2019/01/14 のログ
イグナス > ――もうしばし、止む気配はない。であればここで考えてるだけは損だ。
よし、と腹をくくったならば、一歩と足を踏み出して、冷たい雨の中に身体を投げ出していく――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……」

平民地区、大通り。
夜の寒さに首を竦めながら、男が書物を読んでいた。
高速で視線を左右に振りながら。
一通り目を通し終えれば。

「……ククッ、クックック……」

殺しきれない、とばかりに笑みを漏らす男。
体を揺らしながら、笑い続け。

「あ~ぁ」

満面の笑顔でもって、やれやれ、という様子を見せる男。
その手にしていた書物を懐にしまいながら、男は髪をかき上げる。

「いやぁ、最高だなぁ。
 ……気分イイし、どっかにくり出すかな」

くつくつ、と笑いながら男はそう口にする。
行き先、酒場か、娼館か。その辺りがいいかな、なんて思いつつ。
男はどうしたものか、と考える。
なにせここ最近は……イロイロと、溜まっているから。
ここらで一度すっきりしたいな、と思っている。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > バトラーコートに身を包む紳士が書物の内容に笑い零す頃。その大通りにある十字路から歩いてくる小さな人影。旅から戻ってきたばかりといった様相でブーツは王都の外の赤い土にまみれているが、夜の寒さに身を縮めながらも表情は明るく。

「討伐依頼が無事に済んで良かったー……!
ギルドで報酬も弾んでもらえたし、宿に戻る前に少しお散歩しようかな」

冒険者ギルドで引き受けた依頼の成果は上々で、足元は疲れるどころかスキップも踏みそうな勢い。

「……あれ。こっちに歩いてきてるのはセイン?
――セイン!こんばんはー!
僕だよ、タピオカだよー!久しぶり!」

くつくつ笑ってご機嫌そな彼へ、被っていたフードを取り払い。短い銀髪揺らし、大きく手を振りながら相手のほうへ小走りで。

セイン=ディバン > 「……ん?」

さぁて、どこに行くかな、と考えていれば。
小さな人影が目に留まった。
見間違えるハズもない。男にとっての、数少ない信頼できるパートナーの姿だ。
声をかけられれば、男は満面の……男のことをよく知っている人間なら、いっそ気色悪い、というほどの笑顔で返事をする。

「おぉ、タピオカ!
 久しぶりだなぁ! 最後にした仕事は……山賊退治だっけか?
 それとも、砦の防衛任務だったか、イヤ、シーサーペント討伐だったか?
 いや、それはいいか。丁度よかった。
 今からちっとパーッ! と豪遊しようかと思ってたんだ」

よかったらメシでもどうだ? と言いながら相手に近づく男。
当然、奢りだぜ? と。本当に気色悪いほどの笑顔。

タピオカ > 「やっぱりセインだ!セインー!」

夜のとばりの王都でも彼の姿勢の良さはよくよく見覚えがあって。親しくしている仲、見間違えもないけれど浮かべられた笑顔がなんだか嬉しくて。ぱぁっと笑顔を花綻ばせながら掛けていき。勢い、そのままきぅ、と軽く抱きしめ。

「あはは!ひさしぶり!
セインとは色々お仕事してるもの。どれも楽しかったから、最後に一緒だったのはどれだったか覚えてないや。ふふ!
――へええー!なんだかご機嫌だね!
うん、セインの豪遊についてくよ!」

彼ほどのシーフならどんな危うい依頼や場面も切り抜けるとは信じながらも、王都の不情緒がいつ彼との縁を切ってしまうかわからない世界。こうしてまた偶然縁を繋げたことに喜色満面、褐色の頬を紅潮させて。
奢りのご飯と聞けば歩きづめのお腹もきぅとなってしまいそう。
二つ返事で飛びつけば、大きく頷いて。

「セインの笑顔も、ひさしぶりに見たよ!
いい笑顔。僕もご機嫌になっちゃいそう!」

セイン=ディバン > パートナーたる少女は、いつも元気だ。
落ち込んでいるところなんて見たことがない。
……体調を崩しているところは見たことがあるし、その時は流れでセックスをしたが。それは一旦置いておく。
抱きしめられれば、男も軽く抱擁し、頭を撫で撫で。

