2015/12/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 黒猫のあくび亭」にタマモさんが現れました。
タマモ > 夕食時で人の多いその場所に、ゆらりと音も無く少女は姿を現した。
ちょっと野暮用で王国に転移をしたのだが、一番印象の強い場所がここだったのだ。
何も無い場所にいきなり現れた少女に周りがざわつくが…気にした風もなく、少女はカウンターの席にちょこんと腰かける。
こんな事をするのが野暮用という訳ではないのだが、周りに見える様々な料理が見えたら…何か食べたくなるのは仕方ない

「久しぶりじゃの、せっかくじゃからこないだのじゃがいも料理をお願いするのじゃ」

そこに立つ亭主も見覚えがある、さっそくと前と同じ注文をした。
…とりあえず、遺跡の話はいらぬからのぅ?と釘は刺しておいた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 黒猫のあくび亭」にティネさんが現れました。
ティネ > 「あ、ワラワのタマモー」

カウンターの、まだ回収されていない空のグラスの上に、腰掛ける何か。
といってもそんなものに腰掛けられるのは妖精の少女――ティネぐらいしかいない。
過日にここで出会った狐の少女を見かけて、ひょいとグラスから降りて
とことこと嬉しそうにタマモのもとへとこんばんはーと歩み寄る。
以前彼女に贈られたドレスを身に着けていた。

『おお、着物の嬢ちゃん。
 なるほど、今日は儂が迷宮の最奥で魔道破壊兵器《ジャガーノート》と
 一戦交えた話をしろというのだな?』

注文を受けた老亭主はそんなことを言い出す。
……うまくあしらえればトマトソースのポテトグラタンが出るだろう。

タマモ > 同じミスは繰り返さない、そんな事を心に誓っていた。
そんな中、ふと視線の中に見覚えのある姿が見えた。
正確には、別れ際での見覚えのある姿だ、出会った時とは違う服装である。

「…?おや、ティネではないか…妾は要らぬぞ?タマモじゃぞ?分かっておるな?
ふむ…変わずみたいじゃな、これも似合っておる」

分かってはいるのだが、念の為にと確認するように呟いた。
側へと寄ってきた小さな妖精に指を伸ばし、その頭を軽く撫でる。
いざ買った時は少々不安だったが、どうやらちゃんと似合ってたらしい。
ちょいちょいとドレスを小突く。

「………なん…じゃと…!?」

そこに聞こえる亭主の声、馬鹿な!二段構えじゃと!?がーんっ、とショックを受ける少女。

「い、いや、妾はちょいと考える事があるでの、料理だけを頼むのじゃ…」

長い話は本当に勘弁だ、たらりと冷や汗を一筋流しながら、手を振って断った。

ティネ > 「わかってるわかってるぅ。ワラワって響き、なんかおもしろいじゃーん。
 えへへ。なんか今日はタマモが来る気がしたから、着てみたんだーこれ」

そんなことを無邪気な様子で言う。
撫でられたり小突かれたりすればきゃいきゃい笑って楽しそうにそれを受け容れる。

ボケているのかわざとやっているのかいまいち謎な老亭主はタマモの言葉には
微妙にしょぼんとしながらも、ちゃんと注文された料理を用意する。
以前と同じく、ほかほかと美味しそうに湯気を立てるグラタンが彼女の前に。

タマモ > 「うむ、それならば良いのじゃが…妾が妾というのがそんなに面白いものかのぅ…?
ほほぅ…妾の為にわざわざ着てきてくれるとは、可愛らしい事をしてくれるものじゃ、嬉しいぞ?」

自分としては普通な訳だから、どう面白いのかはいまいち分からない。
かくん?と不思議そうに首を傾げる。
続く言葉にくすりと小さく笑い、ちょんっとつま先を唇に触れさせた。

「お、おぉ…ありがとうなのじゃ」

その亭主の様子になんか悪い事をした気がするような、そんな錯覚を覚えるが…あえて料理に集中する事にした。
目の前のグラタンへと視線を移す。
…ちらっと小さな妖精に向ける、またグラタンを見る。
こう、どうする?みたいな視線だ。

