2018/08/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリューゼさんが現れました。
リューゼ > ぱし、ぱし、という打撃音が響いている。
訓練場の中央では青年と傭兵の男が組み手をしていた。
傭兵の男は得物を持っておらず、青年も無手である。
徒手空拳も身を守る技術。受け技をよく使う青年としても打撃訓練ができるのはありがたかった。
自分から殴りに行く機会もあるのだからとこの間よく思い知った。

それから数合。
互いに礼を言って広場を開ける。
少し離れたベンチに腰掛け、革袋の水をぐいっと呷った。
広場では剣同士の訓練が始まる様子。
ぷふー、と一息つきながらそれを静かに見守っていた。

「…今日は涼しいな。」

開放されているここは広く風通りもいい。
それ以上に今日の気温は鍛錬にはありがたかった。
通りに目をやれば、元気に遊ぶ子供も見えるくらいには涼し気だった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にソーマさんが現れました。
ソーマ > 「ふん、まあまあね。」

青年の背後から少し高い少女の声が響く。
振り返ればそこには……薄い胸を隠すよう両腕を組んだ金髪のバニーガールの姿。

「さっきの訓練見てたけど無手が流儀なの?
 素直に武器持ったら?」

腕を組んだ右手に握っているのは避妊具の箱。
カジノの客のお使い……というより嫌がらせの帰りだった。
そのまま帰るのも癪なのでちょっと寄り道した広場で戦闘訓練を行っているのを見ていたわけだが……。
何となく口を出したのは、彼の戦闘スタイルが仲間とよく似ていたから。

リューゼ > かけられる声に振り返る。
その姿を見て、内心んん?と思いっきり首を傾げた。
訓練場にバニーガールとは似つかわしくない。
しかも避妊具の箱まで持っているわけで。
正直、場違い感がすごかった。

「……無手が流儀なんだよ。
何か用かな、兎のお嬢さん。」

打突による拳技も使うがそこまで得手としているわけでもない。
ゴロツキや賊程度ならどうにでもなる程度には使うが。
まぁまぁ、という評価は妥当かな、という自覚はあった。

なので、少しだけ興味が湧いたので用件を聞いてみる。
その表情は女性とは違って穏やかなものだった。

ソーマ > 兎のお嬢さんと呼ばれるとむっと眉間に皺が寄る。
目付きが悪いのは生まれつきだし、怒りっぽいのも生まれつきだし、ついでに素直じゃないのも生まれつきだった。

「兎じゃないわ。
 ソーマよ、ソーマ・アタラクシア。」

何故か誇らしげに薄い胸を張る。
組んでいた手をベンチの背もたれに置いて身を乗り出すとバニースーツと胸の間に空間があり、とことん胸が薄いことが分かる。

「別に用ってわけじゃないわ。
 でも、アンタ冒険者か何かでしょ?
 いい、実戦は火力とリーチよ。
 何も持たずに外に出るなんて自殺行為だって言ってんの。」

呆れたように嘆息しつつ矢継ぎ早に言葉を投げつける。
文字通り投げつけると言った表現が当てはまるぶっきらぼうな声音。
先程の訓練を見る限りそれなりに場数は踏んでいることは見て取れた。
故にもったいないと思ったのだが……そんなことは口に出来ない。
難儀な性格だとよく言われるが、今更変えられもしないしそもそも変わる気もなかった。

リューゼ > 言っただけでむっとされた様子。
何というか短気なのかもしれないなあ、と青年は穏やかに思う。

「ソーマ。俺はリューゼ。」

ぺったんこの胸を見ると結構無理をしていそうな印象だった。
ひょっとすると事情とかあるのかもしれない。

「耳が痛いな。まぁ、でも今のところ困った事はないよ。
簡単な短弓くらいなら扱えるし、外に出る時は装備もある。
何より、今更別の技術に手を伸ばせる程器用じゃないよ。」

言っている事はわかるし、そういう技術が使えればと思った事もある。
ただまぁ、それが簡単に手に入る程甘くも器用でもなかった。
なので、強めの語気で言われようと青年はやる事は変わらないと穏やかに笑うのみである。

ソーマ > 「む……。」

結構強く言ったつもりだが、どうして笑っていられるのだろう。
大体善意のアドバイスをしたら反発されるか無視されるかキレられるかだと言うのに。
まるでアイツみたいな反応……。

「まあ、確かに器用そうには見えないわね。
 むしろ、不器用そうって言うか生きるのが下手そう。
 よく騙されたりしない?」

確かに無手でも極めれば剣にも劣らぬ力を出せる。
そもそも魔王を討伐した時の仲間のひとりは無手のくせに近接戦闘では一度も傷一つ負ったことがないなんて頭おかしい女だったし……。
眉根を下げて心配そうに見下ろしつつ、殊更大きなため息を吐いた。