「いや、本当に久しぶりだ。
 ははは、いっつもタピオカの戦闘能力には助けられてるからなぁ。
 おう、ご機嫌なのさ。イイ事があったんでな!
 おっしゃおっしゃ! じゃあ、まずメシだ!」

相手との冒険の数々について思い出しつつ、男は快活に笑い、相手の背中をペチペチ叩く。
この辺り、非常にジジィ臭い。
そのまま、一緒に歩きながらの相手の言葉に。

「ん、そうか? ……イヤ。
 言われてみれば、俺ってこういう笑顔って人に見せないかもなぁ。
 ハハハ、タピオカがご機嫌ならオレも嬉しいねぇ」

ケタケタ、というよりはゲタゲタ笑いながら、男は大通りの酒場へと入って行く。
相手も知っているかもしれないが、平民地区にしてはなかなかの高級店だ。
だが、男は気にせずに入店すれば、サッ、と席に座り。
『とりあえず酒と肉とツマミを持ってきてくれ』なんて雑な注文をする。

「タピオカは、どこか外に行ってたのか?
 最近姿を見なかったから、気になってたんだよ」

席に着けば一息、ってなもんで。相手にそう語りかける男。
表情もテンションも、やはり普段よりは格段に明るい。

タピオカ > 相手の腕の中で久しぶりに会うパートナーの匂いを感じて。
小鼻すりつけながら少しの間憩う。頭撫でられてふにゃりと子犬みたいに笑顔蕩けて。
背中元気づけられ、あははって笑い声が弾んでいき。

「はーい!メシメシーっ!
お腹すいてたから、セインに甘えちゃうよ!
……うん!いつもクールな感じだったけど、……なんていうか、明るくなったみたい。
セインの中で何かお悩みが溶けたのかな、なんて。
――わーっ!ここに入るの!?
やったぁ!セインイケメン!
僕このお店滅多に入れないし、入る事自体ごぶさただよー……!」

だいぶ高低差のある肩並べながら、夜道も2人なら寒くない。
わちゃわちゃ雑談に花咲かせていると普段はあまり利用しない高級店。
嬉しそうに軽く腕絡め、声音も高くはしゃぎ。

「うん!ゾス村と、あとダイラスの往復かな。
凶暴化してる妙な獣を退治したり、冬の貯蓄を狙った盗賊団を縛り上げに行ったり、かな。
寒いからってじっとするのは苦手でさ。
セインのほうは最近どうだった?
お酒作りのレパートリーが増えたり、した?」

店内のぬくもりと賑わいと、何より彼の存在で頬を少し上気させつつそう答えて。
なんとはなしに以前知った彼の手趣味を思い出しながら尋ねて。

セイン=ディバン > 目の前の少女とは、かなり歳の差があるのだが。
一対一の対人戦闘において、この少女は男よりも格上である。
(卑怯な手段を使うのならその限りでもないだろうが)。
その上、懐いてくれているので。男としてはこの少女には甘い所がある。

「おうさ。たんと食うといいぞ!
 ……クール? オレが? カハハハハッ、そりゃあねぇだろ!
 ……ん~、なんていうか。まぁ、アレだ。後で話すわ。
 まぁ、たまには贅沢しないとな!
 冒険者は贅沢するときはがっつり贅沢すべきだぞ!」

雑談を楽しみながら、入店した店。
男も、普段はあまり来ない店である。というのは。
男は酒場に来るときは基本、情報収集することが多いので。
高級店を好まない部分があるのだ。

「……へぇ。ゾス村ねぇ。あの辺、村っていうレベルじゃない……。
 か細い集落が潰れたりする危険地帯だからなぁ。
 ふふふ。冒険者として邁進しているようでなによりだ。
 オレか? 相変わらず、呪われたり厄介な相手に絡まれたりで毎日楽しいぜ」

