2017/03/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にノアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティエンファさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にノアさんが現れました。
■ノア > 意識が途切れぬように、 会話が途切れてしまわぬようにと.. どうしてこんな事になったのか、 質問を投げる。どうやらその腕のせいで、 妬まれてしまった事が始まりらしい。
「 イケメンで腕も立つってのは大変ね、 妬み嫉みでこんな目に遭うなんて。
.........ほら、 入って。」
なんて、 冗談ぽく返しつつ.. ようやく辿り着いた家のドアを開けた。貴方を招き入れると、 後を付けられていないか確認しドアを施錠。全ての窓のカーテンを閉めてから、 手早く必要な物を取りに行った。
「 好きなとこ座って.. ってもベッド二階だから、 とりあえずソファーかな。」
女の一人暮らしにしては、 可愛げのないシンプルな部屋。清潔な布や度数の高いアルコールを手に戻ると、 他愛もない会話を続けたまま慣れた手付きで手当を始める。身体に刺さっていた矢の先を取り除く時だけは、 さすがの痛々しさに顔をしかめるも.. 簡単ではあれ、 必要な処置は全て済ませた。
「 とにかく.. 此処なら大丈夫だから、ゆっくり休んで。」
■ティエンファ > 「まったくだよ…へへ、まあ、お蔭でこうやって、美人と縁が出来たって思えば、気も晴れる…」
冗談を返す元気は残っているようで、情けなく笑って家に入る。
宿住まいの自分とは違い、家持のノア。 成程、これなら宿よりも安全かと内心で納得する。
誘われるままにソファに座れば、何とかローブを脱いで、ぐったりと背もたれに寄りかかる。
何でもないような会話を続けてくれた桶毛で、何とか気絶せずに治療を受けることができた。
弦が弱い短弓だった事が幸いしてか、細い矢はあっさり抜けて、治療をすれば出血も抑えられた。
血の気は薄いが、さらしの下の刀傷も治療を受ければ、致死は免れたのだろう、深く息を吐く。
「うん、有難うノアちゃん… へへ、あそこに放っておけば、こんな手間にならなかったのに
…ホント、助かった この恩は必ず返すよ」
弱い声ながら、それははっきりと言い、ぐるりと部屋を見回す。
調度品も少ない簡素な部屋、少し首を傾げて。
「旦那さんとか帰って来たら、今度こそ俺殺されたりしない?大丈夫?」
■ノア > 「 当たり前でしょ、 回復したら何か奢ってもらうつもり。そうね.. 5つ星の高級レストラン予約しとくー 」
手当を終えてもなお忙しなく、 使った物を片付けたり、 血に濡れた長衣やサラシを手洗いしたり。染みは残るかもしれないけれど、 このまま放置しておくよりはマシだろう。何か食べ物や飲み物を と思い、 キッチンに向かうも..
( 自分でも引くくらい酒しかない.. )
温かいスープなど、 気の効いたモノは出せそうになかった。とにかく水やら酒やら手当たり次第にテーブルに運び、 ようやく.. 貴方の隣に腰を下ろして。
「 キッチンにこんな物しかない女に、 旦那が居ると思う ? 好きなの好きなだけ飲んで。」
やっと一息ついた女は脚を組んで だらりと座り、 適当な酒瓶を手に取ると直接口を付け豪快に喉へ流し込んだ。
■ティエンファ > 「貧乏冒険者に言うねえ まあ、命の礼だ、喜んで奢らせてもらうよ」
家主が手際よく洗濯や片づけをする様子を眺める。
血の巡りの悪くなった頭でぼんやりと『世話焼きだなあ』とか、感心していた。
正直、毒針持って裏街に繰り出す女なのだから、適当でがさつなのかと勝手なイメージを持っていたのだけれど。
一息ついて隣に座ったノアに顔を向ければ、ちょっと笑ってしまう。
「見ず知らずの男を救って、傷の手当てもして、洗濯まで済ませてくれる女だぜ?
