2015/11/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/黒猫のあくび亭」にティネさんが現れました。
ティネ > 掌の程の小さな妖精風の少女、ティネはいつものように
人で賑わう酒場のテーブルに腰掛けていた。
曖昧な存在である彼女は人に認識されづらい。
人混みの多い場所ではなおさらである。
こうして特に隠れずに、堂々と姿を表していても見つからないことが多い。

この酒場は鈍い客が多い。
極稀に見つかることもあるが、大抵の場合は大丈夫だ。
ティネは暖を取ったり、客から盗み食いをしたりと
この場所を有効活用していた。

「…………」

しかし今日は盗み食いをまだ働いていない。
おなかがすいていないというわけでもないのだが。

ティネ > 自分を見つけてくれたものと、何度か話をした。
盗みはよくない、とたしなめられもした。
今更そんなことを言われても、とも思う。
しかし、優しい彼らと話しているうちに、自分の行う、生きるためとはいえ
犯罪行為に手を染めていることに、いくばくかの恥ずかしさを覚えるようになってきたのだ。
まるでこの姿で生きていくことを決めてきた最初のころのように。

うまそうにフォークやスプーンで食事を摂る客たちの姿を、
ぼんやりと遠くの景色を眺めるように視界に挿れている。
くう、とお腹が鳴った。
食べないままここにいる、というのはひどい拷問に思える。
いつまでもそうしてはいられないだろうけど、
どれだけ自分が我慢できるのか、試してみたかったのかもしれない。

ティネ > 卓の上を歩く。
目をつけたのはシチューを頬張る女性冒険者だ。
ひょっとしたら気づいてくれないものだろうか、と、
近づいて、袖をちょいちょいと引いてみる。
が、やはり反応はない。気づいてはくれないようだ。

眉を八の字にする。
……自分のことがわかる人間は想像もしないだろうが、
ティネにとってこれは日常だった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/黒猫のあくび亭」にタマモさんが現れました。
タマモ > すぱーんっと勢いよく扉が開く、その音に一部の視線が集まる。
そこにはミレー族のような狐の耳、だがそれとは違う九本の尻尾を持つ少女の姿。
なぜティルヒアに居るはずの少女がこんな場所にまで来ているのか。
その理由はこうである。

ご飯が食べたい。

ティルヒア中回っても見付からない、ならば…話に出ている王国ならば、とこうしてやってきたのだ。
まぁ、ここで顔を知った者に会う事もあるまい、そんな軽い考えで。
ぐるりと店内を見回す。うん、あっちとそう変わらない。
そう思えば、とてとてと空いた席にやってきた。
周りからの視線を気にする事なく、その席にちょこんと腰かける。

ティネ > ティネとて例外なく、その入場に注目した。
ミレー族かと一瞬思ったが、尻尾がやたらボリュームあるしこんなに堂々とはしていないだろう。
華を感じさせる少女だ。

老いた亭主がのんびりとした様子で注文を彼女にたずねるなか、
ティネは空腹も忘れ、風変わりな彼女を観察してみようと、
タンブラーやジョッキの陰を行き来しながら、卓の上をちょこちょこと歩く。
彼女を眺めるに適した場所を求めて。

タマモ > 注文を聞いてきた亭主、この老人が店主かと思えば、きっ、とその亭主に鋭い視線を向ける。

「うむ、ちと尋ねるが、ここにご飯というものはあるかのぅ?
えーっと…こう、白くてこんな感じで粒々で釜とかで炊いて食べるものじゃ。
ここでは異せ…もとい、異国の料理とは思うのじゃが、どうじゃろうか?」

指先で米粒の大きさを示したり、身振り手振りを加えて説明を始める。
…誰が見てもどうにも理解し辛いジェスチャーだ。
それに理解を示せば顔を輝かせそれを注文し、理解出来ぬようならばがっくりと肩を落とすだろう。

そんな注文をしている最中、一瞬だがちらりとテーブルの上を移動する何かに視線を向けたかもしれない。

ティネ > ご飯、ふむ……と顎に手を添えて好々爺然とした亭主が何かを思い出そうとするように顎に手を添えた。
食事について尋ねたはずがなぜか老人の若かりし頃古代王家の遺跡に潜り込んだ思い出話が始まった。
ボケが始まっているのかもしれない。
最後まで聞かずともそんなものは扱っていないというのは察しがつくだろう。
周囲の客に尋ねても結果は同じだ。
ちなみにじゃがいも料理が自慢らしい。

一方で、狐耳を持つ少女と目が合ったような感覚をティネは覚えた。
ジョッキの陰から、掌ほどの大きさの少女が恐る恐るといった調子で控えめに手を振ってみせる。
見つけてほしいとは思いながらも、見つかるのは怖い、という矛盾した心のあらわれだった。

タマモ > 「ふむふむ、そうか、古代王国の遺跡とな?
それはなかなか………じゃないであろうっ!?
待つのじゃ!妾はご飯を聞いたのになんで遺跡の話になっておるのじゃ!?」

ばしーんっ、ばしーんっと勢いよくテーブルを叩く。
また視線が集まった、だが気にしない。
でもとりあえず、分からないってのは少女も理解したらしい、がっくりと肩を落とした。
仕方ない、ならそのじゃがいも料理とやらを注文しておこう。

で、テーブルの上を動いていた何か。
改めて視線を向けてみると、なんだか手を振っているように見える。
その姿は妖精という名前でよく本とかで見て知っていた、正確には違うみたいだが。
まぁ、この世界はファンタジーだしそういうのも居るのだろうと、さして疑問に思ってない。
なにやら視線はこちらだ、だが自分には相手の見覚えが無い。
右を見る、左を見る、また右を見る。
誰も反応してない、なら自分か?と思い、ひらりひらりと手を振り返してみた。

