2017/03/27 のログ
■エズラ > 「どーかな、オレにもよく分からん――少なくとも、本物のエルフと知り合えて、嬉しく思ってンのは間違いないぜ。」
クックッ、と喉を鳴らして笑う。そして、聞けばどうやらここに来て日が浅いらしい――先ほどこちらに手を伸ばした時の、心臓を射抜くような美貌はそのままに、少女のような物言いに、キョトンと目を丸くして――
「アッハハ、そりゃ大変だな――しっかし。」
相変わらず、雨は降り続く。自分一人なら、濡れ鼠にでもなんでもなって、駆けて帰れば済むだろうが――もう、そういうわけにもいかない。少し考え、ムフ、と悪戯っぽい――助平心を隠さない笑みを浮かべ、相手に向けて手を差し出す。
「荷物、重そうだ――暫く持たせちゃくれねーか?じっと見てンのもしのびなくてよぅ――それに、まだ暫く雨、止まないと思うぜ――ちょっと「休憩」でもしに行かねぇか?」
■ノエル・ベネトー > 「随分とまあ、大人びて…。
愛らしいエズラさんも素敵でしたのに。」
その笑い方1つとっても、先ほどの少年は誰だったのだろうと思うだけの変貌ぶりだ。
感心一方、どこぞに消えてしまった少年を恋しく思う気持ち一方、複雑なエルフ。
そんな急に頼り甲斐のある男性からの申し出に一瞬、すぐさま買い物袋を渡しそうになったけれど。
「そんな、初めてお会いした方に申し訳ありません。」
初めてではない場合、少し慣れてきた頃に何のためらいもなく甘えるし
世話になるタイプではあるけれども。とは言えない。
ふるふると頭振って遠慮するものの、たしかに荷物は重い。
ほとんどが食材であるから濡れた地面に置くわけにもいかないし、
ここは彼の言うとおり休憩したいところではあるのだが、持ち合わせが。
「どこでですか?
あのう…言いにくいのですが、わたし、お金を持っていません。
あまり持ち歩くと危ないと言われておりまして…先ほど使い果たしました。」
思案しながらぽそぽそ話す、頼りなさMAXのエルフである。
■エズラ > 「大人……――そう、見えたのか、オレが――?」
暫し焦点の合わない目になって、虚空を見つめる。大人びている――というのは、自覚のない評価であった。しかし、さっきまでやたらと心臓を高鳴らせていたのは事実。あまつさえ愛らしい、とは――
「プッ……あ~、なんだか毒気を抜かれちまったぜ。オレも森で暮らしゃ少しはマシになるのかね――」
破顔する男は、一人で何かを納得し、肩を揺らす――
「――この街に慣れてないのは確かだね――今オレ達が雨宿りしてる「ここ」――でどーだ。ホラ――」
建物の角の向こうを指す。そこには目立たない看板が出ていた――「喫茶」。
「晴れてりゃオープンテラスもある、割りに洒落た茶店だぜ――なに、オレから誘ったんだ――カネの心配はしねぇでくれよ。オレとのおしゃべりに付き合ってくれりゃいー……――」
そう誘い、改めて荷物を受け取ろうと手を伸ばし。
■ノエル・ベネトー > 「あら…言われませんか?
女性に手慣れてそうですし、…何よりお優しいですし。」
見ず知らずのエルフの荷物を持とうだなんて、それだけで奇特な大人だ。
問い返す相手を更に問い返すような、意外そうな顔で評価を続ける。
「まあ…。
えーと…喫茶というのは、お茶や甘いものがある場所、であってますでしょうか。」
文字も最近学んだ程度のレベルであり、看板の字を読む口調も怪しい。
確認しながら、意識はすでにそちらへと向いているようで窓から店内を覗くように動いた。
同じように雨宿りしている者がいるのだろう。
わりと混んでいる印象だ。
が、エルフはやや期待の眼差しで振り返る。
「本当は遠慮しなくてはいけないのだと思いますけど…そんな魅力的なお誘い、断れません。
あの…このお店はケーキ、ありますでしょうか?
もしあるのでしたら、頼んでも?