旦那はまだしも、他の男が居て怒るイイヒト位は良そうなもんだって思うさ」
言いながら、礼を言って一つ瓶を取る。 安いが強い蒸留酒。
女と同じように瓶から直接飲み下す。 喉が焼け、強烈な酒精が漂うが、むせる事なく喉を鳴らす。
「ぷはっ、生き返る…ッ! …こんな物処か、今は一番のご馳走だよ 消毒にもなる」
そのまま暫く無言で酒瓶を傾け、やっと一息つけば、体を起こして瓶を置く。
右拳を左手で包む、独特の礼。
「改めて、ノアちゃん 助かった、あのままだったら死んでたか、死ななくても酷い身体になってたところだったぜ」
■ノア > 「 ずっと行ってみたかったの、 約束よ ? 楽しみにしとく♡ 」
一通りやるべき事を済ませようやく緊張も弛み、 ふふ と悪戯に笑って見せ。共に5つ星へ行くにはあまりに品のない飲み方で、 まるで祝杯でも上げるみたいに酒瓶を煽った。
「 .....お察しの通り、 隠し事も少なくないから。嘘つき続けたり 弱みつくったり、 巻き込んだりしちゃうかもって.. 考えれば考える程億劫になるってゆーか..
.........って、 随分強いのイクね。」
軽く恋愛の愚痴を溢しつつ、 豪快な飲みっぷりを横目に感心。すると急に此方を向いた貴方に、 自然と姿勢正して。
「 こっちこそ、 ありがと。
そんな事より..... かしこまった礼なんて要らないから、 大人しくしてて。幽霊みたいに真っ青だよ、 顔ー 」
助けてもらったのは此方も同じと、 素直に礼を返す.. が、 最後にはやっぱり可愛げのない台詞付け足して。
「 ティエンファは居ないの ? イイヒト。」
■ティエンファ > 「了解したよ、これも良い経験だ」
肩を竦めようとした所で、左肩の矢傷が痛み小さく呻く。
そんな様子を見せてしまえば、格好つける事も出来ないな、と頭を掻いて苦笑した
そして、ノアの愚痴を聞いていれば、同じ感じだな、と首を傾げて。
「ノアちゃん程に裏を持つほど経験は重ねてないが、俺も俺で見ての通りの無頼でね
なんとなく判る気がするよ、そう言うの 腕を上げて名を売れば売るほど、敵も増える
…億劫なんじゃなくて、ノアちゃんは根が優しいんだろうな 巻き込みたくないんだろ?」
今回は俺が巻き込んじまったけどな、と胸板に巻かれた包帯に手を置いて。
「俺、今日礼を言われるような事したっけ?
…はは、ご厄介になるよ 今外に出て歩こうとしても、足がふらついて行き倒れそうだしな」
助けた、と言う自覚がないので不思議そうに言いながらも、返される問いかけに目を細める。
「決まった相手を持てるほど、俺はまだ強くもないからな
それに、相手を持つには風来無頼の身は軽すぎる」
ぐい、と酒を呷れば、既に半分が減っているのがガラス越しに分かる。
指で口元を拭えば、ノアに差し出す瓶。
「一先ずの無事に」
乾杯、と。
■ノア > 「 優しいとか そんなんじゃない、 考えるのが面倒なだけ.. 」
思わぬ言葉に照れくさそうに、 つんと琥珀色の瞳を逸らし酒を煽る。貴方の話を聞くと似たようなものね、 と独り身同士互いを慰め合い.. やっぱり酒を煽る。
「 ん..... 乾杯。」
飲みながら、 ふと思い出す噂話。何処かの酒場だったか、"腕の立つ武芸者がいる" と.. ちらり横目に貴方の風貌を見詰めると、 一つ一つ耳にした特徴と一致して
( ..... ティエンファだ。)
と、 勝手に納得。けれどもうあまり疲れさせたくはなかったし、 それ以上触れずに今夜の段取りを始めた。自分はソファーでいいとして、 貴方にはベッドを使ってもらおうと
「 気合い入れて階段上がって、 今日は二階のベッドで寝てね。せっかく手当てしたのに、 ソファーから落ちて死なれちゃ堪んないし。
あー けど、 その前に.. 」
血の付いた下衣が目に付いた。ゆったりとしたデザインのようだけれど、 生憎この家に似た物はない。
「 ドレスならあるんだけど、 男物は.. 」
■ティエンファ > 誤魔化す様に酒を呷る様子を横目に眺めれば、それ以上突っ込む事は無いけれど、
ちょっと子供っぽく笑って、それはそれで、と一旦受け止める。
長い黒髪、逞しく盛り上がった筋肉に彫り込まれた刺青、一撃で昏倒させた蹴りの動きも、歳に見合わない。
ノアの記憶に合致したその特徴は、間違いないだろう。
対して、こちらはノアの裏の顔も知らず、堅気ではないとは見抜いたが、そこまでで。
ソファーで寝るとノアが言えば、目を瞬かせて。
「それっ位じゃ死にやしないよ、家主かつ女を押しのけてベッドでは寝れないって!
