2016/04/25 のログ
■リリア > 例え長命族であったとしても、衰えはあります。それに――見目は美しさを維持出来たとしても、心もそうであるかはまた話は別ですし。――私は、心も美しく、自由でありたいのです。
(吸血鬼、としての本来の自分も耳は長く尖ったものを持っていた。人間に擬態する際、丸耳にすることも考えたが・・・別にこれくらい、いいか と考えて耳はそのままにした為、この耳だ。あまり本来の自分から乖離したものに変えると違和感も覚えることだし。
そして・・・人として短い寿命しか持たないものからすれば、羨ましい悩みかもしれないが・・・例え長命であったとして、外見は美しいままであったとしても心は穢れるものだ。長く生きたものであれば特に。故に、見目は美しくとも心も美しくあれるかはまた別物。――私は、心も可能な限り、美しくありたいと思う。・・・必要とあれば、殺しもするし、血も貰う。時には美しいものを穢して遊んだりもするけど・・・貴族の泥沼に沈んだあの人達のように、影でひそひそと自分がいかに利益を啜るか、いかに蹴落とすか。そのような事ばかり考える、心の汚いモノにはなりたくはない。・・・まぁ、美しいとか、美しくないとか。全部私の主観ではあるのだけれど。)
――リリア。私もフルネームは名乗れないのですが、ご勘弁してくださいましね。
(くすり、と悪戯っぽく微笑み自分の名前を彼女に告げる。こちらも告げるのも通り名・字名と呼ばれるそれ。彼女も何らかの都合で名乗れないのだし・・・それで、おあいことさせてもらおう。
そして、彼女の名を告げたのならば、イニフィ・・・、と反復するように呟き、その名を自分の中に落とし込んで行こう)
はい、では――私達と、この美味しい食事に・・・乾杯っ
(楽しげに少女はその言葉を唄い、かちん とグラスを打ち鳴らそう。――そして、彼女と乾杯を行い、運ばれてきた料理に舌大鼓を打ちその味と、彼女との会話を楽しんでいればふと・・・この場に店員の視線がなくなっていることに気付く。くす、と口元を歪めれば、ことりとワイングラスを机に置き、備え付けのハンカチで口元を拭った後)
――イニフィ。私・・・貴方にお願いがあるのです。聞いてくださいますか?
(まるでアルコールに浮かされたように蕩けた瞳をしながら、彼女に視線を向け語りかける。拒絶をされなければ、ヒトを誘惑するような、色気のある声を出しながら彼女に擦り寄って。)
■イニフィ > 「心もか…。私は確かに綺麗でありたいけど、さすがにそこまでってなると、ちょっと首を傾げたくなるわね。
私も自由ではありたいけど…私は、常に私らしく生きていたいわ。それが美しさに繋がるかどうかはさておいて、ね?」
たとえ白でも、いつかは黒く染まってしまうもの。
それを無理して、白であり続ける必要はあるかどうかと問われると、イニフィは首を傾げるだろう。
そもそも、善悪の判断は誰がするのだろうか。世界?それとも人?
確かに、欲と金に溺れて荒みきってしまった人間も居るだろう。
だけれど、それは裏を返せば自分らしくあるが故の、欲に忠実なものの成れの果て。
それを考えれば、それもまた美しさの一つであるのではないだろうか、と考える。
まあ、そこまで行ってしまえば哲学的になってしまい、キリがなくなる。
用は―――「無理をせず 自分らしく そして自由に」がイニフィの主観である。
「リリアね?…ふーん、貴女も長いフルネームなの?それとも、もしかして高貴のお嬢様とか?」
だけど、そんなお嬢様がこんなバザー会場で食事を取るものだろうか。
護衛も何もつけていないようだし、おそらくその戦は限りなく薄い。
だとしたら、名乗れない何か重要な理由がある、という事だろう。
残ったチキンステーキを頬張り、その甘さに悦を浮かべている。
「ん?……お願いって…宿を貸してほしい、とか?」
シャンパンを飲み、軽く頬を赤らめながら問う。
少し、色気の出てきたリリアの声に首をかしげながら。
■リリア > 私も完全な白であれ。全ての不正を許すな、までは言いません。ただ・・・せめて私から見て、美しいものでありたいのです。