お金はわたしがいつかきっと、働いてお返ししますから。」
実は無職である。
まずは職探しからという気長な提案にも、本人は大まじめ。
やはり『優しい』彼に甘えることとして(すでに言動に甘えが入っていることだし)
自分の腕より遥かに逞しく、力のありそうな相手に荷物を差し出す。
ありがとうございます、との感謝の言葉とともに。
■エズラ > 「ま……スレてる方だとは思うがよ――ああ、それとな。愛らしいって方は、ガキの頃にも言われた覚えがねぇ――あ、ああ、もちろんあるぜ、ケーキ。」
ぽりぽりと頭を掻きながら自己評価を決めかねていると――やや食い気味に反応され、少し戸惑うが――ともかく、差し出された荷を抱えることにする。「ケーキでも何でも頼みなよ――」と笑顔で返答しつつ、入店。小綺麗な格好のウェイターに案内される。店内はそれなりに混んでいたが、丁度入れ替わりになったのか、窓際の席へ。簡素ながらも洒落た品揃えのメニューを相手に渡す――
「表が飲み物、裏がケーキ――ご自由に。」
ケーキの種類は三つ――メニューを指差し、上から「チョコレート、ストロベリー、チーズ」と付け加えつつ、手を振り先ほどのウェイターを呼ぶ。自分はコーヒーを注文――
■ノエル・ベネトー > そんな口ぶりに似合わない仕草が愛らしい、とはあえて言わなかった。
何となく、そういうことはとっておきの時に言ったほうがいい気がする。
男性に荷物を持ってもらい、うきうきと入店するエルフの姿はデートに浮かれる女子に近い。
案内された席に座ると、その勢いがよかったようでたぷん、と胸が跳ねた。
テーブルに頬杖ついて、ケーキメニューを眺める。
わざわざ説明してくれたあたり、彼は本当に優しいのだろう。
まだ文字もあやふやな時期であり、彼がそうしてくれなければ自分から尋ねていたところだ。
「ストロベリーケーキと…お茶をください。」
ウェイターに頼み、その背を見送ってからケーキとコーヒーが到着する合間。
真正面に向かう相手の貌を眺めて、から。
「エズラさんは何をされている方ですか?」
お見合いのような切り口で。
■エズラ > それにしても、改めて見るに――なにかフワフワとした幻想を見せられているような気分になる。人間と姿形は似ているが――美人とか、可憐とか――そういう言葉では形容しきれない、一種異様な美貌。異種族であることを実感する。しかし、うきうきとメニューを眺める姿や、たわわに揺れる乳房をまじまじ眺めて――何だか見てはいけないものを見たような気になり、ふと目をそらす。どうもおかしい、乱される――
「んんっ!?」
不意に真っ直ぐ見つめられ、問いかけられて片肘ついた手の甲に乗っけていた、顎が揺れて。
「仕事ってことか――ま、普段は戦で食ってる――戦場に用事がねぇときゃ酒場や賭博場の用心棒まがいのこともやるぜ――こいつがオレの頼みの綱よ。」
ぽん、と腰の剣を叩く。由緒正しい名剣でもない、魔法の力を秘めた魔剣でもない――切れ味だけは一級の無銘。しかし、柄や鞘、剣帯の傷から、使い込まれていることは、素人目にも分かるだろう――そうこうしているうちに、オーダーが運ばれて。コーヒーをひとすすりしてから――
「さ、食いねぇ――ノエルちゃんは、なんで森から出てきたんだい。」
■ノエル・ベネトー > 何だか調子を狂わしている相手の様子に気づく気配がないのは
もともと鈍いタイプに加えて、もうすぐ食べられるケーキに夢中だからだろう。
しかし相手の仕事内容に無意識に眉をひそめることに。
「戦で…?まあ…、危ないお仕事をしているのですね。
ご家族は心配でしょうね…。」
出会ったばかりの自分ですら心配になる。
使い込まれた武器は、彼の戦遍歴の長さや腕のよさを表してはいるけれど、
思わぬところで足元を掬われるのが戦だとも聞いている。
能天気に仕事を聞いたところでテンションが落ちた。
これが貴族をやっております。屋敷でぬくぬくしております。だとかであれば
エルフの能天気ぶりは続いたと思うのだけれど。
無論、彼の出で立ちはそんな感じではないとはいえ。
「いただきまあす。」
下がったテンションはケーキで一気に上がる。
フォークを刺して、クリームを掬う。
口に含むとふわりと溶けてほんのり甘く、至福の味に頬が緩む。
「んえ?あ…え、とですね…。
わたしの住んでいた場所はエルフしかいませんでした。
とても退屈で、いつも本で読む場所に憧れていたんです。
それで……連れて行ってくれると言ってくれる方が現れて。」
ぱくり、スポンジも食べて咀嚼。
その食べっぷりは成熟した外見に比べて子供っぽい。
■エズラ > 「なんつーか……ノエルちゃん見てると、つくづく心臓に悪いぜ。」
