2017/09/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイグナスさんが現れました。
■イグナス > 「……あづー……。」
うめき声。もう残暑もだいぶ控えめになり始めたころ。
夜ともなれば、涼しい――朝方は寒かったりすることもある。そんな時期だ。
夕暮れ時――噴水広場の、ちょうど噴水を背中にどすんと押し当てて、巨躯の男が座り込んでいた。
ぜはーって呼吸と、結構な量の汗。だいぶ激しい運動をしてたのが見て取れる。
「くそう、どこいきやがった。」
もう一度呻く。己の夕食のパンを奪った下手人――灰色猫の姿を探して左右に視線を向ける。
もちろん、いようはずもないが。
■イグナス > このまま探すのもあんまり現実的じゃあないかと首を擡げて。
ゆると立ち上がって――そのまま、路地の奥へと消えていった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都平民地区」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 夏の暑さは盛りを過ぎて、四季のある風土ならばそろそろ秋めいてくる頃合である。
直射日光に焼かれて真っ黒になることに意義を見出せない妖仙は、暑い頃は日中に出歩くことを拒んだインドア系まっしぐらな生活をしていたが、そろそろ転換期。
リハビリという程に大仰ではないにしても、多少の慣らしをした方が心身ともに宜しいようで、夕刻からボチボチと商談の為に王都を出歩いていたらしい。
これまでは、余程懇意にしている馴染みであるとか、大きな取引の話でもない限りは、己の店に客を招いていたものではあるが。
「多少過ごし易くなったとはいえ、斯様に久し振りでは眩暈がしそうじゃったわ。」
日はとうに暮れ、商談が終わった後、そのまま夕食を摂っての帰り道。
平民地区の繁華街の内でも、やや外れの方に位置する己の店へ向かう最中。
満腹になって、少し張った感のある下腹を帯の上から撫でる。
商店の責任者自らが方々に出向いていた理由は、少々無理を通す必要のある事柄が転がっていたから。
依頼主は、王城に執務室を持つ有力者。
依頼の内容は、可及的速やかに、タナール砦を奪取せんとする王国軍に対する補給品の運送という、個性に乏しい代物。
貿易商であるが故に、輸送の為の機材や人員も自前で揃えられぬこともないが、何しろ急で物資量の多い話だ。
よそ様から借り受けるなり、運搬者の同業者組合に都合をつけるなりする必要があったらしい。
■ホウセン > 大口で、報酬もそう悲観すべきものであったから、依頼主との距離感という要素を加えて算盤を弾いた。
結果として引き受けることになったのだけれども、頭の何処かで本業ではないという小さな小さな取っ掛かりを払拭できてはいなかった。
誰がやってもあまり大きな違いになる仕事ではなし、態々己に依頼を持ち込んだ意図が分からぬと。
強いて言うなら、配送先が対魔族の最前線であるため、多少なりともの用心を含んでのものかと思わなくもない。
この小さな人外が、率先して素性を明かすことは稀だが、それでも何処か”普通ではない”程度には認識されているふしがある故に。
「王国東方の世情は、儂とて知らぬことが多いのじゃがなぁ。
せめてダイラス等の海沿いならば分からぬでもないが…」
頭上を振り仰ぐのは、齧った程度ではあるが星見もできるから。
土地が違えば、見え方も違うことを知悉しており、遠方の地に思いを馳せた時に、ふと星を連想したのだ。
尤も、外れとはいえ一国の首都の、更に繁華街でのこと。
街灯の明るさに駆逐され、妖仙の眼とてそれなりに意固地になって意識を集中させなければ、満天の星空を観ることは叶いそうにない。
「折角、儂自身も同行せよなどと、有難くて涙の出る指示付じゃし、旅情でも愉しむとしようかのぅ。」
砦に向かう途上、街道は九頭龍山脈の外周付近を通る。
物珍しい植物でも採集できれば、慰みにはなるだろう。
さもなければ、経営に関する彼是を、王都の本店で指示するよりも二手間は余分にかかるという事実から、目を逸らすことができなくなってしまう。
■ホウセン > そもそも、指揮下の兵を募って輜重隊を編成すればよいものを、外部に発注していることが腑に落ちぬところだ。
やれ軍内部での派閥だの力関係だのに足を引っ張られ、おまけに慢性化した戦闘状態に士気が落ち込んでいる兵士を宛がうのを忌避したのだろうと予想はつくけれども。
不幸中の幸いというべきか、幸い中の不孝と言うべきか、運ぶべき物資は揃っているようで、妖仙が手配するのは運送手段だけで事足りる。
いっそのこと、物資まで此方から仕入れてくれれば儲けも桁が一つ違ってくるのだが、其処は御用商人との兼ね合いに配慮してのことなのだろう。
「はてさて、暫くは王都を空けることになるかのぅ。」
身一つでの旅行きではなく、隊商を組んでの行程。
”帳”を用いて、ひょいひょいと行ったり来たりできる筈もない。
――娯楽に飢えて、たまに王都が恋しくなるような時を除いて。
恐らくは、しばらくの間、街道や街道沿いの村、山脈の麓や砦付近で姿が見られるようになるのだろう。
「…何ぞきな臭い気がするのじゃがな。」
そう小さく漏らし、小さな影は夜の街に消えて……
ご案内:「王都平民地区」からホウセンさんが去りました。