(美しいかどうか、なんて所詮主観になる。人それぞれ好みは違うのだし、何を基準にするか、なんてものも様々。欲に忠実なのも結構。ただ、それを得る為に人を蹴落とし、醜く太っていくような様は正直・・・好きじゃない。欲を貪るのならば、それ相応の覚悟と矜持を持って美しく、気高くあれ。少女が願う欲望の主とはそんなものだ。まぁ――所詮自分の願い・主観であるのだから、人にそれを押し付けるつもりはないが・・・ただ、自分はそういうのが好きで、そういうのが嫌いだ、というだけだ。)
さて、どうでしょう。それはお教えできませんわ。
(くすり、とウィンクをしつつ人差し指を唇の前に立て 秘密、と彼女に告げよう。何の理由もなく、全てを晒せる程私も安い女ではないのです。)
えぇ・・・そうですね。それもあるでしょう。ですが、私は――。
(許されるのならば、彼女の手を取り、その真紅の魔眼が彼女の目を覗きこむ。その視線に魔力を込め、自らの意に従わせる魅了の魔眼――チャーム。吸血鬼や夢魔、淫魔といった存在が所持するそれを発動する。――彼女の退魔力を貫通したならば、この吸血鬼の少女の事を非常に魅力的な、絶世の美女。運命の相手。そういったものに錯覚させ、彼女を発情状態に陥れるだろう。そして・・・それが効かなかったとしても、少女のお願いを断るのに多少の罪悪感が生じる、その願いを叶えたい、と思わせる程度の効果は生まれよう。――ただ、彼女にそれがどこまで通用するかはわからないが・・・。)
私、貴女が欲しいのです。貴女を私のものにしたい。貴女の全てが欲しい。貴女と夢を見たい。 ――私のお願い、聞いてくださいませんか?
(彼女が拒絶しなければ、そのまま更に彼女に身体を寄せ、彼女に抱きつくような形まで持っていこうか。自らの口元近くに彼女の首筋を確保し、もし迷うようならばそのまま血を頂き、意識を奪いお持ち帰りしてしまうことも考えつつ。幸い、ここは酒場だ。酔っ払ってしまった、といえば彼女を連れ帰っても疑われないだろうし、自分のこの行動もアルコールの影響だ、と考えられなくもない。この勢いのまま、彼女を頂いてしまいたいのだが、どう か。)
■イニフィ > なんとなくだが、リリアのいう事はよく解る気がする。
押し付けるつもりはない、だけれども自分らしく、そして美しくありたいと願うのはイニフィとて同じだった。
クス、と笑みを浮かべるのはリリアとなら美味しいお酒を飲めるかもしれない、そんな思いからだった。
「あら、イケズねえ?もったいぶらないで教えて欲しいものだわ?」
まあ、自分だっておいそれとフルネームを教えるつもりはなかった。
だからこそ、お相子と言うものだ。だから無理には聴くつもりなどなかった。
「………………。」
何のお願いだろうか、としばらく待っていると、まるですがり付いてくるかのような行動。
最初は酔っ払ったのかな、と思わなくはなかった。だけど、どこか違うのはその瞳を見れば解る。
魅了の力―――真紅の瞳。それは誰よりもよく知っている。
だって―――――――。
「……んふふふふふ。」
笑みがどこか変わる。さっきまでのそんな陽気で明るい笑みではなく、妖しく妖艶な笑みへと。
真紅の瞳を見つめる――その真紅の瞳。チャームの力は吸血鬼が持つそれではなく、純粋なもの。
リリアのチャームを押し返し、逆にリリアへと魅了をぶつける。それは―――。
「なーるほど、そういう種族だったのね……?魔力を感じるから可笑しいとは思ったけど…。
でも、残念。あいにく―――その力は私のほうが年季があるわよ?」
お願いを叶えるのはむしろリリアのほうじゃないかしら?
白い首筋から。イニフィの体から放たれる甘い香りは、リリアの鼻腔を擽り―――その性欲を煽っていく。
魔族には効き目が薄い。だけど、イニフィを魅了しようとするならば―――相応の覚悟をしてもらわないと。
■リリア > でしたら、私が教えても構わない、と思えるような何かをくださいまし。――等価交換、というやつですわ。
(くす、と悪戯っぽく微笑みながらそう告げる。ただまぁ・・・彼女も本気ではあるまい。この話題はお互い不可侵な領域、というものだろう。無理に突っ込むのは野暮、というものだ。)
――駄目、ですか?