ティネ > 唇で触れられれば頬を両手でおさえてきゃっと照れくさそうにする。
届いたグラタンを背伸びして深皿の中身を覗いたりしていたが、
タマモが交互に自分とグラタンに目配せするのに気づく。

「あっ、ボクにもたべさせて、たべさせてー。
 ……脱がなくてもちゃんと今度は汚さず食べられるよ!」

胸を張って自信満々にそう言う。あまり得意気に言うことでもないが。
実際のところ服を汚さずに食べられるかどうかは怪しいところだ。

タマモ > そんな仕草を横目で見ながら、その言葉を聞けば、うむ、と頷いた。

「そうかそうか、ならばティネにも分けてやろう。
ちゃんと食べれるか?ならば…もしちゃんと出来なかったら、お仕置きしてやるかのぅ?」

亭主にもう一つスプーンを、と頼み、今あるスプーンで一口分を掬ってティネの前に置いた。
そして、ティネにだけ聞こえるような小さな声でそう囁き…瞳をすぅっと細める。
…そうした後、とん、と指でテーブルを軽く叩く。
そこからゆらゆらとそよぐ風を起こし、グラタンへと流していった。
熱くてすぐに食べれないのは分かってる、風で少しでも冷まそうという考えだ。

ティネ > 「おしおき……」

オウム返しにするその言葉。
ティネは、自分の小さな心臓がタマモの指先で直接つままれてしまったような、
そんな錯覚を覚えた。

「だ、だいじょーぶだいじょーぶ。
 子供扱いしないで……」

言って、例によってカウンターの上でスプーンに抱きつくようにしてグラタンを食べ始める。
ティネにとってのスプーンの一口は、人間の深皿一枚分には相当する。
最初こそなかなか注意深く、汚さないようにして食べていたものの……

「あっ」

小さな声がタマモの耳に届くかもしれない。
やはりいくら気をつけていても大きな具はティネの小さな口には余るらしく、
胸元にこぼし、ドレスをソースで汚してしまう。
視線が泳ぐ。なんとかタマモの視線から逃れるように、姿勢を変えて
汚れを隠そうとしている小さな妖精の様子が……
見下ろすタマモには悲しいぐらい把握できるだろう。

タマモ > 「うむ、お仕置きじゃ。
…ティネならばよーく分かるじゃろう、のぅ?」

オウム返しに呟き、大丈夫だというティネ。
そんな様子を細められた瞳は見詰め続ける、ぽつりと囁く言葉は意味ありげな言葉だった。

予想通りの流れだろう、小さな声に、ぴくんっと耳が震えた。
視線にしっかりとその汚れは映ったが、あえて今はまだそれを指摘はしない。
受け取った新しいスプーンを手に、自分のグラタンを食べ…ようとしたが、まだ少し熱い。
風で冷ましつつも、掬うごとにふーっと息を吹き掛け更に冷まして食べていく。

「うむ、前は少々あってあれじゃったが…ちゃんと食べると美味しいのぅ。
そうは思わぬか、ティネ?」

今回は冷えてないグラタンを頬張りながら、声をかける。
注意深くしてこれだ、声をかけられながら食べたらどうなるか…視線は外す事もなくティネに向けられたままだ。

ティネ > 「う、うん、わかる」

タマモのどこか冷たさを感じさせる言葉に、確かな恐怖が薄くティネの心身を包む。
かすかな害意の可能性を提示されるだけで落ち着かなくなる。
なにしろこんな小さな身体では逆らいようがないのだ。

「あ、うん、おいしい、ね……」

食べている最中に話しかけられ気が逸れる。
当然のように食べ方が疎かになり、またあらたな染みを作ってしまう。

「あっ、あっ」

再び震える声。
もはや取り繕いようもなくべっとりと広範に汚れてしまっているのだが、
それでもまだ気づかれていないという希望を抱きながら食事を続け、
しかし乱れた集中故にさらに汚れる悪循環。