まさか、心配されるとは思ってもみなかった。こんなに天然を地でいくエルフが、この街でよくぞ今までのほほんと生活していられるものだ――現に今だって、魅惑的な胸元に自然と視線が注がれてしまう――そんな相手は少しばかり気落ちしたのも束の間、頬を緩ませながらケーキを頬張る姿に、こちらも自然と笑みが漏れて。
「なるほど――冒険ってわけだな。」
彼女を連れ出した誰かさん――は、果たしてちゃんと彼女の身を案じているのだろうか。今まさに、都会のケダモノの毒牙にかかりそうになっていますよ――などとは、今日はもう思えなかったが。彼女の放つ独特の雰囲気に、すっかり身体が慣れてしまってきていた。そして、もっと興味がわいてきていた――
「なァノエルちゃん――またデートしてくれよ、ウマイ酒おごるぜ。」
■ノエル・ベネトー > 心配しているはずが、心配されている(?)とは思わない。
ケーキ頬張りながら、笑顔の彼と視線が合うとにっこり、笑い合う。
それはたしかに非常にのほほんとした空気であり、1歩間違えれば
兄にごほうびをいただいている妹のような、そんなもの。
妹の胸にクリームがぽたりと落ち、それを指先で掬い舐め取ったりと、無駄に
性的に活発な肢体がそこにあることは置いておけば。
「うふふ、ほんとですか~嬉しいです~。
お酒あんまり強くなくて、このあいだは気づいたら寝てたってことが
あったんですけど…それでも誘って頂けます?」
満面の笑みで危ない発言しつつ、あっという間にケーキ完食。
甘ったるくなった口の中をお茶で爽やかにして、はふ、と息をつく。
「あ…そろそろ小降りになりましたねえ…。」
窓を外を見るとよく見なくてはわからない程度の小雨に変わっている。
相手との時間が終わりだと言われているようで寂しいけれども、本当に
お酒を奢ってもらえるならまた会えるのだ。素直に嬉しい。
■エズラ > 「あ~、もちろん大丈夫だぜ――「休めるとこ」色々知ってっからさ~……――」
お誘いを受けてくれたことに心の中でガッツポーズを決めつつ、遠慮なくその胸元をジロジロと眺める。高貴な異種族エルフ――というイメージはもちろん消えてなくなりはしないが、ようやく自分本来の調子が出てきたような気がする――というところで。
「お……そうだな。そろそろ行くとすっかよ――」
半分ほど残っていたコーヒーを空にすると、ウェイターを呼んで勘定を済ませる。傍らに置いていた買い物袋を小脇に抱えると席を立ち、出口に向かって歩き出す前に、少し腰を折って相手に手を。
「途中まで、送るぜ――ほっとくと迷子になっちまいそうだからな?」
ニッ、と口の端を持ち上げて笑う姿は――不適というより無邪気な、からかいを込めた少年じみた笑い。相手がその手を取れば、小雨の上がった石畳を、暫し二人で歩くのだろう――
■ノエル・ベネトー > 「楽しみにしてます。
あまいお酒が好きなので、教えてくださいね。」
森では多少節制していたけれど、ここは甘いものが溢れていて
ただでさえ人より多い余分な肉がいろんなところにつきそうだ。
けれどまだ恐れるほどではなく、浮かれながらおねだりしておく。
デートの終わり。
差し出された手に、そっと自分の手を乗せて軽く握る。
冷えていた指先はすっかり暖まり、互いの体温が混じっていくような心地。
「迷子にはなりますけど、毎回ちゃんと帰れますよう。」
などと反論にもならない言葉で言い返しながら、お言葉に甘えて途中まで送ってもらうのだろう。
別れる頃には雨はすっかり上がり、エルフの気分のように晴れやかになっているはず――――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からノエル・ベネトーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエズラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にティエンファさんが現れました。
■ティエンファ > 身体がぎしぎしと痛む、数日前の怪我のせいだ。 治りかけていると言っても、まだまだ本調子じゃない。
それを酒で誤魔化して、息を吐く。 羽織った長衣の下、鍛えた胸板や肩の筋肉をきつく戒める包帯。
「ぷはぁ …うん、いや、ちょっと下手打ってね」
酒場のマスターの問いかけに、情けない顔で笑う。
酒を傾け、肉を齧る。 とにかく肉と血が足りない、と言うように旺盛な食欲。
「用心棒依頼を受けて現地に行ったら、閉じ込められて襲撃だよ、酷い話さ」
■ティエンファ > 「それでどうやって助かったのかって?