(こてん、と首を傾げ媚びるような視線を送る。彼女の劣情を煽り、自分に魅力を感じさせる・・・そうすれば、自然と魅了の成功率も上がるものだ。この獲物は極上――是非、手に入れたい。血を味わいたい。愛液を啜りたい。その柔らかな肉に牙を突き立てたい・・・!そんな欲望を潜め、少女の魅了の視線は彼女へ突き立てられる。)
・・・?
(――いや、待て。何かおかしい。そう感じたのは彼女の笑みが変わった頃からか。いつもならば、そろそろ多少なりとも反応が返ってくるものだ。う・・あ・・・、と呻き悩むような声であったり、こちらへ抱きついてくるようなもの・・・なにかしら、反応があるはずなのだが、それがない。いや、それどころか・・・。)
う・・・そ・・・?
(口調から余裕が消える。その視線は色気のある、彼女を魅了する視線から、自分の今の状態が信じられない という驚愕と絶望のようなものが入り混じったものに変わりゆく。やがてその顔は縋るようなものに変わりゆき、序々に彼女の虜となっていく様が見て取れるだろう。もとより彼女のことは魅力的に思っていて、魅了のフェロモンの発生源である首筋には顔を近づけていた。おまけに、魅了は彼女の魅了で上書きされ、まとめて返されてきた。・・・そこまで条件が揃えば、流石に効きづらいとは言えど、少女の身体を侵食していく。――この子を支配したい。 そんな欲望から、この人に支配されたい。そんな、被虐的な欲望に少女の意思は塗り替えられていき・・・。)
――っ、!
(せめて、せめて――全てを塗り替えられる前にその血を頂く。そして、魔力を流し、彼女の虜にされる前にこちらの虜にする・・・!魅了の魔眼、としての 夢魔としての実力は認めよう、あちらが上だ。しかし、吸血鬼としてならば、まだチャンスはあるはずだ。ふるふると震える身体を強引に動かし、その白い首筋に牙を突き立てよう、として。)
■イニフィ > 「なるほど、それは確かにいえてるわね…?」
確かに、相手が教えるならば此方も教えるべきだろう。だけど―――まだそのときじゃない。
まだ、いえるような状況になっていないし、言いたいと思えるわけでもない。だからこそ―――この交換はまだおいておこう。
「んふふ…まさか、同じ魔族なのに気づかれないとは思わなかったわ、もしかして私のカムフラージュの技術が上がったのかしら?
勿論、ダメじゃないわよ?…だけど、私を虜にするのはちょーっと、無理があるかしら?」
元々隠している魔力はかなり高い。出来る限り人間に感知されないようにするためには、極力ゼロにまで魔力を落とす必要がある。
勿論、マジックアイテムや感度の高い、もしくは魔力の高い人間には察知されてしまう。それが魔族ならなおさらだ。
だけど―――おそらく気づかれてはいたはず。ナノに彼女は自分を魅了しようとした。
それが―――落とし穴だった。
「…安心して、意識は残してあげる。あんまり自我を完全に奪うのは好きじゃないの。
あくまであなたの意思で、私に支配されたい。そんな気持ちを―――っ?」
徐々に、余裕のなくなっていく顔。そして口調。
魔族に対して、フェロモンが効くのはある意味嬉しい誤算であった。何しろ魔族の快楽は人間のそれをはるかに越える。
おまけに壊れにくい。この子は可愛いし、支配される喜びを教えてあげよう。
そんなことを思っていると―――首筋にちくりと突き刺さる牙。
だけど――――――――――。
「………。んふふふ……、なるほど…吸血種だったのね…。
ね、私の血は美味しい?…いいわよ、よーく味わって?」
驚いたのはほんの一瞬。そこからはむしろ、受け入れるように頭を抱いてあげた。
その血はあまりにも甘美で、高貴で――――極上のワインの味をはるかに超える、濃厚な味だった。
当然だ、純粋のサキュバスの血なぞそぷそう味わえるものでもないだろう。
だけど―――いいのだろうか?『最もフェロモンの強い血』をいただいてしまっても。
彼女の魔力は―――流し込まれると言うよりも『取り込まれる』形で、イニフィへと流れ込んでいく。
■リリア > なんとなく・・・人ではない、気はしてた、けど・・・っ
(吸血種、という魔族の中でも強力な個体が多い種族ではあるが弱点も多い。日光に弱い、十字架が駄目、流れる水が駄目、鏡に弱い・・・など。その他にも数多くの吸血種が抱える弱点がある。――慢心、である。自らに誇りを持ち、自分の力に絶対の自信を持つ。それはこの少女も例外ではなく・・・まさか自分が負ける、なんて想像もしていなかったタイプである。それが・・・今回の敗北に繋がった。)
今の内に余裕を振りまいておきなさいな。最後に支配するのは、私、なんだから・・・っ!
