2018/03/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にフラニエータさんが現れました。
フラニエータ > 平民地区の脇道。2~3人が横に並べば道を塞げる、そんな狭い道に点在する小さな店々。
狭いながらも個性豊かな店が出ている所為か、ぱらぱらと人通りが窺える。
その道をフードを被り、ゆっくりと歩いている女。
点在する店に目を取られていたのか、
その女は前方から歩いてくる男とすれ違う時に、どん、と強く肩をぶつけてしまう。ゆら、と揺れる二人の体。

「ごめんなさい、大丈夫かしら…お怪我はありませんか?」

直前にした舌打ちを淑女の声色で覆い、さも心配そうな声で男に接する女。
「いえいえ、そちらこそ大丈夫ですか?」
お互い何度か頭を下げながら何事も無く歩き去って行く…。

そこで女は気付く。己の財布を掏られている事を。

フラニエータ > 女は立ち止まり、振り返り、先程ぶつかった男を捜す。が、当然ながら見つかる筈も無い。
さて、ここでおさらいだが女の職業は盗賊だ。
己の財布を掏り取られる女盗賊は、同業者に顔向けが出来ないだろう。
変な二つ名を拝領するのは間違いない。
そんな状態なのに、女はずっと、男の去って行ったであろう方向をじっと眺めていた。
いつもの女なら、ヒステリーを起こして当たり前の状況で、だ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にフィル=クォーレンスさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からフィル=クォーレンスさんが去りました。
フラニエータ > この所お仕事がイレギュラー続きで気が触れたか、細い道のど真ん中で呆然と立ちすくむ女。
女を避けながら通り過ぎて行く人、人、人。それでも女は動かない。
この状況を哀れに思ったスリが、返しに来てくれるなんて状況はまず、無い。
と、ここで見知らぬ優男が、女に声をかけた。大丈夫ですか?どうかしましたか?と。
女はにっこりと微笑んで、

「あら、お気になさらず。気にかけて頂けて嬉しいわ…」

女はその言葉を優男に残すと、財布はあきらめたのか踵を返して道を歩いていく。

フラニエータ > と、そこで女の背中、女の財布を掏りとった男の方から大声がする。
そちらの方向に人だかりが出来る程のその声は、怒りに満ちた、それでいて悔しそうな声だった。
その声が届いた女は、ニヤリ、と口端を歪ませて笑う。

「この声が聞きたかったのよねぇ…ククク…さぁて、何を飲もうかしらね…」

ほくそ笑む女の手には財布が一つ。しかしこれは女の持ち物ではない。
女はその財布を懐へしまうと、お気に入りの酒場へと足を向けた。

女の財布には金銭は入っておらず、代わりに一枚のメモ紙が入れられていた。

そこには
「貴方の財布は大丈夫かしら?」
と書かれている。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からフラニエータさんが去りました。