ティネ > 『おや? てっきり、かつて《ゴッドハンド》と呼ばれた
 名スカウトだったわしの話を聞きたいものだと……』

老亭主は不思議そうに首をかしげていた。
ともあれ少女が注文すれば、ほどなくして
湯気ののぼるトマトソースのポテトグラタンが目の前に出されるだろう。


ティネはテーブルが叩かれた振動にひええと一度転びながらも、
さして自分の存在に動じていない様子の狐の少女に気を許したか、
背中の蝶の羽根を広げて、不安定な軌道で飛んで近づく。

「キミ、どこかのお姫様?
 なんだか随分変わってるよね」

高い声でそう話しかける。興味深そうな表情。
宙に浮かぶ羽妖精に、誰も気を留める気配はない。

タマモ > 「………妾はそのような事を言ったか?まったく身に覚えがないんじゃが…」

なんか二重に疲れた、肩を落としたまま料理を待つ。
そして目の前に出されたグラタン、案外美味しそうで少しは落ち込んだ気持ちは持ち直したようだ。

手を振ったら飛んできた、やっぱり何か自分に用があるのだろうか?
そんな事を考えながら、かくん、と小首を傾げる。

「お姫様か…お姫様のぅ…ふふ、ふふふ…そんな勘違いをされたのは何とも初めての事じゃ。
妾はそんなに育ちが良さそうに見えるかのぅ?」

かけられる声に、ふふんっとどこか偉そうに言葉を返す。
見方はどうにせよ、そんな風に見られたのが少し気に入ったらしい。
普段ならば、変わってる、と言われれば変な方向に勘違いして文句の一つも出るが今回は無かったらしい。

「それにしても…はて?なぜ他の者達は分からんのか…」

浮いた妖精は目の前だろう、どう見ても誰の視線にも入りそう、なのに誰も気付かない。
不思議そうにしてはいるも…周りからすれば、何も見えない何かに話しかけてる少女が不思議なのだと思われているかもしれないが。

ティネ > 「なんだー、違うんだ。
 だってエラそうだし……服とかも独特だし、文化も違うみたいだし、
 海の向こうの知らない国かなにかから、来たのかなって。
 ……それに、キレイだし」

きょとん、とした表情で率直な言葉を口にする。

「ボクにもよくわかんない。妖精だから、かな?
 見える人と見えない人がいるみたいだけど、どう違うのかもしらない」

疑問にはそう答える。彼女自身もよくわかっていないようだ。
実際不審に思う目を向ける客もいたが、
どだい最初から奇妙だったのでそれほど気にもならないようだ。

できたてほかほかのグラタンの器を視界の端に収める。
きゅう、と小さくお腹が鳴ったのが、目の前の狐の少女にも聴こえたかも知れない。
恥ずかしそうに身を縮めて、すとんとテーブルの上に落ちる。

タマモ > 「うむ、残念ながらどこぞのお姫様、なんて立場ではないのぅ。
じゃが偉いのは間違っておらぬ、どう偉いのかなんて説明が面倒だから聞くでないぞ?
海の向こう…まぁ、そんな感じじゃ、この国の者ではない。
………ふむ、綺麗か、なかなか嬉しい事を言うてくれるのぅ」

まんまを説明しても多分理解は出来ないのは分かってる事、なので色々と誤魔化した。
最後の一言にはやっぱりどこか偉そうな笑み、嬉しそうだ。
お主こそ妾から見れば可愛らしいものじゃ、そう言ってやれば手…ではさすがに大きすぎる、指でちょいちょい頭を撫でてやった。

「むむむ…そうか、あれか、心の清い者しか見えないとか、そういう類じゃな!?」

それはきっと違う、そんなツッコミが入りそうだ。
それならば、別に勘違いされても気にする事もないだろう、そう結論付ける。

目の前に置かれているグラタン、熱を持つそれを見詰める少女はまだ手をつける様子がない。
と、側から聞こえるお腹の鳴る音。
その音の元は…多分、目の前のテーブルに降り立った妖精か?
口元に手を添えて考える仕草。

「欲しい物が無いついてで注文したものじゃ、食べたければ食べるが良い」

亭主にスプーンをもう一つおくれ、と声をかける。
グラタンと一緒に置かれていたスプーンは、グラタンを掬うと妖精の目の前にことん、と置いた。
まだ自分が食べないのは…熱くて食べれないから、とはあえて言わない。

ティネ > 明らかに多くがぼやかされた説明だったが、妖精はそれでも満足したらしくほへーと頷いて受け容れる。
指が伸びて頭を撫でれば、喉を鳴らしてうれしそうに顔をほころばせた。
もっと、と言わんばかりに自分から頭を擦り付ける。なでられるのは好きらしい。


「あー、うん、そんなところかな……多分」

曖昧な返事。
明らかに心の清くないものにも見えていたので、
ティネはそうではないことは知っていた。

目の前に置かれたスプーンと、狐の少女を見比べる。
いいの? という表情。
許可を下す言葉にためらいながらも、
置かれたスプーンを抱えるようにして、それに口をつける。
熱く感じるのは妖精とて同じだったらしく、びっくりしたように口を離す。
口を近づける。離す。その繰り返しで少しずつ食べていく。
スプーンですくった僅かな量ですら、この妖精が完食するには時間がかかりそうだ。

「……ありがと。
 ねえ……狐のキミは、なんていうの?
 ボクはティネ。ぞくに言う妖精みたいなのをやってる」

食事をひとまず休止し、狐の少女をテーブルの上からきらきらと輝く紅い瞳で見上げ尋ねる。
口元や衣服がグラタンのソースで汚れていた。