しか考えて居ねぇ、いわゆるクズ野郎だった。
女に関してはただ性処理の相手となりゃそれだけで良いって思っていた。
…けれどよ…あいつは違った。俺の知っている女とは違い、一緒に居て楽しめて、また会いてぇって思うような…そんな特別に奴だったんだよ…。」

(一口ウィスキーを飲んでは言葉を続ける。
自分が思っていたこと、今まで女は抱くだけの存在と思い込み過ごして着ていたのに、シャルレだけは特別であったと話を続けた。
自分の中になかった感情を生み出してくれた要因であり、大切にしていると。)

「俺はお前ら普通の人間とは違う…。足りねぇ部分も大量にあるからよ…。
故に…俺が初めて大切にする女をもっつてのは…それだけで意外な話でもあるんだよ…。
貧民地区のアホどもが聞けば…驚きとチャンスっと考えるだろうがよ?」

ブレイド > 「なんかってな…おまえ…あんま人と話したことねぇだろ…
会話ってもんはキャッチボールだって習わなかったか?
いきなりあんま知らねぇ相手に言われたって反応に困るんだよ。貧民地区でも平民地区でもミレーの里でもな」

親しい友人というわけでもない男に
お前の知り合いの恋人だと言われたところで返答に困る以外何があるというのか。
深ーくため息を付いたあとに、果実酒を煽る。

「まぁいいよ、そりゃ。
つか、そんなクズだったら今日最初にあった時点で殴り合いだろうからな。
知り合いが不幸になるなんてなオレは嫌だし、テメーがそんなヤローならとれねぇ首だろうがもぎ散らかしてるとこだっての…」

すごんだところでこういうタイプの相手には効果はないだろう。
ため息とともにもういっぱい果実酒を追加で頼めば、おとなしく話を聞く。

「知らねーよ。普通の人間と違う?知ったことじゃねー。
てめーはてめーであいつはあいつで、そんで互いが好きになったってーなら何が意外なもんかよ。
てめーを特別扱いするのはあんたの勝手だがな。人間扱いされねぇやつらだって大勢いるんだしな。
で?そのチャンスとやらがなんだよ…。テメーがまいた種ならテメーがなんとかして守ってやれよ…」

黒須 > 「まあな。なんせ一匹狼で、ただお前が知り合いって言うだけで話しただけだからな?
キャッチボールなんざ犬みてぇにしねぇって話。
ま、お前が困ったと言うんだったら、直しておくがな?」

(ずっと一人で生きていたために会話をしたことが無い。
そのため下手だの言われるのは仕方がないと思っていた。しかし、ブレイドの反応を見ればかなり困りがあると見え、ここで暮らすのであるならば、それなりの能力を身につけておくかと思っていた。)

「おりゃめんどくせぇことが嫌いだからよ、ただぶつかっただけで殴り合いなんざしねぇ。
わけわかんねぇことをタラタラ言ったりだとか、気に触れる様な事がありゃするかもしれねぇがな?」

(こう見えてあまり好戦的ではない主義であり、何かの意味で暴力をふるったり、イラついて振るう事以外ではそう言う喧嘩沙汰は起こしたことが無い。
こちらも一杯ウィスキーを飲み終えると一度手を止める)

「ああ、だろうな?お前に俺が普通の人間じゃねぇって言われようが、そんなことは知ったことじゃねぇ…そいつは当たり前だ。
だが、俺の初恋は本物だ…あいつに対する思いは嘘偽りなし…俺だって責任をもってあいつに気持ちを伝えて、互いにそう言う風に付き合うことにしたしな…。
…それに、あいつに危害を加えるんだったら…その時は、本気でブチギレルだけだ…。」

(自分の大切にしている初めての存在。
そんな相手は今までに居らず、シャルレに対しても気持ちを注ぎ続けていた。
そのため、彼女自信に何かあったとなれば、自分でもわからないほどにブチギレルだろうと自覚はしていた)