2018/04/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にジルヴァラさんが現れました。
ジルヴァラ > 石畳を踏み荒らすように大股で路地を往く男は、先刻まで顔を合わせていた役人のことを思い出し怒気をあらわにしていた。

賊という忌むべき存在でありながら堂々と暮らせているのは王国と契約を交わしているからに違いないが、与えられた自由にはどうしたって責任がつきまとう。
海賊団が得た財宝のうち、決まった割合を納めることになっているが、そんなもの馬鹿正直に申告するはずがなく、役人とて手を付けずに上納するわけもない。
これまで利害の一致から賄賂を渡すことで見過されてきたが、今日はさらに別の役人が現れ、揃って今まで以上の額を要求してきた――というのが事の顛末だ。

(欲に駆られててめえらの立場を追いやったことに気づいてねえらしい。
 頭の悪い狸共め……)

行き場のない不満が舌打ちに変わる。
このままアジトへ帰るには、この怒りをどこかに置き去りにせねばならない。
一杯引っ掛けるか、捌け口に女でも買うか――そう考えを巡らせながら男は路地を進んだ。

ジルヴァラ > 歩くたび長い銀髪が揺れ、頬に当たるのさえ鬱陶しい。
こんな日は遠い海での気ままな暮らしが恋しくなるが、こうした王国の歪みこそが自分たちのような流れ者に居場所を与えてくれるのも確かだった。
これまで頭領である自身だけでなく、部下たちの行いをいくつ免罪してもらったかわからない。

「面倒くせえな……」

自由を気取っていたものの、思えばすっかりしがらみの中にいるらしい。
冷たい夜風がわずかに苛立ちを鎮めてくれたが、その足が真っすぐアジトへ向かうことはなかった。
こんな無様な姿を部下に見せるわけにはいかない。
日暮れと共に賑わい始めた歓楽街の路地裏で、男は一旦立ち止まると壁面に背を預けた。
ポケットに忍ばせていた葉巻を取り出し、小さなナイフで吸い口を切ってからマッチを擦る。
平静を取り戻すべく、闇の中でしばらく紫煙をくゆらせるつもりで。

ジルヴァラ > しばらく口寂しさを紛らわせると、男はその場を後にした。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジルヴァラさんが去りました。