2017/07/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨屋」にタマモさんが現れました。
タマモ > 別に目的があった訳でもないが、見覚えのある店を見れば、とりあえずで入るのが礼儀だろう…ちょっと違うか。
…まぁ、入ってすぐに後悔する事となるかもしれない。

「何と言うか…相変わらず暑い店じゃ、もうちょっと涼しくはならんものなのか?」

入って早々に、これである。
懐から扇子を取り出すと、少しでも涼を取ろうとぱたぱたと扇ぐ。
さて、と店内を巡ろうとするも…こちらも相変わらずの店主だ、どうしてもその行為は目立つ。
扇子で扇いだまま近寄れば、こう、自分もそれを覗いてみた。

ピング > ふはぁ、と汗を垂らしながら写真に実入り、それをぺたりぺたりとしてる作業は傍から見ていて非常にアレな光景かもしれない。
まぁ気にしないのだけれども。

集中し過ぎている所為か、客(?)が来たことにも気づかぬ侭。
写真を選び取ってはそれを見下ろし、口元をにまにま。
そんな現在のお写真は、扇情的な下着に身を包み、しかも大事な部分に裂け目が付いている様なお姿の女性。
んむんむ、と満足げにそれを見て頷いていると、すぅっと頭上から差す人の影。

「んぉぅっ…!お、おぉ、なんぞ、タマモちゃんかぇ。どうしたどうした、またお使いか?」

びくっと肩を揺らし、ばさりとアルバムのページも広がった。
カウンターの上に広がる写真の数々も、アルバムのページに張り付けられた写真それぞれが、肌色成分多めな女性の物ばかり。
無論、見られたからといって焦ったりはしないメンタルの強さよ。

タマモ > 近付いた程度では気付かない、なかなかの集中力だ。
その集中力、もっと別のところに向ければ良いものだが…そう思うだけ無駄だろうか?
ともあれ、影が差したところでやっと気付いたようである。

「うむ、別に今日は目的なんぞは無い。適当に巡っておったら、この店が見えたのでな?
しかし…よくもここまで集めるものじゃのぅ…感心するべきか、呆れるべきか、どちらじゃろう」

まだアルバムに貼り付けてない写真の一枚を摘み、見遣りながら、はふん、と溜息。
ひらひらと、それを揺らしてみせる。
どう見ても、感心しているよりも呆れている風だ。

ピング > 恐らく無駄で御座います。
矛盾しているけれども、良い大人だもの。矯正はきっともう無理だ。
何より本人が楽しみを見出していて仕方がないのでもうどうにもならん感。

「ほっほぅ、そりゃあ嬉しいこって。見ての通り暇な店なんでなぁ、かわ…綺麗な子が来てくれるってんなら大歓迎だ。
 んぇっへっへ。いやぁ、オイラのお宝コレクションだよぉ。おっと大事に扱っとくれよぉ」

ご本人に許可を貰えれば、如何わしい商品の説明文句にその写真を使う位には大事な代物。
タマモちゃんは何ぞ興味のある写真でもねぇのかい、と極々普通に会話を続ける辺りデリカシーという物は存在しない。

「あぁ、そう言えばタマモちゃんは写真に撮ってなかったのぅ。そのまんまでもえぇから一枚どうだぇ?こう、きゃるん☆って感じで」

ばちこん、とウィンクかましながら頬辺りに両手で握りこぶし作ったポーズ。
おじさんがしてもかわゆくはないが、何かこうイメージは伝わって欲しい。それが相手の意に沿うかはまた別の話だが。

タマモ > うん、分かってた。
自分だって、今の自分を変えろと言われても無理と言うだろう、お互い様である。

「雑貨店じゃろう?もっと客が来そうな感じではあるんじゃがのぅ…なぜじゃろうか?
まぁ、そう簡単に破れたりはせんじゃろう?大丈夫じゃ大丈夫、そう心配せんでも良い」

その辺り、多分、余り深く考えなくても分かるとは思うのだが…あえて言わないでおこう。
そして、こう、写真について問われれば…軽く考える仕草。
改めて写真へと視線を落とし、どれもなかなかによく撮れておる写真じゃ、と答えるだろう。
こういった事には妙な拘りがきっとある、妥協の無い作品はどれも悪くはないはずだ…作品自体に問題があるかもしれないが。

