2018/06/03 のログ
■イグナス > 今日もたっぷりと飯を食って、さあ、仕事の時間だ――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にソウレンさんが現れました。
■ソウレン > ようやっと夜も深まる初夏。
かたりと音を立てて引き戸の前に暖簾を出す。
幽世と書かれてはいるもののそれを読んで入ってきたものはいない。
ぶっちゃけ入りたいとは思わないかもしれないセンス。
しかし着流しの女はそれほど気にせず店の中に戻っていけば、
堂々とカウンター席の一つを陣取る。
そのままくぁぁ、と小さくあくびをすればきしりと背もたれに背を預けた。
今日も暇かな、と考えながら調理場を見る。
仕込みは程ほどに住んでいるし、水なども補充した。
いつでも客を迎える事はできるのだが………さて?
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
■セイン=ディバン > 「……あれ?」
帰宅途中の男が、一軒のお店の前で立ち止まる。
なんとも奇抜というか。見慣れない雰囲気漂わせている店だ。
「こんな所に、こんな店あったか?」
男はうむむ? と首をかしげながらも。
興味惹かれ、思わずその店の中に入ってしまっていた。
「……ちゃ~っす……やってる~?」
恐る恐る、声をかける男。身なりこそそれなりに上等だが。
何かしら、不安を感じているのか。ちょっと及び腰だ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にダグラスさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からダグラスさんが去りました。
■ソウレン > からり、という音と共に軽そうな男が入ってきた。
執事のような恰好だな、と考えつつ席から重い腰を上げる。
「やっているよ。いらっしゃい、好きな席にどうぞ。」
女性ながら少し低いダウナーな声が男を迎える。
カウンター内の調理場に急ぐこともなくゆっくり足を向けながら、
傍らに置いておいた白い紐状のものを手に取る。
しゅるしゅると手早くたすき掛けにしながら、男を見る。
支払いがないという事もないだろう。
そう考えれば、清潔な手拭を一枚。冷えた清水にさらしてから固く絞って男のへ出してやる。
「手を拭くといい。……注文はあるかな?」
カウンターに置かれた黒板にはいくつかのメニューが手書きで書かれている。
…しかし、王都ではあまり見かけない料理の名前がずらり。
■セイン=ディバン > 「あ……ど~も」
覗き込みながら入店すれば、店員らしき女性が居たので驚く男。
いや、店である以上店員は居るのが当然なので、驚く方がおかしいのだが。
さて、勝手の分からぬ店でどうしたものか、と男は思案するが。手拭を差し出されれば、頭を下げそれを受け取る。
「あぁ、ありがとう。……そう、だなぁ。
……こりゃあ、東の料理や酒か。名前は知ってはいるが……」
どんなものか、までは分からないぞ。と困り顔。
手をふきふきしつつ、男は考え。
「そうだなぁ。おすすめというか。
最近ホラ、暑いだろ? なにか、涼を取れるようなメニューはないかな?」
下手な注文をするよりは、いっそこの店員さんにおまかせしよう、と。
男はそう考え、相手に質問をした。
■ソウレン > 注文を聞いた身ではあるが、男の答えはある程度想像したものだった。
というより、料理がわからずおすすめを、という対応はこの店ではよくある。
そういうわけなので、女はそれほど間を置かずに、
「わかった。少し待っているといい。」
調理場の端の方へ行けば、冷えた井戸水に晒していた酒瓶を手に取る。
それなりに強い米の酒ではあるが、まぁ大丈夫だろう。
そう思いながらお銚子に注ぐ。それにお猪口を添えて盆に。
別の水につけてあった白い塊を手に取り、5cm角ほどにカットすれば小鉢に入れ、薬味を添える。
別の小瓶に醤油を入れて豆腐と合わせて盆にのせて、男の前へ。
「ひとまずこれから。冷えた酒と、冷奴。
酒は冷やしてあるがそれなりに強い。飲めそうにないなら言ってくれ。
その豆腐…白い塊には薬味とそのタレをかけるといい。かけすぎ注意だ。」
そう言いながら、調理場でごそりごそりと次のものを取り出していく。
■セイン=ディバン > いきなり入店した挙句、メニューから商品読み取れずおすすめで、と頼む男。
内心ちょっと自己嫌悪しつつも、どんな物が出てくるのだろう、とワクワクもしている。
「はぁ、えっと。よろしく」
とはいえ、どんな物が出てくるのか不安も無いではない。
男は女性の動きを目で追うが。取り出された物は……。
これまた、本で見たことがある程度の知識しかない物体で。
「これは、オチョーシと、オチョコ、だな?