相手の言葉に、うんうん、と頷きつつ。自身も近況を語る。
酒は、レパートリーは増えてはいないが。
その代わり料理がまた上手くなったぞ、と胸を張る男。
そこで、注文した酒と肉、揚げたタマネギと豆、蒸かした芋が届き。
男は相手に向かって笑顔を見せる。

「よし、乾杯だ!
 食いたいものや飲みたいものがあったらガンガン頼めよ!
 遠慮すんな?」

カンパーイ、と上機嫌に言い、一気に酒を呷る男。
一瞬でグラスを空にすれば、すぐさまお代わりを頼んだ。

タピオカ > 正面きっての正規戦なら、手練にも引けをとらないと自負している。
けれど街、森。洞窟に異界とフィールドが険しくなるほど彼のシーフとしての、そして勝負強さが高い実力を発揮する。
野外活動は慣れていても、環境を使った戦闘となれば彼の手のひらで容易く踊らされてしまうだろう。

「あはっ!冒険者は食べられる時に食べておくってやつだね!
……呪われたり、絡まれたり?ふふっ……!なんだかセインらしい。でも無理しないでね?
セインは、僕の大切なパートナーだもの。
次に会う時はお墓の前で、なんてご免だよ!」

冗句浮かべながら、色々ドラマがありそな彼の毎日のこと思い巡らし。そのたびどうにか切り抜けてるだろう相手にくすくす肩が揺れる思い。
ひっそりと彼の無事を祈ろうと、そっと手首を握ったりもして。

「わーい!それじゃあーカンパイ!」

ぬくめてもらったホットレモンを手にして、お酒を上げた彼のグラスへと勢いよく高々と飲み物掲げ。
声音高く乾杯宣言をすると、両手で半分ほど飲み干し。

「ふーっ!……っあはっ!セインと乾杯すると飲み物がおいしー!
ふふー。セインすごくいい飲みっぷりー!
よーし、僕もいい食べっぷり見せちゃうぞー!」

酒精が入って無くてもほろ酔い気分ご機嫌気分で頬を赤らめ、楽しそうに相手がグラスを干すのを見送り。
彼の横でベーコンキッシュにボイルドチキン、クリームパスタにりんごタルトと頼み込めば小さな宴が始まり。
美味しいね!楽しいねー!とおおはしゃぎ。

セイン=ディバン > 実際の所、男はこの少女と本気でやりあったことは無い。
冒険の合間に、互いの訓練と称して模擬戦じみたことはしたかもしれないが。
命の取り合い、というようなレベルの勝負はしたことがない。
……その必要性が無いから、とも言えるが。

「そういうこと。食って力にして、次の仕事に備える、ってな。
 いやぁ、無理してるつもりはないんだがなぁ。
 くぅ、タピオカはやさしいなぁ。
 思わず本気で口説きたくなるぜ」

相手のやさしい言葉に、男は泣くような演技をする。
実際、肌を重ねたことも何度もあるが。
互いに、『あくまでも仕事のパートナー』みたいな感じに振舞っているのは。
……男には妻がいるし。相手はまだ若く、出会いも多いだろうから、みたいな。
そんな空気があるせいで。

「あいカンパーイ。
 やっぱり、一人酒もいいが、ツレがいるとそれはそれでいいなぁ」

もぐもぐ、ごっくん。ぐびぐび。景気良く食事をする男。
酒もかなりのペース。
相手が喜びつつ、なかなかのスピードで食事をするのを見れば、ケタケタと笑い。
いよっ! イイ食いっぷり! なんて囃し立てていたが。

「……タピオカに話したっけか。
 オレ、実は冒険者になる前。クソガキだったころってさ。
 親に、奴隷商人に売られそうになったんだよ」

で、逃げ出して王都に来て冒険者になったんだ。なんて、自分語り。
この辺の話は、相手によっては話したり黙ってたりなので。
目の前の少女にはこんな話したっけかなぁ、と。
ほろ酔い頭で思い出そうとしている。二杯目の麦酒、一気飲み。
お代わりを注文。