「ふむ…いや、しかしじゃな、この格好でそれは…ちと合わんじゃろう?」

相手が取ったポーズは、どう考えても今の着物姿には合わない。
あれだ、せめて今の格好に合うポーズか…そのポーズに合う衣服が欲しいところである。
そんな意見が出る時点で、それなりに伝わっているのは分かるかもしれない。

ピング > 自意識高くないからね。ちかたないね。
妻子を持ち、自前の店を構えながらも自堕落に生きる、駄目な大人の生き様であった。
お仲間発見となればお互いにこう、ぬるま湯につかる感じでなぁなぁで同意しあう様が目に浮かぶ。

「そりゃあお前さん、オイラが客を選り好みするからだろう!
 オイラはなぁ、繁盛させたいんじゃねぇ、可愛かったり綺麗だったりする客に色々してぇんだよ…!」

それでも諸々を求める男性の固定客も居たりするが。
元よりそんな客は愛想なんて求めていないので良く判らんバランスが保たれている。
逆に女性客は、うん。リピーターとなってくれるのは極少数であることはお察し。

「お、その辺の写真が判るたぁ、中々お目が高いねぇ。女の子にも抵抗ないタイプかい、さては。
 んで、そうさなぁ…ちなみにその着物に思い入れっちゅうか、拘りがあるんかぇ?」

合わんとも思わんが、とポーズについては雑食な思いを吐露しつつ。
取りあえず手持無沙汰な手を伸ばし、目立つお尻尾にもふもふさわさわ。
何せ着物文化にゃとんと疎いもんだから、似合うポーズ、と言うのがそも思い浮かばぬ悔しさよ。
逆に、お勧めと思うポーズあるかぇ?と相手を見上げて問う始末。コスプレの方向性も無論ありだが。

タマモ > 永く生きようと、一度こうと決めた己の道は変えられぬ。
それが例え、他人から見たら微妙な生き様であろうとも。
妥協?妥協するなよ!そんな感じ。

「………まぁ、それで店が成り立っておるのならば、それで良かろう。
お主はお主の、好きな道を進めば良い…多分」

うん、まぁ、実際にこうして店を持つに到っている。
本人が満足していれば、それで良いのである、多分?

「もちろんじゃ、妾は男子でも女子でも楽しめるぞ?
まぁ、気付いた時から着物じゃったからな、慣れも思い入れもあるじゃろう。
絶対に着物だ、という拘りはないがのぅ?」

なるほど、その辺りは個人差があるのだろう、そう思う。
伸びる手が尻尾に触れようとするならば、まぁ、好きに触れさせるだろう。
このもふもふ感をたっぷりと味わうが良い、みたいな感じに。
多分、写真写りでの仕草と考えるなら、着物の場合は魅せる方向性になるか…相手が相手と考えると、微妙なものかもしれない。
手にした扇子を揺らがせ、くるりと舞ってはみるが。

その後で、やはり衣裳を変えた方が良いやもしれんな、と。
コスプレの方向の方がやり易そうだ。

ピング > 此方の場合、誠実な生き方を妥協、堕落した故の立ち位置と言えなくもないがそれはさて置き。

何だか良い具合にぬるまったい感じで認めてくれる相手の台詞が実に宜しい。
多分、という追加の台詞が非常に軽くて大変気分を良くしてくれる。

「ぬぇっへっへ。おう、好きに生きてるぜぃ。
 タマモちゃんもあれだのぅ。男も女もってのはこりゃまた世界が広く見えそうだ。
 オイラぁ、どうにも男はのぅ。こう、女の子っぽい子ならワンチャンいけそうかとも思う時があるが…」

非常にどうでも宜しい性嗜好のお話だ。
可愛いは正義、という言葉は実際に成立すると思っちゃいるが、まぁその辺に踏み出すのはまだ中々。
何にせよ、目の前の可愛らしい少女の方がお好みなのだから意識は其方に向くに決まっている。
もふもふの毛並みな尻尾の感触を堪能し、多少暑苦しかろうが、ふへぇ、と蕩けた声を零してその毛並みに頬擦り。
舞う動きに合わせてその尻尾が離れると、あぅん、と至極残念そうな声が零れた。

「あぁ、こりゃあ脱がせてる最中は良さそうだが、どっちかっちゅうと芸術めいたアレだのぅ。
 でも取りあえず、一枚……っと。んー…んんー………んーぬ……」

何時でも写真が撮れるようにと、カウンターに忍ばせている撮影用の魔導具にて、一枚パシャリ。
ふあふあの尻尾が空気を孕んで揺れ動き、舞う最中の中々に素晴らしい写真が撮れた。が。
カウンターの上に広がる写真群の中では異質に映るという不可思議。何故かマイノリティなのだ。何故か。