情けないんだけど、数人ぶちのめして、あとはほうほうの体で尻尾撒いて逃げ出したよ
途中で助けが入らなかったら、ありゃあ死んでたな、野垂れ死に」
はは、と笑って見せる。 けれど、気付けば酒の入ったグラスを持つ手が震えていた。
その手を片手で押さえ、気付いていたマスターが見て見ぬふりをするのを見て、へへへ、と情けなく笑う。
「…ああやって裏切られたのは初めてでさ、流石にショックだよ
殴り合って死ぬのは覚悟も出来てるけど、殺すために殺されそうになったのは初めてでさ…」
…情けない、と苦い声で呟き、酒を呷る。
瓶で酒を追加すれば、焙り肉を一欠けら。 既に酒の瓶は3つを空けていた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にシュカさんが現れました。
■ティエンファ > 「戦って死ぬ覚悟はあっても、屠殺される覚悟は無かったって事」
顔に傷のある元冒険者のマスターは、にやりと笑ってまだ若い冒険者の言葉を聞く。
栓の抜かれた酒瓶が少年の前に置かれる。 少年はそれを取り、グラスに注ぐ。
揺れる琥珀色の液体を眺めてから、溜息を吐き、ぐうっと飲み干す。
「腕っぷしだけじゃあない、経験もまだまだ足りないよ、俺は
悔しいなあ、親父殿なら、表情も変えずにするっとやり過ごしてるんだろうな、って思うと、悔しいよ」
■シュカ > 「ウェ――ーイ」
酒場の扉を開けると同時に、アホ丸出しの挨拶を一つしてから、足を踏み入れる。
軽く店内を見渡したあと、カウンターに近いテーブル席へと進んで腰を下ろし、オネーチャン、酒、とイスに背を預けて軽い口調で店員に声をかけた。
酒が出てくるまで、特にすることもない。
のんびり背凭れに身を預け、やや怠惰な様子で店を眺めていたが、そう遠くないカウンター席に座る少年の言葉に、ひょいと眉を上げ。
興味を惹かれたようで、マスターと少年の話を盗み聞き、の心算か、背凭れに凭れていた身体を起こし、テーブルに頬杖突いて暫し耳を傾ける心算。
■ティエンファ > 明るくて軽い声に振り返る。 見知らぬ男が近くのテーブル席に座るのを見てから、溜息を吐きながらカウンターに顔を戻す。
シュカの耳に少年の愚痴のような声。 マスターに話してる内容は、ざっくりと纏めると、襲われた話。
新入りだけど評判の良い用心棒が、同業者にやっかまれて殺されそうになって逃げだした失敗談だ。
黒く長い髪、幼さの残る横顔。 しかし、包帯が巻かれた身体はしっかりと鍛えられている。
どこかアンバランスな、大人とも子供ともつかない年頃の少年は、酒を呷って。
…それから、ふとシュカに顔を向ける。
「…聞いてて面白い事ないよ、お兄さん 良い趣味じゃないぜ、盗み聞きなんて」
ちょっと唇を尖らせる顔は子供っぽく。
1人でマスターに話しかけてるのにも飽いたのか、どこか絡み酒のように声をかける。
■シュカ > 頬杖突いて、さりげなーいフリをしてはいるが、マスターと少年との会話に、時折笑ってしまいそうになり、片手で口元を覆う。
ヒトサマの失敗談を愉しんでいるというよりは、むしろそんな愚痴めいたことを正直に話す少年の素直さを愉しんでいるようでもあった。
ちょうど、店員の女性がジョッキに並々と注がれたエールを持ってきたから、どーも、と軽く手を上げ。
それを口へと運ぼうと引き寄せたとき、件の少年がこちらに顔を向けたから、一旦動きを止めて顔を上げる。
「あー、スマンスマン。いやー、少年の武勇談はなかなか興味深くてなー。
まぁ、ナンにしても、生きててよかったじゃねーか、なぁ?」
