2018/07/22 のログ
■リュシー > ―――――あ、く、しゅみ。
(今度のひとことははっきりとくちびるを動かして発したために、
向かい合って座る男が、ほんの一瞬、怪訝そうに首を傾げた。
とっさに、こほん、と空咳をして誤魔化したけれど―――――
手持ちのカードは既に、かなり良い役を構成している。
これ以上の役が相手のもとに揃う確率なんて、そうそうあるはずもない。
けれど、それでも―――もうひとつ、ため息を吐きながらゆらりと首を振った刹那、
視界の隅に入ってしまった、のだ。
傍らに立つディーラーと、対戦相手との間で交わされた、小さなアイコンタクトが。)
………やだなぁ、もう。
これ、絶対無事に出られないやつじゃないか…。
(ご褒美、とかのんきなこと言ってくれてるけれど、
いったい、このひと、わかってるんだろうか。
明らかに己が負けるよう仕向けられているこの局面で、仕掛けて、
さらに勝ちを重ねてしまったら―――――
それでも、己の読みがもし正しいのなら、ためらっている時間はない。
相手の手がテーブルから浮きあがる、それよりも一瞬早く。
持っているカードのすべてを、裏返しのままで、場に捨てた。)
―――――はいはーい、ぼくが先ぃっ。
全部、チェンジするよ。……構わないよね?
(ぎくり、と肩を揺らしたのは、さすがに対戦相手だけだったが。
こちらにカードを寄越すディーラーの指先にも、微かなブレがあった。
そうして手もとに揃ったのは―――――果たして、まるで誂えたようにぴったりと、
このゲームで最高の役を構成する、カードの組み合わせ。
カードを広げたとは逆の手で、ぐいとチップの山を押し出しながら、
あいまいに微笑んだくちびるから、結局、またため息がこぼれてしまう。)
―――――ご褒美より、ぼくの身の安全を保障してほしいなぁ。
(それはとてもとても、切実な願いである。)
■ルヴィエラ > 「―――……おや、私の趣味の中では可愛い物なのだがね?」
(まるで心外であると言わんばかりの、おどけた声音。
くすくすと、矢張りこんな時でも愉しげに笑う声が響き
――けれど、彼女が自らの手を考えている間は、邪魔はしない。
具体的な策について指示をする事が無いのは、同じくして賭け事に興じる類だから。
故に、こうして態々声を掛けたのは、行われ様としているアンフェアへの一寸した対抗だ
己からは其処まで。 其れ以上は、彼女が自ら手繰り寄せるべき物だ。
想定通りの流れで、想定通りの展開で、この先、隠したナイフを振り翳そうとして居る相手は
逆に言えば、其の瞬間まで自分達の勝利を確信していた筈だ。
其処に油断と慢心が在る、「絶対に勝てる方法」に甘え、負けの可能性を想定しない。
――其の時点で、油断無く勝負を賭けた彼女と、相手とに決定的な差が生まれた。)
「―――……おやおや、心配性だ…だが安心すると良い。
愛する『娘』を守るのが、親と言う物なのだからね。」
(――彼女の、其の脳裏に囁いた其の言葉は。
今までに紡がれた悪戯や揶揄の言葉とは異なり――確かな、愛情に満ちた
其れが人間の、一般的な意味合いとは、明確に違うとしても。
ディーラーと、対戦相手の二人に動揺が見て取れる。
次の手を、挽回の手段を、この段になって必死に考えているのだろう。
だが、自らの勝ち筋を逆に消され、其の心の準備をしていなかった彼らに
勝ち手を見つけるだけの、精神的猶予など皆無だろう。
――空になったワイングラスをカウンターへと置き、硬貨で支払いを終えれば。
席を立ち、ゆっくりと彼女の背後へ歩み寄って行こうか)。
■リュシー > ……… か わ いい ………?
(―――――誰の趣味がだ。
そこまで声に出してしまう愚は犯さなかったけれど、きっと伝わっている。
かつての己の趣味だとて、ひとのことなど言えたものではないのだが―――
ともあれ、せっかく与えられた形勢逆転の機会を、みすみす見逃すほどの馬鹿ではない。
純粋に己の力で勝つ、ということにはならないけれど、それを言うなら、
相手だってちゃっかり、手を組んでいかさまを仕掛けているのだ。
ならば――――――これで、あいこ、というものだろう。)
――――― あんたが、どんなに愛情深い「パパ」か、は、
そりゃあ、身をもって知ってます、けど…?
