2019/01/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区冒険者の宿」にさんが現れました。
> マグメールの国のどこにでもある冒険者の宿のうち一つに、女はするりと入り込む。
シーフ特有の足さばきで音も立てずに入ってから、酒場となっている1階を眺め回す。
仕事を終えた冒険者たちが楽しそうに酒を酌み交わしているのが見えて、女は小さく口元を釣り上げる。
とりあえず、女はカウンター席まで移動して、腰を下ろす。
むっちりとした尻を受け止める椅子、足を組んでテーブルに肘を付きながら、メニューを眺める。
ちょっと強めの酒と、つまみをいくつか注文して、メニューを戻した。
注文の品が来るまでの間、ちょっと退屈そうに窓の外を眺める。

ご案内:「王都マグメール 平民地区冒険者の宿」にジーヴァさんが現れました。
ジーヴァ > まだまだ年齢は子供の内とはいえ、経験で言えばジーヴァは立派な冒険者だ。
だからこうして酒の匂いが漂う場に来るのも慣れてはいたが、彼は騒がしいテーブル席を避けてカウンターへと向かう。

「……水。それと焼いたベーコン」

ぶっきらぼうにフードに隠れた顔からそう注文を告げて、ふと隣を見ればいつの間にか女性がいた。
気配を感じさせないその振る舞いから、ベテランのシーフだとジーヴァは気づく。
ちょうど今抱えている依頼の中にシーフが必要なものがあったはずだ。誘ってみる価値はあるだろう。

「そこのあんた、シーフか?
 俺は魔術師のジーヴァ。困った依頼を抱えてるんだが……酒は奢るからよ、話を聞いてくれねえか?」

> 注文を待っている間、新たな客が入ったようで、視線をちらりと向けてみれば、まだ年端も行かぬといって良いだろう少年。
ほかに連れがいるわけでもないようで、テーブル席を嫌ったのかカウンター席の方に。
近くにやってくるのを見れば、女は視線を逸らした。
理由は単純であり、自分の注文した酒と、おつまみが届いたからで食事にしようと思ったのだ。

ポークビッツをつまんで口に運ぼうとしたところで、声をかけられる。
視線を再度少年の方に向けた。

「坊や、此処は宿、よ?お仕事終えた冒険者が休むところなの。
勧誘だったら、ギルドに行けばいくらでもお仕事探している人がいると思うのだけれど?」

冒険者のギルド、冒険者が依頼を受けるときはそこを窓口として、行い、その場でチームを組むのもよし、もともとのチームで行くもよし。
人が欲しいなら、そちらで声をかければいいだけのことである。
なぜまた、仕事を終えたのんびりしようとしている人に声をかけるのだろう。
女は不思議に思いながら問いかける。

ジーヴァ > 彼女の忠告は妥当なものだ。
朝から夕方までギルドの窓口や掲示板はどこも混み合うものであり、
依頼の貼り紙一つを五人の冒険者が取り合うのは珍しくないと言われる。
だが、この依頼はギルドに出せるものではなかったのだ。

「……ギルドに知られたくない類の依頼だ。
 ここなら酒のつまみ代わりの馬鹿話として聞き流されるだろ?
 そう思って聞いてほしい」

そこまで言って運ばれてきたベーコンを一口かじり、木の器に注がれた真水を飲み干す。
フードを目深に被ったまま、彼女にだけ聞こえるような小声で話し続ける。

「最近ギルドの連中がある無名遺跡を抑えた。
 そこにはとんでもないマジックアイテムがあって、依頼主はそれを欲しがってる。
 このままだとそれはギルドに出資してる大貴族様のものになっちまう。ところが警備は厳重」

また器から真水を飲み、お代わりを頼む。

「依頼主は迅速に、かつ気づかれないように盗んでくれと頼んできた。
 ……なんで俺に依頼したのかは分からないけどよ。
 そういうわけで、腕の立つシーフが欲しかったってわけだ」