けらりと悪びれる様子もなく朗らかに笑い、失敗談を武勇談、と言い換えてから腰を上げると、隣イ?と短く承諾を問い。
■ティエンファ > 「武勇伝って」
少年らしい自尊心から、からかわれたと思ったのか、ちょっと眉を寄せる。
酔いが回っているせいか、生来のものか、感情がすぐに顔に出るタイプの様だ。
明るく笑うシュカを見て、それ以上文句を言えずにもごもごと言葉を濁す様子。
「まあ、お蔭さんでね 途中で助けの手があって、数日かくまって貰ったよ
…ん、良いけど…さっきも言ったけど、面白い話じゃないだろ?」
承認の頷きを返してから、ちょっと場所を空けるように身体を傾ける。
胸と肩に巻いた包帯から覗く、鮮やかな色の刺青がシュカの目に入った。
服装、髪色肌の色、どうやら帝国の方の生まれだと分かるだろうか。
「お兄さんも冒険者かい? じゃなくても、なんかやってる人だね
…お兄さんも、こういう失敗したことが?」
■シュカ > 相手の表情の変化を見ると、片手をひらひらと軽く左右に振って。
そののち、スペースを空けてくれた相手に、どーも、と声をかけて腰を下ろした。
「そーいう顔すんなよ、少年。考えてみろ、お前さん、そんだけ怪我して生きてンだ。
それに助けが来たのだって、それこそ幸運さ。立派な武勇の一つだろ」
なー、マスター、などとマスターも巻き込んで、この正直者の少年を宥めるような言い方をし。
漸くエールの入ったジョッキを口に運び、喉を鳴らして半分ほど飲む。
ふぃー、と満足そうに息を吐き、ジョッキを置いたところで、ちょうど相手の刺青が目に入った。
ほー、と珍しそうに目を細めては、
「そうか、…なるほど。お前さんか、ここらで噂の用心棒ってのは。
んぁ?俺か?あぁ、俺も適当に仕事こなして日銭稼いでるシュカっつーモンだ。
お前、そりゃ失敗なんて腐るほどあるぜ。
それに、最近、花と竜かなんかの刺青のある若い新入りに仕事を奪われっぱなしだしな」
言葉を返したあとで、漸く目の前の少年が、この界隈で最近名をはせている件の少年だと理解した。
となれば。
ほうほう、と思わず相手をじろじろと。不躾ともいうべき視線で、相手を品定めでもするように眺めてから、ほほーう、と感心した様子。
■ティエンファ > 「運が良いとは思うけど、それって武勇とは違くね?
運は運だよ、自分で引き寄せた物じゃない、差し伸べられたもんだし」
納得いかない様子だが、シュカの明るい様子にペースを持って行かれて、つっけどんにもできない様子。
エールを飲む主化の隣で、どの強い酒をグイッと煽る。 数本の瓶が並ぶところから、既に結構な量を飲んでいる事が分かる。
「噂って、別に普通に依頼をこなしてただけなんだけどさ
…って、え? あ、う… …お兄さんも、俺の事を狙うつもりかぁ?」
噂では、豪放磊落で生意気なガキ、と同業者の中では目の敵にされていたが、
シュカの目の前にいる少年はどこか自身が足りない様子の、落ち込んだ子供。
無遠慮な視線を受けながらも、ちょっと眉を下げてシュカを見る。
「…ティエンファ、最近来たばっかりの新人だよ
ふん、俺に仕事奪われるって事は、奪われた奴らの普段の仕事が荒いからって事さ
… …とか言ってるから駄目なのかなー! ねー、お兄さんよ、俺って駄目かな!?」
初めて会ったシュカに絡み酒だ。 シュカの肩に手を置いてぐらぐら揺らす。
雇う側からの評判としては、それなりに礼儀をわきまえて腕っぷしも良い、そんな悪くない評判なのだけれど。
■シュカ > 「え、ちょっと、ナニソレ、少年。完璧主義すぎじゃね?