そしてうんうん唸りながら相手の姿をまじまじと上から下までじっくり眺め、んむ、と最後に一つ頷き。
ちょっと待っててなぁ、と適当に茶菓子をカウンターの下から取り出すと、相手の目の前に置いて店の奥へと引っ込んだ。
クッキー的な菓子は安物で、茶も無いけれども我慢はして頂きたい所。

タマモ > さて、その辺り、語れば語るほどに互いの知らぬところで絆が深まりそうだが…この辺りにしておこう。
お互いに認めている、それで良し。

「うむ、見事己を貫き続けてこそ漢と言うものよ………ん?ちと違うか?まぁ良い。
そこは仕方あるまい、同性に食指が動かぬのが普通じゃろうてな?
まぁ…可愛いのが良いのは、性別関係ないっぽいがのぅ?」

いやはや、本当にどうでもよろしいお話である。
他人様が聞いてないのが、唯一の救いかもしれない。
舞いを行い、尻尾が離れた時の相手の反応に、おっと、忘れていた、といった感じに。

「ふむ…脱いでる場面では、他と大差がないから芸が無くてのぅ?
………やはり、ちと微妙じゃな、うん」

まぁ、相手から言わせれば芸が無くとも…ではあるかもしれない。
こう、いざその写真が他の写真と並べられると…違和感の塊でしかない、やっぱり駄目だ。

と、待てと言われれば待つが、何もなしでは…そう思ったところで、茶菓子が出てきた。
それならばと、さっそく手を伸ばしてもぐもぐと遠慮なく食べ始めた。
奥へと消えていった場所を、じーっと見詰めながら。

ピング > 閑話休題。閑話休題。

「いんやぁ、でもほれ、この国じゃあその辺割と普通な気がするがの。
 にしても、ふむ…タマモちゃんと女の子が絡んでる所っちゅうのは、あれだの。中々見ごたえがありそうっちゅうか」

ちなみに動物だって結構好きだ。
愛くるしい態度とか、非常に好感が持てる。主に女性を釣るために使える、という意味合いでだが。
手名付けておけば非常に利がある分、愛情は注ぎ込んで世話をするとも。打算だがその愛情に嘘はない。
ある意味非常に目立つ写真をその場で現像すると、逆に目立つ普通の写真が鎮座ましました。
それはさて置き茶菓子を置いてから店の奥へと引っ込むと、あれやこれやとがさがさごそごそ。

水着のコーナーに移動しては幾らか見繕い、また別のコーナーに赴いてはもそもそごそごそ。
大した時間もかけず、茶菓子を一つ食べ終える頃には準備も終わり、戻ってくるとその品をカウンターの上に御開帳。

まずは水着。白地のビキニタイプで、布地面積が気持ち小さめなのはご愛敬。
次いで、もふっとした相手の毛並みに近い色の、手袋と靴。
着ぐるみの一部を切り取った様な手首と足首までをそれぞれ覆う程度の代物は、肉球を模した造りとなっていた。
お狐様が着けるにしては激しく間違っているけれども、こういうのはインパクトも大事なのだ。
尚、首輪もと思ったが、相手の首にはチョーカーめいた物が既につけてあったのでそれについてはあきらめた。

「これらを装備し、こう、かわゆい感じで一つ」

遠慮なくそれを願う辺り、非常に厚かましい。

タマモ > 「そうかそうかとは思うたが、やはりそんな感じかのぅ?
さて、どうじゃろうか…人を選ぶやもしれんが、お主ならば案外いけるやもしれんな、うむ」

等と、的は射ているが、普通に聞いたら失礼な発言をぽろりと。
ちなみに、少女も普通に動物は好きである。
ただし、こちらは元々が獣である為に、というのも理由としてあるが。
奥へと引っ込んだ店主をよそに、茶菓子を頬張りながら、とりあえず写真を眺めていた。

そして、そう間も空けずに戻ってくる男。
持ってきた品がカウンターの上に広げられた。
あぁ…うん、あれだ…なるほど、そうきたか、それが感想である。
それらを手にとって、よくこんな物が揃うものだと、今度はある意味で感心した。