……ヒヤヤ、コ? 知らないが……ふむ。だが、なんだろう。
見てるだけで涼しげだ……じゃあ、いただきます」
かろうじて猪口と銚子くらいは知っている男。なれぬ手つきで酒を注ぎ、ぐいっ、と一気に飲む。
瞬間、咽そうになるがそれを殺し。次はちびり、と。
目を見開き、微笑めば次は冷奴に手を出す。
薬味と醤油をかける。かけすぎ注意のアドバイスに従い慎重に。
ぱくり、と一口食せば。これまた目を見開き。
「……~~~~っっ! うん、めぇえぇぇ……」
初めての味。その、素朴ながらどこか深みを感じる味に、搾り出すように言う男。
どうやら気に入ったよう、ぱくぱくくぴくぴと、リズム良く食している。
■ソウレン > 手元でさくさくという小気味良い音。
菜切り包丁で切られたのは、ウリ科の植物…のようにも見えるだろう。
「なんだ、豆腐が気に入ったのか。王都の人間にしては珍しいな。
豆腐だけでは物足りないだろう。これも前菜代わりにつまむといい。」
そう言いながら出されるもの。有り体に言えば浅漬けである。
女としては程よい塩加減のつもり。酒のつまみにはいいだろうと。
これは味がついている、といいながら皿を置いてさてと考える。
「…酒の味も気に入ってもらえたようだな。強い酒は好みかな?」
少し垂れた目尻が男を見て、かすかに笑みの感情を浮かべる。
考えながら、薄い布につつまれたものをとりだした。
開けばそこには〆られた魚。生で食べるにも鮮度的には問題はないが…。
………。
まぁ、いいか。そう思いながら手元で下ろしにかかった。
ごり、という骨を断つ音や、ぷつぷつと言った身を外す音が静かな店内に響く。
■セイン=ディバン > 女性の言葉通り。冷たい酒なのにかなり強い酒。その複雑な味わいは未経験であり、非常に興味深い美味しさ。
更に冷奴は食感も冷たさも見事であり。近頃の暑さを忘れさせてくれる物であった。
「あぁ、これがトーフ、か。いや、旨いな。
なんというか、飾らないってのが、いい」
素朴だからこその旨みがハマったのか。男はぱくぱくと冷奴を食していたが。
続いて出された物には、首を傾げる。なんだろうこれは。
味が付いてるということだし。とりあえず食べてみようか、と。
ぱくり、と頬張れば。
「……っ!? こりゃあ、東の国のピクルスか!?
また……食感が……! うん、っまっ!
あ、えぇ? あぁその、まぁ。強い酒は好きだ。
でも、こんなに繊細な味の酒は飲んだことが無い」
相手の言葉に、ようやっと正気を取り戻し。男はそう返答する。
浅漬けの歯ごたえ。その音もまた心地よい。ぽりぽりと食しながら、相手の微笑みに晒されれば。
少しはしゃぎすぎたか、と。赤面しつつ、食事のペースを落とす。
目の前で調理している女性の姿は、控えめに言っても美しかった。
今度は何が出てくるのだ、と。覗き込みたい衝動を押さえ込み、酒を飲む。
出てくるその瞬間まで、ワクワクしたいという欲求を選択した模様。
■ソウレン > 食事に喜ぶ姿というのはいい。
作る方としては嬉しいものなのだ。
「ふふ。仕込むのにもそれなりに手間がかかる。
だが、私も豆腐は好きだな。…寒い時期には温めて食べる事もできる。」
会話を続けながらも手元は動いている。
びいい、という音。魚の皮を引けばまな板を洗い、次に冷えた水と氷を用意する。
氷は多少溶けかけていたが、まだまだ使えるだろう。
包丁の柄で細かく砕いて氷水を作る。
「あぁ、その通りだ。ピクルスも食感を楽しめるが、
こちらの浅漬けの方が歯ざわりは強いかもしれないな。
作り方にもよるのだろうが…どちらも酒のつまみには悪くない。」