タピオカ > 魔力が一切使えない身としては、結界などの魔法が使える彼に羨望の眼差しを向けていたりも。

「へへっ!……いいよー、本気で口説いちゃっても。
僕も……本気で口説かれてみたいな……」

泣く芝居のノリの良さにからから笑えば、そっと。
頬染めながらの上目遣いをしてみせる。
もちろん、彼には人生の伴侶が居るとは知ってのことで冗談めいていた。
浮気を誘って彼らを困らせたくはないからで。
きっと具合がいい立ち位置は仕事のパートナーなんだと思っている。

「僕もー!
あはっ、なんだか食欲わいてきちゃう!
僕もセインも、今日もいちにちおつかれさまー!無事に生きてるってすばらしい!」

囃し立てられながら、時折口元をナプキンで拭いながらの食欲合戦は止まらずに。おいしいご飯に気持ちも声も弾み。

「ううん、それは初めて聞いたよ。
……そっか。そうだったんだ。うー。まったくひどい人だよ!セインの親っていう資格無し!」

自分自身の事を話してくれるなんてレアな機会にぱちぱち睫毛弾ませて。自分にそういう話しをしてくれる事へ喜びながらも耳を傾ける。聞いた内容に思わずめくじら立てて、フォークをぎゅっと握り込み。

セイン=ディバン > 少女同様、男としては、逆に真っ向からの勝負で相手に勝てる。
そんな少女を羨ましく思っていたりする。
更にいれば、少女はまだまだ若いので伸びしろもあるのだ。

「……ぶふぉっ」

相手の言葉に、酒を噴きかける男。
なんとか、踏みとどまり。口元を拭いつつ。

「……あんまり中年オヤジをからかうもんじゃねぇぞ~?
 タピオカ、可愛いんだから。こう……。
 イイ仲の人とか、いるんじゃねぇの?」

視線を逸らしつつ、そう言う男、心臓が、やけに強く弾んでいる。
ちら、と見た相手の姿。
美しい銀の髪。色気のある褐色の肌。
思い出すは、肌を重ねた時の映像。
ちび、と酒を飲みつつ。

「ははは、嬉しいね。
 タピオカと一緒にいると、元気になれるなぁ」

よくよく考えれば、この少女のようなタイプの知り合いは少ない気がする。
だからこそ、相手に癒してもらっている部分は非常に大きい。

「あれ、話してなかったっけか。
 まぁ、そんなこんなでオレは偽名名乗って冒険者やってたんだけどな。
 ちょっと気になって調べたらだなぁ。
 ……オレの故郷の村、魔物に襲われて滅んでたんだわ」

懐から取り出した書物を見せつつ、笑う男。
凶悪な笑みだが、それは負の感情など無い笑みだった。

「村の住民全滅。しっかりと確認が取れてるんだってよ。
 もう十年以上前の事件なんだけどな?
 ……ザマァ見ろだわな。これで、正真正銘。
 オレぁ自由だ! オレは、今日この日から!
 セイン=ディバンとして生まれ変わった!」

カカカカカッ! なんて笑いながら更に酒を呷る男。
その言葉にも、含みは無い。
憎悪も、悲しみも無く。本当に、喜びだけがそこにあった。
三杯目の酒を飲み干し、さらにお代わり。男の顔はいい感じに桜色だ。

タピオカ > 「そんなぁっ……!からかうなんてひどいよー。
これでも精一杯の気持ちを言ったつもりだよ……?
えへ、可愛いなんて……。ありがと。
いい……仲のひと?……ふふ。どう思う……?」

お酒噴きかけた彼に、大袈裟なほど落ち込んでみせ。
切なげに青緑の瞳を潤ませる小芝居交えながら紅い瞳見つめてみせる。
わざと間をおいた言い方をしながら、質問に質問ではぐらかす悪戯。
視線逸した相手の視線を元に戻そうと、そっと微笑みながら襟元をやや広げて視線操作まで企んで遊び。

「セインと一緒だとリラックスできるよー。ふしぎ!
お互い風まかせでも、なんとなく会えるもの。今日みたいにさ」

ほどよい距離感と、踏み込んでも縛らない関係。
会えば笑いあえて、身体を重ねる事があっても次の再会信じて手を振りあえる。
……なんて、自分は勝手に思っているけれどどうだろう。
いつでも彼との縁があればいいと願わずにはいられない。