(余裕を持った顔でこちらを見つめる淫魔に、きりっ と睨みつけるようにして吸血鬼は告げる。先程までの柔らかなお嬢様然として姿はなりを潜め、今は必死に芯から湧き上がる欲望と、彼女に対する劣情、そして被虐心を抑えるのに少女は必死である。その表情を見るからに余裕が全くないのが伺えるだろう。)
(ざくり、と彼女の肌を突き破り少女の鋭い牙が突き刺さる。そして、いつものように吸い上げれば、その最高に美味な血液が身に染みる。――どこまでも甘く、甘く、甘く。蕩けてしまいそうな程の甘味が少女の味覚を支配する。この味をいつまでも味わっていたい。その為ならば、彼女に――。 そんなことさえ考えに浮かびつつも、理性で必死に押さえ付け・・・余裕綽綽に自分の頭を抱きしめさえする彼女に 今に見てなさいな・・・! と、彼女を逆にひれ伏せさせる為に、魔力を流し、彼女の濃厚な血を支配しよう、と。――まさかそれが、逆に取り込まれてしまっている、なんて考えもせずに。)
■イニフィ > 「その通りよ、リリアちゃん?…んふふ、私は魔族。―――だけどね?」
吸血種。所謂ヴァンパイアやドラキュラと言った、お話に出てくる紳士淑女の魔族の呼称。
勿論知らないはずがない。同じ魔族であるし、何より付き合いだってあるのだから。
だけど、それらに共通していえるのは、その強力な力であるがゆえに自尊心の高さから来る慢心。
だからこそ―――『貴族種』であるイニフィの力を見誤ったのが、最大の敗因だろう。
「んふふ、それは怖いわね?…どうしましょ、私は苛められるよりも苛めるほうがいいのに…。」
支配されてしまったら、苛められてしまうではないか。
そんな悲壮な言葉を並べるのに、イニフィの顔は焦りどころか余裕すら感じられる。
頭を撫で、甘美な生き血を啜るリリアに、妖艶な笑みを浮かべながら。その白い首筋に一筋の赤い筋が滴る。
「………………。んふふふ、こういう感じ、悪くはないわ?
お礼に―――ぜーんぶ、返してあ・げ・る♪」
微笑を浮かべながら、体を抱きしめ―――流れ込んでくる魔力を感じる。
己の血に、リリアの魔力が溶け込んでいく。どこかそれを、心地いいものと感じ取っていた。
支配されていく感触は、とても心地いいものであるらしいけど、なるほどこういうことか。
「はぁ……♪」と、すこし熱っぽい吐息を零し、頬が赤くなる。
その瞬間であった―――その牙から、激しい勢いで別の魔力が流れ込んでいくのが、リリアにはわかるだろう。
劣情、被虐心、欲望―――。そして、吸血種には屈辱とも言えるだろう。『服従心』という、最も感じたくない感情が新たに芽生える。
取り込んだ魔力を糧にして、自分の淫気を上乗せして、全て返却したのだ―――。
■リリア > 私だって・・・、支配されるのは御免です。私とて誇りある吸血種。人に混じったとしても、その誇りは失われるものではないのですっ・・・!
(貴族種。それは彼女だけではなく、この吸血鬼であったとしてもそうだ。――しかし。少女は混血であり、受け継いだ力としても吸血鬼の方が強い。割合からすれば、吸血鬼8に夢魔が2、といったところか。そして、こと魅了においては夢魔に吸血鬼は一歩劣る。少女とてそれも理解してる。だから・・・真正面からの対決は避け、自分に出来て彼女に出来ないこと・・・吸血による、支配。そちらの手段に出たのだ。問答無用で吸血を行い、支配するのは少々はしたない為にあまり好みではないのだが・・・この際、そんなことは言ってられない。)
――ッ!!??
