2017/03/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシキミさんが現れました。
シキミ > 薄暗い通りに影が二つ。
小さな声だけがその間に流れている。
少し前からの事だが…お互い、周囲に気を張りながらの会話。
それほど長くは続かなかっただろう。

「…えぇ。そうね。では、また。」

小さな女の声が通りに響く。
相手の声も少し。それは男性だろうか。
くぐもったような小声の会話を済ませると、男と思われる影は通りの奥へと去っていく。

それを見届け、ほう、と白い息を吐いた。
薄暗がりの密談。誰かに聞かれてはいないか、と通りの外へと目を向け歩き始める。
場合によっては忘れてもらう必要があると…面倒ね、と小さく考えた。

暗がりに溶け込むようなローブ姿が通りをゆっくりと歩いていく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシキミさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/夜市」にティエンファさんが現れました。
ティエンファ > その日は珍しく、夜に市が出ていた。 別に悪い物を売っている市ではない。
夜でなくてはいけない理由があったのだ。

「へぇー…こりゃあ、幻想的ってえか、壮観だな…」

声をあげた少年は、そのまま感嘆の溜息をもらす。
大通りの左右に出店露店が並ぶのは、昼と同じだけれど、
その夜の市の商品は、明かり、灯り。 色取り取りの淡い輝きに、大通りは満ちていた。

ティエンファ > 蝋燭の淡い明かりを受けて色紙に動物の影を移す幻灯。
魔力光の強い光を孕んで、上質な宝石のように細やかな輝きを投げかけるランプ。
どういう仕組みか、ふわふわと露店の中空に浮かぶ弱い輝き。
大小強弱濃淡、様々な輝きが市場を行く人達を包む。 その中を一人、少年はのんびりとした足取りで歩くのだ。

「誰かと歩いても楽しかったかもなぁ…まあ、噂を聞いたのがさっきだから、誘うも何もないんだが
 …へえ、帝國式の灯篭まであらぁ 懐かしいな」

ティエンファ > 「親父殿の書き物机にも、あれと似たのがあったな…穴開きボロ灯篭
 チビの頃、悪戯で突っついてたら紙が破れて、親父殿はそのままにしてたんだったか」

くく、と思い出を懐かしみ笑みを零す。 帝国の商人が出す店を通り過ぎ、少し歩けば、一つの店に目を奪われる。
硝子細工の工房の前に出された夜店は、掌に転がる位の小さなくずガラスに光を湛えさせた飾りを売っていた。

「ふぅん、魔法を使えば売れない硝子の欠片も宝物に早変わり、かあ 綺麗なもんだなぁ…」

ご案内:「王都マグメール 平民地区/夜市」にルイトさんが現れました。
ルイト > 夜の市の存在を思い出した店主が、用心棒に買い出しを願い出たのはつい先ほどのこと。
そんなことまでしなきゃならないのか、と嘆息しつつ引き受けたのだが、勝手がわからない。
誰か一緒に来てくれればよかったのに…と今更思っていたところだった。

「………ん?」

目の前、少し離れたところ。長衣を纏う男の姿が見える。
夜店の一つ、淡く光る硝子細工の工房。その品を拝見しているようだった。
緩い足取りが彼の隣へと滑り込み、その硝子細工に目を通してみる。案外、良さそうだ。

「…………いいじゃん」

ティエンファ > 灯り飾りを眺める横顔は、異国の風情。 ルイトと似た色の髪は背の中ほどを通り過ぎる長さ。
同じ位の年頃だろうか、しかし、ボロけた長衣の下の身体は分厚い。 ルイトには、その少年が武芸者だと分かった。

「うん? ああ、良いな、こういうこまい飾りも、こうしてみると可愛くて良い」

隣に立ったルイトの呟きを聞けば、視線をそちらにやる。
釣り目がちな目を笑ませれば、こんばんは、と声をかける。

「アンチャンも見物かい、素人目だが、この出店の商品は良い物だぞ」

ルイト > 異国風情をほのめかす横顔は、同じ位ながら精悍な雰囲気だった。
武芸者らしさを表しているような分厚い体つき。それを一瞥しながら、硝子細工の一つを指先で摘み上げる。

「…素人目なら大して信用できねぇな。でも、うん。良いものだ」

ポツリ呟き、ティエンファへと視線を向ける。
吊り目がち、ながらどこか中性的にも見える顔立ち。
しかし体躯はしっかりと鍛えられており、どこかアンバランスさを感じさせるようなそれだ。