「偽名だったんだ。それでそれで……?
――ッあははははっ!」

怒りの後はやや神妙な顔つきで話の続きへと、取り出された書物へと身を屈め。
笑った彼の言葉を耳に、弾ける笑い声。

「村の人には悪いけど、……やったね、セイン!
ちゃんと報いがそのひどい人たちに届いたんだね!
それじゃあセインの新しい誕生日にー!」

カンパーイ!と三杯目のお酒に向けてグラスを突き出して。
ぐいぐいぐい、と一緒に飲み干した。
魔物に滅ぼされた村の話。普段なら悲しみに目も伏せるが、
その村の子をお金に変えようとした悪事が時を経て村人自身の頭の上へ降り注いだ話は痛快で。
顔色を明るくして一緒にお祝いをする。

「んーっ!……いいお話聞いちゃった。
あはっ、……セイン、もうお顔まっかっかだよ。酔っ払っちゃった?」

セイン=ディバン > 「……おいおい、いつからそんな駆け引き覚えたんだ?
 まったく、少し見ない間に、随分と大人になったもんだ。
 ……お、おぉっ……」

相手の落ち込んだような様子に、視線を逸らしたまま言う男。
こんな風な会話を、この子としたことなどあったかな、と。
そう考えていたのだが、相手が襟元を広げたのに気付けば、ついつい注目してしまう。

「そうさなぁ……。オレも、タピオカの前だと。
 気取らなくていいから、楽でいいぜ」

冒険者という職業上、男も、少女も。
明日の命も分からぬ身分だ。
しかして、こうして会えるのだから。この距離感が良い。
この距離が、相応しいと。そう思うのだが。

「あぁ、そうだ。誕生日だ。
 本当に、ザマァ見やがれ、だ!
 ははは、あぁ、そうだな。酔ってるなぁ」

相手が祝福してくれれば、男は上機嫌に酒を飲み。
自分の顔をぺちぺちっ、と叩く。なるほど、熱い。
かなり酔っ払っているな、と自覚しつつ、店員に、二階の部屋を取るように頼む。こうなったら、家に帰るのは面倒だ。
そこで、相手を見て。

「……タピオカ。なぁ、暇か?
 もしも良かったら……。
 オレに、口説かれてみないか?」

上を指差し、真剣な表情で言う男。
ん? と首をかしげ、相手の返事を待つ。

タピオカ > 襟元を広げた先には、簡素なシャツの中の暗がりに小さな胸の膨らみ。
褐色の肌のその蕾だけ、ぎりぎり見えないようにして。
鎖骨から曲線が始まるとこだけ見せつけると、ぺろ、と舌を突き出してみたり。

「悪い人が悪い目に合うってほんとにあるんだねー!
今の話を聞いてかみさまって居るのかなってちょっと思っちゃった。
……うんー。冬の子供のほっぺみたいになってる。とってもご機嫌そうだけどさ!」

カクテルを作るほどの人だから、お酒に飲まれる事は無いと思いながら。
ほどよく酒精を浴びてる様子にくすっと笑みかけて。
相手が二階に部屋を頼んでいるのを横で見ていると、なんとなく気持ちも顔も火照ってしまう。密やかな期待と残った食事を胸に押し込めて、少し相手を伺って。ちら、と様子を確かめようとしていると。

「うん……、いいよ……。セイン……。
ご馳走してくれた、お礼もしたいし……。
僕のことも……、僕の身体も、……セインに口説いてほしいの……」

真剣な目つきに頬紅が赤く膨らみ。恥ずかしそうに、そして嬉しそうに頷いて。
二階に連れて行ってほしい、と求めて。

セイン=ディバン > 男の性的嗜好はまぁ、幅広いのだが。
この少女のことは、好意的に思っている。
健康的だし、可愛らしい。
それに……この少女には、ウソがまとわりついていないのだ。