(思わず目を見開く。彼女を支配する為に流していた魔力・・・。それが逆流し、自分を支配する為に流れ込んできたのだ。思わずその首筋から牙を離そうとするけれど・・・さて、頭を抱きしめられている身だ。その行為は叶えられるか、どうか。 そして、もし・・・彼女から牙を離すことを許されたのなら、その顔は少々だらしないものになっていただろうか。牙は血に濡れ、唇の端から僅かに涎を混ぜながら垂らし、そして・・・縋るように彼女の肩に手を添える。)
うっ、くっ・・・あ、ぅ・・・、あ、あぁ・・・っ!
(自らの中の理性と、植えつけられた感情が戦いを始める。――この人に尽くしたい。 この人に愛されたい。 この人に虐められたい。 そして、時にはよくできたね、って褒められたい。 もっと、もっといっぱい構って欲しい。 ――そして、何より・・・あの甘くて美味しい血をもってもっと味わいたい。 そんな欲望が少女の中で渦巻く。しかし、最早その彼女の陰気に敗北するのもあとひと押し、といったところか。なんとかギリギリの所で踏みとどまっているのは、魔族として、吸血鬼としての誇りと、魔族らしい強烈な自我を持っているからであろう。 ――しかし、少女の身体は最早彼女に屈服してしまっていることだろう。 その証拠に・・・触られてもいない。何かされた訳でもないのに、太腿をつー・・・と滑る液体の存在があり。)
■イニフィ > 「でしょうね?吸血種って、ほんとに頭が難くて自信過剰なのが多いんだから。んふふ…」
誇りなど、当に捨て去ってしまっているイニフィにはあまり関係のない話だった。
自分は魔族、そんなことはわかりきっている。だけど、ソレガなんだと言うのだろうか。
人の世界に来て、沢山旅行をして―――そして行き着いた答え、それが『自分らしく』である。
自由で居たい、沢山いろんなものを見たい。その欲望に比べたら、誇りなどちっぽけなものだ。
だからこそ―――イニフィという自我は、あまりにも強すぎて―――特にそれが融通を利かさないところもあるのは、事実である。
かかえた頭はたっぷり『味あわせるため』にした行為。
魔力を流し込まれるのは想定外であったけれども、逆にその行為が誤算になった。
吸血による支配は、確かに純粋な夢魔であるイニフィには出来ない。けれども―――吸血による支配にも、魅了による支配にも。
純粋に相手の劣情を支配し、そして虜にする『魅了』を持っている。特化した力だ。
それを―――見せ付けてやろう。
「んふふ……教えてあげるわ、リリアちゃん。これが―――私の魅了よ?」
その赤い瞳が、妖しく光る。縋るように手を添えた、彼女の唇。それをそっと奪う。
はたから見たらなんとも見事なユリの花を咲かせていることだろう。だけど、内面ではあまりに一方的な魅了合戦。
その赤い瞳は、リリアの魔力をあっさりと押しのけてその『魂』へと直接叩き込まれる。
本来なら、これは魔法防御の高い魔族にはあまり効果を及ぼさない。だけど、屈服しかかっている心ならば話は別。
赤い瞳によるサキュバスの魅了と、キスによる甘い愛撫―――。そして背中へと優しく回される腕。
抱擁・魅了・キス。優しく、だけど一方的ににリリアを『支配』していく淫魔の抱擁―――。
■リリア > ・・・余計なお世話です。
(貴族のマナーやら腹の探り合いやらは面倒臭い、と捨て去った少女であるが、誇りまでは捨て去った覚えはない。故に、この地であったとしても気高く、美しく。吸血鬼としての誇りを持って人に接す。彼女のあり方、その自由さも良い、と 美しいとは思うが・・・私は、これだけは捨てられない。例え、荷物になったとしても。)
――ッ!!?