男性の言葉に返事をしつつ。
時折顔を上げれば、少し顔を赤くした男と目が合った。思わずふふっと笑いかけてから、調理を続ける。
柵取りした魚を、薄くカットして氷水へ放り込む。
しばしそうしていれば、白く縮んだ魚の身を取り出し、水気を取ってから鉢に入れた氷の上に盛る。
「魚の洗いだ。…この国では魚の生食は主流ではないだろうが…まぁ、腹を下したりはしない。
これがタレになる。…これも魚の触感と涼を楽しむものだな。」
男の前に鉢を差し出し、続けて小皿に黄土色のタレ…酢味噌を入れて差し出す。
「酒は足りているかい?」
■セイン=ディバン > 「そう、らしいな。……う~ん。このぷるぷるが、ねぇ。
温める? そりゃあ、どんな食い方なんだ?」
ぷるぷる震える豆腐を見ながら、この食物にすごく手間がかかっているということを信じられない様子。
温めるとは? と考えるが。まさか、焼くのか? と想像してみる。
耳に飛び込む音。何をしているのかは皆目見当が付かないが、それがむしろ楽しい。
「アサズケ、と言うのか……。いや、これは旨いよ。
強い食感が、食べてるー! って気がする」
ぽりぽりと浅漬けを堪能しつつ、相手と目が合えば、笑われてしまい。
またそれが男を赤面させる。だがしかし、旨いものを食べてテンションが上がるのはある意味人間の本能。
こればかりはどうしようもないのだ。そして、次の料理が出てくれば。
「……アラ、イ? ……おぉ、つまりあれか!?
噂に聞いたことがある、オサシミの一種ってことか!?」
目の前に現れた魚とタレに、男は目を輝かせる。生食文化がまだ根付いていないこの国において、魚の生食はわりと高級で、贅沢品でもある。
男は、そのタレに魚をちょんちょん、と付け……一気に食す。
「ふおぉっ!? な、なんじゃこりゃあ!?
んが、っくっ、店員さん、酒、お代わりだ!」
初めての衝撃。タレだなんて聞いたから、こってり味を想像していたのに。
一口食した瞬間、口の中に涼やかな風を感じ、男は仰け反る。
思わず酒を注文しつつ、がっつくように洗いを食べる食べる。
■ソウレン > 「焼いた豆腐は煮物に良い。
揚げる事もできるし、出汁を張った鍋でゆでるようにしてもいい。
そうだな…他にも白和えと言って潰した豆腐を混ぜたサラダのような食べ方もある。」
意外と使い道は多いんだ、と微笑む。
笑いながら、使ったまな板や包丁をせっせと洗っていく。
魚の匂いなどが移ってしまえば作業に差し支える。
「パンにピクルスが合うように、浅漬けは米に合う。東方の文化だな。
…そんなにがっつくとすぐになくなってしまうぞ。ほら、お替りだ。」
新たな冷酒を入れたお銚子を差し出し、空いたお銚子をその手で下げる。
子供のような食べっぷりがほほえましいな、と内心でくすくすしている。
さて、と思いながら小鍋に出汁を張って火にかける。
手慰みのように小さくカットした具材を入れてから、しばし温めていく。
「お刺身は知っているのだな。あぁ、それに近い。
生の魚は出すだけで嫌がる人もいるが、君は大丈夫そうだという勘が働いてな。」
一見には人を見てから出すという。
氷水で〆ずそのまま食べるのをお刺身というんだよ、と一つ知識を。
会話を続けながら、手元で白いものを転がす。
それを網に乗せてから、小鍋を火からおろして網を乗せる。
パチパチ、という音と共に香ばしい匂いが漂う。
「あまり飲みすぎないようにな。へべれけになっても送る脚はないぞ。」
■セイン=ディバン > 「はぁ~……奥深いんだな、トーフ。
揚げ!? 鍋!? さ、サラダぁ!?