さらにベーコンを半分ほど齧り、唇についた脂をぺろりと舐めた。
そして女性に向き直り、回答をじっと待つ。

> 少年の言葉を聞きながら、女は酒を静かに傾けて、少年の返答を待つ。
チキンのもも肉ソテーを齧り、唇についた油をぺろり、と舐めとる。

「ギルドを通さない依頼………ね。」

女は、目を細めてトーンを一つ落としてみせる。
酒を再度一口含んで唇を湿らせて、はぁ、と艶かしく息を吐き出す。
酒精交じる吐息はすぐに霞んで消えていく。
彼の言葉を聞いて、女は酒をちびり、ちびり、と飲んでいて。

「坊や、あなた馬鹿ね。」

彼の言葉を聴き終わって、吐き出す言葉は冷たくて辛辣なものである。
自分に向き直る相手を横目で眺めて次の言葉を。
少年にレクチャーをして見せよう。

「ギルドに持っていけないということは、基本的に後暗いものよ。
 それに、ギルドのメンバーが抑えたものを横取りするというのは、ギルドに敵対するということ。
 

 ……坊や、君は私に犯罪者になれ、というのかしら?
 冒険者というアウトローの中でも、シーフのクラスというものは、盗賊……傍から見れば犯罪者のレッテルを貼られても可笑しくない職よ?
 冒険者のシーフが犯罪者として石を投げられないのは、ギルドと契約してギルドのための働いているからこそなのよ。
 ギルドに敵対するということはギルドの庇護を捨てて、生きていくということでもあるのよ?
 それに見合う何かがあるの?坊やの依頼というものは。

 それと、ギルドを通していないということは裏付けは取れているのかしら?
 坊やの依頼人の身元の証明、依頼の正当性とか、ちゃんとお金を支払ってくれるか、とか。
 仮に、その依頼をこなして使い捨てされたら、報酬さえも意味なくなるわ。

 何を吹き込まれたのかは知らないけれど。
 おねいさんは、危ない橋を渡る気はないわ。」

 英雄願望があるのはいいことだけれど、それはひとりで成し遂げてちょうだいな。
 女は呆れたように言葉を放つ。

ジーヴァ > 考えが甘かった。その一言に尽きる。
確かに依頼主は冒険者ギルドではなく魔術師ギルドを通して話を持ち込み、
直接会ったこともない。だが報酬は魔術の触媒として優秀な宝石の数々と、万を超えるゴルド。
報酬に目が眩み、無茶な頼みを押し付けたことにジーヴァはようやく気づいた。

「あ……う……」

周りは酔っ払いばかりで漏れる心配はないとはいえ、
そもそも話を持ち掛けた彼女がギルドに密告するという可能性もあった。
シーフをやっているということは、最もギルドに対して真摯であるということでもあるのだ。

「……悪かった。あんたのメシと酒の代金、俺が出すから許してほしい。
 俺はあんたを罵倒したようなもんだ……」

アジトに戻った時に、断りの手紙を書こうと内心考えつつ、
フードを脱いで頭を下げた。そうして顔を上げれば、真っ赤な一対の眼が女性の呆れた顔を見つめる。
まだまだ自分が未熟者だということを思い知らされて、ジーヴァはすっかり涙目になっていた。

> 「別に、いいわ。坊やはまだ若いんだし。
坊や、これは経験よ、これを糧に次に繋げてくれればいいのよ。
おねいさん……年長者からの忠告。」

自分の言葉に返答ができずにいる少年は己のしようとしていることを理解したようだ。
女は小さくえみを作り上げて、隣にいる少年の頭を撫でて見せよう。

「それに、ギルドが常に正しい、というわけではないわ。ギルドが本当に間違ったことをしている時には、反抗してでも止める必要があるわ。
その場合のために、ちゃんと依頼は吟味し、裏を撮る必要があるのよ。」