俺はソファで… …ドレスは勘弁かなあ…!」
思わず情けない声をあげて、それから、それを着た自分を想像した。 …うーん、無い!
「ノアちゃんが気にしないなら、下着一枚か裸で毛布にくるまってで良いんだけど、流石になあ…」
自分のズボンを押さえ、ちょっと視線をさ迷わせる。 恥ずかしそうだ。
しかし、確かに下衣に血が跳ねて、腿には血は止まっているようだが浅い裂傷もある。
■ノア > 「 何言ってんの真っ青な顔して、 ちょっと動くだけで痛い癖に。そう、 此処はあたしの家.. わかってるなら家主の言う通りにしたらどう ? 」
肩を竦めようとしただけで痛がったのを、 確り見ていたから。要らぬ遠慮を見せる貴方に、 相変わらず可愛げのない口調で ぺらぺらと捲し立てた。
「 ドレス着せられたくなかったら、 大人しくベッドで寝て。」
と、 オマケも付け足す。寝る時の格好についても何やら遠慮する貴方に、 もう.. と唇尖らせて。とりあえず身体を覆う為にと、 洗い立てのシーツを一枚取って戻り
「 こんな傷だらけの男に襲い掛かる程飢えてないから、 楽な格好で寝て。はい、 とりあえずコレ。脱いだら貸してね、 序でに洗っとく。」
世話焼きだとか思われるのも気恥ずかしいと、 少し素っ気ない態度でシーツを手渡した。着替えが困難そうなら手伝おうともするし、 新たな傷が目に留まれば濡らした布で傷口を拭うくらいはしてしまうだろう。
■ティエンファ > 「そ、それを言われると弱いんだが…
判ったよ、ベッドを使わせてもらう…ドレスは勘弁してほしいしなあ…」
情けない顔で眉を下げ、それでも申し訳なさそうに言葉を選び、やっぱりうまい言葉は浮かばなかった。
シーツを受け取れば、ちょっと悔しいので、にや、と笑って見せ。
「身体で恩返しの手付金を払うのは、俺としては望むところだけどな
…って、下履きまで洗うとか… ノアちゃんってホントに…」
世話焼き、と言いそうになった所でじろっとノアに見られて口を閉じた。
ズボンを脱げば、腿の傷まで拭われて、なんか子供に戻ったような変な気分になる。
シーツを身体に巻いて、下履きもまとめて手渡す。
ソファに座りなおして酒をもう一口。 少し酔いが回ったか、身体が温かい。
深呼吸して、よろけながら立ち上がる。
「ベッドの部屋はこっちか、ノアちゃん」
ふらつきながら手すりを掴み、階段をゆっくり上る。 危なっかしい。
■ノア > 「 そう、 それでいいの♡ 大人しく言う事きいて、 今はとにかく..... て、 手付金って.. ! 」
身体を休めること ! と言いたかったのだけれど、 思わぬ仕返しに不覚にも口ごもる。やり返されたと悔しげに目を細めたまま、 受け取った服を洗いに向かうも ──
「 ちょっ、 危なっ.. 転がり落ちて死んだらどーすんの ?! 生きたいのか死にたいのかハッキリしてっ 」
だいぶ危なっかしい足取りで階段に向かう貴方に駆け寄る。此処までの道のりと同じように貴方の身体を支えながら、 一段ずつゆっくり上がり.. 寝室に招き入れると、 ベッドにその身体が横たわるまで慎重に支えた。
「 気を付けて、 ゆっく り.. 」
■ティエンファ > 仕返しに、意外と初心な反応を返すノアを見て、ちょっと目を瞬かせた後に思わず吹き出す。
腹の切り傷が傷んで引き攣ったような笑いになったが、呻きつつも笑みを零し。
「冗談だよ冗談、無理にとは言わないさ
とと、だ、大丈夫だって、気を付けて登ってるし…っと、
…ありがと、なんか今日は助けて貰ってばっかりだわ」
慌てて戻ってくるノアに肩を借りる。 遠慮はあったが、此処まで気にかけて貰うなら、大人しく甘えることにする。
衣服越しではない、酒とケガで火照った少年の熱がノアの身体に伝わる。
ベッドまで運ばれ、そこに横たわればゆっくりと息を吐く。