「……悪い人、か。はは、そうだなぁ……。
 巻き添え喰らった村のやつ等は可哀想だがな。
 ……冬の子供のほっぺた、か。上手いこと言うなぁ」

流石に、酒が回ってきたか。だんだんと喋りが大人しくなる男。
気付けば、胃袋も程よく満腹だ。
相手に対して言葉を投げかければ。戻ってきた返事は、好ましいもので。

「……じゃあ、行くか。
 ……あぁ、それと。これから色事だってのに、お礼、なんてナシだぜ。
 ……タピオカ。お前、可愛いぜ」

相手の手を引き、二階へと向かう。
流石の高級店だけあり、二階の宿泊施設もたいしたものである。
貧民地区の酒場とは比べ物にならない。
階段を上り、部屋に入り。男は、相手の唇を奪う。

「……なぁ、タピオカ。オレの……。
 オレの、パートナーになってくれないか?
 その……恋人、っつーか、いや、そうじゃねぇんだが……。
 その……ちょっと、特別な存在、っつーのかな」

どう言った物か、と頭を悩ませる男。
かろうじて出た言葉は、『恋人に近しい存在にならないか?』なんて。
そんな、色気のない言葉で。

タピオカ > きっと彼は手の内にいくつもカードを用意できる、頭のいい人。
そんな彼がいつも自分へ差し出すカードは誠実で、優しさに溢れてるから。自分はいつでも気持ち良くいられるのだ。
すっ、と。自分自身というカードを安心して預けられる。

「えへ……、ごめんなさい。僕は気が利かなくって。
セインに口説かれて恥ずかしかったんだ。照れ隠し、でちゃった。
……ありがと、そう言ってくれてほんとに嬉しい」

恥ずかしそうにうつむき加減になると自分の不器用さに頬の赤味を深くし。可愛いと言ってもらえて心くすぐられる思いを伝えて。

「きれいな、お部屋だね……。
――ぁっ!……、ん……、んぅ……。……せ、いん……っ……。
……うん……、いいよ、セイン……。
えへ、……そう誘ってくれて嬉しいな……!
僕は今から、セインの……恋人みたいな、ちょっと特別なパートナーになるよ。
えっと……。どういう風に言えばいいかな……。
僕は、いつでもセインが羽を休めるような……宿り木?」

唇を彼に奪ってもらって。ぴくりと肩を弾ませながら切なげな甘い表情になる。
お互いの自由な立ち位置から、もう一歩踏み込んだ関係に。
奥さんの居る人の恋人にはなれないけれど、それに近い存在になれるのならと嬉しがり。頷いて。
自分の思うイメージを口にしながら、部屋で2人きりという状況に身体が熱を帯び始め。

セイン=ディバン > 本来、男は誠実さなんていうものとは縁遠い人間だ。
だが、この少女の様に、付き合っていて心地いい人間相手の場合は別だ。
相手が真っ直ぐで、しかも損得を持ち込まない。
そんな相手をだますのは、外道で悪党の男の、流儀に反することだった。

「いや、いいさ。むしろ、気を使ってくれたんだろ?
 ……そういう所、可愛いぜ本当に。
 ……こっちこそ、だぜ。感謝するのはよ」

相手の俯いた様子に、男は苦笑しつつ、相手の体を撫で。
そして、部屋へと着けば。

「あぁ。オレが良く使う宿とは比較になんねぇや。
 ……ふ、ぅっ……。タピオカ……。
 ……あぁ、良かった。断られたら……。
 泣いちゃうところだったぜ。
 ……ははっ、それはいいや。
 冒険者なんて仕事してるオレが、安らげる場所が増えたってわけだ。
 ……じゃあ、オレぁ、タピオカを襲う物事から、お前を守る盾になるぜ」

触れた唇。相手の表情。全てが、男を興奮させる。
相手を、ベッドにゆっくりと押し倒しながら笑う男。
踏み込んだ関係。恋人、と。言いたかった。現に男には、多くの恋人がいるのだから。
だが、それができなかったのは、偏に相手が若いからこそ。
自分のような冴えない男ではない。もっと魅力的な人間があらわれるんじゃないか。
そう思い、照れ隠しに……そんなことを言いながら。再度、相手の唇を奪い。