2019/02/26 のログ
■イグナス > 暫く眠りこけて、起きたのはもう、夜も深まるころだった、とか――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエインセルさんが現れました。
■エインセル > 春の足音が聞こえ始めた頃合い。最近は冬の冷え込みも大分和らいできた気がする。
その所為か、少し前よりも賑わう通りの隙間を縫うようにして、少女は通りを歩いていた。
今日も今日とて、冒険者としてその日暮らしの仕事を終えて。報酬に貰った金で何を食うかの勘定だ。
最近は安価な煮込み料理が多かったから、何となくお肉やお魚――しっかりしたものが食べたい気分。
懐の温もりはそこそこだから、ある程度の贅沢は許容されるが。
「……無駄遣い、と言われそうな気もするけれど、たまには、ちゃんとしたもの食べたい、しなぁ」
ふむむ、と悩みながらやってきたのは円形広場。待ち合わせをするのにもってこいの場所だが、冬は比較的空き気味で。
くぅ、と鳴る腹をローブの中で緩く撫でながら、辺りの店で配られていた品書きの羊皮紙を眺めていて。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にタン・フィールさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 円形の広場では、広場に面した飲食店や酒場の呼び込みや、
露天・出店が並んでおり、
祭りなどのイベント事…とまではいかないが、混みすぎず、寂しすぎずの、程よい賑わいを見せていた。
そんな中で注目を集めるのは、ある定食居酒屋と、その店先に出ている、
焼串と飲料の店で…。
「はぁい、こちら、冷えても美味しい香辛料がかかってるから、
食べ歩きにもってこいだよ
…こっちは、うん、お酒と合うらしいから、中でたべてってよ」
店員が焼き上げた肉や野菜に、手際よく香辛料やハーブをまぶし、
出店の手伝いをしている少年の姿。
その語り口や物珍しい姿、そして、馴染みのない強烈で芳醇な香気が、
多少なりとも人々の注目を集めていて…。
好みの分かれるスパイス香が、冒険者の少女の鼻腔を擽る。
■エインセル > 冷たい夜気の中に、様々な匂いが混ざる。料理の香り、甘い酒精、或いはまた別の何か。
狼の特徴を備えた少女の鼻は、その種族故に鋭敏で。すん、と一嗅ぎするだけで口の中に唾液が溢れる。
香辛料を程よく塗したお肉――それも、こんがりと焼けた逸品、そんな気配がする。
今日は少しばかり刺激が欲しい気分。肉に齧り付いて、果物を漬けたワインを飲もう。
そうと決まれば話は早い。広場の段からとん、と降り立ち、石畳の上を軽やかな足取りで。
匂いを辿り、するりと隙間を縫うように向かえば、やがて一軒の居酒屋の前に出た。
どうやらこの居酒屋の出店が目当ての場所らしい。懐の金子を確認。落としたりはしてない。
「――ん、お肉二本と甘い葡萄酒を一杯くださいな」
普段は健啖家な少女だが、今日の手持ちでは肉串を二本と酒一杯がいい所。
店の中まで入るかはともかく、とりあえず肉を確保せんと試みる。
頭上の円錐帽子の中では、ミレーの証とも言える二つの耳が、パタパタとご機嫌だった。
■タン・フィール > 「はぁい、 お肉と葡萄酒、おねがいしまー……えっ、休憩? はぁい」
注文を受けた、声変わりのない少年の声。
かたわらの肉を焼く店員に「おつかれ」とぽんぽん頭を撫でられて、
5~6本の肉串と、ドライフルーツやチーズの乗った大皿と、一杯分の木製カップを2つに、
葡萄酒と水を盆に乗せて、注文をした少女を手招く。
「あ、おきゃくさん、こっちこっち。
お店の中、ちょっとごみごみしてるから…こっちで一緒にどう?」
と、休憩がてら少年に出されたまかないに、少女が注文した肉串が2本とワイン。
店内に案内できない償いに、出店近くの小さな円卓と椅子で、いかがかと。
「スパイスも、気に入ったやつ、サービスするね。」
と、胡椒、山椒、唐辛子…ニンニクにショウガ…岩塩に一風変わったコリアンダーなど、
肉に合いそうなものを、この場で振りかけられるよう、瓶を並べて。
■エインセル > 注文してみたものの、どうやら店番の少年は休憩に入るらしい。
間が悪かったかしら、と少しばかり恐縮していた少女だが――。
「ん、私?――ま、いっか。わかった、そっちいく、ね?」
誘われたなら、素直に応じることにする。
こう言うのも何かの縁。こういう時は相乗りするのが吉。
もし仮に騙されたとしても、失うものは殆どないから無問題だ。
ちょこちょこと円卓の方に向かうと、彼の対面に来るようにちょこんと腰かける。
肉を見るなり視線は釘付け。さながらお預けを食らった犬の様だ。
「スパイス……胡椒がいい、かな。色々混ざると、大変だから、胡椒とお塩がいい」
にんにく、と言う選択肢も捨てがたいが、流石に人前で口にしたくない。
背も胸もミニマムな少女だが、それでも女の子なのである。
■タン・フィール > 円卓の前に置かれた肉は、脂身がまだジジ…と熱で音をたてるほど焼きたてで、
少女の注文通りに、ミル付きの瓶に入った胡椒と岩塩を、少女が注文した肉串に、こり、こり、とふりかけ、大皿をくるりと円運動させて2本の串をエインセルが取りやすいよう仕向けて。
「はい、どうぞっ! …あ、もしよかったら、ほかのお肉ももーちょっと食べてくれない?