ノアを見上げ、照れ臭さを誤魔化すように笑い、ノアの手を取って見せる。
「良い人だな、ノアちゃんは
こんな手厚いと、俺が悪い奴だったら、このままベッドに引き込まれるぜ?」
■ノア > 「 冗談って.. そんなの、 わかってる ! 」
歳下にからかわれ唇尖らせながらも、 確りと貴方をベッドへと導いて。ベアトップの為夜風に晒されていた女の肌は未だ冷たく、 対照的に火照った身体に ひんやりと密着した。
「 どんなに悪い奴でも、 死にかけてちゃ大した力もでないでしょ。恩を身体で返すってゆーなら、 早く元気になって頂戴。」
横たわった貴方に ふん、 と余裕の笑みを作って見せ。手をひらりと離しては、枕の位置を合わせたり毛布の支度を。傍らに腰を下ろしたら、 ゆるりと首を傾げて
「 あとは.. 何か欲しいモノある ? 」
■ティエンファ > 「どーだか …うん、そうだな、まずは身体を治さなきゃあどうしようもない…」
拗ねたような顔をするノアに目を細める。 初めて会ったのに、もう安心しきっている自分に気付く。
余裕の笑みを浮かべつつも、甲斐甲斐しく看病してくれるノアは、自分の味方なのだと思えた。
横になった少年の隣に腰を下ろし、温かい言葉をかけるノアを見上げていると、
今更ながらに、罠にはめられて裏切られた自分の境遇に気付いてしまう。
裏切られて襲われて死を覚悟したその恐怖が蘇る。
戦闘高揚の中では忘れていた、身体の芯が冷える感覚に、身震いを一つして。
「…ほしいもの、と言うか、お願いなんだけどさ
…ごめん、もっかい手を握っててもらえるかな」
気丈に軽口を叩き、卓越した具芸を身に着けた少年。 剛毅な噂はノアも知っていただろうけれど。
遠慮がちに小さく震える手を伸ばすその少年は、ただの18にも満たない子供に見えた。
■ノア > 「 あ、 馬鹿にしてるでしょ.. 治ったら襲い掛かってやる。」
がおー と爪を立てた手を獣みたいに顔の横に出し、 冗談を。そんな戯れも.. 思わぬ一言で静まった。
「 .........ん、 」
あれこれ言うと男のプライドを傷付けてしまいそうだと、 返事は小さく頷くだけ。白い手を伸ばし、 貴方の手を両手で包む様に握った。
貴方が安心して眠れるまで、 ただ静かに、 その手を握っていようと。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からノアさんが去りました。
■ティエンファ > 少年の手は大きく、ごつごつと固い。 しかし、ノアの手を握る手は遠慮がちに弱く。
しかし、ノアの柔らかい手を握れば、安心したように息を吐き、大人しく息を吐く。
「…うん、落ち着く …ごめんなノアちゃん、暫く、このままで…」
途切れる言葉。 そして、すぐに安らかな寝息に変わる。
夢も見ず、まるで自室であるかのようにぐっすりと眠る事が出来た。
数日、ちゃんと動けるようになるまでご厄介になったのだとか。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティエンファさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にノエル・ベネトーさんが現れました。
■ノエル・ベネトー > 今日は1日空に分厚い雲が広がり、今にも泣き出しそうな、とはこういう空を表すのであろう天気だった。
それでも物事を深く考えない能天気エルフは夕食の買い出しに出たのだが―――
「本降りですねえ…。」
結局こうして、買い物袋を抱えた状態で建物の軒下で雨宿りするはめに。
雨に濡れた長い髪はボリュームを失い、しっとりとしている。
幸い風は弱いのでここにいれば濡れることはなく、これ以上被害もないのだけれど
