2018/09/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > その小さなシルエットが、久方振りに帝都へと姿を現したのは、単なる偶然という訳でもない。
不慮の事故ともいうべき、神もどきとの”遊び”の為に消耗しきって、少しの休眠を要していた所から、漸く脱却できたといった具合だ。
それでも、慣らし運転の必要はあるだろうし、暫し羽を伸ばすという選択肢も浮上しそうな所だが、情勢がそれを許さなかったらしい。
勤勉で堅実なる従業員から上がってくる情報には目を通していたが故に、不在であってもある部分では耳聡い。
「はてさて、何処ぞの阿呆が儂の休養を中断させおったのやら。」
巷で取り沙汰されている、”魔導機械密輸事件”。
北方帝国出身で、しかも貿易商。
大っぴらに、妖仙としての活動はしていないことから、密輸犯の口封じに一枚噛んでいると目されることは殆ど無かったし、幾つかの根回しによって疑念は鎮火させている。
だが、執拗な取調べというのは、もう取調べという行為自体が目的ではないかという程度には、この幼げな妖仙にも行われ、いい加減辟易している所だ。
平民地区の外れにある、己の商店の程近く。
やれやれと薄っぺらい肩を竦めて、空を仰いだ。
■ホウセン > この件については、妖仙の手は完全に白い。
何しろ、暇潰しに騒動の種を仕込もう等という精神的な余裕さえ、殆ど無かったのだから。
だが、それ故に、とばっちりを受けたという、誠に身勝手な被害者意識が鎌首を擡げる。
「ある意味において当然の成り行きじゃと理解はしておるが、承服できるかというのはまた別の話での。
少しばかり、八つ当たりをしても致し方の無い話じゃろうて。」
魔導機械が軍需的資源と目されて狙われる事と、北方帝国に馴染みがあるが故に自分が疑われること。
そのどちらもあり得る話で、事態の推移としては当然と言えるかもしれない。
だが、長時間の繰言を強いられる尋問は億劫以外の何物でもなく、思い起こすと整った目元に歪みが生じる。
主に眉間に皺が寄るという形で。
所謂、非人道的な彼是を行われなかったのは――妖仙が甘受するかは別にして――偏に、この子供の姿故の温情の類だろうが、疑惑が完全に晴れたかといえば怪しいところ。
故に、こうして夜の街を歩く最中でさえ、尾行の一人や二人付いていても不思議ではないのかもしれない。
■ホウセン > 多少のことであれば、軍の内部にも法を司る役人にも黄金色の”鼻薬”を嗅がせているお陰で、彼是と詮索されることは殆ど無い。
単に、今回が”多少のこと”ではなかっただけの話であり、ハテグの主戦場に大規模な戦力が動員されているという一事を見ても、事件の影響が大きいことは知れるだろう。
個人としての面倒さや厄介さはさて置き、国が大きく動けば、それだけ儲ける機会が増えると算盤を弾いてもいる。
軍事とは人、金、物が動く一大行事。
見過ごすことも、乗り過ごすことも、商人としては論外だ。
「…それにしても、誰彼かの視線があるやも知れぬとなれば、夜遊びがし辛くなってしまうのぅ。」
カラリ、コロリと下駄を鳴らし、歩みを進める。
細っこい腕を組んで、先刻よりも余程真剣な思案顔で。
己の行動を見張るものがいるとしたら、官警の類か、それから依頼を受けた冒険者や何でも屋の類か。
どちらにしろ、子供にあるまじき性の紊乱っぷりを知られるのは、少しばかり望ましい形ではない。
己の店まで後一区画。
夜中ではあるが、繁華街までそう遠くない通りであるから、人の姿はちらほら。
本格的に尾行の有無を探るなら、探査の術式を隠行させながら打つ位のことをする所だが、今の所は嫌がらせ程度にゆるりと背後を振り返るに留める。