2018/06/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 宿酒場」にミュゼさんが現れました。
■ミュゼ > 平民地区の片隅、夜の酒場の奥の席に少女はいた。
注文したのはこぶし大の黒パンを二つと野菜のスープ、そして水で薄めた葡萄酒。全部で20ゴルドほどだ。
言葉数少なく注文を済ませると、店主が気を聞かせて持ってきた冷水をちびちびと飲みながら、給仕を待つ。
普段ならば快活に肉の皿でも頼むのだが、今の少女はどこか怯えるかのように周囲を見ては、黙々と水を飲むばかりだ。
――以前の事。とある貴族によって、平民地区の広場で凌辱を受けたあの日。理性が溶けた際に、己の素性すら口にしてしまったのがどれほど前か。
噂になってしまっているか、あるいは忘れ去られているか。そのどちらにせよ、少女に確認する術はなく、故にこそこそと、隠れるような生活をしている。
解放されてから宿屋にたどり着き、荷物を纏めて別の宿へ。件の広場からは離れた場所で、まるで罪人が逃げ隠れるかのように息を殺している。
冒険に出ようか、とも思うのだが、いまいちそんな気分になれない。沈んだ心を鉛の様に感じながら、ほんのりレモンの香りがする水を、又一口飲み進める。
■ミュゼ > ひたすら犯され続ける日々を送ったせいか、こうして座っているだけでも、何となく体が熱っぽく、下腹部はじんと疼きをあげる。
それはまるで、体が発情する癖を覚えてしまったかのように。気を緩めれば手が股座に伸びてしまいそうな、理性を揺さぶる程の欲求が体内で渦巻いている。
恐らく、このまま数日――或いは一月ほどを過ごせば、この癖も次第に薄れて抜けていくのだろう。しかし、今はじっとりと汗が浮かぶほどに、辛い。
「……く、ふぅ。負けちゃダメ、だよ、ボク……」
独り言を言い聞かせる様に呟くと、目の前の水に手を伸ばす。今は冷たい物が少しでもあれば嬉しい。
又一口含めば清涼感溢れる液体が広がり、火照った体内を冷やしながら胃の腑へと流れ落ちていく。それは中々快感だ。
店は中々の込み具合で、料理がやってくるのももう少しばかりかかる様子。食べ終われば自室に籠れるのに、と内心独り言ちながら、待つ時間は長い。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 宿酒場」にブレイドさんが現れました。
■ブレイド > 「ふえー、あっちぃなぁ……えっと、おっさん、レモン水
あと白パンと…なんかサラダくれー」
酒場に足を踏み入れるなり店主に注文をする。
客の入りはまぁそこそこの店内。
なかなか空いている席というのも見当たらないもので、適当に奥の席へと。
ちょうど一人で座っている少女がいるが…まぁ、気にはしない。
どかっと座って荷物を置く。
手の甲で額の汗を拭いつつ、すぐに出てきたレモン水を一気飲み。
■ミュゼ > 賑やかな店内は、酒飲みたちの喧騒に満ちている。満席とはいかないまでも、入り口から身近な場所は軒並み埋まっている。
そんな中にやってくる何者か――フードをかぶったままの彼は、入ってくるなり注文をすると、そのままこちらに向かってくる。
奥の席はこじんまりとした二人掛けがいくつかに、カウンターの端っこが数席。その中で、二人掛けの奥の席が少女の居場所だ。
つい、と視線を向ければ、彼はそのまま、少女の近くに腰かける。真正面でないことに、少しだけほっとして。
彼が自分の事を知らなければいい、と思いつつ、もう一口レモン水を含む。かろん、と氷の音がして、器の中身が空だと告げて。
「……すみません、お水を、もう一杯」
そっと手を挙げると、近寄ってきた給仕に小さな声で告げる。その声が、彼にとって聞き覚えがあるかはわからない。
もし仮にあったとしても、それは過日の広場で凌辱劇に立ち会ったか、或いはそれよりも前に別の宿屋で聞いたかだろう。
■ブレイド > 「ん?」
少女の声に顔をそちらに向ける。聞き覚えはない声ではあるが…
どこか調子の悪そうな声というか、か細い声というか。
じっとりと汗を浮かべ、やや苦しそうに見える。
「おい、アンタ…大丈夫か?調子悪そうだけどよ。まぁ、アチィからな…」
少し心配そうな顔を向けつつ、給仕のもってきた白パンをかじる。
彼女の様子に関しては『具合が悪そう』程度の認識ですんでいるようだ。
■ミュゼ > 彼の視線がこちらを向く。視線が合うだけで、少女の心臓は早鐘の様に加速する。
彼が自分を知っていたら――自分の痴態を知っていたらどうしよう。そんな途方もない不安が心を満たす。
自然と荒くなる息。はっ、はっ、と過呼吸気味の浅い呼吸を繰り返しながら、少女はついと視線をそらした。
「だ、大丈夫、平気。だから、その、うん、心配してくれて、ありがと」
懸命に言葉を紡ぐと、視線を落とす。給仕が水を持ってやってきたなら、それを半ばひったくる様に受け取って、ぐぅっと半分ほど一気に飲み干した。
そのお陰か、呼吸はわずかに和らいで、緊張も少しばかり落ち着いて。しかしそれでも、近くに男性がいるというだけで、今の少女には普段で。
そんな様子も、彼からすれば具合が悪いのを無理してこの場に居るかのように、見えるのだろう。善意で触れてくるのが、少女としても心苦しかった。
■ブレイド > 少女の様子に首を傾げる。視線があったそれだけで、何かに怯えていたような。
暑いにしたって、息が荒くなるほどでもない。
明らかにおかしい。無理をしているようにしか見えない。
「平気じゃねーだろ…なんか薬とか切れてんのか?