小雨状態の時にここまで走ってきたのでワンピースの裾にも雨粒の痕。
そしてブーツは防水素材ではないようで、つま先が冷え冷えとしてきた。
ため息がこぼれるのは、そんなことに対する憂鬱ではない。
時間が経ち、弱まれば走って帰る心づもりではあるけれど、それまでの時間潰しに弱っているのだ。
あいにく買い物で持ち合わせのお金はほとんど使ってしまい、付近の店に入ることは躊躇われた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエズラさんが現れました。
■エズラ > 「降ってきやがったか――」
先日まとまった金が懐に入り、久方ぶりに剣を研ぎに出した帰り道。雨粒が数滴地面を濡らしたのも束の間、滝のような雨に打たれる羽目に。仕方なく、小走りで建物の軒下に逃げ込み、一息。シャツの袖で顔を拭き、濡れた髪をわしゃわしゃと掻き上げる――
「……ん。」
そのあたりでようやく先客の存在に気付いた。買い物袋を抱えた若い女――好色男の目に一番最初に飛び込んだのは、存在を主張する胸元だったが――すぐにそれより上に視線を移動させることになる。
「……――」
無言で、半ば見惚れるような視線を向けるのは、その耳であった――
■ノエル・ベネトー > 雨音が激しいせいか、単純に目の前の出来事だけでせいいっぱいな性格のせいか、
第2の訪問者が訪れたことに気づいたのは、彼より後のことだった。
視線を感じたなどと敏い話があるわけもなく、自然に移ろう視線がたまたま男性を見つける。
耳を見ていたのなら、視線が交錯するかもしれない。
普段から潤みがちな青い瞳をぱちくりとさせて、遅れてふんにゃりと笑顔を浮かべる。
「こんにちは。
濡れちゃいましたよねえ。
困っちゃいます。」
内容のわりには困ったそぶりのないのほほんとした様子。
雨音にかき消されがちな声を届けるべく、1歩、2歩と近づきながら。
もちろん彼が警戒して後ずさるならその距離は縮まらないのだが。
■エズラ > 目が合ってしまった――何となくばつが悪くなり、視線を逸らそうとした瞬間、声をかけられてしまった。今更知らんぷりもできない。潤みを帯びた青い瞳。そして、成熟した肢体に似合わぬ柔らかな笑み――
「あ……あ~、そうだな。困ったもんだぜ――」
相手が近付いてくる――そんなことしか考えられない自分に驚いていた。おとぎ話ならいくらでも聞いた。見たことがないわけでもなかった。実際に、自分と同じ世界に存在しているということは知解しているつもりだったが――これほど近くで目の当たりにしたことはなかったのだ。
「……エルフか、あんた?」
そして結局、口に出してしまった。
■ノエル・ベネトー > どことなくぼんやりした返答の後に掛けられる問いに、足が止まる。
思わぬ質問だったため、である。
その距離は2、3歩あいた程度だろうか。逃げることも詰めることも容易な距離。
エルフの反応はといえば、その瞬間こそぽかんとしたものの、すぐに微笑みが帰り。
「はい。
初めてですか?」
様々な種族を王都で見たものの、1番多いのはやはり人間だろうか。
きっと相手もそうなのだろうと目星をつけ、湿気で乱れた前髪を手で整える。
片手で買い物袋持ち、もう片手でワンピースの皺をぱたぱたと叩き。
「ノエルと申します。
……うふふ、怖くありませんよ。」
畏まってみたけれど、結局子供でも諭すような言い方に。
そもそも自分も他種族に馴染みのない生活だっただけに、こう言うのも何だかくすぐったい。
■エズラ > 目の前で笑い、服を直すその仕草――ひとつひとつが、何やら幻想めいて見えてしまう。淫魔の類いや人外の者とも戯れに交わり、戦場では異種族と幾度も剣を交えたが――ともかく、まるで少年のようにどぎまぎする己の心臓が訝しい。