そういう運もお前さんが引き寄せたモンだろ。運も実力のうちっていうし。あ、俺の国じゃね、そーいうんだけど」
相手の実直さがよくわかる言葉だったが、他力本願万歳なこちらにしてみれば、なんだかちょっと羨ましいような眩しいような。
はー、やるねぇ、と思わず感嘆の言葉を零してしまった。
「おー、ティエンファね、ティエンファ。宜しくな、少年。
いやいや、俺は酔い越しの銭は持たねぇ主義なんで、お前さんを狙う気はないけどな。
いやー…まさか、お前さんが件の新人用心棒とはなぁ。
俺はもっとこう、イカツイのをイメージしてたぜ、オーク級の」
ひらひらと手を左右に振って否定の意。
相手が「普通に」依頼をこなしていたらしいが、それでもやっかみがある程度の完遂率であるのはギルドでも聞いていた。
だから、最早人間離れした類の新人像を描いていたが、それがどうして、目の前にいるのはまだまだ子供じみた少年である。
「いやいやいやいや、待て待て待て待て!
酔ってる!酔ってるよ、そして絡んでるよ、ティエンファ!」
ぐらぐら、がくがくと肩を揺らされ。
笑いながらツッコミめいた言葉をかけて、ダメじゃねぇからー!とそこはきっちり否定したのち、手を伸ばし。
相手が避けなければ、そのまま髪を掻き乱すみたいにわしゃわしゃナデナデする心算。
■ティエンファ > 「そんなんじゃないですーう、普通ですーう! …運も実力のうち、かあ…
でもさー、やっぱこうさー、どんな事があっても鼻で笑い飛ばしてさー、何とか出来ちゃう位じゃないとさー」
カウンターに顎をのっけてグダグダと管を巻く少年。
普段の酒の強さを知っている友人たちが見たら驚くくらいに酔っぱらっているのだけれど、シュカはそれを知らない!
狙う気はない、と言われて、本当に?とか3回くらい確認してから、深く長い溜息を吐いて安心した様子。
「オークじゃねえし、生まれも育ちもヒューマンだよ 魔法すら使えない普通さだよ
…はあ、やっぱ遠距離攻撃の手段も鍛えないとなあ、針を借りられなかったら、短弓にも手が出せねえもん…」
愚痴のすべてが、次はこうしよう、これが悪いからここを変えよう、と言う積み重ねなのだけど、
本人としては、そんな事にも気づかないで、悔し紛れにシュカに絡むのだ。
「酔ってないし! 酔ってなーいーしーっ わふっ」
わしゃわしゃと頭を撫でられ、犬のような声を漏らして大人しくなる。
こしの強い髪が乱されれば、尚更幼い感じになりつつも、はあ、とまた息を吐いて。
「なんだろうなー…折角王都まで出てきて、頑張ってたのになー…こんなことがあるって思わなかったから、ちょっと凹むよ
失敗を腐るほどしてるっていうシュカは、こんな時どうしてるん?」
酔いでちょっと潤んだ目…いや、実際にちょっと涙目なのだけど…でシュカを見て、撫でられたまま尋ねる。
■シュカ > 「いや、お前さんがそれでフツウだったら、俺ってナニ、ってなるから、そこはホラ、甘えるとこは甘えとけっていう。
そうそう、笑っておけば人生何とかなる。ハイ、今日からお前さんの家の家訓にしなさい」
とてつもなく適当で、とてつもなくどうでもいい〆をしたクセに、いいこと言った感の滲むドヤ顔を浮かべ。
かなりご機嫌なほど酔っ払っている少年を見ながら、さすが噂の用心棒は酒も強ぇーのか、と180度違う感心をしてしまう始末。
「あぁ、俺は狙わないけど。襲うかもしれないことは、否定しませんが。
つーか、ティエンファ、お前、一人反省会すんのもほどほどにしとけよ?