間違った情報で、動いてしまう時はないわけではない。
そういう時は正しい情報でギルドを正せばいいのだと。
頭を下げ、反省しているようなのだ、なら、これ以上言うことはない。
酒をちびりと舐めるように飲んで。

「未熟なのは悪いことではないわ。未熟な時だからこそ、いろいろ聞けるのだしね。
今は、失敗してなさい、坊や。」

ジーヴァ > 「くそ、確かに俺が悪いけどよ……
 ……頭はやめてくれよ、子供じゃねえんだから」

頭を撫でる柔らかな感触に心地よさと恥ずかしさを感じて、
その手をやや乱暴に払いのける。
子供扱いされるのを受け流せるほど成熟していないジーヴァは、
こうしてムキになることでしか返せなかった。

「あと、坊やじゃねえ。ジーヴァだ。三ツ星のジーヴァ。
 こう見えても酒だって飲めるんだぜ」

微笑んだ彼女にからかわれたと思ったのか、さらに蒸留酒まで注文していく。
運ばれてくれば彼はすぐさま飲み干すつもりだろう。

> 「ふふ、坊や?子供ほど、そういうもの、なのよ。」

 くつくつと、喉の奥で笑って見せる女は、払いのけられる手を、戻して、さらに乗っている摘みの魚の干物をつまんでパリ、とかじる。
 ムキになる姿を微笑ましいものとして眺めて、お酒を追加注文して。

「坊や、でいいのよ、今は。
 だって、さっきの話を坊やが正式にお断りするまでは、ね。
 おねいさんは名乗らないわ。」

 そうなのだ、彼が依頼を正式の断ってくるまでは、名乗るわけには行かない。
 どこに誰がいて話を聞いているかもわからないのだ。
 だから、断った相手として、仲良くするわけにはいかないから。

「あらあら。
 別に好きに飲めばいいけれど、介抱はしないからね。」

 お好きにどうぞ、と、女は自分の分のお酒をひとつ煽る。

ジーヴァ > 「ギルドに戻ったらとっとと断る。
 もう決めたよ、今思えば報酬ばかりが美味しくて疑うべきだったぜ」

やってきた蒸留酒が注がれた器を勢いよく掴み、
吐き捨てるようにそう告げると彼女の前でぐいっと飲みはじめる。
最初は威勢よく飲み干していたが、やがて器が空になると同時にごとんと音がした。

「み……みろ。のんでやったぞ!
 い、いっぱいとはいえ酒は……さけだ……」

それは器がテーブルに落ちた音。
慌ててジーヴァは拾いなおし、空になった器を彼女に見せた。
ふらふらする頭を支えるようにテーブルに乗せて、そのまま横になった視界で彼女を見る。

「……あんた、結構きれいだなあ……口説けばよかったかも……」

流れるような髪も、金の瞳も、艶やかな唇も酒場のぼんやりした明かりに照らされて
酔った彼の視界を通してみれば、そこばかりが強調されてなんとも魅惑的になる。
いきなり依頼の話をするべきではなかったかもしれないと思いながら、ゆったりと彼女を見つめていた。

> 「ええ。そうしておいたほうがいいわ。」

蒸留酒を一気に煽る姿に、女は軽く笑ってみせて、おつまみを食べ終え、酒を煽る。
酒を飲んでぐったりしている様子に無理しちゃって、と肩をすくめて見せる。
お酒の、飲み方を知らないのね、と蒸留酒こそ、ゆっくりと時間をかけて飲むものだと思うのだけれど。

「そういう酒はゆっくり風味を楽しんで飲むものだと思うわ。
一気に飲むのだけが、男らしさじゃないわよ。」

酒を飲んで倒れそうになっている様子を眺めて、自分の分を支払った。

「ありがとう、また別の時に、ね。」

そんなベロベロになっている状態で口説かれても嬉しくないわと。
女は立ち上がり、ひらり、と手を振って、静かに歩いていく。
そのまま、店を出て、去っていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区冒険者の宿」からさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区冒険者の宿」からジーヴァさんが去りました。