やべー薬でもやばくねー薬でも…なんかやってんなら無理すんなよ」
水を半ばほど一気飲み。その体調で冷たい水をそんな調子で飲んで大丈夫だろうか?
「ここ、宿もついてたよな?ちょっと休ませてもらったほうがいいぜ?
酒場でぶっ倒れても困るだろ…つか、ほんとに大丈夫か?」
流石に心配になって席を立ち歩み寄る。
眉を寄せて、少女の顔を覗き込めば、金色の瞳で心配そうに少女を見る。
■ミュゼ > 「そ、そういうのじゃないから、病気じゃないから、平気、だよ?」
彼の言葉に首を横に振ると、少女はただ水を飲み続けて、二杯目もすぐに空にして。
それでもなお、緊張と不安により発汗は続く。冷や汗、と言うのが妥当だろうか。
自分にとって、男性と言う存在が思った以上にトラウマになっていることに気が付いた少女は、そっと席を立とうとして。
「あの、その、し、しつれ――ひぅっ!?」
それはタイミングが悪かった、と言うのが適切だろうか。
少女が立ち上がったのは、丁度彼が歩み寄ってきた所で。
立ち上がった時に初めて、彼我の距離が詰まっていることに気が付いて、そして。
ずきん、と緊張しすぎて急加速した心臓が悲鳴を上げ、一瞬さぁっと血の気が引いて。
「――あ、ぅ……?」
ふらり、とたたらを踏んだ少女は、そのまま床にへたり込んでしまう。
立とうとしても体に力が入らない状態――今ならば、部屋に連れ込む事も余裕だろう。
■ブレイド > 「でも、尋常じゃねーっつーか…え…?」
少女はその場でへたりこんだ。
立ち上がろうとして躓いた…とかではない。
力が入らず崩れ落ちたように座り込んでしまったようだ。
尋常じゃない。
「っ…えーと、おっさん。部屋あいてるか?
ちょっと、休める部屋。この子、調子わりーみてーだから…
金はオレが払うから!」
少女は立とうとしても立てない様子。
薬切れとか病気とかじゃないとはいってるものの正常でないことは間違いない。
彼女を抱きかかえるように持ち上げ、店主から部屋を借りて連れて行くだろう。
激しく抵抗しなければだが。
■ミュゼ > 目の前の彼は、過日の凌辱者達の様に無体を働くことはないだろう。
こうして助けようと動いてくれるのだから、悪い人じゃない――そんな気がする。
だがそれでも、体に染みついた恐怖心は拭い去れないもので、抵抗はしないが動けない状態だった。
彼が店主に尋ねたならば、店主は素直に部屋を貸してくれることだろう。少女としても、ここに部屋を借りるつもりだったからありがたい。
そして、そのまま彼に抱き上げられるようにして、少女は上階の部屋に運ばれる。店主が気を聞かせたのか、化粧室のすぐ隣の部屋だ。
「……あ、の、えと……あり、が、と。その……力、抜けちゃった」
彼に余計な心配をかけない様に、そして同時に余計な詮索をされない様に、少女は真っ青な顔を笑みに変える。
その体はカタカタと小刻みに震えている。恐怖からくる震えか、それとも火照った体が寒気を感じたからか。それは少女にもわからなかった。
■ブレイド > 「おう、ありがとよ。お代は出るときに払うから…えっと、水。
水だけもってかせてくれ」
少女を抱えたまま片手に水差しを受け取る。
恐怖を覚えているとは思わないままに運ぶ彼女。小さく震え顔色も悪い。
病気ではないと言ったが…
部屋のドアを給仕に開けてもらえばそのまま中へ、給仕は鍵を渡しドアを締めて去っていく。
彼女に礼を言いながら、少女をベッドに横たえて
「礼なんていいって…とにかく、大丈夫かよ?」
■ミュゼ > こうして運び込まれた部屋の中、少女はベッドの上に下ろされると、何度か深呼吸を繰り返す。
その内に少しずつ落ち着いてきて、ほんのりと血のめぐりが良くなった。僅かに頬に血色が差す。