「やれやれ…じゃが、あの写真がぽつんと一枚と言うのも物悲しいか…
仕方ないのぅ、ほれ、一枚くらいは撮られてやるから案内するが良い」

広げられた品々を抱えると、視線でこう、着替えの場所に案内しろと。
この男ならここでも良いと言いそうだが、そこは気にしない。

ピング > 「オイラが言うのも何だがなぁ。貴族様の好き勝手が活きてるんだか、奔放だわなぁ。
 ほほぅ、何ぞ気になる物言いだのぅ。案外激しかったりするのかぇ」

そんな期待を煽られる言い方をされたらわくわくしてしまう。猥談は好きだ。猥談の域で済むかどうかは不明だけれども。
なんかこう、漠然とミレー族の延長的な?というふわっとした認識であるが故、獣的な本能とかは察していない。
見目に可愛い少女なのだから仕方ない。仕方が無いのだ。

そうして戻ってきた相手に見せた品々は、まぁ、うん。あれだった。
しかして相手の反応はそう悪く無く、おぉ、と喜色孕んだ声を零し。
着替えの場所なんて決まっている。

「やぁやぁ、タマモちゃんは気前の良い美人さんだのぅ。
 ありがたやありがたや。じゃあほれ、もうここで着替えっちまおう!」

その辺の配慮なんて無論皆無で。
さぁさ、とお着換えを促し、めくるめくコスプレ撮影会が幕を開けるのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨屋」からピングさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨屋」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区広場」にサヤ・カシマさんが現れました。
サヤ・カシマ > 王都平民地区の大通りに面したとある広場。
普段は家族が散歩などするそこに今日は人だかりが出来ていた。
時折上がる歓声は何かイベントでも行われているのかと想像させる。
その中心、ぽつんと立ち尽くす赤い髪の娘はあらゆる意味で場違いであった。
身に纏った東方の民族衣装は王国には場違いであったし、ぽーっとした表情は騒ぎの中心で浮かべるには場違いな表情であった。
娘の周囲を囲んでいるのは屈強な男達、そして、無造作に掲げられた看板には

 『攻撃を当てたら金貨10枚。武器魔法何でも有。参加料:5発金貨1枚。』

と、書かれていた。
あまりにも無謀、身の程知らず、そんな言葉がまさに場を支配していた。
だが……現実問題として、娘の足元の缶にはすでに金貨が両手に余るほど投げ込まれているのだ。

次の挑戦者は誰だと観客が騒ぐ中、前に進み出たのは小山のような巨漢。
金貨を缶へと投げ込むと、丸太のように太い腕を振り回し、娘の頭上から振り下ろす。
圧死――そんな言葉が観客の頭を過る中、拳は娘を避けるように地面へと叩き付けられた。
何が起こっているのか……それを理解できる者はほんの一握りだろう。
続けて大男が振り回す腕も足も、ついにはなりふり構わず飛びかかった身体さえも娘の身体に触れることはなく地面へと吸い込まれたのだった。

規定の5発が終われば娘は無言のまま深々と頭を下げる。
そして、手近な巨木の幹へと右手を押し当てると、次の瞬間、轟音と共に巨木がへし折れた。
見れば、周囲には割れた岩や裂けた木、穿たれた地面と破壊の痕が残されていた。
最初から見ていた観客は知っている。
それらの破壊がこのぽーっとした娘によってもたらされていることを。
何度目とも知れぬ歓声が上がり、そして、次は誰だと観客が騒ぐ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区広場」にエズラさんが現れました。
エズラ > 初めは興味本位で眺めていただけだった――
3人目あたりから居住まいを正し、5人目以降は目を皿にしていた。
もう何人目か――数えるのも馬鹿らしくなった頃、ちょうど挑戦者が途切れた。
群衆の中から、一歩男が進み出た。

「次はオレだ、いいかい姉さんよ――」

そう名乗りを上げながら、缶の中へ所定の金額を放り込む。
早速腰の剣帯を外し始めているため、武器を用いる期はないようである――

サヤ・カシマ > 観客が騒ぐ中、前に出てきたのはどこかくたびれた印象をにじませる男。
観客の歓声と視線が集まる中、赤い髪の娘はぽーっとしたまま、ゆっくりと男へと視線を向け、深々と頭を下げる。
そして、今までと同じく一切構える様子もなく、男の前に無造作に佇む。
一見……否、どこからどう見ても隙だらけ……そんな印象ながらも実際十人以上を相手に指先一つ触れさせていないのだ。