(声にならない悲鳴が溢れる。そして、唇を奪われれば少女にそれを拒絶する力はなく・・・そのまま受け入れるしかないだろう。そうして味わった少女の唇は紅い鮮血の味と、柔らかな唇の味がしたことだろう。そうして、彼女から口づけを落とされれば少女の心は歓喜を発す。――キスしてくれた。嬉しい。嬉しい。 少女の理性とは裏腹に、サキュバスの口づけは吸血鬼の心を呆気なく蹂躙していくことだろう。――そう、本来ならば魔法防御も高く、精神防御も高い吸血鬼にこうもあっさり魅了が決まることは少ない。それは何もこの吸血鬼がそれが特別弱かった、という訳でもなく・・・何もかも、間が悪かった。 1つ、彼女の柔らかな肌。見目・・・それぞれが少女には魅力的に見えていた。――血を吸いたい、と人目見た時から思っていた。 最初から少女は彼女に対し、好意的であった。 2つ、サキュバスのフェロモンを発す首筋に間近と言える程接近していた。 3つ、魅了の魔眼をそのまま跳ね返されたこと。 4つ、吸血行為を逆手に取られ逆に彼女に魅了を注がれてしまったこと。 ――本来の数倍もの規模の威力にまで膨れ上がった魅了を直に受け吸血鬼の少女は、サキュバスである彼女に屈服されつつあって。そうして、キス・抱擁・魅了。彼女から優しい支配を受けた少女は、びくっ、と身体を痙攣させた後・・・とろん、と恍惚としたような瞳を彼女に向け出すだろう。――少女が、堕ちた瞬間である。)
■イニフィ > 捨てられない誇り。だからこそ―――慢心してしまう。
誰よりも気高く、誰よりも美しい。そういう自負があるからこそ、相手の力を見誤ってしまう。
クス、と笑みを浮かべるその顔はむしろ、可愛いと思う。そんな印象すらも与えていた。
「リリアちゃんの唇、美味しい……。んふふ、たっぷり可愛がってあげるわ。
安心して、完全に貴女を支配したりはしないわ。…リリアちゃんから聞かせて欲しいもの。」
最後のトリガーは、いつも相手に委ねる。
支配されたい、苛めてほしい、愛して欲しい、壊して欲しい、支配して欲しい。
全ての感情を最大限に引き出し、その心を魅了し、魂を支配していく淫魔。
だけど―――唯一子の女が『最後の最後』を支配しないのは、ただ力尽くで支配したとしても、それは相手の意思ではないから。
心、魂、すべて。そう―――欲望に忠実な淫魔は、相手の全てを欲する。
全てをいきなり支配してしまうのは簡単だ。だけど―――簡単ではない方法。
相手の『意志』も支配するには、相手から捧げてもらうのが、一番いい。
それが長年変わらず取ってきた、イニフィの鹵獲術。
光悦とした、少し光のない瞳を覗き込みながら―――最後のトリガー。リリアの『誇り』を壊すそれをリリアに手渡す。
「リリアちゃんは…私に、どうされたい?」
■リリア > いに、ふぃ・・・。
(恍惚とした視線を相手に与える。それは最早魅了でもなんでもなく・・・ただ、愛しい人に向ける愛情が混じった視線のよう。抱いていた好意の感情。そして、本人さえ気づいてなかった女として、支配される悦び。それらを強引に目の前のサキュバスに引きずりだされた。はー・・・はー・・・と、熱っぽい吐息を繰り返し、彼女から どうされたい? と尋ねられれば彼女の首筋に腕を回し)
――愛して、欲しいです。いっぱい、いっぱい貴女の愛をください。それから・・・私の知らない私を、教えて・・・欲しい・・・。
(――虐めて欲しい。流石にそれは言えなかった。けれども・・・少女は、サキュバスに屈服した。誇り高い、吸血種の少女が。愛する側で、愛される側には滅多に立たなかった少女が、このサキュバスには愛されたい。好きにされたい。――可愛がられたい。そんな、屈折した感情を抱くにまで至った。こんなに美しい人だ。こんなに美味しい血を持っている人だ。その人と共に出来るのならば、多少上下関係が逆になってもいいのではないだろうか・・・。 それに、この人は美しい。そして、自分を打ち負かす程の強力な魔族だ。自分という吸血鬼を従え、自分が仕えるにふさわしい相手でもあるだろう。 そう思える程に、彼女の魅了は吸血鬼に浸透した。――長年の価値観を、崩してしまう程に。)
■イニフィ > ―――トリガーは引かれた。
吸血種、魔族の中でも高貴で、誇り高い吸血主が自分に屈折し、魅了され、堕ちた。
そんな少女を可愛いと、そして愛おしいと思わないものがどこに居るだろうか。
完全に魅了された少女が、すがり付いてくる。それを優しく、受け止める。
まるで女神の抱擁であるかのように―――。
「んふふ…ええ、いいわ。たっぷり、たーっぷり可愛がってあげる。
