2017/08/01 のログ
■リュシー > (そりゃあ、冷静になって考えれば、己が考えなしだったのだと思う。
祝祭のラストを飾るのだろう花火の音を聞いているうち、
ふと、外を散歩してみたくなったのだ、とはいえ、
もっときちんとした格好をしてくれば、こんな目には遭わなかっただろう。
己の見た目が年端も行かぬ少女であることを、うっかり失念していた。
ぼんやりと熱のこもったような身体を持て余しているから、といって、
ユカタ姿でふらふら、というのは、さすがに怪しすぎたかもしれない。
とはいえ―――――)
だから、……本当に、なんでもないんです。
この格好、ね、あそこの宿に泊まってるんですよ。
ちょっと、散歩にでてきただけなんです、ほんとですってば。
(さっきからもう、何度めかも知れない抗弁だが、薄暗い部屋の中、
机を挟んだ向かい側に座る衛兵が、納得してくれる気配はない。
もう一人の衛兵など、ずっと己の背後に立って、
椅子に座った己の肩を両手で押さえこむようにして動かないのだ。
手を離したら逃げ出す、と思われているらしい―――勿論、逃げたいけれど。)
■リュシー > (なんとかして、己の身を明かす手段はないだろうか。
この儘では己は今夜、この詰所のどこかで夜明かしすることになってしまう。
ふかふかのベッドだとか、良い匂いのするお布団だとかが恋しい。
―――そうして、ふと思い出した。
ユカタの下、細い鎖で胸元へ下がる指輪の存在。
そこに刻まれた印章を見せれば―――と、思いつくと同時。
ぎゅっと掴み出したそれを、印章部分が相手の目に見えるよう、
ぐ、と突き出してみせながら)
ほ、ほら、これ!これ見てください、ぼく、
怪しい者じゃありませんから!
(ご存じでしょう、ぼくはこれこれこういう身分の者で―――と、
―――――そこでようやく、重大な間違いを犯したことに気づいた。
双肩にかかる両手に力が籠り、向かいに座った衛兵の顔が、
なんとも言えず嫌な、薄笑みに歪んだ。
あそこの家には、放蕩息子が一人居るだけだろう。
なんでも、小娘にしか欲情しない変態だって噂だが。
――――まさかおまえ、そいつをあそこのボンボンから盗んだのか?
―――――マズイ。
そう思ったときには、背後に立つ男の手で、強引に椅子から引き立てられていた。
盗っ人め、牢にぶち込んでやる、と、なぜだか笑い交じりに言う二人の衛兵の顔を、
あたふたと見比べながら、身を捩って逃れようとし)
いや、ちょっ、ちょっと待って!
違うって、これはその、……盗んだんじゃない、ぼくのなんだって!
説明するから、ちゃんと説明するから、ッ……
待って、牢屋とか、本当に待って!
(必死である。
牢屋で夜明かしするぐらいなら、この姿で実家へ戻された方が断然ましだ。)
■リュシー > (こういうとき、暴れれば暴れるだけ不利になるのだろうが、
己としても必死の抵抗だった。
そもそも胸元がはだけ気味だったユカタが多少着崩れようが、
廊下からほかの衛兵たちが何事かと覗き込んでいようが、
背に腹は代えられない、といったところ。
大騒ぎ、大暴れする己は衛兵たちの手をたいそう焼かせただろうが、
結局、小娘の抵抗にすぎない。
荷物のように担ぎ上げられ、頑丈な鉄格子の填まった牢屋へ放り込まれて、
そこで夜を明かすことになっただろう。
―――――なんとも不運な、夏の夜だった)
ご案内:「王都マグメール 衛兵詰所」からリュシーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区ランジェリーショップ」にアリアンさんが現れました。
■アリアン > レースやフリル、リボンで装飾された、可憐なランジェリーの数々は、見ているだけで楽しい。
やや干物よりとはいえそこは女なので、様々なデザインや色彩のそれらを見て、ご機嫌に品定めをしている。
「どれがいいかしら……」
真ん中に切れ目の入ったショーツや、明らかに寝室以外での用途に適さないブラジャーは、この際除外する。
さりげなく可愛らしくお洒落で日常に耐え、脱いだ時に「おっ」と思わせ、かつ男の欲望を刺激するような……。
「やっぱり、普通に使えないとね……」
この辺かな、と美しいレースに飾られたネイビーのブラを手に取ってみる。黄色の糸で施された花の刺繍が可愛らしい。
サイズを確認して、鏡に向かってちょっと当ててみる。
■アリアン > 悪くないじゃない、とうなずき、上下揃いでカゴに入れる。
これまでの干物生活がたたって、色気のない下着(しかし大変機能的)しか持っていなかったので、急遽、揃える必要性に迫られたわけだが、こうして綺麗なものに囲まれての買い物は楽しい。
可愛い系からセクシー系まで、ひととおりカゴに入れて、ふと目に留まったベビードール。
ピンクと黒のツートンカラーのそれは、ちょっと…いや、かなり可愛い。
「いや、でも、これはきっと上級者向けだし」
変なところで腰が引ける。
すかさず店員が寄ってきて、お勧めですよ、お客様の白い肌に映えるでしょうね、きっと彼も喜びますよ!と猛烈にプッシュしてくる。
ほらこの肌触り素敵でしょう、レース以外の部分はシルクなんですよ、と手に乗せられれば、ついぐらついてしまう。
「じゃあ、あの、試着だけでも……」
カゴに入れたブラのサイズも合わせたいし、などとモゴモゴ自分に言い訳しつつ、そのベビードールも持って試着室へ。
■アリアン > 試着室で上半身だけ脱いで、まずは選んだブラを。サイズは分かっているので、どれも大丈夫。鏡の中の見慣れない自分に、少しドキドキするけれど、少しは魅力的に見えるだろうか。
最後に残ったのは問題のベビードール。
「似合わないかもしれないし」
などと言いつつ、身に着ける。
胸の下で切り替えになったそれは、少し少女っぽいシルエットになるが、それが何となくアンバランスなセクシーさを演出している。
見たことのない自分に戸惑いつつ、鏡の前で少しポーズを取ってみたりする。
使い道がないわけではないが、果たして出番があるのかどうか。
「いや、出番も、頑張れば多分ある……」
裾から覗く値札を見て、なかなか強気の価格に少しギョッとしつつ、やはり可愛らしいそれに心惹かれるのは着てみたいから。
そそくさと服を着て、カゴに入れたもの全部を買うべく、勘定を頼む。
やがて、ショッピングバッグをぶら下げて上機嫌に店を出ると、そのまま軽い足取りで自宅に向かうのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区ランジェリーショップ」からアリアンさんが去りました。