ティエンファ > 「はは、そう言うない 好きか嫌いかなら、素人でも言ってもいいだろ?」

信用できない、と言われれば頭を掻いてちょっと笑う。
気を悪くした様子もなく、店主に一声かけて摘み上げるのは、雫型のガラス細工。
ちろちろと残り火の様な明りが中央で揺れているのを目の高さに掲げて覗く。
鍛え上げただろう身体や佇まいに反し、ルイトが感じたように、アンバランスな子供っぽい表情。

「なにかお探しかい それとも、俺と同じ見物に?
 …あ、いや、冷やかしじゃないよ! じゃないってば!」

ルイトに問いかけた所で、店主がからかうように言った言葉にちょっと慌てる様子。
それを見て笑う店主を見れば、やられた、と情けなく笑い。

「見ての通り、悪戯心たっぷりの店主の作だ まあ、そこいらにゃないだろうさ」

ルイト > 「別に悪いとは言ってないだろ。俺だって素人には変わりないんだ」

笑う顔は柔らかい。良い印象を与えそうだ、と率直に思った。
鍛えられた身体つきは自身と同じか、それ以上か。若干気を取られてしまうのは仕方ない。
店主のからかいにくくっ、と声を漏らし微笑む。

「あんたと同じ、見物だよ。…ほんとはうちの店主から何か買ってきてくれって言われてるんだが……ま、適当にな」

ティエンファ > 「なんだ、なんか雰囲気あるから目利きに覚えでもあるもんかと」

首を傾げてルイトを眺めれば、どこか自分と似ている風貌の相手に親近感を覚えて、
帝国生まれかい、と尋ねながら、摘まんだ雫型のガラスを掌の上で弄ぶ。 ちらちらと細かな光を照り返す。

「お使いか? 適当でいいならー…そうだな、あれはどうだ?」

出店の商品の一つ、細かくひびの入ったグラス。
中には蝋燭が揺れていて、いびつな形と不規則なひび割れが、くらくらと炎の明かりを揺らして輝いている。

ルイト > 「うちの店主なら幾らか知ってたんだろうけど、俺はさっぱり」

肩を竦めて、尋ねられたことには違うよ、とかろい口調で答える。
ちらりちらり、と照る光が頰に当たって、どこか擽ったい心地にもなる。

「………なるほど。酒場には悪くないな。これにするよ」

指差されたひび入りのグラスに目を向け、摘み上げてころころと転がす。
不規則でいびつな形が輝く様が気に入ったらしい。即決した。

ティエンファ > 「ははは、んじゃあ折角だ、良い物を見て目を養えって雇い主心って事で
 ふぅん、帝国生まれじゃないのか 俺と似た感じがしたんだが」

即決を受ければ、勧めた少年もちょっと嬉しそうに目を細める。
自分も、じゃあこれ、と手の中で転がしていたくずガラスを摘まんで店主に。
一緒に代金を渡せば、それをポケットにしまう。

「衝動買いも市の華ってね お互い、良い買い物したかな
 俺はティエンファ どうだい、またどっかで会いそうな気がするし、名前を教えてくれないか、アンチャンよ」

ルイト > 「だったらいいんだけどな。ただの使いっ走りにしか思えないのがさ」
「九頭龍の麓の生まれだ。似てるのは見た目か?それとも雰囲気かね」

くいっ、と片方の眉が興味深そうに上がる。
代金を一緒に渡して、買ったものを懐に仕舞い込んだ。

「そうだな。こういう市ならまた来たいもんだ」
「俺はルイト。近くの酒場で用心棒みたいなことをやってる。よければ今度、うちに来いよ」

ティエンファ > 「良い経験じゃないか、金を貰った上にショッピングまで楽しめる
 九頭龍…地名は知ってるが、行った事ないな 剣峰険しい場所だって聞くぜ」

似てるのは、という問いに、ちょっと目を細めて返す。

「似てるのは匂い、だぜ まあ、顔の特徴もちょっと似てるが
 もし、同じ雇い主の依頼を受けたら、背中を頼むぜ、ルイト」

に、と笑った顔は、牙をむく狼にも似て。
ルイトに、またな、と声をかければ、またフラフラと気ままに夜市を歩き始めたのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/夜市」からティエンファさんが去りました。
ルイト > 「まぁ……険しいところといえばそうかもな。だから、ってわけでもねぇけど、腕には自信あるぜ」

よぎる思い出を一つずつ噛み締めながら、冗談めかしてニヤリと笑う。

「匂いか。……なるほど、な」
「そういう機会があればいいな。こっちこそ頼むぜ、ティエ」

笑う顔を見ながら、こいつとも手合わせをしてみたいものだとふと思う。
ふらり気ままに歩き出す背を見送ってから、男も店へと戻る道をたどり始めた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/夜市」からルイトさんが去りました。