同じ魔族ですもの、貴女の体を私の色で染め上げてあげるわ…?」
イニフィは本来、あまり従者を従えることはない。
自由を欲する彼女は、束縛をあまりにも嫌う。それは相手に与えるそれも同じだ。
だから、誰かを従えると言うのはよほどではないとすることはない。だけれど―――例外がある。
それは、相手からずっと一緒にいたいという願望を引き出したとき。
そのときは、従者として従えさせ、そして―――可愛がるのだ。
ありとあらゆる快楽を叩き込み、リリアのみならず、魅了した相手を愛し、そして支配する。
「…教えてあげるわ、リリアちゃん。貴女の知らない貴女。
快楽に溺れ、欲情に身を任せ―――私に愛される喜びを知った、貴方」
そっと、その吸血鬼にキスをする。
先ほどのような、抱擁のようなものではない。頬から、舌を這わせそして唇へ舌を絡める。
そっと口内へと押し込むと、唾液を絡めながらリリアの舌を捕まえ、蛇のようにうねる。
決して逃がさない、深い深い口付け。甘美なほどの口付けを施そう。
■リリア > ――やってしまった。そんな感覚は確かにある。勢いのまま、この胸に渦巻く愛情のまま彼女に感情をぶつけた。――愛しています、と。あなたに尽くしましょう、と。ただ・・・不思議と不安はあっても、後悔、という二文字はない。彼女に・・・誰かに尽くす、という事にどうしてだろう何故か甘美な、背徳感にも似た感情を感じる。そして、彼女の柔らかな身体に包まれて、満足そうに笑い)
イニフィ・・・いえ、我が契約者。マスター・・・。私は今宵より貴女のものとなりましょう。ですから・・・お好きなように、私を貴女色に染めてくださいまし・・・。
(最早彼女以外は目に入らない。僅かに残る男性客がいるとか、店員がいるとか・・・そんなもの、彼女との逢瀬に比べれば道端の小石のようなものだろう。我ながらちょっとちょろいんじゃないだろうか、と思わなくもないがでも好きになったのだ。好きになってしまったものは仕方ないだろう。恋や愛で滅んだ国さえもあったという。この気持ちは最早抑えらるものではない。おまけに、彼女からも認められたのだ。――何をはばかることがあるというのだろう。)
えぇ、教えてくださいましマスター。私は、貴女のものです。
(恍惚とした様子でその深い口づけを受ける。口内に彼女の舌を迎え入れれば嬉しそうに自らも舌を差し出し、彼女の舌を受け入れよう。深い深い口づけ。愛する人からの、口づけ。その口づけに思考を蕩けさせながら、彼女の愛を受け取ろう。)
■イニフィ > 一度鹵獲してしまえば、たとえ魔族といえどもその束縛からは逃げるのは難しい。
くす、クスと笑みを浮かべながら、とても妖艶に、そして満足そうに嗤う。
誰かに尽くされると言う、この悦びは本当に何物にも変え難い。しかも、今回はそれが吸血種と言う高貴な魔族。
もしも、自分の母親―――家の頭首にこのことを伝えると、どんな顔をするだろう。
驚くか、関心するか。それとも――――。
「マスター、か…。その呼称はノーサンキューよ、リリアちゃん?私のことは、お姉様。オーケー?」
ご主人様、とかマスター、とか。そういう堅苦しいよび方はあまり好きじゃない。
それならばお姉様と、そう呼ばせたい。これが、まず第一歩。
愛や恋で滅んでしまった国は、その欲望があまりにも大きすぎたためだろう。
神の時代にも、そんな国があったのかもしれないけれども―――関係ない。
愛を受け取り、愛を与える。ただ、そういう関係なのだ。そこに上下など存在はしない。
だけれど―――リリアという従者がそれを望むならば、彼女を『魔族の従者』として、傍に置こう。
愛しよう、支配しよう―――。
「んふふ……いい子ね、リリア?」
ふと、彼女の手をとり立ち上がる。
ここで可愛がってももちろんいい。吸血鬼の尊厳を奪いつくし、彼女をそれではない『奴隷』として落とすことも出来る。
だけど、高貴な人物にはそれなりの扱いをしなければなるまい。それが、二つ目のイニフィの愛情ならば。
「行きましょう、リリア。ここじゃ……ね?」
残っている店員や男連中。それらに、リリアの肌を見せたくはない。
まず、この高貴な吸血鬼の全てを見るのは。全てを見せてもらうのは、自分一人だけの特権。
だから―――誘うのだ。「ここではないどこかへ」と―――。
ご案内:「王都マグメール バザー会場」からイニフィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール バザー会場」からリリアさんが去りました。