エズラ > 相手に合わせて頭を下げる。
この作法は知っていた――相手が身に纏っている装束も。
かつて所属した部隊に、恐らくは同郷――ないしは近隣の同文化を持つ国――の者が居たのである。
腰から得物を外すと、相手と裏腹に男は両脚を肩幅に開き、緩やかに斜に構えた。
利き腕とは反対の腕を目の高さに掲げて、緩く拳を握り込む。

「そんじゃいくぜ――」

闇雲に膂力をもってねじ伏せようという輩とは異なる、実戦独特の乾いた空気が周囲に立ち込める――
ほとんど最初からこの相手を見ていたので、うっすらと予感を滲ませつつも――男は速やかに半歩ほど踏み込むと、遠慮なしにその呆けたような可憐な顔面を狙って鋭い拳を放つ。

サヤ・カシマ > 観客の見守る中放たれた一撃。
それはまさに目にも留まらぬ一撃であったと言って過言ではないだろう。
実際、観客の中にその一撃を目で追えた者がどれほどいただろうか。
しかし、それが故に皮肉にも娘に取っては今日受けた攻撃の中で最も与し易いものであった。
突き出された男の手首に軽く感じる柔らかな感触。
触れた娘の掌は勢いを弾き返すのではなく、逆に自分のほうへと引き込むよう拳へと力を加える。
ただ、ほんの少しだけ軌道を修正させて。
実際受けてみなければわからないほどのほんの一瞬の動き。
自然と間合いが近付き、娘の紅い瞳がじっと男の顔を見つめ、可憐な唇から吐息が漏れる艶っぽい音が響く。

エズラ > 放った拳は「予想通り」その艶めいた頬にわずかに触れることすらなく軌道が変わる。
間違いなく、相手の鼻っ柱を狙って放った――その確信があるからこそ、男の表情は歓喜に歪んだ。
緩く踏み込んだ分だけバックステップし、構えを解く。

「なるほどな――こりゃすげぇ使い手が居たもんだ――」

繰り返しその技は見たが、実際に体験してみるのとでは大違い――
こちらからも真っ直ぐにその瞳を見つめ返し、口端を持ち上げて笑う。

「意地でもその身体に触れたくなったぜ、姉さんよ――」

まだ相手の技の奥底は見えない。
今度は左右の拳をコンビネーションで放つ。
しかしそのどれもがフェイントで――その中に一発だけ、相手の脇腹へ突き刺さるコースの左拳を混ぜる――

サヤ・カシマ > 当たらなかった……にも関わらず嬉しそうに笑みを浮かべる男。
そんな男へと娘は不思議そうに小首を傾げる。
そして、一応、とばかりに右手の指を4本伸ばして見せた。
残りは4発――。

バックステップで距離を取り仕切り直しとなった所でようやく観客たちが反応する。
よくわからなかった……が、なにかよくわからない攻防があったのだと理解したから。

身体に触れたくなった…その言葉に娘は反応を見せない。
……のではなく、一拍遅れて帯の上の桜色の布地へと両手を触れさせた。
きょとんと見つめる表情は『これですか?』と言っているよう。

そして、再度放たれる無数の拳。
速く、疾く、巧みなその攻撃に娘は反応出来ない。
一体何発の――見事なコンビネーションは残念ながら、空を切る。
だが、ふわりと赤い髪が舞い上がった様子に観客から雷鳴のような歓声が湧き上がる。
今まで娘の髪を揺らした者すらいなかったのだから。

問題は、何が起こったのかを正確に理解出来たのは、相対している男だけだということだろう。
脇腹を狙った男の一撃のフォロースルーがアッパーの体勢であるという意味……。
男には軽く肘に触れられた程度の感触しか残っていないだろう。
そして、無数のフェイントを繰り出されながら、娘が掲げた右手の指は3本残っている意味……。

エズラ > 目くらましの打突がいくら空を切ろうが問題はないが――

「……流石にこりゃ、オレの自信が砕けちまいそうだぜ――」

やはり、ほんのわずかな感触と同時にその拳に返ってくるはずの反応が掻き消える。
豪快かつ鋭く空を裂いた拳で天を突いたまま、ため息をつく。
そして、立てられた3本の指を見て、クックッ、と喉を鳴らす。