生きて帰ってきて、美味い酒、それで十分じゃねーか。な?」
偉そうな台詞を口にするが、声色はどこか穏やかであり、少年を心配しているようでもあり。
噂で聞いていたオーク級の用心棒ではなく、目の前にいるのは年相応の多少の脆さを内包する少年なのだから、構いたくもなるというもの。
「酔ってる酔ってる。自覚ねぇのか、オイ。
…んー、俺か?そーだなぁ…」
わしわしと乱せる範囲で乱す悪戯心で髪を撫でていた手は、ヨシヨシと動きが穏やかになるも、撫でてるのは継続。
相手から問われた言葉は、予想外に難問。うーむ、と真面目な顔をして悩んでしまう。
そもそも失敗しても、あ、スマーン、で済ませてきた適当人間だから、目の前で涙目になっている少年相手にアドバイスができるかというと…。
「………あのー。ティエンファくん。思うんですけどね、おにーさん、ちょっとあの、そういう顔、弱いんですよ。
襲っていいですか?」
少しも、まったく、全然アドバイスになっていない、むしろ問われたコトに一言もマッチしない返答をしてみた。
一応殴られてもいいように、顔はヤメテね?と付け加えておく。
■ティエンファ > 「知らんがな うちの親父殿とかなら、鼻歌交じりに全員ぶっ潰したりしちゃうんだもんさー…自信無くすよねー…
うー… わらっておけばなんとかなる、じんせいなんとかなる…」
撫でられているうちに少し落ち着いてきたのか、棒読みながら素直に言葉を繰り返す。
男に撫でられることに忌避感が無いのか、普通の男の様に嫌がる様子もなく、撫でられるままにぐらぐら頭を揺らして。
「襲うってなんだよ、俺に助平な事しても、女っぽくないから面白くないだろうにさー
… … はい、命あっての物種ってのは、分かってるんだけどさ やっぱり、悔しくって」
柔らかな声で諭されれば、犬が落ち込むような顔で、しかし大人しく頷いて呑みこんだ。
少年がミレー族であったなら、耳が寝て尻尾が丸まってるだろうと分かる位従順な様子。
真面目な顔で悩むシュカの様子を見つめて…。
「…って、なんでそうなるのさー!?」
顔じゃなくてお腹を殴っておいた。 てかげんはした。
自分の顔をペタペタ触って不思議そうに。
「どんな顔だよ、襲いたくなる顔って…まったくさあ、シュカは」
しかし、ふにゃ、と顔の険が取れて、やっと零した笑みは柔らかく。
自分が殴ったシュカのお腹辺りを撫でて、ごめんな、とか笑いながら謝る少年は、シュカに心を許したようだ。
■シュカ > 「俺もそれやってみよーかな、鼻歌攻撃…。
つか、自信持っていいだろ、お前さんの武勲があって、狙われるんだからよ」
何処まで本気かわからない口調で、相手の言う「親父殿」の武勇に想いを馳せて、ほほう、と感心したように頷く。
お前、全然家訓にする気ねーな、と棒読みな相手にぼそりとツッコミ入れていたものの。
「いや、面白い面白くないという問題じゃねぇんだよ、それは。
まー、それがわかりゃ、お前さんも一人前、ってね」
解るかい、少年、と偉そうに胸を張り、イイコイイコ、と相手をナデナデ。甚く気に入ったようで手は相変わらず髪を撫でている。
が。
「ぅおう?!」
手加減は…本当にしてくれた?と一度問いたいが、怪我人の相手だから、声を上げたものの、さほど痛みはない程度に加減はあった模様。
拳を食らった辺りを撫でながら、はは、と悪びれる様子もなく笑い、
「いやー、真面目に答えたら面白くねぇだろ?
でも、まぁ、襲いたくなるってのは、お前さんの質問の答えとしては、遠からず近からずさ。
それに、そーいう弱気な顔してると、おにーさん、ちょっとヨクジョーしちゃうって話」
要するにそういうこと、で解消する、ということを暗に示し。
お腹を撫でる仕草に、もっと介抱して?などと謝罪する相手に対し、調子こいて弱々しく強請るアホな態度を見せ。
が、すぐに、ぽんぽん、と相手の頭を撫で叩いては、
「お前さん、きっとイイ男になるさ。そうなりゃ、失敗も少なくなる。失敗したら、まだ成長するチャンスが来たって思やいい」
思い切り真面目に、誠実に答えたあと、偉そうなことを言う立場でもない己の台詞に、羞恥が沸き起こり、慌ててエールを飲み干すことで誤魔化そうかと。
■ティエンファ > 「鼻歌攻撃って言うと、鼻息で全員ふっ飛ばす感じに聞こえるなあ…
んー…うん、でも、わかった …へへ、ちょっと自信が戻って来たかも」
少しずつ戻ってくる笑顔は、勝気な、でも柔らかな物。
突っ込みはちょっと視線を逸らして誤魔化して。
「んー、まだちょっと分かんないや …でも、そう言う事をして良いと思えるくらい気に入ってくれたってんなら、
俺としては、悪い気はしないけどな …うん」
撫でられているうちに、どこか気持ち良さそうに目を細める。
普段であれば、鍛えた身体や立ち居振る舞いで、むしろ精悍な印象を与えるだろうけれど、
シュカが撫でる少年は子犬か子猫の様に、むしろ自分から撫でられるように遠慮がちにその掌に頬を寄せる。
媚びるのではなく、純粋にシュカの掌が気持ち良いというように。
「弱ってる相手に欲情するとか、イイシュミしてるぜ シュカは」
ねだってきた様子を見れば、冗談交じりに腹を抓ってやり。
頭をポンポンと叩かれた時には、普段通りの明るい笑顔に戻っていた。
「そうだな、つまずいたら、その石を踏みしめて立ち上がれば良いだけだもんな
へへ、ありがとシュカ 元気出た」
ぐぅっとグラスの酒を飲み干せば、頷いて。
そして、照れ臭そうに酒を飲むシュカの、自分の頭を撫でる手に顔を寄せ、子犬が甘えるように軽く歯を立て、口を離した。
頬を包ませるようにシュカの手に顔を添えたまま、に、と子供っぽく笑えば、立ち上がって。
「よっしゃ、元気あるうちに、ちゃんと帰って寝るとするわ!
