2019/01/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/暗い路地」に何禍さんが現れました。
何禍 >  細い路地に重く湿った音がひっそりと流れていた。

 明かりなしではほとんど見えない闇の中、何か粘液のようなもので壁の高い位置に
貼りつけられた男に向けて女が腕を伸ばしていた。豊かなボディラインがくっきりと
うかがえる薄い生地の黒いドレスをまとった彼女の肩やふくらはぎは、まっ暗い中に
浮かぶような肌の白さだったが、そのひじの少し先あたりからは鮮やかな肉色の太い
触手に変わって男の股間に張り付き、ぐにゅぐにゅと蠢いている。

 やがて男の体がぶるりと震えると、女はゆっくり腕を引いた。触手の先から粘液が
男のしおれた男性器に向かって糸を引くのをぶんと腕を振って振り払うと、その腕は
たちまちのうちに他と同じ白さに染まり、華奢な繊手を形作る。

「……もう少し食べたいわ」

 色気を含んだ低めの声でぼそりと呟くと、女は月光が斜めに差し込む路地の入口に、
靴も履いていない足で歩み出る。そして、長い黒髪をふわりとかきあげると、彼女は
その場にごろりと体を横たえた。よく見ればスカートの裾はぼろぼろに破けており、
襲われた後にその場に打ち捨てられたようにも見える。

「さあ、おいで……」

 呟くと、脚に傷のようなものができてわずかに血が流れ、腕や背、そして衣服にも
汚れが浮かび上がった。あとは、お人よしがかかるのを待つばかりだ。

何禍 > 「……」

 夜の路地には、もう誰も現れる気配はなかった。むくりと体を起こすと服の汚れも
脚の傷も溶けるように消える。地面に横になった時に乱れた髪をさらりとかきあげ、
後ろを振り向くと、特段の表情を浮かべないまま、何禍は静かに言った。

「ごちそうさま、あなたたち。たぶん死なないし、朝には見つけてもらえるわ。
 それじゃあね」

 粘液で壁に貼り付けた2人の男にそう告げると、ぺた、ぺたりと足音をさせながら、
軽やかな足取りで裏路地を後に……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/暗い路地」から何禍さんが去りました。