あそこの親方、「もっと食べないとデカくなれないぞー」って、食べきれないほど、まかないしてくれるんだけど…」
大皿の上の少女の肉串を除く少年のためと思われる、
肉厚の肉串4本と、ごろりとしたまん丸のカマンベールチーズ、
両手からあふれるほどの量のドライフルーツとナッツは、
確かに少年一人では手に余る量と、推測できて
「残すと悪いし…もしよければサービスと思って、
やっつけるの手伝ってくれない?」
片目をつむってウィンクし、こそ、といたずらっぽくお願いして。
応じても、応じなくても、
少年も自分の分の肉串を食べ、彼女にワインを注ぎながら自己紹介。
「あ、ワインは…お水で割る?
ボクは、タン。 タン・フィールっていう、最近ここにきた薬師。
今日は、薬草やスパイスを料理に使いたいって、ここの親方に依頼されて仕入れに来たんだけど…ぜんっぜん使い方をわかってなくて…
だって、コショウとか砕かないで、そのままボリボリ噛もうとするんだもん。
で、正しい料理へのスパイスの使い方を教えてるウチに、
なんだか今日は一日、お手伝いすることになっちゃって」
と、頭をかきながら笑う。
少年の体からは確かに、調理用以外にも様々な薬品の匂いが、
狼の嗅覚ならば察知できるか。
「アナタは…うーん、まほうつかい?
ふふっ、ちょっと珍しい薬草や、魔術の素材は、いかがですかぁ?」
と、いたずらっぽく、商売人ぶった口調で語りかけて。
■エインセル > 肉の脂身がじりじりと縮む。焼ける匂いは何とも香ばしい。
目の前でこりこりと、音を立てて振るわれる粒胡椒と岩塩。
粗挽き胡椒は香り高く、塩は脂身の甘さを引き立ててくれる気配を忍ばせて。
こくり、と喉が鳴る。肉の旨味は思い浮かべるだけでも暴力だ。
「ありがと……ん、いいの?その、私、沢山食べちゃうよ?
まぁ、食べても、大きくならないんだけど、ね。うん」
少女としてはしっかり食べた分だけ、スタイルに反映されてほしい所。
主に胸とか胸とか胸とかに。しかし悲しいかな、胸にもお腹にも、肉が付かない。
燃費の悪さ極まれり、ということか。太りにくさの代償が、膨大な食費なのは納得いかない。
ともあれ、彼の目の前にある串肉とその他諸々は、貰えるなら貰った分だけ、確かに胃に収めるつもりだ。
「君が良いなら、喜んで。渡されたら全部食べちゃうから、自分の分は確保した上で、残りを渡してね?」
そもそも皿の上の全てをペロッと平らげても、なお他の物が入る程の健啖具合だ。
彼とは殆ど対極に座主と言っても過言ではないだろう。だから、確保しなければなくなる。
さらりと忠告しつつ、彼の自己紹介にはこく、と頷いて、返す形で己の名をば。
「ん、甘い奴なら、割らなくて大丈夫。ちびちび飲むから。
――私は、エインセル。タン、と呼ぶのと、フィールって呼ぶの、どっちがいいかな?
……ん、確かに、豪快そうだもんね。何となくわかる。良くも悪くも大雑把な気配。
それは災難なのか、僥倖なのか、だね。ご飯のお金が浮くなら、個人的には幸せだけど」
君にとってどっちかは分からないよね、と小さく苦笑して。
すん、と僅かに彼の匂いを嗅ぐと、様々な草や薬の混ざった匂い。
薬師なのだろう――匂いの種類や混ざり具合から察するに、その腕は良さそうだ。
「そ、だね。魔法使いで冒険者。ギルドに行けば、私位の実力なら沢山いるかな。
薬草……今は大丈夫だけど、入用の時はお願いするかも。治癒薬とか、ストック欲しいし」
彼が商売人の様に語るなら、少女も乗り気で要望を返す。
少女が彼から買うとすれば、ポーションの類が主となる。
へっぽこでも冒険者。備えあれば患いなしなのだ。
■タン・フィール > それじゃあと、自分の分の肉串1つと、チーズを4分の1、ドライフルーツとナッツは少し大目に半分ほど。
それらをより分けると、残りはおねがい!とばかりに両手を合わせて差し出して…。
ちなみに、少年は背を向ける位置なので気づいてないが、少女からは居酒屋の親方が
「しょうがねえ、いいよ、食え食え」と、下手くそなジェスチャーで見守っているのが見えていた。
「食べる量と、カラダの大きさが見合わないっていうのは、よくあるよね… ボクのことは、タンでいいよ。」
と、返された名乗りに、気軽に名前の方を告げて、
おそらくはもりもりと消えていくであろう皿の上に感嘆の声を上げながら
「まぁ…いろんな人間に触れ合えるのは楽しいし、いい経験になるから……今日は、おもしろいお店のお手伝いができたのと、
ちょっとおもしろい魔法使いのヒトに会えたから、いい日。」
と、微笑を浮かべて。
「じゃあ、ポーションの他にも、食べた分だけおっきくなれるお薬とか…
冒険中、空腹を紛らわす薬とか、作れるかもしれないから、
もしよければ今度、冒険に出る前にでも、立ち寄ってよ。
注文してくれれば、結構ニッチなお薬も、つくれるよ?
……頑張りやさんな冒険者さんには、無事に帰ってきてほしいし。」
と、どこまでそれらの薬が実現可能かはさておき、
営業半分と、もう半分は相手のことを気遣って、自分がよく出店を開く、王都周辺に設置した薬屋の所在を書いたメモを渡す。