(なにしろ、その愛情のために痛いめをみた己である。
思わずしかめ面になってしまうのは、仕方のないところだと思う。
もちろん、今、この場面で、彼が確かに背後へ歩み寄ってくる気配を感じ取れれば、
それはそれは心強く感じるのだけれど。
しかして、とりあえずは勝負である。
ディーラーの腕がいかほどのものかは知らないが、こうなってしまってから、
対戦相手により有利な役を与えることなど出来るものだろうか。
―――――同じカードが二枚、それぞれのプレイヤーの手札に入る、
不自然な状況を作り出すことも厭わなければ、あるいは可能かもしれないけれど―――――)
……どうしたの?
チェンジするなら早くしなよ、……それとも、もう降りたい?
(降りる、ことが、果たして相手には許されているのだろうか。
己の身体はまだ、椅子に深く腰掛けたまま―――対戦相手と、ディーラーとを、
交互に見比べて、そっと首を傾げる。
まともな決着をつけさせてもらえるのか、あるいは、強面のスタッフが、
膂力にモノを言わせて逆転をはかる、という可能性もある。
しかし、彼が守ると言ったのだから―――――とりあえず、背後の警戒は完全に、お任せしておこう。)
■ルヴィエラ > 「―――……私の他に、誰が?」
(臆面も無く、堂々と、言ってのける。
そも、趣味の良し悪しなど己にとっては大した問題じゃないと
まぁ、きっと、嫌と言うほど相手も判って居る――筈。
さて、この場において勝負する二人の手札は、彼女が有利。
考え得る限り、子の手札を超えるとなれば、其れこそ腕の良いディーラーを以てしても
誰の目に見ても判る程、不自然な調整を重ねる必要すら出て来るだろう。
だが、そんな腕を持つディーラーが、この場に居るとも考え難い
なら、次の手が在るとすれば――。)
「―――……成程、イカサマの押し付けか。」
(――ディーラーが、ちらりと扉を見た。
と、同時に扉から入ってくる二人の男が、さり気無く野次馬に混ざる。
丁度己の両隣、彼女の手元が見える位置に陣取り、じっと機会を伺い始め
ちらりと、其の手元を見れば、掌に一枚の札を忍ばせて在るのが見えた。
一寸、なるほどと納得したような言葉を、彼女の脳裏へと響かせれば
――少しばかり、悪戯っぽい笑いを零し。
一瞬、ほんの微かな魔力が漂ったのが、繋がりのある彼女には、感じ取れた、やも。)
『――イカサマだ! そいつは仕込んでやがるぞ!』
(背後から響く声音は、案の定両隣からの物。
男たちが、不意に彼女の両手首を掴んで引き上げれば
元々手に忍ばせていた札を、あたかも彼女が握って居た様に見せかけて掲げるだろう。
乱暴な故に、ほんの少しだけ痛みを与えるやも知れないが――
――直後、呆気にとられた周囲の野次馬から、徐々に嘲笑が零れる筈だ。
対戦相手とディーラーが顔を真っ青に染め、気付いて居ない男二人だけが不思議な顔を浮かべるか
きっと、元々用意して居たのは役にならないカス札だった筈だ
だが、実際に、今其の手に掲げられているのは
――子供用の、玩具の絵札なのだから)。
■リュシー > (―――そもそも、他人の見かたなどどうでも良いたぐいのひとだった。
やれやれ、とこんな場面でさえなければ、またため息がこぼれてしまうところだ。
けれども、そうそう戯れてもいられないぐらいには、まだ、緊張が続いているのも事実。
この位置関係でディーラーが直接、なにかを仕掛けるのは難しかろうけれど、
それならばほかの誰かが、必ずなにか仕掛けてくるはずだ。
だって、己が勝った場合支払われる金額は、この規模の賭場の限界を超えている。
だから当然、もう、すんなり勝たせてもらえるとは思っていなかった。)
――――― ぃ、ッ………!