リューゼ > む、と一瞬口をつぐむ様子ににこにこと笑う青年。
少女の言葉は強く、ある意味では反感を買うかもしれない。
けどまぁ、世の中に色々な人間がいる事は百も承知であった。

「生きるのが上手なつもりはないなぁ。
世渡り上手ってわけでもないだろうし。…ていうかそれは商人の資質だよ。
冒険者なんかやめた方がいい人間だ。

騙される事はそうそう無いかな。それだけは気を配ってるつもりだよ。」

確かに、見た目から悪意に晒されそうと思われるかもしれない。
見た目よりは人生経験はそれなりに持っているんだけどなぁ、と思う青年である。
ため息をつく様子のソーマを穏やかな表情のまま見ている。

ソーマ > 「何笑ってんのよっ!!」

穏やかに笑う青年の姿に思わず吠えるように叫ぶ。
勢いで金色の長いウェーブヘアが弾むように揺れ、髪で隠れた丸い尻尾に刺激を与え、ひくんとかすかに身体を震わせる。

「絶対アンタ騙されてる!
 自分で気付いてないだけで騙されてるはずよ!
 お人好しすぎるもの!
 初対面の人間にこんだけ言われてなんで怒んないのよ、ばかっ!」

我ながら理不尽なことを言っていると思うが、勢いは止まらない。
思わず手に持っていたモノを投げつける。
そして、投げつけた後客に頼まれたお使いの品だったことを思い出した。

リューゼ > 穏やかに接していたつもりだが、かっ、と吠えられた。
怒りに任せるまま、手に持ったモノを投げつけられる。
ん、と青年は思う。
投げつけられたのは箱状のもの。視界に捉えるままに軽く身体を横に動かして避けようとし……。

「おっと。」

身体の横を通り過ぎてから、手に捕まえた。
普通よりもかなり良い動体視力と反射神経なのがわかるかもしれない。
それを、はい、とソーマへと差し出す。

「怒る理由がないから怒らないだけさ。
君の言っている事はある意味で一理あるわけだからね。
態度が不遜だ、って怒る人はいるかもしれないけれど。それにさ―――。」

お人好しと言われるほど君に何かをしていないよ、とまた静かに笑う。
別に喧嘩を売られたわけでなし、施しをしたわけでなし。
ただ単に、それが青年の自然体なだけだった。

ソーマ > 「あ…っ!」

避けやがった!
拾いに行くのが面倒と言うか、汚れてたら何言われるかわかったもんじゃない。
もう一回買いに行かなきゃ……雑貨屋の店主のにやにやしたエロい顔を思い出して腹が立つ。

「……え?」

と、思ったら何かを手渡された。
見るとそれは避けられて明後日の方向へと飛んでいったはずの箱。
きょとんとした表情でそれと青年の顔を見比べる。

「……ま、まあまあやるじゃない。
 今のに反応出来るんだったらまあ、簡単には死なないかもね。」

ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向く。

「だから、そういうところがお人好しだって言うのよ!
 アンタ笑顔以外の表情出来ないの!?」

続く言葉にはやはり怒鳴ってしまう。
コイツ殴られても笑ってんじゃないかって思う。
こんなん絶対誰かに騙されていいように使われて用無しになったらぽいって捨てられるに決まってる。
そう……アイツと私達みたいに……。
細い肩を震わせ、挑むように睨みつける。

リューゼ > 差し出した箱はちゃんと受け取ってくれた様子。
で、それを空中キャッチした手腕は認めてくれた様子。
正直拳とか蹴りとかに反応する方が難しいのだ。
ただ、その態度は素直とは言えない感じではあったが。

「そりゃ、まぁ、簡単に死ぬつもりはないかなぁ。
これでも戦場の経験とかもあるんだけどね。」

と思ってたらまたキレ始める。
…笑顔以外できないの、と言われてやれやれとちょっとため息交じりに。
少しだけ笑顔の質が変わったように。
睨む女性を見ながら、少し不思議そうな様子。

「…あのさ。俺がお人好しだと君は何か困るのかな?
俺が騙されていても、君には関係ないんじゃないか。
あいつバカじゃん、って思うだけじゃないのか?」

どこか、見透かすようにも見えるかもしれない。
…何となく、青年はソーマというこの女性を嫌いになれそうもなく。

ソーマ > 「はぁ!?そりゃ別に困らないわよ!
 別にアンタがどこで野垂れ死にしようが構わないわよ!
 ああ、もう!人が心配してやってんのに!!」

今日最大級に吠える。
肩を怒らせただでさえ目付きの悪い目を三角にして犬歯を見せて威嚇する。
殴りつけんばかりに拳を握りしめ震わせる。
思わず箱を握りつぶしてしまう程に。
もっとも少女の細腕では蚊ほどの痛痒も与えられないだろうが。