「たまんねぇな、その態度――」

男が両肩から力を抜く。
そして緩くつま先で地面を蹴り――先ほど同様、再び高速のフェイントを放つ――
観客は、それじゃダメだろ、だの馬鹿の一つ覚えかよ、と怒号を飛ばすが――
男は内心まったく別のことを考えていた。
そして、そのフェイントの最中、不意ににゅううっ、と無造作に、ごく緩やかに腕を伸ばし――相手の顔面の前で拳を作る。
同じような速度で中指と親指を除いて指を開き――
10歳に満たぬ童子の遊びのように、相手の額へデコピンを放つのであった。

サヤ・カシマ > 男のため息、笑み、そして、言葉。
果たして挑発なのか、舐めているのか……一切の反応を見せないまま、ぽーっと男を眺め続ける。

まさに電光石火――離れた間合いが一瞬で詰まり、先程と同じように無数の拳が飛び交う。
先程と何も変わらない流れ……娘は一切の反応も見せず、放たれる拳を避ける素振りすらも見せない。
そんな中、先程と違うのは、気付けば娘の顔の前に男の拳があったと言うこと。
観客の殆どが反応する必要すらないと思うほどゆっくりと伸びてくる腕には、当然娘は反応しない。
そう、反応する必要すらない……はずの動きに、その実、娘は反応出来ていなかった。

「――大丈夫。」

ずっと一言も発しなかった娘がぽそりと口を開く。
それは男の意図も攻撃もすべて読み切った上での挑発――。

額と拳の僅かな隙間から放たれた指はいつの間にか娘の柔らかな掌に包まれていた。

「……ここ最近で……一番強い……ですよ?」

重い口から放たれたのは、読み切った宣言でも挑発でもなく、随分前の男の自嘲の言葉に対するフォローだった。

エズラ > 今度は確かに、手に触れた――それは自分が狙ったものではなかったが、ある意味ではそれ以上ともいえた。
こちらの手を包み込む、少女のようにしなやかな白い指。
こちらからも、緩やかにその手を握り返し、その感触を確かめるように、艶めかしく動く。

「そうかい――そりゃ嬉しいね。姉さんほどの使い手にそう言ってもらえりゃ、オレの腕もなかなかのもんってことだろ――?」

ニンマリと笑みを浮かべつつ、相手の指の付け根や細い指先を撫で回しつつ、じり、と身を寄せて間近に顔を。

「あとの2回分は放棄する――「身体に触れる」っつー目的は果たしたしな。その代わり――」

相手の耳元に唇を寄せ、観客達には聞こえぬよう呟く。
オレとデートしてくれねぇか?と――

サヤ・カシマ > 攻撃を流すのではなく受けてしまったのは本当に久しぶりだった。
そもそも、勇者と共に冒険をしていた頃もパーティの名が高まれば高まるほど敵は強く強靭になっていき、遅く動く相手など他の仲間が一瞬で片付けてしまい、結果として娘は楽に戦えるようになっていったのだから。

指を掴んだ手を握られ、どこかいやらしさを感じる動きで撫で回されても娘は変わらず無表情。
寄せられた顔、投げ掛けられた誘いの言葉にも無表情。
そして、数拍の後にゆっくりと男へと顔を向ける。

「……いいですよ?」

特に断る理由もないし、今日はもう十分に稼いだ。
手を繋いだまま膝を曲げて屈み、金貨が詰まった缶を長い袖の中にしまい込む。
一体何が起こっているのか理解が追いつかない観客へと向かって、ぺこりと頭を下げる。
極端に言葉の少ない娘の態度に一体どういう流れになっているのかわからない観客に、え……?という空気が流れる。

サヤ・カシマ > はい、大丈夫ですよ
エズラ > こちらも密やかな申し出を受けてくれた相手は、片手で繋がり合ったまま器用に今日の稼ぎを袖の奥へ収めてしまう。
そして、ざわつく観客に向けて男もムフフと笑みを浮かべつつ同じように頭を下げ、放ってあった剣帯を抱える。

「そんじゃ、行くとしようぜ――」

何処へ何しに、というところまでは口には出さず――
奇妙な二人連れが広場から去って行くのであった――

ご案内:「王都マグメール 平民地区広場」からエズラさんが去りました。
サヤ・カシマ > 娘は何も言葉を発しない。
ただ、男をまるで恋人のように手を繋ぎ広場を去っていく。

残された観客達はまるで狐に化かされたような顔で二人を見送るのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区広場」からサヤ・カシマさんが去りました。