もう、なんでもありだな……」
豆腐の多様性に驚く男。そのまま、相手が片づけをする姿を見れば。
なにか、言葉にしがたい魅力と色気があって。男は、言葉を失ってしまった。
「なるほど。そういうことか……。
んぐ、す、すまない。あまりにも美味しかったから……」
相手の説明に、また一つ学べた、と嬉しそうに笑いながら。
また笑われてしまい、なんとも。恥ずかしさが増していくばかり。
相手がまた何かを始めれば、わざとそこから視線を外し。
期待を高めていく。
「食べたことは一、二回くらいしかないんだけどな。
そりゃあまぁ、冒険者なんて、ロクに調理できない状況で食材を食える状態にしないといけない、なんて状況は日常茶飯。
生だろうと、食えて。そんで旨ければバンバンザイだろ?」
もぐもぐ、と洗いの味を堪能しつつ、相手の説明に。
いよいよ子供みたいに、ほへー、なんて驚嘆の声。
なにやら耳に飛び込むは小気味いい音。鼻にも実に香ばしい匂い。
「ははは、そうならないように努めるよ。
アナタみたいな美人に、酔いどれた姿なんて見せたくないしな」
相手の忠告を素直に受け止めつつ笑う男だが。
酔っ払った姿よりも恥ずかしいリアクションなんかをもうたっぷり見られてるのはどうやら失念しているようだ。
■ソウレン > 「また日を改めた時には別の調理を出そう。
楽しみにしてくれると嬉しいな。」
洗ったまな板や包丁は綺麗に拭かれてまた調理台へ。
手を綺麗にすれば、火から下ろした鍋をゆっくりとかきまわす。
「謝るような事じゃない。
…まぁ、美味しい物を急ぎたくなる気持ちはわかるけれどね。」
そして香ばしい匂いにまた一つ、こんがりいい具合に焦げる匂いが加わり…。
鍋から椀によそったもの。焼いたもの。その二つを男の前に出す。
「焼いたおにぎり…こっちではライスボールだったな。
それとみそ汁。男性はお腹の具合が物足りないだろう?」
醤油の焦げる香ばしい匂いと、出汁と味噌の優しい匂い。
みそ汁には先ほどの豆腐と、ネギに似た野菜が浮いている。
これはオマケだ、と浅漬けを少々小皿に入れて。
「なるほど。君は冒険者か。それならよくわかる。
似たような事は私もしているからね。
なるべくなら火くらいは用意したい所だけど、我慢する時は確かにある。」
相手の言葉を肯定しつつ、鍋と網をさらさらと洗い始める。、
洗ったものをきゅっこきゅっこと布で拭きながら、笑う。
「一見の客には酒を飲む事に必死でつぶれる人も少なくないよ。
そう言ってくれれば、私も助かるな。」
美人と言われたこともさらりと受け流し、相手の了見を素直に褒める。
尤も、細腕のくせに腕力自体はある。
少々良心が痛むが店前に放り出すくらいは何でもないわけだが…そこまでは語る事はなかった。
■セイン=ディバン > 「そりゃあ楽しみだ。ついつい通い詰めてしまいそうだな」
相手の言葉に、喜色満面の笑顔を見せる男。
この店に入ったときから、男はどこか、幼少期に戻ったような振る舞いをしている。
「いや、お恥ずかしい……。
でも、本当にどれもこれも美味しいよ。驚くほどだ」
相手の言葉を聞けば、頭を掻きつつ恥じ入る男。
率直な感想を口にしつつ、更に料理を出されれば、食いつくように前かがみになり。
「おぉ、ライスボールとみそ汁か!