「いや、そういうわけじゃねぇ――あ、でも会話をするのは――そうだな、初めてかもしれねぇ。」
そういえば、くつわを並べて戦った経験はなかった。また、敵対したこともなかった――いや、ダークエルフの暗殺者とは一戦交えたか――なんてことを回想していたが。
「……べ、別に怖がっちゃいねぇよ――エ、エズラだ。」
かぁっ、と喉の奥辺りが熱くなる。頬が染まっていないかだけを心配していたが――幸い、そこまで露骨に態度には出ていなかった。そして、またも思わず口に出してしまう。まじまじと相手を見つめながら――
「……信じられねぇな……この世のものとは思えねー……――」
■ノエル・ベネトー > お姉さんぶった言い回しをしてみたものの、世間慣れしているのは圧倒的に相手だろう。
長寿であるエルフは人間とは少々違った歳のとり方であり、
逆を言えばこのエルフには人間である男性の歳が想像しにくい。
背丈があり、顔立ちも凛として見えるものの―――言い淀むのを見ているとつい、少年のように接してしまう。
何せその無防備な呟きは初々しいものだから。
「そんなことありませんよう。
きちんとここに存在していますし…
触れてみますか?―――エズラさん。」
まるで亡霊でも相手にしているかのような言われようだ。
思わずころりと笑い声こぼし、腕を相手へと伸ばす。
白い指先は、相手もまた腕を伸ばせば触れられるところまで。
といっても本当に触れればひんやりと、雨で冷えている感触になってしまうかと。
それでも死体のそれとは違う。
見目は多少違っても、身体に巡るのはあたたかい血液だ。
■エズラ > 剣を前にしようと槍を前にしようと――自身の体躯を遙かに超える巨躯の魔物を相手取ろうと――命を拾ってきた。胆力には自信があったというのに――こちらに伸ばされた手をまじまじと眺めることしかできない。
「おっ……いや、その――」
少し言い淀んで、そこでため息――驚きだとか恐れだとか――そういうものを自分でコントロールできるというのは思い上がり。考えてみればいつだってそうしてきた。知らぬもの、分からぬものは――見て触れて、確かめる。つられるように笑みを浮かべ、その手を取る。雨に冷えた白い繊細な指先――指の付け根、甲――男の骨張った手が触れる。
「ん――確かに。フツーの手だ――いや、フツーよりは全然魅力的だぜ――ノエルちゃん。」
名を呼んでから気付く――エルフといえば長寿で有名。ひょっとしたら自分より――いや。少なくともその可憐な容姿は、ちゃん付けて呼ぶに違和感はないのだから。するりとその手を離し。
「買い物帰りかい――エルフってのは、森に住んでるもんと思ってたがよぅ。」
何か、心の奥のわだかまりのようなものが雲散霧消し――世間話を。
■ノエル・ベネトー > 皮膚と皮膚が触れ合う。
小柄なほうではないけれど、性別の違いから相手の手はとても大きく逞しく見える。
節々の太さ細さ、皮膚の色、全てが男女という隔たりを表している。
「うふふ。それがあなたですか?」
少年の臆病さが消え失せて、突然大人になった男性を改めて見つめる。
態度だけでこうも印象が変わるものかと、感心した。
加えて女性の扱いに慣れてそうな軽口に、突然成長してしまったことを
ほんの少し寂しく思うくらいの、大きな変化だ。
「はい。
わたしもつい先日まで森にいましたよ。
ですから実を言うとですね…、まだ道もよくわかっていないんです。
よく迷子になりますけど、道は続いているのでどうにかお家に帰れています。」
今度はこちらが少女のような言い草に。
買い物袋は膨れており、それなりの重さがあるようで、両腕で持ち直し建物の壁に背を預ける。
もう今日は家に帰るばかりと思っていたため、ここでの足止めは予想外で
本日2度目のため息が思わず、唇の隙間から。