こほん、と咳を零した後、漸くまともに話せる状態になった様子で、そっと彼に視線を向けると。
「……ん、平気。ちょっと、その……えー、と、気を悪くしないで、欲しいんだけど……」
少しだけ逡巡するが、ここまでしてもらった相手に不義理にするのは貴族として許しがたい。
故に、少女はもう一度、深呼吸と共に覚悟を決めると。
「お、男の人、怖くなっちゃって……だから、その、君にも、怯えちゃった。ごめん、ね?」
ペコリ、と一つ頭を下げて、先の非礼を詫びる。それだけで、少しばかり恐怖が和らいだ気がした。
■ブレイド > 「ああ、そういうことか…」
男が怖い。この街であそこまでのトラウマを男に持つ。
なんとなく想像できることから苦々しい顔。だがすぐにこちらも頭を上げる
「わりぃ、オレもそんなこと知らなくてよ。近づいたり抱き上げたり…
怖かったろ?水差し、置いとくから…えーと、部屋、出たほうがいいか?」
密室で一緒にいるだけでもおそらく彼女にはものすごい圧迫感と恐怖を与えそうで。
自分にその気はもちろんない。彼女がそれを望むのならばすぐにでも出ていくだろう。
「ま、気にすんな。今回はオレのおせっかいみたいなもんだし
事情を知らねーオレのせいだ。ゆっくり休んどけって」
■ミュゼ > 「ん、でも……助かったよ。もし君じゃない、誰かの前だったら……想像したく、ないかも」
助けてくれたのが彼だったから良かったものの、下心ある男だったら今頃はベッドの上で、服を脱がされていただろう。
或いは服を脱ぐよりも前に、体を嬲られていたかもしれない。だから、彼のお陰で確実に少女は助かっていた。
そんな中、恩人が自ら部屋を出て行こうとするものだから、少女はあわあわとそれを引き留めることになる。
「あ、あの、えっと、ま、待って!その、こ、怖い、けど、君は、平気。出てかなくても、大丈夫。
まだ怖いけど、君が相手なら、ちょっとだけ、落ち着くし、もすこし、怖くなくなるかも、だし」
段々何を言っているのか自分でもわからなくなるが、彼に出て行ってほしくないのだけは確かで。
恐怖もあるし圧迫感もある。だがそれとは別に、助けてくれた彼と向き合いたい思いもあるのだ。
だから少女は部屋の中を見回して、近くの兄弟に据え付けられた椅子を見つけると、そっと指差し。
「……その、少しだけでいいから、付き合って、くれる?え、と、いてくれるだけで、いいから」
それは、少女が男性に慣れる為の一歩。彼と言う、理解してくれる相手だから頼めること。
せめて、今みたいにガタガタと震えることなく、恐怖を隠して振舞えるようにしたい。そうでなければ、雛鳥も同然だ。
だから、彼と少しだけ、長く過ごすことにしてみる。ちょっとでも、状況に慣れる為に。
■ブレイド > 「はは、まぁ…変なことになんなくてよかったぜ。んじゃ……」
と、立ち上がろうとすれば、慌てたように引き止められる。
少し不思議そうに振り返って、再び首を傾げることに。
与えられた恐怖とか、そんな簡単に拭えるものではないはずだ。
「そうか?無理はすんなよ?まだガキだけど、男にゃ変わりねぇ。
怖くてもうダメだって思ったらすぐに言えよ?すぐ出ていくからさ」
ここで無理にでもでていったら、彼女の勇気をムダにすることになるし
恐怖でひとり震えることになるだろう。そんな状況はきっとヤダ。
そして、彼女が恩を感じているなら、後悔もかさなっていくだろう。
だから、少しはなれたところ…設えられた椅子に座る。
距離があれば少しは大丈夫だろう。
「ああ、オレは構わねーぜ?なんかあったら言ってくれよな。
腹減ったとか、水飲みたいとかさ」
水差しをベッドの脇において、また椅子へと戻る。