(呟き、そして、微かな魔力の気配。
何をしたのかと問うひまもなく、両脇から聞こえた野太い声とともに、
思いきり両腕を捻りあげられた。
背筋が伸びきるどころか椅子から吊るしあげられそうな勢いに、
思わず短い苦鳴を洩らしてしまったけれど―――)
―――――いや、いやいや。
ソレ、仕込んだからって…ぼく、なぁんにも得しない、んですけど。
(吊りあげられた勢いのままに振り仰いだ先、男たちが掲げているカードを認め、
ついつい、可哀想なものを見るような顔になってしまった。
己がはまるはずだった罠の正体にも、彼が施した悪戯にも気づいたけれど、
―――それにしても。)
……あのさ、おとうさま。
コレ、……ぼく、生きて帰れなくなっちゃうアレだったり……
(しないよねぇ、と笑い交じりに尋ねたが、かなり本気の問いかけでもあった。
ほかの客の目があるから、この場は無事に解放してもらえるかもしれないが、
―――――はっきり言って、帰り道が、とてもこわい。)
■ルヴィエラ > (多分―――其の瞬間、笑い声が聞こえただろう。
其れは頭の中ではなく、きっと、彼女の背後から。
店側が仕掛けた策略を、まんまとすべからく出し抜いて仕舞ったこの状況
傍から見ている側としては、もう、面白くて仕方が無い。
当然、この後勝利してしまうとなると、その金額はドウシヨウモナイ事に為るのも判って居る、が
男二人が彼女を開放して店の奥に逃げ帰り
ひとしきり、野次馬たちと同じ様に、笑い声が落ち着いてから。)
「―――ふ、ふふ…なに、其の儘勝って仕舞えば良い。
其の後で、必要な分だけを手元に貰って、残りを『寄付』してあげるんだ。
ついでに、野次馬連中に一杯でも奢ってやれば、君は伝説になるし、店も助かって皆が幸せ、だろう?」
(もう、決着はついた。
イカサマを押し付けて来た時点で勝負をひっくり返す手が無いも同然で
後は、彼らが自ら負けを認めるか否かだ。 ――だから、彼らが認めるよりも前に
今、店側が圧倒的に不利なこの状況で、此方から『手加減』を示すのだ。
理由など、楽しい勝負が出来たから、とか何とか言って置けば良いだろう
少なくともそうすれば、店は存続出来る筈なのだから――選択の余地なんて、無い筈だ。)
「もし、頭に血が上って断る様なら――其の時は、御仕置が必要だがね。
心配ない、多少恨まれるかも知れないが、一度交渉が通って仕舞えば、君には頭が上がらなくなる筈だ。」
(勿論、其の結果として得られる金額は大分控えめになるかも知れないが。
アレだけ勝ち続けた時点で、其れでも小遣い稼ぎにしては相当な額には為るし
割と致命的な面倒が増えて仕舞うより、余程マシ、だろうと)。
■リュシー > (彼のくちびるからこぼれたものを皮切りにして、薄暗い賭場が笑いに包まれる。
あるいは年端も行かぬ少女の姿をしているからこそ、よけいに野次馬たちの目には、
この顛末が痛快極まりないものに見えているのかもしれなかった。
テーブルの上に積まれているチップの額、顔面蒼白のディーラーと対戦相手の男。
そして、―――――彼のアドバイスを聞いた己は今度こそ、ふう、と肩から力を抜いて微笑む。
無理矢理引きあげられたかたちの椅子へはもう戻らず、その場にしっかりと立って、
手に残っているカードを一枚ずつ、ひらり、ひらりと野次馬たちにも翳してみせながらテーブルへ並べる。
それから、トン、と両手をテーブルの端へついて上体をわずかに乗り出し)
………そういうわけだから、悪いけど勝たせてもらうよ。
オトウサマが迎えに来てくれちゃったから、帰らないわけにもいかないし、
……ぼくの取り分は、半分―――といいたいところだけど、3割でいいや。
そのかわり、……今夜のことはお互い、気持ち良ーく忘れる、ってことで。
(3割、であってもなかなかに良い稼ぎではあるが、賭場がつぶれるほどでもない。
それで後腐れなくカタがつくのであれば、―――彼の言う通り、悪い取り引きではないだろう。
もちろん、ディーラーは頷くよりないし、対戦相手も大人しく引き下がるしかない。
震える手で差し出された己の取り分を、いっそ無造作な手つきでさらに二分し)
……伝説になりたいとか、べつに思わないけどねぇ……
(分不相応なまでに勝った小娘、として、客の記憶に残るのも、
店の関係者以外―――たとえば既に負けの込んでいる誰かに、闇討ちにあうのもごめんこうむる。
ゆえ、ふたつに分けた片方を客たちの飲み代として置き、もう片方の金子だけを携えて行くことに。)
……て、ことで、オトウサマ。
お酒の飲めない可哀想なお子様は、そろそろ、引きあげようと思うんだけど…、
(実は今夜の宿をまだ決めていない、とか、緊張が解けたら眠気が、とか、
甘えた発言の行き着く先はつまり―――)
――――――ご褒美、ねだってもいいんだよね?