ありがとな、シュカ! 残りの酒は呑んで良いから、俺の奢り!」
■シュカ > 何のアドバイスも出来てはいないし、酒を片手に、ともすれば相手をからかって楽しんでいたようにも見えるものの、
それでも、相手は笑みを浮かべ、先ほどまでの脆さはナリを顰めているから、おう、と短く返事をし、目を細めた。
「まー、そのうち解るさ。…たぶん。おそらく…あー、きっと?
とりあえず、アレだ、お前さん、夜道には十分気を付けろよ」
解らない、と素直に応えた相手に、これまた適当な言葉を返して。
笑いながら、忠告めいた言葉は、彼を狙う相手に、違う意味で狙う自分も居ます宣言を付け加え。
その表情も言葉もどこまで本当なのか微妙なもの。
それでも触れた頬を、指先ですっと撫でて、笑みを浮かべる辺り、ほぼほぼ狙ってます感が滲むやもしれず。
「だろー。俺は弱ってるヤツを更に責めるからさー、だから、失敗しないので」
キリッとか擬音が付きそうな顔をして、失敗しない秘訣?をこっそり白状しておいた。
が、そのドヤ顔も、軽く抓られると、ジョーダンだって~、とくすぐったさも相まって、声を上げて笑い。
「わお、ティエンファくん、前向き。おにーさん、ちょっと眩しいわ、それ」
大げさに目を細め、顎を引き。
手に返る硬質な、甘噛み程度の戯れに、けらりと笑って、離れて行くと、もう一度、わしゃわしゃと相手の髪を撫でて。
「おお、ナニ、男前。ごちそーさーん。んじゃあ、残りの酒はちゃんと頂いて…」
ちゃっかり家飲みように飲みかけの瓶は頂く心算。
立ち上がった彼に合わせて己も席を立ち。
彼が許してくれるならば、帰路が別れるまで共にしよう。
それが出来たならば、あーだ、こーだ、とこちらはアホな話題を吹っかけて、談笑しながら酒場を後にしていく…。
■ティエンファ > 「適当な事言ってらぁ! …でも、今日はそれで助かったよ
これも俺が引き寄せた運って事かね シュカと知り合えた
はは、さっきまでの俺ならともかく、今の俺はそう簡単には襲われないぜ! …相手に心を許してなきゃね」
に、と僅かに歯をのぞかせて笑う。 本気かどうか判らないシュカを、しかし突っぱねる様子はなく。
頬を撫でる指にくすぐったそうに目を細める少年は、わざとらしい手管とも気づいた様子はない。 そう言う方面にはまだ疎いのだろう。
「戦術だなあ へへ、今日は失敗したのかな?
…俺は、こんな風に見ず知らずのヤツに優しく出来るシュカが眩しいよ」
撫でる手が離れてから、クシャクシャな髪のまま、シュカの目を真っ直ぐに見て微笑んだ。
そして、一緒に立ったシュカと途中まで一緒に行く。
意外と近くの宿をとっている事を話し、宿の前で別れた。
シュカも知っている宿なので、来ようと思えばこれるだろう。
沿梳いて、新しい出会いを手に入れたのだった…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からティエンファさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からシュカさんが去りました。