お仕置きという言葉。
幼子のようにぼろぼろと零してしまうことの恥ずかしさ。
タマモに買ってもらった大切なドレスを汚してしまうことの申し訳無さ。
自分で宣言したことも満足にこなせない情けなさ。
そういったものがないまぜになり、ティネは世界の終わりのような悲壮な表情を浮かべる。
潤んだ瞳からは涙が今にも零れ落ちそうだ。

タマモ > 「ふふ…ならば、頑張って汚さぬように食べねばのぅ?」

より不安を増すような言葉を更に与える。
この時点ですでに誤魔化せない程になってはいるが…あえてまだ言わない。
なんだかんだでこちらは食べれるようになればペースは速い、すでに半分以上が食べ終わっている。

「さすがに自慢するだけはあるのじゃ、これは…うむ、美味いのじゃ」

前回との差があるからか、食べていればよりその旨みを感じる。
満足そうに呟きながら、食べる手を進めている。
側で零しながら食べているティネにしてみれば、そんな言葉を聞いている余裕があるかどうか、だが。

そうして、もう少し経てば…こちらは食べ終わった。
かちゃりと皿にスプーンを置いて…ゆっくりと、ティネへと視線をしっかり向ける。
すっかりと汚れた服に、沈んだ表情。
泣きそうになっている姿を見れば、ぽんっと肩に指を当てた。

「…正直に言わぬからそうなるのじゃぞ?
無理そうであるなら、別に意地を張る事はないのじゃ。
最初っから素直に言えば良い…分かったかのぅ?」

ずいっと顔を寄せ、ぺろりと顔を舐め上げる。

「お仕置きなんぞ冗談じゃ、汚れたものは洗えばよい。
でも、そうじゃな…お仕置きの代わりに、前よりももっと恥ずかしい目に合わせてしまおうか…断れぬじゃろ?」

再び指がその頭に添えられる、ぐりぐりとちょっと強めに撫で回して。

ティネ > スプーンの鳴る音にびくりと身を揺らす。
しっかりと観察するまでもなくティネのドレスは無残に汚れている……

「あの、その、これは」

拳を握りしめて沙汰を待っていると、肩を叩かれ
顔を寄せられ大きな舌で舐められた。

「ふあっ……」

それだけのことでもうドキドキしてしまう。
舐められた顔にタマモが食していたグラタンのソースの塩気がほのかに残る。
そのことがひどく淫靡に感じて顔を赤らめる。

「ご、ごめんなさぁい、タマモ……ボク、ボクっ」

卓上からタマモを見上げ、ぽろぽろと涙を零す。その振る舞いはまるきり幼子だった。
本当に情けない自分、それを許してくれる狐の少女に、恭順の意は益々深まる。
恥ずかしい目、と言われれば……期待と不安のまぜこぜになった視線を向けて、
なんでもしますといった勢いで一も二もなく従順に頷く。
……それをお仕置きとは言わないのか、とは少し疑問に思った。

タマモ > 「うむ、美味かったぞ、また食べに来るでのぅ?」

懐から代金を置いておけば、すっと席を立ち上がる。
その視線はいまだティネへと向けられている。
謝罪の言葉と共に自分の言葉に頷くのを見れば、その手を伸ばしてティネを包む様に掴み上げた。

「分かればよいのじゃぞ?
ほれ、では…今日は場所を変えるのじゃ」

手の中でティネの感触を感じながら、ぽつりと呟く。
そのまま少女は小さな妖精を連れて宿を後にして…

お仕置き?いえいえ、愛でるのです、NOTお仕置き…多分。

ティネ > 実際自慢にするだけあって、妖精の身にもグラタンはおいしかった。
ちゃんと人間の大きさだったなら余すところなく味わえるのだろうと思うと
多少恨めしく感じる。

ティネの感触は温かく、柔らかく、握り心地がいい。
どこに連れて行かれるのだろう、なにをされてしまうのだろう、
そんな考えを巡らせながら、狐の少女へ持ち去られていく……

ご案内:「王都マグメール 平民地区 黒猫のあくび亭」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 黒猫のあくび亭」からティネさんが去りました。