これはオレも何度も食べたことがあるぜ!」
出てきた料理に、これはなじみがある、と言いながら。
しかし目の前のおにぎりはいわゆる焼きおにぎり。男の脳にはそんなものの情報は無いが。
相手の料理の腕を信頼し、何も聞かずに食べる。瞬間。
「はち、はちちっ! あぁ、あっついけど、旨い……。
これ、すごいな……んっ……みそ汁も、沁みる……」
その初体験の焼きおにぎりの、香ばしく、表面のおこげのカリカリ感と、ふっくらとした中の旨み。
味噌汁は酒の入った体を包み込む温かさであり、野菜の甘さが際立つ。
浅漬けを食せば、なるほど。相手の言葉どおり。米とベストマッチであった。
「ん、はむっ。そうなのか……。
意外だな。店員さん、なんだか淑やかな印象があるから」
まさかの発言に、ふへぇ、と息を吐く男。
相手が冒険みたいなことをする絵面を想像するが、なんだかイメージが湧かなかった。
「まぁ、酒はほどほどが一番、てな。
……はふぅ。旨かった……最近の食事の中ではトップレベルのメシだ……。
あぁ、ご馳走様。本当に、『ご馳走様』だ。
じゃあ、お会計頼もうかな……えっと、あと。
名前を、教えて欲しい。優れた料理人のアナタの名前を」
相手の物言いが、実に慣れたものだったから。
この人、もしかして見た目より大人なんじゃないか? と考える男。
そのまま、完食し、腹を擦れば。改めて相手に頭を下げ、礼を示す。
代金を聞くついで、名前を聞いたのは。男にしては珍しく下心も無く。
■ソウレン > 「あまり広くない店だが、友人の一人でも連れて来てくれ。
多少ならサービスするよ。
料理を喜んでくれる人に出す分にはこちらも張り切りたくなるからね。」
おにぎりとみそ汁を頬張る男は確かに、見た目の年齢の割に若く見える。
子供心を忘れないというのは大事な事でもなるな、と少し考えた。
「おにぎりとみそ汁はそれなりに知れ渡っているのか。
こうやって酒の後に食べるのも乙なものだろう?」
返事は無くても表情を見ればわかる。
楽しんで食べる姿に、自分も少しゆったりとした空気を纏う。
料理はこれで終わり、らしい。
少し質の良い定食くらいの量。満足した様子に何よりと思う。
「少し材料を獲りにいったりね。
それに、東から渡って来た身だからね。それなりに腕に覚えがあるという所かな。」
多分似合わないという事なのだろうが。
しかし着流しでひと狩りというわけでもない。
それなりに空気を読んだ服装で出かける事もある。
「代金か…そうだな、このくらいで。」
そう言って要求する代金はちょっと良い定食に酒がついたくらいのお値段。
あまり商売っ気がないと感じるかもしれない。
「優れた料理人かはわからないが…ソウレン、とでも呼んでくれ。
君の名前を聞いておいてもいいかな? 次に来た時には覚えておくようにしよう。」
ふっと、微笑みかけながら。
■セイン=ディバン > 「あぁ、わかった。とはいえ……。
正直、これだけのレベルのお店は独り占めしたいくらいだぜ」
相手の言葉を受け入れるも、こういった名店をあまり広めたくないとも思う。
複雑な心境、というやつであった。
「あぁ、さすがにこの二つはメジャーだよ。
う~ん。確かに。酒の後のオニギリと味噌汁ってのは……合うんだな」
旨い旨い、と繰り返しながら言う男。酒を飲んだ後におにぎりや味噌汁が、いわゆる締めとして旨さを増すのは初めて知ったようだ。
「あぁ、なるほどそういうことか。
……へぇ。それはそれは」
自分で材料を取りに行くのか、と。これまた驚く男。
とはいえ、一流の料理人ならそういうところにもこだわりがあるのかもしれない。
だったら納得だ、と。男は内心で頷く。
「うん? ずいぶんと、安くないか?
いや、まぁ。それがお値段なら、オレからは何も言わないけど」
相手の提示した金額は、満足度に比べるとだいぶ安価だ。
だが、男はあまり尋ねると野暮か、と思い。
懐から、代金ぴったりの金貨を取り出し払う。
「ソウレンさん、か。やっぱり異国の名前は、不思議だし綺麗だな。
あぁ、オレはセイン=ディバン。しがない冒険者だ。
贔屓にするから、これからもよろしくな、ソウレンさん」
相手の微笑みに、男も微笑み返し、自己紹介をする。
男にしてみれば、突然お気に入りの店が増えたというラッキーな夜であった。
■ソウレン > 「はは、嬉しい事を言うね。
それならそこは君に任せるよ。」
客の行動まで縛るのは本意ではない。
まぁ、相手も冒険者のようだ。
誰かと一緒に来る事も、一人で来る事もどちらでもある事だろう。
「ほとんど道楽に近いからね。
日銭が少し稼げれば私としては満足なんだ。」
料理をしているにしては細く綺麗な指が金子を摘まむ。
滑らかな白い肌がほんの少しだけ男の手に触れた。
「あぁ…また来てくれると嬉しい。
ありがとうございました。またのお越しを。」
そう言ってから、自分から引き戸をからりと開け、どうぞ、と手で指し示す。
夜風になってから、だいぶ涼しくなってきた。酔いを心地よく冷ましてくれるだろう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からソウレンさんが去りました。