(そんな、究極に甘ったれたひとことだった。)
■ルヴィエラ > (――この賭場がイカサマ付きであった、と言う事実は、少なくとも明白には為って居ない。
あくまで、彼女と、そして己だけが把握して居る事実では在るけれど
其れを公にしなかった事も、ひとつ、賭場へと与える「貸し」に他ならない。
此れで、決着が着いたことにより、店側が負けたと言う事実が代わりに刻まれ
――其処から先は、もう宴会みたいな物だ。 ギャンブラー達は大勝に浮かれ
奢りと称して取り置かれた金を勘定に数えては、大いに注文を入れ始める。
其の内に、また何時も以上の活気を取り戻して行く事になるだろうが――其れは、先の事だ。)
――――……随分と楽しんで居たようだからね、だが、もう約束の時間だ。
勿論、何よりも良い物を見せて貰ったし…頑張った我が娘には、御褒美が必要だ。
(もう、頭の中に響く声ではない。 実際に空気を震わせる音として彼女へと告げれば
野次馬の中から進み出て、おいで、と出口へ向けて誘おう。
周囲の客たちが、上機嫌で口々に、彼女へと奢られた感謝を叫んでは
先に扉を開いて、至極、平和に、賭場を立ち去る事となる筈だ。
――其の後の事は、問うまでも無い。
緊張から解放された後の外の空気は、随分と気持ち良いだろうか
其れとも、そんな感慨にふける余裕は流石に無いだろうか。
静寂の後、一寸、可笑しそうにくすくすと思い出し笑いを零しては。)
――…さて、其れでは『我が家へ』帰ろうか。
――しかし、そんなに稼いで、何か使う先でも?
(何故賭場へと入ったのか、其処までは知らぬ。
だから、改めてそんな事を聴きながら、路地裏の暗がりへと進もう
影へと、互いの姿が飲み込まれて行けば、其の声は途中で闇に消え
程無くして言葉通り、父たる己の住処へと――)。
■リュシー > (イカサマで客をカモにしようとしていた、という事実は隠蔽され、
店の損は大幅に減額された上に売上げも伸びたのだから、
すくなくとも店の側には文句がないだろう、と思いたい。
奢りの酒で存分に酔える客たちももちろんのこと―――ついでに己だって、
大ごとにならず、それなりの稼ぎを手にしたのだから満足ではある。
いっときの緊張から解き放たれた安心感からか、今宵の己は、
目の前の男の招きに応じて踏み出すことにも、さして躊躇いは感じなかった。
どころか、彼のかたわらへ取り縋るように身を寄せて、
あからさまにほっとしたような表情すらしてみせたことだろう。
店から一歩外に出れば、盛大なため息に肩を揺らしさえして)
はあ、………もう、しばらくはこのへんじゃ稼げないなぁ……。
ていうか、使う先、は、そりゃあるでしょお。
人間、自立して生きて行くにはお金が、どうしたって必要です、って……、
(自立、などと立派なことを口にするくせに、今夜は彼の厚意に甘えるつもりなのだから、
彼にしてみれば、どこまで本気なのか、と首を傾げたくなる台詞かもしれない。
しかし、これで当人は大まじめ、なのだった。
今宵は眠気が勝るゆえ、宿代の交渉もせずに彼のもとへ厄介になるだろうが、
明日の朝、目覚めればごくごく真顔で、宿泊代の相談を持ちかけるはず。
その際に重ねて問われたならば、実家から逃げ出してきた一部始終まで、
すこしばかり歯切れ悪く説明した、かもしれず――――――。)
ご案内:「王都マグメール平民地区/賭場」からリュシーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール平民地区/賭場」からルヴィエラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にマルティナさんが現れました。
■マルティナ > 王都ではありきたりな作りの酒場。冒険者ギルドの近くのためか冒険者の姿が多く見られる。
以前マルティナの出した依頼は未だに張り出してある。
つまい未だに目ぼしい応募者は現れていないということだ。
一応数人の応募はあったもののやはり内容のせいか、詳細を聞くと逃げるように立ち去ってしまう。
今日も応募のなかった事を確認すると改めて、自分の出した依頼書を眺めて見る。
――護衛依頼――
・報酬 5,000ゴルド
・募集人数 一名以上
海路でダイラスへ向かう護衛を募集しています。
ダイラス行きの船代は報酬とは別に依頼主が負担します。
報酬の支払いはダイラス到着後現地の冒険者ギルドにて。
船代の負担に帰りの代金は含まれませんのでご留意下さい。
詳しくは面接で。
依頼主 マルティナ・ラーゲルフェルト
この文面ではそもそもの応募すら少ないのは無理もあるまい。
そして実際には更に変態的な行為に付き合わせるつもりなのだ。
だがこの調子では依頼を受けて貰えるかは望み薄。
ある程度の妥協も考えつつ、張り紙の前から離れるとギルドの片隅の席に座る。
もう少しだけ待ってみよう。
■マルティナ > 今日も空振りのようである。
もう暫く依頼を置かせてもらう事にして、今日のところはギルドを引き上げる事にした。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からマルティナさんが去りました。